ニュースレター No.293 2024年1月11発行 (発行部数:1666部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:自然と共生する未来に向けてー経団連自然保護協議会2023年度シンポジウム(2024/1/11)
2. 環境譲与税配分基準見直しー令和6年度税制改正の大綱 (2024/1/11)
3. 木質バイオマス発電のGHG排出量問題の新たな仕組み(2024/1/11)
4. 2023年林業経済学会秋期大会コレクション(2024/1/11)
5. エコプロ2023の中の森林と木材ゾーンーウッドデザイン賞など(2024/1/2)
6. 企業の環境パフォーマンスデータ開示の中で難しい生物多様性へのチャレンジ・・・ー勉強部屋ニュース293編集ばなし(2204/1/11

フロントページ:自然と共生する未来に向けてー経団連自然保護協議会2023年度シンポジウム(2024/1/11)

12月5日都内で開催された経団連自然保護協議会2023年度シンポジウムに出席してみました。

2023年度シンポジウム等を開催しました
2030生物多様性実現日本会議J-GBFとの共催ー

ビッグビジネスが森林に関心を示してきている昨今、「経済界が直面する内外の広範な重要課題について、経済界の意見を取りまとめ、着実かつ迅速な実現を働きかけることを仕事にしている経済団体連合会が、自然保護協議会という団体を構成し、森林に対してどんな情報発信をしようとしているのか?

紹介します。

(シンポジウムプログラムの構成)

1. 開会:経団連自然保護協議会会長西澤敬―
2. 経団連自然保護協議会の活動紹介(動画)
3. 基調講演:「2050 年ビジョン『自然と共生する世界』を見据えた、企業、事業活動の在り方とは? ー自然と寄り添った発展、豊かさの質の追求.Livingin Harmony withNatureの世界を目指してー」東京都市大学特別教授涌井史郎様
4. パネルディスカッション:「サステイナブルな経済社会の実現に向けた企業の役割」
(モデレーター)日経ESGシニアエディター/東北大学大学院教授藤田香様
(パネル)
藤田香様/ 東京都市大学特別教授涌井史郎様
KDDI執行役員常務CFOコーホ゜レート統括本部長最勝寺奈苗様(プレゼン資料
三井住友フィナンシャルクループサステナビリティ企画部シニア・サステナビリティ・エキススパート島健治様(プレゼン資料
5. 経団連生物多様性宣言・行動指針の改定、企業の生物多様性への取組みに関するアンケート結果(付属資料)、経団連自然保護基金について他ー経団連自然保護協議会事務局
6. 2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)についてー環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性主流化室長浜島直子
7.積水樹脂グループ生物多様性保全に向けた取り組みのご紹介ー積水樹脂代表取締役社長CEO 馬場浩志様
8. 閉会:環境省自然環境局長白石隆夫

(昆明モントリオール生物多様性枠組み議定書にもとづくビジネスの役割)

上記のプログラムでの5番目あたりで紹介されているように、最近、経団連生物多様性宣言・行動指針などが改定され、ネイチャーポジティブ経営の普及に弾みをつけています。

COP15で愛知目標にかわって、合意された昆明モントリオール生物多様性に関する枠組み(以下昆明枠組みといいます)についてはこのサイトでも重要な内容として追いかけてきましたが、あらためて、昆明枠組みのターゲット15が重要な役割をはたしていることが解ります

ビジネス及 び金融機関への生物多様性関連リスクを減らすとともに、持続可能な生産様式を確保するための行動を推進するために、ビジネスに対し以下の事項を奨励してできるようにしつつ、特 に 大企業や多国籍 企業、金融機関については確実に行わせるために、法律上、行政上、又は政策上の措

・・・

(ビジネスが森づくりに関わる具体的な事例)

森林のガバナンスと経団連のプロジェクトの関係を具体的に議論する道筋として、配布された以下の具体的事例を示す資料が参考になります。

企業の生物多様性の取組に関するアンケート調査2022年度版付属資料企業の生物多様性への取り組み事例集
生物多様性ビジネス貢献プロジェクト2023年度新規追加事例紹介

上記に掲載されている事例の中で、森林のガバナンスに関係ありそうな、すこし広い陸域の植生を対象としたプロジェクトを紹介します

プロジェクトのタイトルと、自社のサイトの関連情報を以下に掲載しますが(うまくリンクが張られていない可能性があります)、事例集に掲載された正確な記述などは、上に掲載した情報か後者は環境省サイトの生物多様性ビジネス貢献プロジェクト企業の取組事例を参考にしてください

表はこちらからどうぞ(中略)

(J-GBFなどビッグビジネスと森林との関係は)

右の図はプログラムで環境省の室長が説明した、2030生物多様性枠組実現日本会議J-GBFの全体像

ビジネスフォーラムだけでなく自治体が中心となった地域連携フォーラムなど生物多様性問題を普及させていく枠組みですが事務局は環境省、会長は経団連会長ということで、ビジネスに頑張ってもらって、少しわかりにくい生物多様性問題を取組んでいこうという枠組みですね

ご紹介してきた取り組み事例をこれらの枠組みの中で生まれてきた事業です。

(先進事例から見えてくるもの)

事例主の中で、製紙業界のようにお大きな所有林をもっているところは、それを線引きして社有林内の生物多様性保全上重要なエリア把握して保全活動(王子ホールディングズ)など、独自に重要な活動をしていますね。

その他に、工場緑地を管理エリアと自然エリアにわけて、管理をしながら、自然共生サイトの一環にしていくなど(富士通)の取組があります。圧倒的多数は、後者でしょう。

残念ながら、生物多様性というコンセプトに関して、企業が直接管理する対象は面積に制限があります。

それを全体の枠組みにつなげていくには、30by30などの枠組みにもとづいて自然共生サイトにつなげていくなど工夫がいるところです。そんなところで、周辺の天然林との連携など、森林ガバナンスとの連携が大切な要素になってくるでしょう。

企業にとって30by30の仕事は、自社のやっているローカルな素晴らしい活動を、グローバルに発信して世界のESG投資先などにつなげていく大切な仕事なんですね。

是非上記の情報発信を注目してまいりましょう。勉強部屋でもフォローします。

junkan6-15<keidanren>

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企業の環境パフォーマンスデータ開示の中で難しい生物多様性へのチャレンジ・・・ー勉強部屋ニュース293編集ばなし(2024/1/11)

フロントページは、自然と共生する未来に向けてー経団連自然保護協議会2023年度シンポジウム

経団連が自然保護協議会という組織をもっていることはなんとなく知っていましたが、最近地球環境問題の関心が高まってきた中で、リアルなシンポジウムが都内であったので出席。

気候変動と比べると生物多様性の話は、グローバルな貢献度を数値で見える化するのは難しいのですが、逆に地域地域でいろいろな可能性があるので、ローカルな貢献を地域の方々に紹介するのはわかり易くて良いプロジェクトがたくさんあるのを再認識しました。

ネット上に具体的な取り組み事例がしっかり掲載されているので、これをどのように紡いでいくのか?今後の勉強材料です。

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木質バイオマス発電の原料供給のGHG排出量の話は、欧州の動向を見て、GHGをたくさん出すのでEUはもう買わないといった米国のペレットなどを日本が安く買いまくるなということにならないか?10年前から気になっていた事案で、これが日本の助成制度の中で具体化することになった良い話。

木質製品の輸送過程のCO2排出量を見える化する指標に取組んできた、ウッドマイルズフォーラムにとっても、その活動の上にたった新たな活動の可能性もあります。

丁度ウッドマイルズフォーラムのバイオマス燃料の認定事業で現地審査する直前タイミングとも重なり、供給事業者がどんな仕事を迫られているのか?を知るとともに、関係者とこの面倒臭い作業の重要性などについて、議論ができてればと思いっています。

また報告しますね

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最近沖縄に行く機会がありました。木の建築賞の現地審査です。

沖縄の木の建築といえば首里城ですね。修復作業の現場もみてきました。

木の建築賞に参加された2件の案件、戦後沖縄の住宅がコンクリートブロック建築になってしまった中で、木の住宅をつくるプロセスは、日本の他の地域とまったく違う課題があるんですが、琉球王国時代からの木の建築と沖縄の森林との関係に関する調査蓄積などがあり、それを読んで建築関係者が木の建築にチャレンジしているので、興味深かったです。追ってご報告します。

このところ沖縄の話は、今回紹介しように、エコプロ展で琉球大学の農学部の方と話をしたり・・・林業経済学会大会の会場が琉球大学だったり、すこし、関心を持っていこうと思います。

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勉強部屋ZOOMセミナー第5回が1月23日17時から開催ですー

テーマは:気候変動問題から見た森林ーIPCCの報告書とCOP28を踏まえて

地球環境問題のメインストリームの最新情報の中で森林問題の位置づけ、地球環境戦略研究機関 (IGES) 生物多様性と森林領域の研究者山ノ下麻木乃さんをゲストに迎えIGESの担当研究者山ノ下さんを迎えて議論します。

関心のある方は、こちらから!お待ちしています!!

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それではよろしくお願いします

次号以降の予告。沖縄の木造建築/ 日本の森を守る各地の取組ー建築とまちづくり誌の特集/ カーボン・クレジット市場、東証が開設/ 建築物の木造・木質化に関する現状と今後の可能性調査/ 気候変動枠組み条約COP28と森林木材 

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com