ニュースレター No.291 2023年11月9日発行 (発行部数:1666部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:木の利用推進と次世代の森林の造成ー木づかいのイベント出席で考えたこと(2023/11/9)
2. 生物多様性を巡る国際動向:COP15とビジネス、政策への示唆ー勉強部屋Zoomセミナー第3回報告(2023/11/9)
3. 企業による森林とのかかわり方と可能性-森林づくり全国推進会議・森林x脱炭素チャレンジ2023など(2023/11/9)
4. 「自然共生サイト」の第一次認定結果公開ー今後森林ガバナンスの制度が蓄積してきたツールの評価がされる30by30の実現への道筋(2023/11/9)
5. 全国の計画の指針「全国森林計画」改定・パブコメ対応ーグローバルの動向に対応した日本の森林森林計画になったかな(2023/11/9)
6. 持続可能な豊かな森を築くー森林総研の公開シンポジウムから(2023/11/9)
7. カーボン・オフセットクレジット制度の創設とその展開―民間資金が次世代の森林づくりに投入される一つの可能性ー山林誌平成林業逸史に掲載(2023/10/25)
8. 木材利用が進むとたくさんいいことはあるけどー森づくりは?・・・ー勉強部屋ニュース291編集ばなし(2023/11/9)

フロントページ:木の利用推進と次世代の森林の造成ー木づかいのイベント出席で考えたこと(2023/11/9)

10月は木材利用推進月間で、私も10月下旬関連する(かもしれない)以下の2つのイベントに出席しました。

10月21日第18回木の建築賞第二次選考会(@鹿児島大学教育食堂エデュカ)
10月24日木づかいシンポジウム2023(@農林水産省7階大会議室)

「木材を利用して元気な森林を取り戻そう」(政府広報)というキャンペーンがされていますが、皆伐跡地の再造林が3-4割、本当に元気な森林になっている?

生物多様性条約の愛知目標がうまくいかなかったのは、国家にまかせっきりになっていたからで、今後新たに決まった枠組みを推進するのに(市民やビジネス・・・国家以外の主体がしっかり関わて行く必要がある、といった動きになっておて、ユーザーの関与が大切。

そんな視点から、二つのイベントを見てみましょう(どちらのも立派なイベントなので、全体の報告はまた別の機会にします)

(鹿児島開催「木の建築賞第二次選考会での再造林問題)

毎年選考委員として参加している木の建築賞選考会、本年は九州地区が対象なので、一次審査を通過した20のプログラムの代表者(右の表)が、鹿児島大学教育食堂エディユカ)に集まってプレゼンを聞く機会がありました。

木の「建築賞」ですから、選考委員の多数は建築関係者であって、建築作品のデザインと空間構成、それらを支える技術などが、評価されるのは当然ですが、森林の育成に結び付いた木の利用などの「活動」についても評価されます(森林由来の関係の選考委員は私と速水林業の速水亨さん)。

特に、提案された建物を構成する木材の来歴・トレーサビリティと供給源としての森林はどこにある?その森林はどうなっているのかな?

20のプレゼンのうち建築物を構成する木材の由来する森林について言及していたものが、11ありました!!。

○○県内の木材です、市町村の木材です、というのがほとんどですが、そのうち再造林ができていますというのが、1つ(15番目の鳥飼八幡宮)。

そこで、最後の総括議論の際に、私から以下の意見を述べました。

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木の由来を話をされた方がたくさんいて頼もしかったです。

「皆に言われたので○○県産材にした」という方も多かったですが、ココに集まられた、木の建築に挑戦されようという方は、木材のトレーサビリティに是非もっと関心をもって頂きたいと思います。
皆さん木の由来を話をされたときに、どうしてそのことがわかりましたか?

供給者がそういっていた、○○県産材といっていた、からですか?

先ほど速水さんが言われていたように、DD(デューデリジェンス)をやってください。
いわれたからでなく、「建築関係者は、その情報が正しいのだということに責任を持つためにできるだけのことをする」
供給者が「こうですよ」といったときに、「どうしてそのことがわかるのですか?」と聞いてください

DDというのは、「供給側のサプライチェーンの人たちが必ずしも信頼のおける人たちだけでない」という前提で組み立れられています。
違法伐採対策で構築されたのが木材供給のDDです。

残念ながら日本の山づくりにも今リスクがあります。
皆伐されたあとの山に植林がされる率が3-4割です(林野庁もいってます)。
次世代の山づくりが問題になっているので、その事態を解決するために皆さんも貢献していただきたいです。
「この木材の供給跡地の山は再植林されていますか?」と聞いていただきたいです

本日のプレゼンで再植林されていると答えられた方が、お一人でした
是非、木の建築賞に応募される方は、木材の跡地の森づくりを確かめて応募するようにしていただきたいです。

特に九州地方は大切なんです。九州で皆伐は進んでいます。日本の東の方の山づくりはこれからです
九州で皆伐跡地の山づくりが、建築関係者との連携でうまくいけば、日本中の山づくりが前に進みます

よろしくお願いしまーす。

選考会終了後、参加された方から、連絡をいただきました。

「地元にかえってから関係者との議論でこんな話をしました。同賞の評価でデューデリジェンスができていないことがトピックスとなりー 「結果としてちゃんと再造林しても、再造林した森林から持ち出した木材であっても、適正な手続きをもって説明できなければ、行ってないのと同じ取扱いだ」は、関係者も忸怩たる思いがあったようです。経済団体や森林行政に意識してもらえたことは、これから○○県内・九州各県関係者を説得していくのに大きなポイントになったかと感じております。」

選考過程のこのようなコミュニケーションが、フィールドで頑張っている皆さんに少しでもインパクトをもたらしたら、嬉しいです。今後ともフォローしてまいります。

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(木づかいシンポジウム2023「活木(カッコ)イイ」のプロに聞く、ウッド・チェンジを語ろうin農林水産省ーと再造林問題)

木材利用推進月間のメーンイベント(主催者挨拶)が、24日に開催された標記シンポジウム

ネット上に掲載された開催趣旨は、木をつかうことが、「未来志向でサステナブルな社会の実現に繋がるカッコイイ取組・価値観であることを主にZ世代に向けて発信します

ごめんなさい、Z世代ではないんですが、再造林が気になって、出席しました。

プレゼンターは以下の方々

 プレゼンター  主たる内容 参考情報 
 今山 哲也(佐伯広域森林組合 代表理事専務)  再造林率はおよそ100%。!!!/
立木を買ったときに、植え付け下刈りをする経費を差し引き、森林組合は作業実施。
 再造林型木材取引協定
再造林率100%》佐伯広域森林組合が実現できる、その鍵とは?
 安齋 好太郎(株式会社ADX代表取締役) 森と生きるウッドクリエーター/ 森のカルテなど森林情報をネットを通じて共有  ADX4つの事業領域
 青木 周大(三菱地所株式会社 関連事業推進部 副主事 兼 MEC Industry)  2015年ぐらいから木材利用を研究。札幌の大通り公園のホテルなど木造事例を蓄積中 三菱地所グループ 木材調達ガイドライン
 依田 明史(三井ホーム株式会社 施設事業本部 賃貸住宅事業推進部 賃貸住宅事業推進グループ長 兼 事業推進室 施設営業推進グループ長)  木造集合住宅モクションを展開。購入者のアンケートが蓄積され環境志向の市場を確信 三井不動産サステイナブル調達基準 
 原田 真宏(株式会社マウントフジアーキテクツスタジオ一級建築士事務所)    
     

質疑の時間があまりとれなかったのと、Z世代でないので、遠慮して、あとで、プレゼンターの皆さんにメールで連絡しました

 名刺交換をさせていただいたウッドマイルズフォーラム藤原です

素晴らしい報告を聞かせていただきありがとうございました
お話を聞いていて、いろいろ思いがこみ上げてきましたが、Z世代でないのであの場では少し遠慮して・・・
良い機会をいただいたので、その一部をお伝えするメールを差し上げます。

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環境的・社会的・経済的視点から循環社会を主役であるはずの木材・地域材・国産材などをどのように普及していったらよいのかなど、考えてウッドマイルズフォーラムなどの活動をしてきました。
そのような観点からビジネスの主流であるビッグビジネスの方々も含めて、林野庁のシンポジウムに登壇される時代が来た!と喜んでいます

他方で、皆伐跡地の再造林が3-4割しかさえていない現状、令和の木の時代の後山が、後世の人たちにどのようにみられるのか、不安でもあります
そんな中で、昨日のイベントの最初のプレゼンが100%植林の今井様のプレゼンから始まったのは、素晴らしいことだったです。
「無理をしないとそうは(100%植林には)ならない」・・・という現場のお声を聴きながら、それでは、「全部植林しないと木材が売れない」といったシステムができないものかと、思いました

環境配慮に関するパフォーマンス開示を求められているビッグビジネスの皆さんは、木材でビルを建てる時に使う木材の供給先にそんな(再造林されてますか?といった)要求をされているのかな?そんなシステムを望んでおられるでしょうし、すでに構築する動きになっているのではないか?

長官も基準のシステム化を考えていらっしゃるようだし・・・

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(終わりに)

木材利用が進む。そして広がるユーザーの中に、将来の街づくりなど社会的・環境的要素を見据えた建築関係者や、環境パフォーマンスの開示にこだわるビッグビジネスの方がたくさん。

行政が進めてきた、森林管理の様々な仕組みが、一回り大きくなる段階になっているようです。

日本の森林ガバナンスも、これらの方々と連携をとって次のステップに入っていく時代の入口にたっていると、改めて感じました。

丁度、生物多様性条約のあらたな枠組みについて勉強部屋のZOOMセミナーで登壇した、香坂先生が、COP15の新らたな合意枠組みを実現するには、国にだけでは難しい、市民や企業などさまざまな関係者の連携が必要、といわれていたのを思い出します。

このステップをみんなで登っていきましょう。

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junkan10-10<saizourin>

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木材利用が進むとたくさんいいことはあるけどー森づくりは?・・・ー勉強部屋ニュース291編集ばなし(2023/10/12)

フロントページは、木の利用推進と次世代の森林の造成ー木づかいのイベント出席で考えたこと

10月は「木材利用促進月間」ですーウッド・チェンジ ~木使いが森をよくする暮らしを変える~というメッセージが、林野庁でなく、経産省のサイトにでています。「農林水産大臣を本部長、関係大臣(総務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣)を本部員とする「木材利用促進本部」を設置することになり、木材利用拡大の機運を高めるため、産学官が一体となった国民運動を「ウッド・チェンジ*」を合言葉に促進・展開します」。と続きます。

本当に木をつかうことで、森がよくなっていくのか?環境を意識した川下のビジネス関係者と川上の関係者が連携して頑張るシステムが本当にできるのか?正念場ですね。

丁度、11月6日に合法伐採木材利用促進全国協議会というイベントがあり出席しましたが、国交省の担当者もWEB参加していたので、「ゼネコンの人たちに是非クリーンウッドしかつかわないようにしてくださいね」といったら、「担当部局から伝えてもらいますと言われました。この続きは、またご報告します。

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岸田首相が臨時国会の冒頭10月23日に所信表明演説をしました。2017年の10月26日菅総理が所信表明表明演説で「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」。力強いCN宣言はインパクトがありました。

それでは、岸田総理は今年所信表明演説で何と言ったか?「経済、経済、経済」、コストカット型の経済から脱却・・何よりも経済に重点をおくのだそうです。

「持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させる」国連決議)我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための2030アジェンダ」2017年)が重要なのに、経済・経済・経済なんですね!それでいいんですか?という質問も出ないんですね・・・。

「3年程度の変革期を視野にいれて」、と短期的な課題が大変で、持続可能な社会にまで目が行き届かない!!頑張ってください

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ZOOMセミナー第三回の報告。生物多様性を巡る国際動向:COP15とビジネス、政策への示唆。

今回セミナーを企画してみて、気候変動と多様性を比較して、多様性の方が遅れている理由をいろいろ考えてましたが、市民にとって地域にとっては、気候変動より生物多様性の方が取り組みやすいと面があるということが、よくわかりました。

逆に国にまかせておてもうまくいかないという愛知目標の反省。ビジネスと生物多様性を結ぶシステムTNFDなどこれからの構築作業が始まるようです。、勉強部屋としてお勉強すべき内容がたっぷりありそうなので、しっかりフォローしてまいります。

第4回は12月2日あと一か月、『森と建築を一緒に考える』とどんな世の中になるのかな?ー建築関係者と一緒に考える。こちらからどうぞよろしく

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それではよろしくお願いします

次号以降の予告。林業経済研究所のシンポジウム「森林と健康の新時代」報告/ カーボン・クレジット市場、東証が開設/ 第2次岸田政権の閣僚と森林林業木材行政/ 高度機械化山林作業システムと高度集成材製造施設/ 『森と建築を一緒に考える』とどんな世の中になるのかな?ー建築関係者と一緒に考えるー勉強部屋Zoomセミナー第4回報告/ 

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com