ニュースレター No.274 2022年6月15発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:クリーンウッド法の次の展開は?検討会の中間とりまとめからー勉強部屋から3つの提案(2022/6/15)
2.  循環資源としての木材利用拡大の方向性は?ー第15回世界林業大会から(2022/6/15
3.  林産物貿易とガットー30年前の連載記事(2022/6/15)
4. 「厄介な問題」を正面から―木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について(2022/6/15)
5. Jクレジット方法論拡大の検討方向ーJ-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要についての意見の募集(2022/6/15)
6. 環境的視点から見た森林行政・・・ー勉強部屋ニュース274編集ばなし(2022/6/15)

フロントページ:クリーンウッド法の次の展開は?検討会の中間とりまとめからー勉強部屋から3つの提案(2022/6/15)

林野庁の「合法伐採木材等の流通及び利用に係る検討会」というページがあり、一連の会議の記録が掲載されていますが、その最後の欄に中間とりまとめが掲載されました!

長年森林でそだった、木材が街に出てきて、化石資源でできた街並みを変えて、カーボンストックへ!カーボンゼロの社会とつくる重要な循環資源の弱点である、違法伐採問題。これを、消費者と一緒になって解決しようという、クリーンウッドのシステムを、このように発展させるのか!!

個人的にも、色々かかわってきたこともあり、勉強部屋でも、力をこめて、フォローしてきました

3月8日に一連の会議の最終回と思われる第8回会議が行われて、その結果に基づいて中間とりまとめでした。

内容紹介とともに、課題を克服するための3つの提案をしますー

(合法伐採木材等の流通及び利用に係る検討会」中間とりまとめ)

「合法伐採木材等の流通及び利用に係る検討会」中間とりまとめ
「合法伐採木材等の流通及び利用に係る検討会」中間とりまとめ(概要)
検討会における議論の整理

という、三つの情報が掲載されています。コメントなしのクールな情報掲載。

(概要版の概要)

概要版にしたがって、内容を紹介しますね。

1   これまでのCW法の意義・評価 (1)合法性の確認等に取り組む対象範囲拡大 建設業界等も含めて、木材等の合法性の確認の機会・機運が以前に比べて拡大
(2)合法性が確認された木材の取扱いが拡大 第一種登録木材関連事業者によって合法性が確認された木材の総需要量に対する割合が増加(H30 年27% → R2年40%)
(3)制度に対する関係者の理解、登録制度の活用状況等 登録木材関連事業者は577 件(R4年1月)と増加傾向にあるが増加率は鈍化(政策目標の指数R2度の目標は13,000件達成度合い4%
2   最近の国内外における状況変化 (1)違法伐採問題に対する世界的な動き COP26 やG7 関連会合でも森林減少や違法伐採問題の話題に。EU、豪州、中国などで違法伐採対策に係る法制度の制定や見直しの動き
(2)持続可能性やSDGs 等への関心の高まり 国際的にも合法性だけでなく持続可能性やSDGs 等の視点にも関心の高まり
(3)国内における潜在的なリスクへの対応の必要性 森林が主伐期を迎える中、無断伐採等に対するリスクが潜在
3     現行のCW 法の仕組みに関する課題と今後の方向性 ①制度への理解、木材関連事業者の参画が不十分 <制度への参加者の拡大>
・普及活動等を通じ、制度に参画する木材関連事業者を拡大すべき。
・第一種木材関連事業者に対する合法性確認の義務化も選択肢。
・消費者に対する普及は、「木づかい運動」等との連携も効果的。
②流通段階やリスクに応じたメリハリのある対応が必要 <国内市場における木材流通の最初の段階での対応>
・国内市場における木材流通の最初の段階での対応が重要。
・輸入木材等については、税関との連携なども検討すべき。
<リスクを踏まえたメリハリのある対応>
・輸入木材等については、違法伐採に係るリスク度合いを考慮した対応が重要。
・国際機関やNGO 等の情報も活用し、政府が伐採国等に関する情報を収集し、木材関連事業者に分かりやすく提供すべき。
・国産材については、素材生産事業者の関与も検討すべき。
<流通のその他の段階(川中・川下)での対応>
・川中・川下の木材関連事業者の役割は、合法性の確認情報の連鎖。
・川中・川下の木材関連事業者や消費者から、川上に合法性が確認された木材等をしっかり求めていくことが重要。
③事業者による合法性確認に関するルールが不明瞭 <合法性確認の手法の明確化>
・木材関連事業者が合法性の確認を行う際の内容やルール、手法について、政府が指針等を示すべき。
<合法性確認木材等とそれ以外の木材等の取扱い>
・合法性が確認された木材等を選択できる環境を整備する必要。
・最終的には全て合法性が確認された木材等とすべきであるが、当面は分別管理を適切に行っていく必要。
④業界団体やNGO 等との連携が必要 <CW 法の執行等の仕組み>
・政府が合法性確認の実施状況を把握し、必要に応じて適切な措置をとる必要。
・業界団体、NGO、有識者などとの連携が重要であり、それぞれの役割を明確にして取り組んでいくべき。
⑤木材関連事業者の負担への配慮が必要 <類似制度との整理>
・グリーン購入法及び林野庁ガイドライン等との整理を図る必要。
<デジタル技術の活用等>
・木材関連事業者の負担軽減のため、ペーパーレス化を含むデジタル技術の活用等に向けた行政による支援を検討すべき。

(何が課題か?登録が目標の5パーセントしか進まない)

繰り返しますが、長年森林でそだった、木材が街に出てきて、化石資源でできた街並みを変えて、カーボンストックへ!カーボンゼロの社会とつくる重要な循環資源の弱点である、違法伐採問題。これを、消費者と一緒になって解決しようという、クリーンウッドのシステムを、このように発展させるのか!!

こんな重要な課題はないように思いうのですが、サプライチェーンに過度の負担はかけられない、という短期的なリスクに対する配慮があって、少し方向性がしっかり看取りにくいですが・・・

市民としては、次世代をみつめて、しっかり読み取ると・・・

森林林業基本計画の測定指標は令和2年で13000社登録となっていたんだそうですが、それが、555しか登録が伸びない?政策評価のランクは目標達成率50パーセント以下がCランクですが、5%?!ありえない!!

①メリットが感じられない、②システムがわかりづらい?

そこで、「こうしたら!」という案を提示しますね。例えば・・・

(提案1 登録制度を2段階にして分かりやすいシステムに!!)

登録制度を2つ分けて、第一種登録は・・・クリーンウッド以外は使いません(と、取締役会で決議して)対外的に表明

ESG投資などを視野に、環境パフォーマンスデータを開示!「わが社は、循環資源の次世代資源である木材を積極的に使っていきますが、当社でつかう、木材はクリーンウッド以外は使いません!!クリーンウッド法の登録をうけて、第三者がしっかり管理します!!」
たとえば、民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェンジ協議会に参加するような、大企業は当然ですね

そうして、第二種の登録は、現在林野庁のガイドラインにもとづいて、合法木材のサプライチェーンをつないでいる、合法木材供給事業者のステップアップ。

業界団体が認定している供給事業者ですが、勿論業界団体が登録手続きにしっかり管理したまま、もうすこし管理体制をしっかりして、登録事業者に!!
登録制度と合法木材ガイドラインが併存し分かりづらい!という意見はこれで解消

以上が登録制度をわかりやすくする一例です

(提案2 木材利用促進施策と連携して登録のメリットを明確に)

やっぱり、川下側のみんなが、クリーンウッドを要求するように、ならなければだめですよね。

そのためには、上記のように大企業のゼネコンなどはクリーンウッド以外は使わない宣言をするとともに・・・

昨年できた、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」。これに基づき、木材利用促進本部が作成した、「建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」ここに、いろんなサポートの方法が記載されています。

計画にもとづいて、協定をむすんだり、支援をうけようとするものは、登録事業者でなければだめ!(ですよね)

計画の中に、(3)木材の供給及び利用と森林の適正な整備の両立、という節があり、「建築物を整備する者は、その整備する建築物において木材を利用するに当たっては、クリーンウッド法の趣旨を踏まえるとともに「グリーン購入法」第2条第1項に規定する環境物品等に該当するものを選択するよう努めるものとする。」とありますが・・・努力義務ではだめ!!

(提案3 中小企業への支援ー業界団体の役割)

皆の心配は、木材事業者に対する、過剰な負担かがからないように!!クリーンウッドが目指す新しい社会(という長期ビジョンに対する)にいたるまえの、企業に対する登録手続きの負担(短期的なリスク)。

特に木材業のように企業規模が小さな事業者が主としてサプライチェーンを構成している場合、注意点です。

そこで、業界団体を通じた支援が必要になってきます。なんといっても合法木材供給事業者の認定制度を15千社まで引き上げてきたポイントは業界団体による認定制度!

このメリットを新しいクリーンウッド法がしっかり自覚して、これを発展させる方法を是非採用してください

以上でーす

これから、政策当局はパブコメなどしながら、法律改正に向かっていくんだと思いますが、頑張りましょう

boueki4-82<Clcyukan>

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循環資源としての木材利用拡大の方向性は?ー第15回世界林業大会持続可能な木材閣僚級会合から(2022/6/15)

世界林業大会で気になっていた木材に利用拡大の話。

前回は宣言の中に入っていなかったけど、今回はソウル宣言に木材利用拡大の話が1項目入りました。

そして、持続可能な木材に関する閣僚級会合が開催され(林野庁次長が出席左の図)、その会合での合意宣言Ministerial Call on Sustainable Woodが、4つのCongress outcomの1として公式ページに掲載されています。、

林野庁でもこの会合について解説ページを掲載しています「持続可能な木材利用」閣僚級フォーラム

閣僚宣言の林野庁訳が上記ページに掲載されているので、対訳形式で掲載します。

 Ministerial Call on Sustainable Wood 「持続可能な木材利用に関する閣僚宣言」 林野庁仮訳
Sustainable production and consumption of wood promotes forest conservation, enhancesthe value of forests and mitigates climate change. Building and living with wood responds to an increased demand for renewable materials and provides impetus for green recovery. Sustainable wood offers solutions across multiple value chains, including construction, furniture, packaging, renewable energy, biomaterials for clothing and biochemicals.    持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。木を用い た建築や木と共に生活することは、再生可能な材料への需要の高まりに対応し、グリー ンリカバリーの推進力となります。 持続可能な木材は、建設、包装、再生可能エネルギー、衣類や生化学物のバイオ素材 などを含む、多様なバリューチェーンにわたる解決策を提供します。
 Scaling-up bio-economies by using sustainable wood replacing carbon-intensive materials has high potential to become a cost-effective and innovative contribution at scale to achieve carbon neutrality and build more resilient economies.  炭素集約型材料の代わりに持続可能な木材を利用することによってバイオ・エコノミ ーを拡大させることは、カーボンニュートラルを達成し、より強靭な経済を構築するための、費用対効果が高く、革新的な貢献の拡大となる高い可能性を有しています。
 Sustainable wood-based solutions build synergies with broader aims for economic recovery, growth of rural areas and circular economy innovation. Sustainable wood-based solutions need to build on sustainable forest management and address risks of trade-offs with the multiple other roles of forests, such as carbon storage in forests, loss of biodiversity and of other essential forest services, including through enhanced management, restoration and afforestation efforts.  持続可能な木材を活用した解決策(sustainable wood-based solutions)は、経済回復、農村地域の成長、循環型経済への革新といった幅広い目的との相乗効果を生み出し ます。持続可能な木材を活用した解決策は、持続可能な森林管理に基づくと共に、森林における炭素貯蔵、生物多様性の喪失、その他の重要な森林サービスなど、森林の他の 多様な役割とのトレードオフのリスクに対処し、森林管理、劣化した森林の回復、造林 の取組を強化する必要があります。
 Building on our national policy experiences and commitments to use wood resources sustainably, and conscious of the need for cost-effective and equitable solutions at scale for value-added and carbon-neutral products, we have come together in the Ministerial Forum on Sustainable Wood to call for scaling-up sustainable wood-based pathways:  木材資源を持続可能な方法で使用するという我々の国家的な政策の経験と責務に基づ き、付加価値のあるカーボンニュートラルな製品には、費用対効果が高く公平な解決策 の拡大が必要であることを認識し、持続可能な木材を活用した(以下のような)方策(sustainable woodbased pathways)の拡大を呼びかけるために、我々は、持続可能な木材利用に関する閣僚級フォーラムに集まりました。
− to address the lack of awareness of their potential;
− to enhance global and regional policy dialogues on pathways and related synergies and trade-offs and ways to strengthen investments;
− to improve modalities to promote technical exchange, sharing of experiences and learning in order to drive innovations, from sustainable forest management and efficient wood value chains to sustainable wood use;
− to significantly increase the use of sustainable wood-based solutions within Nationally Determined Contributions by 2030.
① 持続可能な木材の可能性に対する認識の向上
②関連する相乗効果とトレードオフ、及び投資を強化する方法に係るグローバル及び地域的な政策対話の強化
③持続可能な森林管理、効率的な木材バリューチェーン、持続可能な木材の利用に関するイノベーションを推進するための技術交流、経験の共有を促進する方法の改善
④2030 年までの「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」におけ る持続可能な木材を活用した解決策の大幅な増加
 We also commit to join forces together to promote enhanced policy and technical dialogue and exchange among producer and consumer countries and key stakeholders to develop the necessary momentum and actions at scale, and invite the Food and Agriculture Organization of the United Nations and members of the Collaborative Partnership of Forests (CPF) to support our efforts.  また、我々は、持続可能な木材利用の機運を高め、行動を拡大するための、政策の強 化と技術的対話、国及び主要な利害関係者間の交流等を推進するために共に力を合わせ ると共に、国連食糧農業機関(FAO)と森林に関する協調パートナーシップ(CPF)のメ ンバーによる支援を歓迎します。
 We are convinced that mobilizing the full potential of sustainable wood will enable us to build more carbonneutral and resilient economies and progress towards more sustainable societies.  我々は、持続可能な木材の可能性を最大限に追求することで、よりカーボンニュート ラルで強靭な経済を構築し、より持続可能な社会に向けて前進できると確信していま す。
 The World Forestry Congress Ministerial Call on Sustainable Wood was initiated by the following country representatives on 3 May 2022, at the XV World Forestry Congress:  持続可能な木材利用に関する世界林業会議閣僚宣言は、2022 年5月3日の第 15 回世界 林業会議において、以下の国の代表者によって発議されました。
 Hon. Choi Byeong-Am, Minister of Korea Forest Service, Republic of Korea
- Hon. Jules Doret Ndongo, Minister of Forestry and Wildlife, Republic of Cameroon
- Hon. Orita Hiroshi, Deputy Director General of Japan Forestry Agency, Japan
- Hon. Maria Patek, Deputy Minister of Agriculture, Regions and Tourism, Republic of Austria
- Hon. Hilario López Córdova, Executive Director of the National Forest and Wildlife Service, Republic of Peru on behalf of Hon. Óscar Zea Choquechambi, Minister of Agricultural Development and Irrigation, Republic of Peru
- Hon. Lee White, Minister of Water, Forest, the Sea and Environment, Gabonese Republic
大韓民国山林庁長官 チェ・ビョンアム
カメルーン森林・野生動物省大臣 ジュレス・ドレット・ンドンゴ
日本国林野庁次長 織田央
オーストリア農業・地域・観光省副大臣 マリア・パテック
ペルー農業開発灌漑省大臣代理 森林・野生動物庁長官 ロペス・コルドバ
ガボン水・森林・海洋環境省大臣 リー・ホワイト

(「持続可能な木材」とは何?)

世界林業大会の歴史の中で、最初の木材利用促進の合意宣言が「持続可能な木材の閣僚宣言」だということは、インパクトがありますね。あまり具体的な行動提起ではないかと思いますが、「持続可能な木材生産と利用は、森林の価値を高め、気候変動を緩和します。」

議論の中でなにが、持続可能な木材なのですか?「持続可能な木材の定義が重要」という指摘がありました(コンゴ共和国(森林・経済省マトンゴ大臣))が、宣言の中には記載されていません。合意された4つの方策(pathways)の最初の2つ、①持続可能な木材の可能性に対する認識の向上、② 関連する相乗効果とトレードオフ、及び投資を強化する方法に係るグローバル及び地域的な政策対話の強化、 の中で、持続可能性の定義が議論されえていくのでしょう

(バリューチェーンとクリーンウッド法)

pathewayの3つめは、③持続可能な森林管理、効率的な木材バリューチェーン、持続可能な木材の利用に関するイノベーションを推進するための技術交流、経験の共有を促進する方法の改善

ビジネスの中で、川上の持続可能な森林情報を川下に伝えていく、バリューチェーンですね。

FSCとかPEFCなど第三者が管理する方法が、効率的なのか?日本のクリーンウッド法の次の段階の議論がこの辺に大切な役割があるんでないかと思います

(パリ条約の「国の決定する貢献」NDC)

合意された最後の方策pathwayは④2030 年までの「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」におけ る持続可能な木材を活用した解決策の大幅な増加

全体的に皆で一緒に頑張りましょうというトーンの宣言の中で、非常に具体的な方策が示されているのが、この項目ですね。

昨年の10月に決定した、日本のNDCをもう一度読んでみました。日本のNDC(国が決定する貢献) 国連に提出する日本のNDC(国が決定する貢献)は、別紙とする。 令和 3年 10 月 22 日 地球温暖化対策推進本部決定

森林と木材に関する記載は、以下の通り

森林木材に関する具体的数値:我が国の温室効果ガス削減目標(基準となる2013年の1408百万トンCO2から2013年760同まで減らす中で、吸収量が46同(7%)を負担

その他森林木材に関する記載事項:下表の通り

 様式  日本のNDC記載事項
 決定1/CP.21 パラグラフ28 で言及される、国が決定する貢献の明確性、透明性及び理解のための情報(決定4/CMA1 及び付属文書1)  
 5.人為起源の温室効果ガス排出量、及び、該当する場合は吸収量の算定及び計上のためのものを含む、前提条件及び方法論的アプローチ  
 (a) 決定1/CP.21 パラグラフ31 及びCMA が採択した計上の指針と整合した締約国の国が決定する貢献に対応する人為起源の温室効果ガス排出量及び吸収量の計上に用いる前提条件及び方法論的アプローチ  森林等の吸収源対策による吸収量は、京都議定書の計上方法等に基づき算定する。
なお、算定方法は、今後の算定ルールに関する国際交渉等により変更の可能性がある。
 (e)(ii)
伐採木材製品からの排出・吸収量を計上するために用いられたアプローチ
 我が国は、伐採木材製品による炭素蓄積変化量に起因する排出量及び吸収量を生産法により算定している。
 (e)(iii)
森林における齢級構成の効果に対処するために用いられるアプローチ
 我が国では、森林の吸収量を、森林の齢級構成による炭素蓄積量の違い等を考慮して算定している。

この部分の記述を拡大します!という合意です。

木材利用のJクレジット方法論など、やることはたくさんありそうですね。

chikyu1-42-2<WFCmokuzai>

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 林産物貿易とガットー30年前の連載記事(2022/6/15)  

今から30年前、1992年7月から9月にかけて、日刊木材新聞に「林産物貿易とガット」という連載記事が15回に分けて掲載されました。

筆者は林野庁木材流通課課長補佐藤原敬。

最近、この内容を確認する必要があり、国立国会図書館にいってコピーをしてきました(1958年11月からの日刊木材紙が冊子になって所蔵されている)。

日本の木材関税がガット違反だといってカナダが訴追したSPF関税紛争、米国が日本たたきをした新通商法301条の3つの対象の一つに日本の木材輸入政策を選定して始まった日米林産物貿易協議・・・などなど、昭和から平成になる1980年代おわりごろのトピックス。

業界紙の連載記事としては、それなりにインパクトがあったのでしょうが、「林産物貿易とガット」30年たった今なんなのかと思って読み直していました。

(ガットって?勉強部屋との関係は?)

「世界経済のブロック化が進み各国が保護主義的貿易政策を設けたことが、第二次世界大戦の一因」として1948年に国際協定が合意されたガットGATT(General agreement on tariffs and trade関税と貿易に関する一般協定)」(外務省:ガットからWTOへから)

その後、「経済のグローバル化が環境破壊の原因だ!」というロジックに対してどのように向き合うのか、というのが、私(藤原)自身の問題意識になって、このサイトの形成の背景になっています。「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」(2002/2))

考えてみると、このサイトができる、10年前に、グローバルな経済のフレームワークに関する業務をしたり、勉強したりしたことが、このサイトのベースになっています

(環境と貿易の関係ーGATTから学ぶべきこと)

思い出深いWTOの報告書の一節を紹介します。

「簡単にいえば(環境問題にとって)貿易や経済成長は問題ではない。より統合された経済の中で環境政策をどう立案するかという問題である。今後の歩むべき道は国際的な環境協力のメカニズムと制度を強化してゆくことである。ちょうど50年前に貿易に関する協力が利益になると決定したように。」(1999)WTO貿易と環境に関する特別報告要旨(藤原訳)

"In short, trade is really not the issue, nor is economic growth. The issue is how to reinvent environmental polices in an ever more integrated world economy so as to ensure that we live within ecological limits. The way forward, it would seem to us, is to strengthen the mechanisms and institutions for multilateral environmental cooperation, just like countries 50 years ago decided that it was to their benefit to cooperate on trade matters."WTO (1999)“TRADE AND ENVIRONMENT”Special Studies 4  

ごめんなさい、寄り道しました。業界紙の連載記事にそんなことが直接書いてあるわけでないんですが・・・

日刊木材新聞社のご了解をえて、まず連載の冒頭部分を紹介します

(林産物貿易とガット連載にあたって)

連載に当たって

先般、パリにあるヨーロッパ合板協会の事務局で専務と話をしていると、先方が、昨年のインドネシア合板の対日輸出量をそらんじているのでびっくりしたことがあった。わが国は、世界で最大の木材輸入国であり、その動きが、輸入相手国のみならず地球の裏側の第三国の木材の輸入、林産業界に影響を及ぼしているという実感を持ったものである。そして、このように国際化した貿易の世界を律する決まりが「ガット」=「関税と貿易に関する一般協定」である。

近年林産物貿易事案はSPF関税紛争、日米林産物協議、ウルグアイラウンド、と二国間の紛争も、多国間の協議も直接間接にガットという大きな枠組みと何らかの関係をもってきているのも、そのような国際化した状況の中でのものだろう。ウルグアイラウンドなどの新聞報道によって林産業界・関係行政関係者にとってガットに対する関心が高まっているため、国際法というとりつきにくい世界をできるだけ解りやすく、近年の具体的な事案に即して解説を試みたい。

執筆予定は次のとおりである。
(1)SPF関税紛争とガット
ーーーガットの紛争処理手続きと関税
(2)日米林産物協議とガット
ーーー技術基準、関税分類
(3)丸太輸出規制・熱帯木材の不使用を巡って
ーーー貿易の数量制限とガット
(4)米加針葉樹製材紛争とガット
ーーー相殺関税、アンチダンピング関税
(5)ウルグアイラウンドと我が国の林産物貿易
 

日刊木材新聞社に了解をえて、「林産物貿易とガット」コピーを共有します

もしもよろしかったらご覧ください

boueki1-15(gattnikkan)

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「厄介な問題」を正面から―木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について(2022/6/15)

「NGOの発出する森林由来のバイオマスに関するネガティブなな情報発信がステップアップしている」としてこのサイトでも心配してきましたが(木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている!?ー課題と期待(2022/4/26))、木質バイオマスエネルギー協会JWBAのサイトに、木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について」(JWBA加藤鐡夫副会長)(以下「懐疑論について」といいます)という意見が掲載されました。

私も、作成過程に若干かかわりました。 懐疑論をしっかり議論ていく場合(厄介な問題を単純化するための)の重要な論点が提示されています。関心のある方はどうぞ。

私も読んでみました。幾つかの論点の中で、一番重要だと思ったのは、議論の「時間軸」だと思います。関連して補足意見を述べます。

((石炭より悪い輸入木質バイオマス))

「懐疑論について」の冒頭は「最近、木質バイオマスエネルギー利用のGHG削減効果について問われる機会が多くなっています。その中でティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月)のタイトルが「石炭より悪い輸入木質バイオマス」とされていることに驚かされました・・・」で始まります。

これも読んでみました(以下サ―チェンジャー記事といいます)。(上記ページに、「6月以降本文が掲載される」とされていますが、15日現在まだですが、サ―チェンジャー記事是非お読みください)

章題にそってサ―チェンジャー記事の議論を整理してみますね
①化石燃料より多いCO2の排出量(生産(樹木伐採)、加工(ペレット化)、燃焼の三つの段階でを合わせると、化石燃料の約3倍のCO2を排出する)
②伐採による増える「炭素負債」(伐採後再生されればCO2は吸収されるが、時間がかかり大気のCO2濃度は(化石資源を燃焼した時より)高まり温暖化は加速、時間がない)
③森林の拡大は伐採を正当化しない(国や州の単位で森林が増えていればいいだろうという考えもまちがっている。森林を伐採しなければ、もっと増える)
④IPCCガイドラインの誤った解釈(IPCC国別報告ではエネルギーセクターで化石燃料のCO2だけカウントすることになっているので木質バイオマスのCO2は無視してよいと誤解されているが、伐採した木材はエネルギーセクターでなく「土地利用の変化」でカウントされている)
→以上により
⑤日本政府に求めること(木を燃やすことに対して助成金を出さないこと。正しいLCAにより木の燃焼がGHGの排出を増やすという結論が得られれば、事業者は燃やすことをやめるはず)

(サ―チェンジャー記事の議論に対応した「懐疑論について」の議論)

さて、それでは、「懐疑論について」、の内容はどうなっているでしょうか?

結論部分は私自身は、その意味で木質バイオマスエネルギー利用の推進は欠かせないと思っています、なんで、結論部分は正反対ですね。

それに至る過程で、①②③を議論しています(④はふれていないので、多分賛成なんでしょう)

①②について「時間軸」という視点での批判が重要な論点だと思います(③についての「懐疑論について」の議論は、サ―チェンジャー記事の議論をしっかり批判できてないかな)

(なんで、気候変動問題が起きたのかー基本が忘れられる2050年問題のリスク)

①も②も正しいが、だからといって⑤にはならない。その視点で「懐疑論について」が指摘するのは「時間軸」です。見ていきましょう。

「気候変動問題の原因は、産業革命以来の億年以上前に地下深く貯蔵された炭素を掘り起こし、その結果が大気のCO2濃度を上昇させているということ。産業革命以前の人間活動は、基本的には地上部の資源(地下を含むとしても数m以内程度)を利用して行われてきた。」

「石炭より悪い輸入木質バイオマス」という形で、どのように循環社会を構築していくのか、という基本論が忘れられようとしている一因は、「2050年においてCO2排出量を実質ゼロにしようとしていること」 

2050年問題が大きな課題になり、どうやって達成するか大変困難な議論をしていくと、2050年問題は「緊急避難問題」(問題の本質は別にして、なんとか達成しないと大問題になるから回避手段を!)という議論になります。。

とりあえずなんとしてでも2050年問題をクリアするには、木質バイオマスより石炭を燃やした方が確実、なんでしょう。
時間軸をわすれると、こんな議論に巻き込まれます。

「化石資源を社会を循環社会にできるだけ早く転換を」これが重要な視点です。

(サーチェンジャー記事の大切な視点)

サ―チェンジャー記事のタイトルなどが、問題点を厄介な問題に誘導する可能性があるので注意!ということですね。

サ―チェンジャー記事のそれぞれの章には、ライフサイクル分析の重要性、どのように回復させるのか、輸入材と国産材でリスクがどう違うのか、などにつながる、いままで、十分い議論されていなかった議論がのっています。しっかり議論していかなければなりません。厄介な問題ではなく

二つの文章をもう一度よんで見てくださいね

木質バイオマスエネルギー利用に関する懐疑論について」(JWBA加藤鐡夫副会長)

ティモシー・D・サーチンジャー氏(プリンストン大学)が「グローバルネット」誌で公表された文章(2022年3月)

energy1-42<WBAkaigiron>

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 Jクレジット方法論拡大の検討方向ーJ-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要についての意見の募集(2022/6/15)

温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認定する、Jクレジット制度について、森林分野のクレジットが伸び悩み、その拡大をはかるため、政府内部でJ-クレジット森林小委員会が設置され、検討が進められてきましたが、その結果を踏まえて、意見募集がかかっていました(6月15日締切)

J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要についての意見の募集について

このサイトとしても、森林管理の環境的側面が売買されるJクレジットは重要な課題。最近の動きも追いかけてきました。

森林由来クレジットの創出拡大についてー木材利用のクレジットは?(2022/1/8)
山と山主をツナグ 山村資源価値化プラットフォーム「木繋」ー日経ソーシャルビジネスコンテスト受賞(2022/3/15)(2022/4/4改訂)

ということで、今回の意見募集の機会に意見を提出しました。紹介します。

(意見募集の対象文献)

今回の、意見募集は、方法論や実施規定が具体的にこうなります、という案に対する意見募集でなく、「J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要 」(以下「概要」という)という、検討方向を示す文書です。「概要」の概要を以下に示します。

 セッション 見直しの内容 行政の課題認識  コメントの方向性 
 (1) 森林管理プロジェクト全般に係る見直し
   ①認証対象期間の延長  森林管理プロジェクトの認証対象期間が8年であるが、16年に延長する  森林管理自体が長期的な視野で実施されるものであり、長期的な取り組みを支援すべき  賛成。もっと長期にできないか?{概要」には8年で短い理由は書いてあるが、なんで16年までなのかなにも、書いていません、理由を多くの人にしっかり共有してください。また、決定過程で現場の方の意見をよく聞いてください
 (2) FO-001(森林経営活動)方法論の見直し
   ①追加性要件  プロジェクト認定要件に「経済的障壁がある」(儲からない事業である)ことを確認すべしとしているが、皆伐後すべて再造林する、主伐をしない場合はその確認はいらない  現在8年間の対象機関に主伐が含まれると、収入が費用を下回るので、ほとんどJクレジットとして認定されない(「追加性がない」と認定される)  賛成。
   ②主伐・再造林に係る排出量・吸収量の算定方法の見直し  認定期間中にある森林を主伐してその後再造林する場合、標準伐期時の想定蓄積を吸収量としてプロジェクトの登録ができるようにする。(ただし、標準伐期になるまで、クレジット申請はできない。) 主伐して再造林するプロジェクトの登録する場合、再造林地の成長量が植栽直後すくないので、それを念頭におくと全体の成長量がすくなくなり、登録に問題がでるが、再造林地の成長量はそのご拡大するのは間違えないので、それを反映させた登録基準とする。   賛成
   ③プロジェクト対象区域内の天然生林の吸収量算定対象への追加  プロジェクト地域内の天然林の吸収量も、保安林であること、森林保護活動が行われていること、などを念頭に、プロジェクトの吸収量に参入する。  森林吸収量の算定対象となる森林から天然林が外れており、天然林の午後活動が評価されないのは、おかしい。また、天然林の保安林は、パリ協定の国が決定する貢献の数値の中にも参入されている。  もっと拡大はできないか?保安林である必要があるのか?NDCの算定自体を拡大する?
   ④1990年以降の施業履歴の確認  1990年以降に施業を実施した、という要件を満たすため、補助事業の関係書類だけでなく、現地での間伐の実績を示す伐根なども含めるよう拡大  補助事業の関係資料がない場合がある。  賛成。補助をうけないで、間伐することもある?現場の意見を聞いて、可能性をできるだけ広げてください
 (3) 再造林活動方法論(新設)
     再造林方法論、森林所有者以外の第三者が伐採跡地を再造林した場合に、対応できる方法論を作成。  伐採跡地の放置林が拡大し、吸収量が減少している。  001との間がわかりにくいです。よーく説明をして、普及を図ってください

新しく方法論が、一つ増え、いままでの方法論の条件が緩和!なんですが、もっと緩和できないのかというあたりが、わからないですね。

(意見提出)

意見を提出しようと思って、E-GOVポータルサイトからやってみましたが、機種依存文字はおくれません!なにが機種依存なのかいろいろアプローチしましたが、だめなので、郵送しました。

コピーを置いておきます→J-クレジット制度における森林管理プロジェクトの制度見直しの概要パブコメ

kokunai4-58<JcreFO003>

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環境的視点から見た森林行政・・・ー勉強部屋ニュース274編集ばなし(2022/6/15)

①クリーンウッド法の改訂に向けての検討会中間報告と②Jクレジットの制度見直しに関するパブリックコメント。少しステージが違いますが、林野庁の施策を環境的な視点から見た重要な政策の方向に対する議論が並びました。

後者の意見募集の対象となる文書は、行政当局としても「Jクレジットの拡大を図りたい」、という気持ちが表れた文章でわかりやすかったです。応援したい”

それに対して前者は、業界と市民などいろんな関係者の意見調整を行政がする立場なんで、「こんな方向にもっていきたい」という気持ちが少しわかりづらいです。世界林業会議でも持続可能な木材利用が大きな議論の柱になったので、みなが注目している法律だと思います。

勉強部屋の3つの提案、是非、議論のたたき台になればありがたいです。

6月31日総会を開催します。会員には別途ご案内します。ご関心のあるかたはこちらから入会ご検討下さい

次号以降の予告、岸田政権の新資本主義と森林のガバナンス、カーボンニュートラルな社会と森林や木材の役割ー地球環境問題へ市民のできることは?もりや市民大学から、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com