目次
「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」林業経済誌掲載小論
「国際的な『貿易と環境』の議論の展開と林産物貿易」ー日本林学会大会報告
貿易と環境に関する文献リスト
WTOサイトの環境と貿易ゲートウェイ
WTOドーハ閣僚宣言の読み方・・・林産物貿易に関する三つのポイント/二つの国際常識から導かれる「非常識」結論/「林産物貿易の関税自由化促進の経済と環境に与える影響」米国農務省の報告書/林産物自由貿易と森林の持続可能性ー東南アジアの場合/新たなWTOラウンド文献集/WTOシアトル閣僚会議の今後/
横浜新5カ年計画/ITTO2000年目標
日米木材業界の違法伐採問題への取組/日本政府の違法伐採への取り組み督促ーOECD環境保全成果レビュー/違法伐採問題資料/森林NGO違法伐採に関するメッセージ
「国内林業が困難に直面しているのも40年前に全く無防備なまま貿易自由化をしたからだ。何とか貿易を規制しなければ日本の林業は立ちゆかない」という気持ちは大多数の国内の林業関係者が秘めて来た思いです。ただし、自由化に重装備で立ち向かった農業ですら、度重なる国際貿易交渉やガットの紛争処理の過程で装備を解除されつつある状況にあり、貿易規制について議論するような後ろ向きの姿勢ではグローバル化する21世紀に取り残される、という議論におされて、表だって議論されてくることが少なかったと思います。
小サイトの立場は、WTOを中心とした多国間貿易体制は固まったものでなく、それが生み出すメリットとデメリット(環境問題・労働問題などの社会的な国内的国際的な構造的摩擦、ダンピング・補助金・セーフガードが必要な輸入急増など一時的な摩擦)を調整する途上の柔らかなものだということです。国際的な環境と貿易の議論はその、調整過程の一つで、わが国の林業の抱え問題がその中でどう処理されるべきか国内の林業関係者として積極的な主張をしてゆくべきだと思います。また、WTO条約を受けたわが国の国内法令とその運用の実態も、戦後の輸出立国の立場からの残滓を抱えていて、条約上認められた輸入規制などの権利を制限する傾向が見受けられます。こんなことを問題意識に、このサイトを作ってゆきたいと思います。(2000/10)
ウルグアイラウンドの末期に環境サイドからガット批判が噴出しました。そのため、ウルグアイラウンド交渉の結果1995年設立したWTOは、発足と同時に「貿易と環境委員会(CTE)」を設置し、ウルグアイラウンド後の新課題の中で「環境と貿易」が最初に本格的に取り組まれることになりました。
ガットにおける貿易と環境問題の議論の契機は、メキシコ産マグロ輸入禁止事件の紛争処理パネルでの議論です。この事案は、@地球サミットの開催など地球環境問題の高まりの中で環境目的で貿易を制限することに限定的な解釈を加えたガット紛争処理委委員会の判断が国際世論の矢面にたったこと、A超大国米国の国内法がガットルールに反しているという判断となったこと、から、ウルグアイラウンドに引き続くWTOの議論の中心に座ることとなりました。
CTEの議論は、@貿易を規制する国際環境協定(ワシントン条約など)とWTO条約の整合性をはかるためWTO条約の改定をはかること(ECが主唱)、A任意のエコラベルをWTOの条約(貿易の技術的紹介に関する協定)の透明性の対象とすること(カナダが主唱)の二つを論点として進められましたが、環境問題を突破口として労働基準に基づく貿易制限などへ行き着くことを警戒する途上国などの反対などから、具体的な提言には至りませんでした。また、OECDでも議論が進められました。99年新たな貿易交渉開始を議題としたWTOシアトル閣僚会合において、新たな貿易自由化が環境問題に悪影響を及ぼすとの環境NGOの反発が、同交渉開始の妨げとなった経緯もあり、「環境と貿易」に関する議論のさらなる深まりがWTOの今後の交渉の展開にとっても不可欠となっています。
「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」林業経済誌WTOと林産物貿易特集の掲載小論(2002/2/11)
2002年1月号の林業経済誌は「WTO体制下における林産物貿易の動向と在り方」という特集を組んでおり、「国際的な『環境と貿易』の議論の展開と林産物貿易ー我が国の林業政策・林産物貿易政策への含意」と題する小論が掲載されています。
90年代のはじめから、ガット・OECDなどの国際的な舞台で繰り広げられた、「環境と貿易」の相互関係に関する国際的な議論の過程を分析し、「80年代から表面化してきた環境問題の国際化をうけた地球市民の新たな問題提起に対して、各国の貿易・環境・林業などの政策分野の政府間の連携の動きが十分対応し切れていないという実態」を明らかにしています。今後のWTOラウンドをにらんでの論考です。要旨を掲載します。
特集でその他に掲載されているのは以下の論文です。
村嶌由直:WTO体制下の林産物貿易を考える
島本美保子:「林産物の自由貿易と森林の持続可能性」論争と東南アジア諸国の現状
久保山裕史:「林産物分野の早期関税自由化」(研究資料)
「国際的な『貿易と環境』の議論の展開と林産物貿易」ー日本林学会大会の報告(2001/4/11)
2001年の日本林学会大会は4月2日から5日岐阜大学で開催されました。小生も「国際的な『貿易と環境』の議論の展開と林産物貿易」という題で報告しました。80年代から始まったガット体制に対する環境サイドからの問題提起とそれに対する議論は、環境保全目的のための貿易規制の正当性、貿易自由化がもたらす環境保全への影響などの論点を巡って繰り広げられました。これらの議論の経過を分析すると、当面するWTOの包括的貿易交渉や将来の森林条約交渉など国際的な枠組みだけでなく、我が国の森林林業行政の透明性などについても示唆を与えるものです。要旨と発表に使ったOHPシートのファイル(html、パワーポイント版)を掲載します。
WTOサイトの環境と貿易ゲートウェイ(2000/1/11開設)
ガット・WTOの1970年以来30年に渡る環境と貿易の議論の概要は、WTOサイトの中の「WTOホームページの環境と貿易の文献ー環境と貿易のゲートウェイ」(Trede-and-environment material on the WTO website - WTO/environment gateway)という解説付きのサイトで概観できるようになっています。入門編、歴史、WTOで議論した課題、環境貿易委員会文献集、紛争処理、質問箱、主な文献となっていて、初心者向けの概要書から、1999年に事務局が作成した詳細な特別報告書のダウンロードに到るまで、が掲載されている、大変便利なサイトです。事務局の了解を得て、一部和訳して掲載します。WTOの運営するサイトTrede-and-environment material on the WTO website - WTO/environment gatewayへのリンクはこちら
和訳はWTOホームページの環境と貿易の文献ー環境と貿易のゲートウェイこちら
WTOやOECDをめぐる議論をベースとした文献リストを掲載します
目次
林野庁の意見募集
WTOドーハ閣僚宣言の読み方・・・林産物貿易に関する三つのポイント
二つの国際常識から導かれる「非常識」な結論・・・次期WTOラウンドと日本の林業関係者の立場
「林産物貿易の関税自由化促進の経済と環境に与える影響」米国農務省の報告書
林産物自由貿易と森林の持続可能性ー東南アジアの場合・・・環境経済・政策学会2001年大会の話題から(2)
新ラウンドと林産物貿易(第四回閣僚会合に向けて) 関連文献集(01/4/11) シアトル閣僚会合の今後(00/12/26)
新しいWTOラウンドの林産物交渉ー林野庁の意見募集
昨年11月のWTO閣僚会議で新たなラウンドが始まることとなり、林野庁では11月の交渉提案に向けて8月上旬を締め切りに意見募集をしています。
小生は前回のウルグアイラウンド、その前の東京ラウンドと二回にわたってガットの交渉にたまたま携わりましたが、二回とも「林産物は農産物交渉の中で交渉するのだ」と主張し、農産物の強固な貿易障壁の後ろにそっと付いて回るという「戦略(?)」をとってきました。日本の林産物貿易問題はガットや米国から色々言われそれに受け身に対応するばかり、一度ぐらい積極的に打って出たらどんなに楽しいだろうと夢にまでみたものです。
以下のように林野庁は論点に関するメモを公表し、以下の5点の論点を提示していますがこれにかかわらず意見を求めています。
1 林産物交渉において、地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用の観点に配慮することの是非について
2 林業・木材産業に対する支援の是非や措置のあり方
3 自然環境や有限天然資源の保全を目的として採られる非関税措置の是非やあり方など
4 輸出国と輸入国の権利義務のバランスを回復させるための方法
5 違法伐採問題について、WTOにおいて貿易面からの議論を行うことの是非
WTOが一見強固なバックグラウンドにたっているように見えながら実は、地球環境問題など新たな事態に一向に対処できない発展途上のシステムだと思います。林業関係者がどんどん意見を寄せられることを期待します。
関連資料
林産物貿易交渉についての意見関係 林野庁 林産物交渉に関する論点 NGO JATANの意見書
木材貿易と森林:日米のNGOが共同で作成
森林と農林産物自由化INDEX:AEPCモニターNGOネットワーク作成
ストップ林産物自由化資料リンク業界 日本の杉桧を守る会意見書 小サイト 林産物貿易のページ 新ラウンド関係 WTO事務局 WTOドーハラウンドのページ(英文)
閣僚宣言テキスト(英文)外務省 新ラウンド関連情報
ドーハ閣僚宣言骨子経済産業省 新ラウンドのページ 農林水産省 閣僚宣言要旨(農林水産物関係) マスコミ報道 yahooニュース lycosjapan
WTOドーハ閣僚宣言の読み方・・・林産物貿易に関する三つのポイント
11月9日から14日にまでドーハで開かれたWTO第4回閣僚会議は新たな包括的な貿易交渉を始めることを決定しました。会議で合意された閣僚宣言のテキストがWTO事務局のホームページ上で公開されています。現時点で全文の日本語訳は公開されたものはないようですが、要約が外務省、経済産業省のホームページに掲載されています。また、農林水産省のホームページに農林水産物に関連する部分の抄訳が掲載されています。
WTO第四回閣僚会議関係資料掲載箇所
WTO事務局 閣僚宣言テキスト(英文) 外務省 ドーハ閣僚宣言骨子 経済産業省 閣僚宣言のポイント 農林水産省 閣僚宣言要旨(農林水産物関係) マスコミ報道 yahooニュース lycosjapan
会議に出席した、林野庁のメンバーと意見交換をし、今回の閣僚宣言を検討してみました。日本の林業者にとって次の三点の合意が重要です。
「環境と貿易は両立させなければならない」
林産物貿易を一般の工業製品と同一に論じることができないという根拠は、林産物の貿易自由化が森林の管理が不適切な場合環境問題の悪化をもたらす事実にあります。この点について閣僚宣言の前文パラ6に「我々は多角的貿易システムの擁護と環境の保全は両立可能であり、また、両立させなければならない、と確信する。」"We are convinced that the aims of upholding and safeguarding an open and non-discriminatory multilateral trading system, and acting for the protection of the environment and the promotion of sustainable development can and must be mutually supportive."と表現されていることは重要です。「貿易と環境の両立」という表現はよく使われるキーワードですが、mustという助動詞と一緒に使われる機会はあまり多くはありません。、
どういう条件なら両立しどういう条件なら両立しないのか、しっかり議論すべきです。(小論「二つの国際常識から導かれる「非常識」な結論・・・次期WTOラウンドと日本の林業関係者の立場。」を参照ください)
「貿易自由化の例外品目」
林産物は非農産物としてパラ16の「非農産物の市場アクセス」という箇所で取り扱いが規定されています。関税・非関税障壁の削減・撤廃について幅広く交渉されることになっています。そして、「産品の適用範囲は包括的で事前に例外は作らない」"Product coverage shall be comprehensive and without a priori exclusions."としています。ある品目を「例外扱いにしない」と言う記述の前に「アプリオリな」という、形容詞が係っていることが重要です。文理上、「事後には例外がある。」と言う解釈がなされることになるでしょう。つまり交渉次第であり、我が国が林産物は自由化の例外であると主張することを妨げるものではないことが、a prioriの一語の重要な意味です。
「持続可能でない木材を拒否する道」
宣言は「貿易と環境」というサブタイトルの下に31−33の三つのパラグラフが当てられています。とりあえず国際環境協定とWTOルールの関係など三つの事項を交渉事項とすることにしています(パラ31)。さらに「環境目的のためのラベリング」など三つの事項についてWTO貿易環境委員会で審議し、次回の第五回閣僚会合で交渉事項とするかどうか勧告させるとしています(パラ32)。違法伐採でない木材や持続可能な木材をラベリングし、その他の木材との間で、貿易の取り扱いを変えることは、現在のWTOルールの中では「同種の産品の差別」として厳しく規制されているところです。「環境目的のためのラベリング」を交渉事項とし、WTOルールを変えてゆくことができる道を示しています。ただし、WTOルールを変えなくてもモントリオール議定書など「フロンを使用して製造した半導体と、そうでない半導体とを差別して取り扱う」ということを堂々と国際協定に書き込まれており、別にWTOの規程を変えることもない,との意見もあることでしょうが。
二つの国際常識から導かれる「非常識」な結論・・・次期WTOラウンドと日本の林業関係者の立場new
11月に刊行された会員制寄稿誌「日本の森林を考える」第10号に表記の小論が掲載されています。いよいよ始まった新ラウンドでの議論への問題提起です。ウルグアイラウンド以来の国際的な議論を整理してみると、立場が大きく違った関係者の中で2つのコンセンサスがあることが分かります。このコンセンサスに基づき、日本の林業関係者として国際貢献すべき方策を考察してみました。発刊元である第一プランニングセンター(電話 03−3588−0998・FAX 03−3588−0973・メール LEP07652@nifty.ne.jp)のご厚意で全文を掲載します。こちら
要旨は以下の通りです。
要旨は以下の通りです。
連絡先
107-0052
東京都港区赤坂7−6−52ハイツ赤坂103
第一プランニングセンター内
「日本の森林を考える」編集室
電話 03−3588−0998
FAX 03−3588−0973
メール LEP07652@nifty.ne.jp
本文に引用した文献リストはこちら
「林産物貿易の関税自由化促進の経済と環境に与える影響」米国農務省の報告書
今年の八月から米国のフォレストサービスのサイトから表記の報告書(EconomicandEnvironmental Effects of Accelerated Tariff Liberalization in the Forest Products Sector)がダウンロードできるようになっています。著者はフォレストサービスのPasicic Northwest Research Station のDavidJ.Brooks他ですが、USTRの1999年の報告書をベースに書かれており同一の作業グループのもののようです。米国政府の林産物関税についての執念のようなものを感じます。
米国がAPECの中で追求してきた林産物関税の別枠による撤廃(Accelerated Tariff Liberalization)という提案が、環境に及ぼす影響をシミュレートしようというものです。「米国国内には環境問題を引き起こさない、全体としても対して大きな影響は引き起こさない。貿易内容は加工度の高いのものにシフトする」という結論です。結論だけ見ると米国の環境団体をにらんだ都合の良い際物的なものと取られるかもしれませんがそうではありません。林産物貿易と環境についての文献レビューなども入った力作です。今後、新たなラウンドが始まるとしたら必ず議論の対象となる文献だと思います。
環境に及ぼす影響は収穫量をパラメーターとして表すという形になっている点が基本的な問題です。また、環境管理水準の低いマレーシアやインドネシアなどでの開発圧力が推測される結果ともなっています。
林産物自由貿易と森林の持続可能性ー東南アジアの場合
環境経済・政策学会2001年大会の話題から(2)
環境経済・政策学会2001年大会から上記の二つのトピックスと関係のある興味深い報告を紹介します。法政大学の島本美保子さんの表記報告です。林産物貿易問題は、資源国である途上国と先進国の消費国という関係で見るのが常識ですが、昔の資源国が現在は輸入国となり複雑な展開になっています。特にフィリピンでは国内木材工業原料を念頭に森づくりが進められており、林産物の関税引き下げなどの影響で国内の森林造成に負のインセンティブを与える可能性がある、と指摘しています。大変興味深い視点だと思います。サマリーを筆者のご厚意によりここに掲載します。本論文は近々林業経済誌の貿易特集号に掲載予定だそうです。
新たなWTOラウンドと林産物貿易(3)農林水産省の意見2001/5/11
本年11月にカタールで開催される予定の第4回WTO閣僚会議に向けて、農林水産省は、林・水産物に係るWTO交渉についての基本的考え方を発表した。内容は@持続可能な森林経営の推進に資する貿易ルールの必要性、A持続可能な森林経営の推進が阻害されないよう配慮した国境措置の二点である。まだスローガンを掲げたという状態だが、今後これが肉付けされてゆくこととなるのだろう。
(2001/5/11)次期WTOラウンドと林産物貿易に関する文献集
作者 文書名 作成年月 関連サイト 短評 WTO
Hakan Nordstrom & Scott Vaughan貿易と環境に関する特別報告
Special Studies 4, Trade and Environment1999/10 原資料掲載
本サイト内解説WTOサイドでの環境と貿易の現時点での到達点。「環境問題はWTOでなく環境(森林)条約で議論すべき」 地球公正法的防衛基金
Earthjustice Legal Defense Fund我らの森林の危機ーWTOの森林保護に対する脅威
Our Forests at Risk: The World Trade Organization's Threat to Forest Protection1999/09 原資料掲載 シアトル会合に対する強力な圧力となった米国西海岸の環境NGO団体の主張。「WTOは拡大する前に修復が必要」 世界資源研究所
World Resource Institute樹木の貿易:林産物貿易自由化の陰と光
Tree Trade: Liberalization of International Commerce in Forest Product: Risks and Opportunities1999/11 原資料掲載
本サイト内解説国際的な環境NGO団体の包括的な主張。
「適切な森林保護施策が実施されるまで貿易自由化はすべきでない。」米国通商代表部 林産物の関税撤廃と経済・環境に与える影響
Accelerated Tariff Liberalization in the Forest Products Specter: A Study of the Economic and Environmental effects1999/11 原資料掲載
本サイト内解説米国の主張する関税撤廃提案が経済環境に及ぼす影響の計量的評価。収穫量の0.5%増加など。 日本国政府 WTO次期交渉に関する林産物水産物の日本提案 1999 本サイト内解説
本文掲載ラウンドに際して我が国が林産物の包括ポジションを提示するのは初めてのこと。「公益的機能の発揮を促進するような国境措置」を主張 林・水産物に係るWTO交渉についての基本的考え方 2001/4 原資料掲載 仕切直し後の基本ポジション。持続可能な森林経営の推進に資する貿易ルールを提唱 日本の杉桧を守る会 次期貿易交渉に関する意見書 2001/3 本文掲載サイト 日本の林業関係者の意見書。「現在は自由化交渉の時期でなく森林条約交渉交渉の時期」 APEC
NZ森林研究所林産物分野における非関税障壁の研究
Study of Non-Tariff Measures in the Forest Products Sector1999 本文掲載 伐採制限から森林認証まで幅広く非関税障壁として分析の対象とした。環境NGOのターゲットとなる。
新たなWTOラウンドと林産物貿易(2)ー日本の杉桧を守る会意見書(2001/4/11)
この秋のWTO第四回閣僚会合に向けて、次の包括的貿易交渉(ラウンド)に関する議論が高まっていますが,「日本の杉桧を守る会」では次期貿易交渉に向けての意見書を作成し、産業構造審議会などに提出しました。守る会のHPに掲載されています。WTOの報告書を引用し、「現時点での林産物貿易の自由化の推進が国際的な環境破壊の引き金になる。今は、自由化交渉の時期ではなく、森林条約交渉の時期であり、その後に自由化交渉をすべき」という、骨太な意見書です。一般的にWTOの交渉は政府間だけで行われていて解りづらいというのが、多くの意見ですが、関係者がいろいろ意見を言うようになれば、交渉のバックアップにもなると思います。ご一覧下さい。次期WTOラウンドと林産物貿易に関する文献集へに追加しました。
新たなWTOラウンドと林産物貿易(1)ー第4回WTO閣僚会合に向けて
(2000/1/24)
1月下旬のWTO理事会で、第4回閣僚会合がこの秋中東のペルシャ湾岸にあるカタールの首都ドーハで開催すると決定しました。一昨年暮れにシアトルで開催された第三回会合は、ウルグアイラウンドに続く包括的な貿易交渉の開始を目指して交渉が行われましたが、反ダンピング措置、労働条件の差異を取り込むことに関する先進国と途上国間の基本的な対立に加え、環境問題・労働条件をめぐる米国内外ののNGOの圧力、、農業・反ダンピング措置の強化をめぐる先進国間の対立等を調整することができず合意に到りませんでした。この秋の会合はWTO側からのリターンマッチと言えるものです。
シアトル会合が決裂した時に、場外にいた環境NGOによって「『森林のための勝利』のビラがまかれた」(日経新聞99/12/5)と報道されているように、次期ラウンドをめぐる動きの中で、林産物問題は焦点のひとつです。ウルグアイラウンドに引き続く輸出国側の「林産物関税撤廃提案」とそれに反発する環境NGOや我が国などの輸入国の対立構造は何の変化も起きていません。この秋に向けて、環境と貿易の議論を踏まえて、環境財としての林産物の新たな貿易秩序の構築に向けての展望を明らかにしてゆく必要があると思います。ついては、シアトル会合を前にした99年の秋に次々に公表された、林産物貿易と自由化をめぐる様々な立場からの文書を掲載し(上記)ます。
サッカーファンには忘れられない「ドーハの悲劇」にならないように。
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WTOシアトル閣僚会議の今後(1999/12/26)
11月30日から12月3日に行われた、WTOのシアトル閣僚会議は結局コンセンサスのないママ閉会となり、マスコミでも大きく報道されたところです。各紙の報道も、農業問題などの先進国間での対立、ダンピングや労働問題などにおける先進国と途上国の矛盾、など、国と国との間の問題とともに、NGOが問題提起した環境問題も今後の一つの要素になっています。
小生も過去の二回のラウンドの林産物交渉に関わってきましたが、今までの日本の立場は、林産物は農業交渉の枠内でやるべきで一般工業製品の枠内でやるべきではないという主張をし、結局最終的には一般工業品の関税引き下げ方式を受け入れるということで終わっています。今回のラウンドに向けて、日本政府は過去の数次のラウンドで初めて、林産物問題で我が国の提案という積極的な攻勢をかけました。これが、林産物と水産物の日本提案です。(英文と和文の提案をここに掲載)。この流れの中で、先月掲載したwto論文、米国政府報告書があります。
環境と貿易についてはしきり直しとなりました。まだまだ論点が深まっていなくて課題は多いですが、小生は、WTO論文の最後の言葉、「より統合された経済の中で環境政策をどう立案するかという問題である。今後の歩むべき道は国際的な環境協力のメカニズムと制度を強化してゆくかである。ちょうど50年前に貿易に関する協力が利益になると決定したように。」
が印象的でした。交渉が後送りとなり時間ができたので、今後少しじっくりフォローすることとします。
国際熱帯木材機関第31回理事会ー新たな五ヶ年の課題
横浜にある国際熱帯木材機関の理事会に久しぶりで出席してきました。違法伐採問題、持続可能な森林経営など難題に挑む、熱帯木材機関今後の5ヶ年計画を採択しました。
以下に関連資料を掲載します。
備考 全体概要 第31回国際熱帯木材機関(ITTO)理事会の結果について(和文) ここからどうぞ 重要決議 「持続可能な木材生産・貿易と森林法施行について」DECISION 6(XXXI)(英文) 「横浜行動計画」DECISION 2(XXXI)(英文) 「監査制度設立のガイドライン」DECISION 4(XXXI)(英文) 報告 インドネシア技術調査団の報告ITTC(XXXXI)/10(英文) 背景資料 「森林法の施行とガバナンスに関する東アジア閣僚会合」の宣言(英文)
国際熱帯木材機関の2000年目標
「西暦2000年までに持続可能な経営が行われる森林から生産された木材のみを貿易の対象とする」といういわゆる「熱帯木材機関(=ITTO)の2000年目標」は、今から十年ほど前にITTOの名前を世界中に知れ渡らせました。しかしながら、2000年の今年、11月に開催されたITTOの第29回理事会でそれが達成できていないことを認めることとなりました。
前回の理事会の報告されたコンサルタント報告書は、制度的な面では持続可能な森林経営に向けて大きな改善があったこと、その背景には消費者の持続可能な森林経営を求めるインパクトがあったこと、しかしながら制度が実施に至るための至るための人材と財源に制約があり現場レベルで大きな転換を起こすには至っていないこと等を報告しています。今理事会ではその内容を認め、2000年目標が達成しなかったことに留意し、新に期限を区切らず目標の速やかな達成に取り組むことを決議しました。
このような状況で2000年を終わることは残念なことです。持続可能な森林経営を達成しない木材が国際取り引きされて、輸入国の林業に悪影響を与えているという状況は一刻も早く解消する必要があるでしょう。ただし、熱帯林だけでなくロシア材の違法伐採問題など温帯林も含めた、管理水準の厳しい監視をしてゆくシステムを作る必要があります。
理事会での決議の内容 英文 和文仮訳
コンサルタントレポート概要
日米木材業界の違法伐採問題への取組/日本政府の違法伐採への取り組み督促ーOECD環境保全成果レビュー/違法伐採問題資料/森林NGO違法伐採に関するメッセージ
日米木材業界の違法伐採問題への取組(2002/3/11)
米国の全国の木材関連産業の団体はAmerican Forest and Paper Association(AF&PA)ですが、2月6日緊急な記者発表を行い、理事会で世界中の違法伐採に対処する方針を採択したことを報告し「違法伐採と戦うために世界中のリーダーになるつもりだ」との立場を表明しました。ウェブサイトに掲載されています。シアトルの木材総合情報センターの勝久さんによると、AF&PAの幹部は、今後業界による不買運動の動きもあり得るといっているそうです。世界で一番の木材消費国の動きが目を離せません。
我が国の全国木材組合連合会も、違法伐採問題についてのシンポジウムを横浜で開催しました。私も出席しましたが、ロシア局と経済研究所天然資源局長のアレキサンダー・シェインガウス博士は自分の30年にわたる経験と入手可能なデータにより、消費される木材の50%は違法伐採であると推定すると話されていました(発表要旨日本語)。少し詳しいデータがほしいとお願いしてきました。
日本政府の違法伐採への取り組み督促ーOECD環境保全成果レビュー(2002/2/11)
OECDが行った我が国の環境政策のレビューが公表されました。その間勧告部分で、「輸入木材を持続可能に管理された森林から採取されたものとする手段を開発すること」が指摘されています。世界でトップクラスの木材輸入国である日本が、違法伐採の根絶という分野で地球環境に貢献する余地はもっと大きいという指摘です。
環境庁の関係サイト
OECDの関係サイト
CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS(英文)[PDFファイル]
「結論及び勧告」(環境省仮訳)[PDFファイル]
違法伐採問題資料(2001/3/11)
2月13日の新聞に農林水産省が「違法伐採木材の輸入規制を検討」(朝日新聞)との小さな記事が載りました。前日行われた松岡副大臣の記者会見の内容が報道されたものです。同副大臣は記者会見で、「消費国として環境破壊に手を貸すわけにはいかない」と述べ、東南アジアと関係の深い日本が率先して制度化に取り組む考えを示したとされています。林産物貿易問題については木材がセーフガードの監視品目となるなど一定の手続きが進んでいますが、セーフガードは緊急避難の措置であり、相手国からの対抗措置とか場合によってはこちらから代償措置を提出しなければならないとか難しい問題があります。林産物貿易の枠組みを本格的に検討する(林政改革大綱)ためにはやはり環境問題の枠組みで議論するのが本筋です。そういう意味で、WTOラウンドとも絡めて違法伐採問題の取り扱いにつての議論を深めてゆく必要があると思います。
国際的な違法伐採に関する資料
ロシアの違法伐採に関する資料
インドネシアの違法伐採に関する資料
5月26日違法伐採問題に関するワークショップがあり、小生も顔を出してみた。違法伐採問題が木材利用推進運動などの足かせになっていると考えたからです。その時の出席者が中心となって作成されたメッセージがプレスリリースされました。グリーン購入法とリンクした地方自治体にボイコットを呼びかけるなど、重要な点を指摘していると思います。
プレスリリース本文 解説
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「米加針葉樹製材貿易紛争が提起しているもの」 (林業経済誌掲載)
林業経済誌99年12月号no614号に表記小論が掲載されました。米国の業界が20年間にわたって執念を燃やして主張した、「補助金によって廉価に輸出されているカナダからの木材に相殺関税を課すべきだ」との議論に対する、国際的な論争を材料に、来るべき森林条約における国際貿易ルールと持続可能な森林経営の関係を考察しようとするものです。要約と関係資料集を掲載します。
要約はこちら
関係資料集はこちら
ご関心のある方は当方に連絡下さい。
カナダ産針葉樹相殺関税問題の我が国との関係new
2001年8月10米国商務省は、業界から提訴のあった、カナダ産針葉樹製材の相殺関税課税に関して、調査結果を発表し、19.31%の課税をかけることを決定しました。(商務省発表ファクトシート) カナダ産の針葉樹の立木価格が一般の価格より低価格に設定されておりそれが、ガット15条の相殺可能な補助金に相当すると認定したものです。北米の二国間の20年来に及ぶ紛争の一場面といえばそれまでですが、ちょっと考えてみると、いくつかの疑問が浮かびます。カナダ産の針葉樹の立木価格は米国向けの輸出も日本向けの輸出も同じ価格のはずです。なぜ、米国が相殺関税を発動するのに、我が国は発動しないのでしょうか。それ以上に、米国が障壁をもうければ、その分は日本向けの輸出ドライブになるのではないでしょうか。事実カナダの企業は日本市場にいっそう注力(日刊木材新聞8月27日付け報道)するようです。
商務省が発表した告示の原文は数十ページにわたるものですが、相殺関税の率を決めるための基準となる設定の課程で持続可能な森林経営に必要なコストの内部化など、様々な検討がされたようです。我が国の林業関係者としてもしっかり検討すべき材料だと思います。
関係資料
商務省告示の原文
米加針葉樹事案の年表(ランダムレングス誌ウェブサイト)
カナダブリティシュコロンビア州政府関連サイト
「米加針葉樹製材貿易紛争が提起しているもの」 (林業経済誌掲載)林業経済誌99年12月号no614号に表記小論が掲載されました。米国の業界が20年間にわたって執念を燃やして主張した、「補助金によって廉価に輸出されているカナダからの木材に相殺関税を課すべきだ」との議論に対する、国際的な論争を材料に、来るべき森林条約における国際貿易ルールと持続可能な森林経営の関係を考察しようとするものです。要約と関係資料集を掲載します。
要約はこちら 本文ダウンロード
WTO補助金及び相殺措置に関する協定本文和訳
「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」報告書new(2003/1/1)
環境省が、設置していた「貿易自由化の環境影響評価に関する検討会」(座長:山口光恒慶應義塾大学経済学部教授)の報告書がまとまり、公表されました。この問題をフォローしてきた小サイトとしても若干の意見があります。(詳細)
林産物の輸入に関するセーフガードの適用について、議論が高まっています。小生の知り合いのある官庁の特殊関税(相殺関税やダンピング関税などをそう言うことがあるようです)の専門家が、「日本が一度もセーフガードを発動したことがないのは、他の先進国の目から見ると異様である。」といっていました。普通の手続きで、淡々とやるということ必要だと思います。
セーフガードの対する制裁についてのリアクションを観察するnew
いよいよ中国が制裁措置を発動することとなり、マスコミの報道が様々な角度からなされています。関連報道
日本の経済外交の基本が問われることになります。それにしても、通商政策をつかさどる某大臣の最初の反応の報道にはびっくりしました。ロイター電。「3品とも対中国輸出の絶対量は大きくないことをあげ、『中国も、日本との関係を大切に思って、ある意味の意志表示を行ったのではないか』」。世界中でWTO違反の制裁を発動されて、「自国を大切に思っている意思表示だ」という貿易担当大臣がいるでしょうか。多分いろいろ発言されたうちの、その文脈だけが報道されてしまった、ということなのだと思いますが。
その後、中国側に「撤回要請」が行われたり、経済産業省の次官が制裁措置は日中貿易協定違反だと言及したりで、軌道修正されています。
セーフガードについての資料集
セーフガードとは
セーフガード関連協定、関係法令集
関連協定(一般協定関連条項、セーフガード協定)和文テキスト
関税定率法第9条本文
緊急関税に関する政令本文
(条約テキストは中條一夫さんのWTO条約集のホームページから本人の承諾を得て使用しています。条約と国内法のリンクについては特殊関税研究会編「特殊関税コメンタール」(日本関税協会発行)を参考にしています。)
各国のセーフガード発動状況
99年ガットセーフガード委員会の作成による各国のセーフガード調査実施、発動状況一覧表。95年以降だけで7カ国12件の発動実績。
セーフガードについての解説記事一歩進んでいる野菜の調査状況についての業界紙報道
セーフガード発動第一号の波紋new
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