ニュースレター No.155 2012年7月22日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:「グリーンエコノミー」で活性化する自然資本の情報開示(2012/7/16)
2. リオ+20 我々の望む未来と森林改訂(2012/7/22)
3. Japan Forest Information Review 改訂(2012/7/12)
4. 森林の問題をグローバルな課題に統合:CIFOR第8回円卓会議(2012/7/16)
5. グリーンエコノミーの中の中国の森林:中国国家森林局の情報発信((2012/7/10)

フロントページ:「グリーンエコノミー」で活性化する自然資本の情報開示(2012/7/16)

世銀主催のサイドイベントに各国首脳クラスが出席

グリーンエコノミーが宣言文の中で具体的な合意にいたらかった一方で、サイドイベントではいくつかの重要な進展がありました。

世界銀行となどが、森林などの自然資本の価値を50の国家が国会会計に、50の企業が企業会計に入れるコミュニケに賛同する50/50キャンペーンを行っています。

この運動が主催して6月20日に開催したサイドイベントでは、コスタリカ、デンマーク、ノルウェイ大統領、首相などが参加し、59カ国、88企業が署名したとされています


コミュニケでは①自然資本会計の実施体制強化の仕組み作り、②DGPは企業会計を補完する生態系勘定の科学的な手法の研究、③自然資本会計の総括的アプローチと拡大の試験的実施などが、記載されています。

さらに国連環境計画UNEPの呼びかけによる金融機関の集まりであるUNEP金融イニシアティブでは、6月16日に自然資本ダイヤログを主催し、自然資本宣言を行いました。

自然資本宣言のページ 日本語宣言本文

(宣言の中心部分は以下の通りです)

1. 事業活動、リスク因子、顧客ポートフォリオ、サプライ・チェーン、ビジネス機会に関連する自然資本への影響と依存度について理解を深めること。

2. ローン、投資、保険ポリシーなどあらゆる金融商品・サービスの意志決定プロセスに自然資本という考え方を統合する場合の方法論開発を支援すること。金融セクターの多様性を考慮すると、自然資本の考え方の統合はアセットクラスや金融機関の種類によって様々であると考えられる。それゆえ、我々は、以下の方法論の開発のために、国際連合が公表した責任投資原則、赤道原則、UNEPFI 持続可能な保険原則、TEEB などの他のイニシアティブとも連携していくことを考えている。

(a)投資先企業の短期、中期、長期的成長の予測におけるESG(環境、社会、ガバナンス)リスク分析に、自然資本の考え方を取り入れることで、債券や株式の評価に全体的アプローチを適用する。

(b) コモディティーを含む、自然資本に直接的あるいはサプライ・チェーンを通じて間接的に多大な影響を与える特定セクターのクレジット・ポリシーに、自然資本を評価する考え方を体系的に取り入れる。

(C) リスク管理、保険査定、商品・サービスの開発、苦情管理、営業・マーケティング、投資マネージメントを含む主要な保険ビジネスの戦略と運営において、体系的に自然資本を考慮する。
37の企業が署名したそうですが、日本では三井住友トラストホールディングスが署名しました。

自然資本宣言への署名について - 三井住友トラスト・ホールディングス

各国の成果文書でグリーンエコノミーの部分は具体性に欠けるという批判がありますが、民間企業のコミットメントという形でグリーンエコノミーへの動きが加速されていくことになりそうです。

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リオ+20 我々の望む未来と森林改訂(2012/7/22)

新たしく作成したページをポータルページからリンクさせ、写真をのせました。

個々のイベントで重要な(と思った)ものは、別途ページを掲載していますのでご覧ください。
 リオ+20インターネットによる政策提案
 ジリオ+20森林はグリーンエコノミーの心臓部分FAO,ICFPAのサイドイベントから
 森林問題をグローバルな課題に統合:国際林業研究センターCIFORのイベントから
 グリーンエコノミーの中の中国の林業:リオ+20への中国林業局の情報発信new
 グリーンエコノミーに対応する欧州の森林政策のアクションプランnew
 「グリーンエコノミー」で活性化する自然資本の情報開示new

これらの方向にむかって、生産者、消費者、生産地の地元住民そして、行政組織のとの連携が構築・改善し、さらに、持続可能な開発目標、さらには、法的な拘束力のある持続可能な森林条約などの枠組みに発展することを期待します。

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Japan Forest Information Review 改訂(2012/7/22)

このサイトの英文のページJapan Forest Information Reviewは日本の森林に関する情報を海外に発信する役割を持っているものですが、リオ+20を契機に充実を図っていくこととしています。

最近の新着情報は以下の通りです

What's New
A study of the new synthetic index to reveal the forest value (July 22, 2012)New
Annual Report on Forest and Forestry in Japan Ficsal Year 2011(Summary)(July 22, 2012)New
Rio+20 Future Forest we Want(July 5, 2012)New
Rio+20 Presentation from Japan Forest Information Review (July 5, 2012)New
"Forestry Japan" introduction of Japanese forest and forestry in English updated, by Japan Forestry Consultants Associations.(JOFCA)(June 12, 2012)New
The Act for Promotion of Use of Wood in Public Buildings etcfull text is transltated by JFIR (May27, 2012) New

Welcome to "Japan Forest Information Review".

This site provides information about Japan's forests, forestry, and policies concerning them, and will cover topics including, forest certification, trade, green purchasing, forest monitoring, legislation, criteria and indicators of sustainable forest management, and so on.

The site will also provide various views from Japan on aspects affecting international forest policy issues, including the World Trade Organization, illegal logging, a forestry convention, the International Tropical Timber Organization, and the Kyoto Protocol, etc.

Humanity must address many issues during the 21st century, and among these, cooperation to achieve sustainable forest management is one of the key topics on the global political agenda.

I would be very happy if this site can make a contribution to that end.

 


森林の問題をグローバルな課題に統合:CIFOR第8回円卓会議(2012/7/16

インドネシアのボゴールにあるCenter for International Forestry Research (CIFOR 国際林業研究センター)は林業関係の国際的な研究機関としては唯一のもので、特に途上国の林業開発の課題に積極的に関与してきました。

CIFORが6月19日に会場近くのホテルで開催した「森林に関する第八回円卓会議inrio+20、森林問題を持続可能な開発のグローバルな課題に統合」は、二つの分科会と全体会合を含む大きな会合でした、

分科会は、リオ+20の準備段階で脚光を浴びていた水、エネルギー、気候変動、食糧といった持続可能な開発のテーマに沿って技術課題ごとの研究成果を披露し、森林がどのように重要な関わりを持っているかを明らかにし、全体会合はリオプラス20の枠組みに関する政治的な議論という、、リオ+20の枠組みを正面からとらえたものです。

第二部の司会をするセイモア理事長

全体を通じて、森林の課題がリオ+20の中で十分に評価されていない、という問題意識を明確もった、テーマ設定で、世界のこの分野をリードするというセイオア理事長以下の意気込みが伝わりました。

(参考リオ+20成果文書素案(ゼロドラフト)(英文和訳)でのグリーンエコノミーの記述、「我々は、持続可能な開発及び貧困撲滅に関連するグリーン経済が主要目標、特に 貧困 撲滅、食料安全保障、健全な水管理、現代的エネルギー・サービスへの普遍アクセス、持続可能な都市、海洋管理、回復力改善及び災害への準備並に公衆衛生、人的資源開発 及び青少年のため雇用を 含む雇用創出に資する持続的、包含的 かつ公平な成長どの優先事項、の達成に寄与すると確信している。」など主要な優先事項に森林が抜け落ちていた。)

CIFORが会議のために作成したコンセプトノートがCIFORのウェブに掲載されていますが、リオ+20の準備段階から森林がどのように取り上げられてきたのか(軽視されてきたのか)、それに対してCIFORを中心とした関係者が、どんなに主張してきたのかがよくわかり、今後の取組に関しても大変参考になります。

要約を記します

重要なリオ+20が迫っているが、主催者は7つの重要事項(雇用、エネルギー、都市、食料、水、海洋、災害)を指摘しているが、森林はそれらの事項の中で食糧に僅かに記載されているのみで、ほとんどふれられていない。

21世紀の重要な課題について議論する場であるリオ+20の中で森林をはずすべきでない。森林は上記課題を解決するためにも重要である。

そのため、CIFORは会議参加者のために、森林の重要性を示す新しい研究成果を含めた以下のような内容を明らかにするために会合を開催する。

①森林はエネルギー源を供給する重要な構成要素であるが、新たなバイオマス燃料の供給のための土地変化で森林減少に直面している

②森林は地域の収入源を供給する直接的な役割を果たしており、森林抜きに将来の食糧安全保障を語ることはできない。

③森林流域は地上で利用されているの75%を供給している。

④森林は気候変動の抑制に寄与しており、また森林減少によりそれを加速している

会議の記録が動画で配信されています(こちら
基調講演、パネリストのメンバーは以下の通り
基調講演
Bård Vegar Solhjell
ノルウェイ環境大臣
Minister of the Environment, Norway
Carlos Klink
ブラジル国気候変動環境問題担当大臣
Brazilian National Secretary on Climate Change and Environmental Quality
パネリスト、コーディネーター
Daniel Nepstad
IPAM (Amazon Environmental Research Institute)
国際協力部長
Heru Prasetyo 大統領府開発・モニタリング局次長、REDD+専門委員
Deputy Head, President's Delivery Unit for Development
Monitoring and Oversight (UKP4); Member of REDD+ Task Force.
José Joaquín Campos A.
コスタリカ、熱帯農業研究普及研究所理事長
Director General of CATIE (Tropical Agricultural Research and Higher Education Center), Costa Rica
Carlos Nobre
ブラジル宇宙研究所、地球システム科学センター理事長
Director of the Center for Earth System Science, National Institute for Space Research of Brazil
Frances Seymour
CIFOR理事長
Director General, Center for International Forestry Research (CIFOR)
Ruth DeFries
コロンビア大学教授
Professor of Sustainable Development at Columbia University
Bariki Kaale
タンザニア、地域林業生物多様性保全機構議長
Chairperson of Tanzania Specialist Organisation on Community Forestry and Biodiversity Conservation
Freddie Kwesiga
アフリカ開発銀行ザンビア代表
African Development Bank representative for Zambia
Louis Verchot
CIFOR森林環境計画主任研究員
Principal Scientist, Forests and Environment Programme, Center for International Forestry Research
Mingsarn Kaosa-ard
タイ国チェンマイ大学教授
Former Director of the Social Research Institute and Professor of Economics, Chiang Mai University, Thailand
Renata Marson Teixeira de Andrade
ブラジリアカトリック大学教授
Professor of Environmental Planning and Management, The Catholic University of Brasília
David Ellison
ハンガリー科学アカデミー世界経済研究所主任研究員
Senior Researcher, Institute for World Economics, Hungarian Academy of Sciences


概要がCIFORのホームページに掲載され次第リンクを張ります。




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グリーンエコノミーの中の中国の森林:中国国家森林局の情報発信((2012/7/10)

リオ+20では会場に隣接した場所に各国のパビリオンがありそれぞれイベントが公開されました。

途上国と先進国の利害調整が大きなテーマとなる今回の会合で、その役割が注目された中国ですが中国のパビリオンで国家林業局主催のイベントが開催されたので、のぞいてみました。

題してグリーンエコノミーの中の中国の森林China Forestry in the contex of Green economyです。

中国が国をあげて行った10のイベントの一角を森林局が主催しているのは注目すべきことです。

UNFFのマックアルパイン事務局長などの来賓挨拶のあと、次長が1時間近くにわたって、中国の森林の状況と政策について演説しました。

この30年ばかりの森林資源の増大と今後の見通し、といった内容ですが、森林のグリーンエコノミーの発展などグローバルな提案も含めた(抽象的ですが)前向きの内容です。(頼んでおいた英文のプレゼン資料を送っていただいたのでこちらに掲載しておきます

森林の国際管理は今まで欧州が主導してきましたが、中国や日本・韓国などが次のステップを主導する可能性を感じたイベントでした。

中国国家林業局次長の基調演説は1時間にわたる
国連森林フォーラムJMcAlpine事務局長挨拶


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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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