ニュースレター No.274 2022年6月15日発行 (発行部数:1560部) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬 |
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フロントページ:クリーンウッド法の次の展開は?検討会の中間とりまとめからー勉強部屋から3つの提案(2022/6/15)
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循環資源としての木材利用拡大の方向性は?ー第15回世界林業大会持続可能な木材閣僚級会合から(2022/6/15) 世界林業大会で気になっていた木材に利用拡大の話。 前回は宣言の中に入っていなかったけど、今回はソウル宣言に木材利用拡大の話が1項目入りました。 そして、持続可能な木材に関する閣僚級会合が開催され(林野庁次長が出席左の図)、その会合での合意宣言Ministerial Call on Sustainable Woodが、4つのCongress outcomの1として公式ページに掲載されています。、 林野庁でもこの会合について解説ページを掲載しています「持続可能な木材利用」閣僚級フォーラム 閣僚宣言の林野庁訳が上記ページに掲載されているので、対訳形式で掲載します。
(「持続可能な木材」とは何?) 世界林業大会の歴史の中で、最初の木材利用促進の合意宣言が「持続可能な木材の閣僚宣言」だということは、インパクトがありますね。あまり具体的な行動提起ではないかと思いますが、「持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。」 議論の中でなにが、持続可能な木材なのですか?「持続可能な木材の定義が重要」という指摘がありました(コンゴ共和国(森林・経済省マトンゴ大臣))が、宣言の中には記載されていません。合意された4つの方策(pathways)の最初の2つ、①持続可能な木材の可能性に対する認識の向上、② 関連する相乗効果とトレードオフ、及び投資を強化する方法に係るグローバル及び地域的な政策対話の強化、 の中で、持続可能性の定義が議論されえていくのでしょう (バリューチェーンとクリーンウッド法) pathewayの3つめは、③持続可能な森林管理、効率的な木材バリューチェーン、持続可能な木材の利用に関するイノベーションを推進するための技術交流、経験の共有を促進する方法の改善 。 ビジネスの中で、川上の持続可能な森林情報を川下に伝えていく、バリューチェーンですね。 FSCとかPEFCなど第三者が管理する方法が、効率的なのか?日本のクリーンウッド法の次の段階の議論がこの辺に大切な役割があるんでないかと思います (パリ条約の「国の決定する貢献」NDC) 合意された最後の方策pathwayは④2030 年までの「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」におけ る持続可能な木材を活用した解決策の大幅な増加 全体的に皆で一緒に頑張りましょうというトーンの宣言の中で、非常に具体的な方策が示されているのが、この項目ですね。 昨年の10月に決定した、日本のNDCをもう一度読んでみました。日本のNDC(国が決定する貢献) 国連に提出する日本のNDC(国が決定する貢献)は、別紙とする。 令和 3年 10 月 22 日 地球温暖化対策推進本部決定 森林と木材に関する記載は、以下の通り 森林木材に関する具体的数値:我が国の温室効果ガス削減目標(基準となる2013年の1408百万トンCO2から2013年760同まで減らす中で、吸収量が46同(7%)を負担 その他森林木材に関する記載事項:下表の通り
この部分の記述を拡大します!という合意です。 木材利用のJクレジット方法論など、やることはたくさんありそうですね。 chikyu1-42-2<WFCmokuzai> ■いいねボタン |
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林産物貿易とガットー30年前の連載記事(2022/6/15)
今から30年前、1992年7月から9月にかけて、日刊木材新聞に「林産物貿易とガット」という連載記事が15回に分けて掲載されました。 筆者は林野庁木材流通課課長補佐藤原敬。 最近、この内容を確認する必要があり、国立国会図書館にいってコピーをしてきました(1958年11月からの日刊木材紙が冊子になって所蔵されている)。 日本の木材関税がガット違反だといってカナダが訴追したSPF関税紛争、米国が日本たたきをした新通商法301条の3つの対象の一つに日本の木材輸入政策を選定して始まった日米林産物貿易協議・・・などなど、昭和から平成になる1980年代おわりごろのトピックス。 業界紙の連載記事としては、それなりにインパクトがあったのでしょうが、「林産物貿易とガット」30年たった今なんなのかと思って読み直していました。 (ガットって?勉強部屋との関係は?) 「世界経済のブロック化が進み各国が保護主義的貿易政策を設けたことが、第二次世界大戦の一因」として1948年に国際協定が合意されたガットGATT(General agreement on tariffs and trade関税と貿易に関する一般協定)」(外務省:ガットからWTOへから) その後、「経済のグローバル化が環境破壊の原因だ!」というロジックに対してどのように向き合うのか、というのが、私(藤原)自身の問題意識になって、このサイトの形成の背景になっています。「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」(2002/2)) 考えてみると、このサイトができる、10年前に、グローバルな経済のフレームワークに関する業務をしたり、勉強したりしたことが、このサイトのベースになっています (環境と貿易の関係ーGATTから学ぶべきこと) 思い出深いWTOの報告書の一節を紹介します。 「簡単にいえば(環境問題にとって)貿易や経済成長は問題ではない。より統合された経済の中で環境政策をどう立案するかという問題である。今後の歩むべき道は国際的な環境協力のメカニズムと制度を強化してゆくことである。ちょうど50年前に貿易に関する協力が利益になると決定したように。」(1999)WTO貿易と環境に関する特別報告要旨(藤原訳) "In short, trade is really not the issue, nor is economic growth. The issue is how to reinvent environmental polices in an ever more integrated world economy so as to ensure that we live within ecological limits. The way forward, it would seem to us, is to strengthen the mechanisms and institutions for multilateral environmental cooperation, just like countries 50 years ago decided that it was to their benefit to cooperate on trade matters."WTO (1999)“TRADE AND ENVIRONMENT”Special Studies 4 ごめんなさい、寄り道しました。業界紙の連載記事にそんなことが直接書いてあるわけでないんですが・・・ 日刊木材新聞社のご了解をえて、まず連載の冒頭部分を紹介します (林産物貿易とガット連載にあたって)
日刊木材新聞社に了解をえて、「林産物貿易とガット」コピーを共有します もしもよろしかったらご覧ください boueki1-15(gattnikkan) ■いいねボタン |
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「厄介な問題」を正面から―木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について(2022/6/15) 「NGOの発出する森林由来のバイオマスに関するネガティブなな情報発信がステップアップしている」としてこのサイトでも心配してきましたが(木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている!?ー課題と期待(2022/4/26))、木質バイオマスエネルギー協会JWBAのサイトに、「木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について」(JWBA加藤鐡夫副会長)(以下「懐疑論について」といいます)という意見が掲載されました。 私も、作成過程に若干かかわりました。 懐疑論をしっかり議論ていく場合(厄介な問題を単純化するための)の重要な論点が提示されています。関心のある方はどうぞ。 私も読んでみました。幾つかの論点の中で、一番重要だと思ったのは、議論の「時間軸」だと思います。関連して補足意見を述べます。 ((石炭より悪い輸入木質バイオマス)) 「懐疑論について」の冒頭は「最近、木質バイオマスエネルギー利用のGHG削減効果について問われる機会が多くなっています。その中でティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月)のタイトルが「石炭より悪い輸入木質バイオマス」とされていることに驚かされました・・・」で始まります。 これも読んでみました(以下サ―チェンジャー記事といいます)。(上記ページに、「6月以降本文が掲載される」とされていますが、15日現在まだですが、サ―チェンジャー記事是非お読みください) 章題にそってサ―チェンジャー記事の議論を整理してみますね
(サ―チェンジャー記事の議論に対応した「懐疑論について」の議論) さて、それでは、「懐疑論について」、の内容はどうなっているでしょうか? 結論部分は「私自身は、その意味で木質バイオマスエネルギー利用の推進は欠かせないと思っています」、なんで、結論部分は正反対ですね。 それに至る過程で、①②③を議論しています(④はふれていないので、多分賛成なんでしょう) ①②について「時間軸」という視点での批判が重要な論点だと思います(③についての「懐疑論について」の議論は、サ―チェンジャー記事の議論をしっかり批判できてないかな) (なんで、気候変動問題が起きたのかー基本が忘れられる2050年問題のリスク) ①も②も正しいが、だからといって⑤にはならない。その視点で「懐疑論について」が指摘するのは「時間軸」です。見ていきましょう。
2050年問題が大きな課題になり、どうやって達成するか大変困難な議論をしていくと、2050年問題は「緊急避難問題」(問題の本質は別にして、なんとか達成しないと大問題になるから回避手段を!)という議論になります。。 とりあえずなんとしてでも2050年問題をクリアするには、木質バイオマスより石炭を燃やした方が確実、なんでしょう。 「化石資源を社会を循環社会にできるだけ早く転換を」これが重要な視点です。 (サーチェンジャー記事の大切な視点) サ―チェンジャー記事のタイトルなどが、問題点を厄介な問題に誘導する可能性があるので注意!ということですね。 サ―チェンジャー記事のそれぞれの章には、ライフサイクル分析の重要性、どのように回復させるのか、輸入材と国産材でリスクがどう違うのか、などにつながる、いままで、十分い議論されていなかった議論がのっています。しっかり議論していかなければなりません。厄介な問題ではなく 二つの文章をもう一度よんで見てくださいね 「木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について」(JWBA加藤鐡夫副会長) ティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月) energy1-42<WBAkaigiron> いいねボタン |
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Jクレジット方法論拡大の検討方向ーJ-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要についての意見の募集(2022/6/15)
温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認定する、Jクレジット制度について、森林分野のクレジットが伸び悩み、その拡大をはかるため、政府内部でJ-クレジット森林小委員会が設置され、検討が進められてきましたが、その結果を踏まえて、意見募集がかかっていました(6月15日締切) J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要についての意見の募集について このサイトとしても、森林管理の環境的側面が売買されるJクレジットは重要な課題。最近の動きも追いかけてきました。 森林由来クレジットの創出拡大についてー木材利用のクレジットは?(2022/1/8) ということで、今回の意見募集の機会に意見を提出しました。紹介します。 (意見募集の対象文献) 今回の、意見募集は、方法論や実施規定が具体的にこうなります、という案に対する意見募集でなく、「J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要 」(以下「概要」という)という、検討方向を示す文書です。「概要」の概要を以下に示します。
新しく方法論が、一つ増え、いままでの方法論の条件が緩和!なんですが、もっと緩和できないのかというあたりが、わからないですね。 (意見提出) 意見を提出しようと思って、E-GOVポータルサイトからやってみましたが、機種依存文字はおくれません!なにが機種依存なのかいろいろアプローチしましたが、だめなので、郵送しました。 コピーを置いておきます→J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要パブコメ kokunai4-58<JcreFO003> いいねボタン |
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環境的視点から見た森林行政・・・ー勉強部屋ニュース274編集ばなし(2022/6/15)
①クリーンウッド法の改訂に向けての検討会中間報告と②Jクレジットの制度見直しに関するパブリックコメント。少しステージが違いますが、林野庁の施策を環境的な視点から見た重要な政策の方向に対する議論が並びました。 後者の意見募集の対象となる文書は、行政当局としても「Jクレジットの拡大を図りたい」、という気持ちが表れた文章でわかりやすかったです。応援したい” それに対して前者は、業界と市民などいろんな関係者の意見調整を行政がする立場なんで、「こんな方向にもっていきたい」という気持ちが少しわかりづらいです。世界林業会議でも持続可能な木材利用が大きな議論の柱になったので、みなが注目している法律だと思います。 勉強部屋の3つの提案、是非、議論のたたき台になればありがたいです。 6月31日総会を開催します。会員には別途ご案内します。ご関心のあるかたはこちらから入会ご検討下さい。 次号以降の予告、岸田政権の新資本主義と森林のガバナンス、カーボンニュートラルな社会と森林や木材の役割ー地球環境問題へ市民のできることは?もりや市民大学から、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容 konosaito<hensyukouki> いいねボタン |
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