ニュースレター No.282 2023年2月15発行 (発行部数:1608部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:グリーントランスフォーメーション(GX)の中の森林の将来(2023/2/15)
2. SDGs時代の林業の使命ー次世代の森林の在り方は?-勉強会第4回ZOOMセミナー報告-勉強会第4回ZOOMセミナー報告(2023/2/1)
3. 気候候変動枠組み条約COP27と森林(2)(2023/2/15)
4. 生物多様性が拡大する社会は森林ガバナンスの制度とどんな関係ー30by30の実現への道筋(2023/2/15)
5. 森林再生と地域振興にむけてPresentTreeー環境リレーションズ研究所の取組(2023/2/15)
6. 森林起点に付加価値 整備と活用で脱炭素ー日経SDGsフォーラム 特別シンポ「森林、木材の利活用で実現する脱炭素社会」(2023/2/15)
7.  「次期生物多様性国家戦略」案と森林政策との関係ー意見募集(2023/2/15)
8.  勉強部屋ページ2022一年の評価(2023/2/15)
9. グリーンな社会変革GXの中で森林は・・・ー勉強部屋ニュース282編集ばなし(2023/2/15)

フロントページ:グリーントランスフォーメーション(GX)の中の森林の将来(2023/2/15)
2月10日「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。

「原発推進へ方針転換」などが報道されていますが、GX(グリーントランスフォーメーション)とは「産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革」のこと。(内閣官房「GX実行会議の開催について」より

議 長 内閣総理大臣 副 議 長 GX実行推進担当大臣、内閣官房長官 構 成 員 外務大臣、財務大臣、環境大臣及び別紙に掲げる有識者からなる、GX実行委員会が昨年7月から議論してきた案件が、パブコメをへて、閣議決定されました。

関連して以下の三つのデータが公表されています。①GX実現に向けた基本方針/②GX実現に向けた基本方針の概要/③GX実現に向けた基本方針参考資料(左の図の原データ)

「グリーンな変革」、いよいよ森林が主役か?主役への道のりを描けているか?原発と森林のどちらがグリーンか?など勉強してみました。

(基本方針本文の中の森林・木材に関する記述)

1 はじめに
2 エネルギー 安定 供給 の確保を大前提とした GX に向けた脱炭素 の取組
(1)基本的考え方
(2)今後の対応
1) 徹底した省エネルギーの推進、製造業の構造転換(燃料・原料転換
2) 再生可能エネルギーの主力電源化
3) 原子力 の活用
・・・・・
11) 住宅・建築物
<建築基準の合理化や支援等により木材利用を促進する>
・・
14) 食料・農林水産業
<みどりの食料システム戦略、 みどりの食料システム法 等 に基づき、 脱炭素と経済成長の同時実現に資する農林漁業における脱炭素化、吸収源の機能強化、森林由来の素材をいかしたイノベーションの推進等に向けた投資を促進する。>

3 「 成長志向型カーボンプライシング構想 」 の実現 ・ 実行

(1)基本的考え方、
(2)「 GX 経済移行債 」を活用した大胆な先行投資支援( 規制・支援一体 型投資促進策、
(3 )カーボンプライシングによる GX 投資先行インセンティブ、
(4 )新たな金融手法の活用
4 国際展開戦略
5 社会全体の GX の推進
6 GX を実現する新たな政策イニシアティブの実行状況の 進捗評価 と見直し

27ページからなる、基本計画本文の構成は上のように、「①はじめに」、から、「⑥GX を実現する新たな政策イニシアティブの実行状況の 進捗評価 と見直し」、まで、6つの節からなっています。

②節が各セクターごとに記述した「DXに向けた施策」、③から⑥がセクター横断的な取り組みで、その中で③がGX投資の本体に当たる部分(冒頭のロードマップ)が記載されているようです。

その中で、森林、木材という単語がはいっていたのは、②節の(2)今後の対応 の以下のような2か所でした。
11) 住宅・建築物
<建築基準の合理化や支援等により木材利用を促進する
14) 食料・農林水産業
<みどりの食料システム戦略、 みどりの食料システム法 等 に基づき、 脱炭素と経済成長の同時実現に資する農林漁業における脱炭素化、吸収源の機能強化、森林由来の素材をいかしたイノベーションの推進等に向けた投資を促進する。>

国交省が「木材利用の推進」、農水省が「吸収源の機能強化」をしっかり進めます。

(事例ごとの「今後の道行き」ーのなかの森林と木材)

巨額のGX投資を実現する道筋を描いた、③節は(1)基本的考え方、(2)「 GX 経済移行債 」を活用した大胆な先行投資支援( 規制・支援一体 型投資促進策、(3)カーボンプライシングによる GX 投資先行インセンティブ、(4)新たな金融手法の活用という構成になっています。

この中に森林や木材という言葉はありませんが、基本的考え方の中に、「国 として、 産業競争力強化・経済成長及び排出削減の同時実現に向けた総合的な戦略を定め、 GX 投資が期待される主要分野において、各分野における新たな製品などの導入目標や、新たな 規制・ 制度の導入時期などを一体的 な 「 道行き 」 として示す。」とあります。

その道行が、参考資料③GX実現に向けた基本方針参考資料「今後の道行き」という22枚の資料です。その中の以下の2つの事例に森林と木材が記載されています。


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GX投資という部分を見てゆくと・・・

住宅建築物では、CO2削減といういうコンセプトの中に「非住宅中高層の建築物木材利用に必要な投資」
食料農林水産業では、構造転換投資で「航空レーーザー計測による高度森林資源情報等」、研究開発では「改質リグニンによる高機能プラスティック代替技術等」などが上がっています

山づくり、森林投資本体に関する記述はありませんね。「エリートツリーとデジタル技術に依拠した森林づくり」などは?

DX投資を実現するための、とりあえず示された道筋をしめすもので、「今後産業界や専門家のも交えて」「進捗・評価・見直しを進めてく」(③(1)基本的考え方)のだそうです。

上今後どのように検討されていくのでしょうか、期待しましょう。

(原発と森林のどちらがグリーンか)

グリーンな社会変革に向けた、巨額のGX投資の道筋の中に、「社会インフラ構築にむけた「循環資源である木材利用の拡大」」や、「自然資源のである森林の循環資源を確保するための森林の適切な管理・再造林の確保」、といった課題がどのように組み込んでいったらよいのでしょうか?

参考になるのは、エネルギー 安定 供給 の確保を大前提とした GX に向けた脱炭素 の取組 の中の「3)原子力の活用」の最後のフレーズです。

原子力の活用
 最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き 掛 けを抜本強化するため、文献調査受入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である原子力発電環境整備機構( NUMO )の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進める。
森林と木材の活用
 持続可能な木材利用と循環資源である森林の再造林整備にむけた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き 掛 けを抜本強化するため、木材利用と森林の再生に取組む自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である国土緑化推進機構(NLAPO)の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進める。

原発と森林を比べると、森林がよりクリーンであるのは間違えないので、今後の検討に期待しましょう。

フォローしてまいります。

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グリーンな社会変革GXの中で森林は・・・ー勉強部屋ニュース282編集ばなし(2023/1/15)

フロントページは、「グリーントランスフォーメーション(GX)の中の森林の将来」。「グリーンに向けた変革」というキーワードで閣議決定された重要の文書ですが「エネルギー安定供給を大前提とした」という議論のなかで、原発政策の転換が表にでています。巨額のGX投資、という日本が主導した??ようなキーワードを世界に発信していく場合、森林の話が主役(の一つ)になっていないと、おかしいのでないかなーという問題意識でした。

「・温室効果ガス削減の「見える化」、 J クレジットの活用推進・エリートツリーやデジタル技術等、森林分野のイノベーションの実装・森林資源の活用に向けた民間企業等への投資拡大」大切なキーワードならんでいますが、本当に「国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き 掛 けを抜本強化」していかないと、できないテーマですね。

年末に気候変動枠組み条約COP27,生物多様性条約COP15があってフォローしてきましたが、二つの条約の連携が大きな課題になってきそうで、森林の役割が大切になりそう。

ということで、今回その関連のトピックスが並びました。気候候変動枠組み条約COP27と森林(2)/ 生物多様性が拡大する社会は森林ガバナンスの制度とどんな関係ー30by30の実現への道筋/ 森林起点に付加価値 整備と活用で脱炭素ー日経SDGsフォーラム 特別シンポ「森林、木材の利活用で実現する脱炭素社会」/ 「次期生物多様性国家戦略」案と森林政策との関係ー意見募集

生物多様性のガバナンスという大きな課題は、森林のガバナンスが積み上げてきた蓄積が生かされるかどうも課題のような気がするので、次期生物多様性国家戦略のパブコメ頑張ります。

SDGs時代の林業の使命ー次世代の森林の在り方は?-勉強会第4回ZOOMセミナー無事終了。ゲストは旧知の太田猛彦さんでした。FSC会長なので持続可能な森林経営に貢献する森林認証のついてのテーマで・・・と始めた企画だったのですが、ゲストの思いはその先へ・・・地球環境史と人類文明の発展を比較して現代の森林管理を考える。全部内容をフォローできていないかもしれませんが、是非読んでください。

第5回は、タイトル: 動き出した日本の森林認証! その可能性と展望をSGEC/PEFCジャパンの責任者が語る、ゲスト:梶谷辰哉さん、SGEC/PEFCジャパン 専務です。森林のガバナンスを消費者とともに!!

それではよろしくお願いします

次号以降の予告、クリーンウッド法改正で木材のサプライチェ-ンはどうなる。第5回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー結果報告、脱炭素社会となると森林はどうなるー日本GDH学会大会で、2020年日本の森林吸収量について、土地は誰のもの・森林は誰のもの?ー所有権の相対化議論の行く末と森林

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com