生物多様性を巡る国際動向:COP15とビジネス、政策への示唆ー勉強部屋Zoomセミナー第3回報告(2023/11/9) | ||||||||||||||||||||||||||
10月14日勉強部屋Zoomセミナー本年度第3回を開催し、昨年末に開催されたCOP15で決まった、生物多様性条約で愛知目標に次ぐあらたな枠組みなどをテーマとしたお話を聞いて意見交換をしました。 ゲストは、COPに参加されたお二人。生物多様性政府間パネルIPBESの統括執筆責任者などをつとめる東京大学農学生命科学研究科香坂教授と、生物多様性ベンチャービジネスリーダー(株)バイオーム藤木社長でした。 生物多様性条約が、気候変動枠組み条約よりすこし出遅れていたけど、いよいよビジネスへの浸透で、社会に大きな影響を与えつつある、重要な局面。 内容をご紹介します。(私の個人的責任でのつまみ食いです) すこし長い報告になったので、目次をこちらに((香坂教授の話:生物多様性と私たち)) いただいたプレゼンデータをこちらにおきます (生物多様性条約とは)(合意された枠組みとネイチャーポジティブ)(枠組みの構成)(ビジネスに関する2030ターゲットとTNDC)(自然共生サイトの国内事例) ((藤木さんの話:生物多様性に関する国際動向とビジネス最前線)) いただいたプレゼンデータをこちらにおきます (バイオーム社紹介)(社会問題としての生物多様性)(経済から見た生物多様性ーTNDC)(会社の取組紹介) ((ダイアログセッション)) (進展をはかる定量的指標)(自然共生サイトに貢献する企業の在り方)(参加者からの質問) ((勉強部屋の課題)) 香坂教授のプレゼンタイトルは「生物多様性と私たち:生物多様性条約COP15 での新たな展開と企業、市民、行政ができること」 生物多様性条約には三つ目的があります。 地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること そうなんです、「生物多様性保全条約」でなく、持続可能な利用と、利益の公平な配分まで視野にいれた、「生物多様性条約」CBD まだ、わからないことがたくさんある生物多様性の世界(右の図)、学術研究者の力が試されます。 都会で生活していると、わかりにくいところがあるかもしれないけれど、豊かで快適な生活に必要な、安全性、安定した生活、健康、良好な社会関係、といった要素(左の図(ミレニアム生態系評価の報告書より)右側)に生態系は関与しています。そして左側のサービスの構成要素を支えているのが、森林ですね。 愛知目標にかわって、今回合意された、「昆明モントリオール多様性枠組み」(以下「昆明枠組」といいます)の基本的コンセプトは「生物多様性の損失をとめ、回復軌道にのせる」(右の図右側)ネイチャーポジティブ(という言葉は文書の中には残らなかったが)大切なコンセプト。 左の図が全体の構成を示す図(環境省) 図の左側の50年に向けたビジョンの柱は愛知目標とほぼ同じ。 図の右の上の2030年のミッションが、前述のネイチャ―ポジティブで、具体的な課題が、右の下にターゲットに並んでます。 特に説明があったのが、アンダーラインをつけた以下の4点 T330by30、陸と海のそれぞれ少なくとも 30%を保護地域及び OECM により保全 (30by30 目標)、丁寧なご説明でした。勉強部屋でもごご説明してきました。生物多様性が拡大する社会は森林ガバナンスの制度とどんな関係ー30by30の実現への道筋(2023/2/15) T6外来種:外来種の導入経路の特定及び管理、優先度の高い侵略的外来種の導入及び定着の防止、他の既知または潜在的な侵略的外来種の導入及び定着率(この言葉は日本の提案。導入率ということばを評価しやすい定着率に変更)の2030 年までの少なくとも50%削減、特に島嶼などの優先サイトにおける侵略的外来種の根絶又は防除によって、侵略的外来種による生物多様性と生態系サービスへの影響をなくし、最小に留め、低減しそして又は緩和する。、 T8と11:Nature based Solution(T8)気候に対する行動による生物多様性への負の影響を最小化し正の影響を向上させる形で、自然を活用した解決策及び/もしくは生態系を活用したアプローチ等を用いた緩和、適応、及び防災・減災の行動を通じて、気候変動及び海洋酸性化による生物多様性への影響を最小化するとともに、レジリエンスを増強させる。(T11)すべての人々と自然のために、自然を活用した解決策及び/又は生態系に基づくアプローチを通じて、大気、水及び気候の調節、土壌の健全性、花粉媒介及び災害リスクの低減、並びに自然災害からの保護 T15ビジネス今回のメインポイントであるビジネスの影響評価・開示、次に説明します 枠組みの原文でビジネスに関係するのは以下の文書
ビジネスにたいして、非財務情報の開示(コミュニケーション)がいわれており、Task force on Nature related Financial Disclosure (TNFD)が重要な役割を果たしそう 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)左の図の上に欄 •2019年1 月:世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想 9月にTNFD最終提言v1.0の開示がありました。(内容は藤木報告に) そのあと、香坂教授のレクは、国内の30by30に向けて取組んでいる、自然共生サイトの事例報告になりました。 COP15で決まった国際枠組みの合意事項について、国内企業などが貢献するわかりやすい事例。 「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域(企業緑地、里地里山、都市の緑地等)を、環境省が自然共生サイトに認定する仕組みを構築中。2023年度から正式に認定を開始。」 「⚫ 認定地は、保護地域との重複を除き、環境省がOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として、国際データベースに登録することで、COP15で決定予定の次期世界目標に直接貢献していることを示すことができる。」 別途報告しますね「自然共生サイト」の第一次認定結果が公開ー今後森林ガバナンスの制度が蓄積してきたツールの評価がされる30by30の実現への道筋(2023/10/9) 以上が香坂教授の報告です。以下にプレゼンテータをおいておきます。是非ご覧ください→「生物多様性と私たち:生物多様性条約COP15 での新たな展開と企業、市民、行政ができること」 株式会社バイオーム藤木社長のプレゼン内容ご紹介 左の図、京都にある「生物情報プラットフォーム運営、生物アプリ開発運営」をする会社 あとで事業紹介しますね 約100 万種の生物が絶滅の危機(IPBES 2019 )、現在、大量絶滅が進行中 (アメリカ自然史博物館)、100 年で地球上の生物の50%以上が絶滅の見込み (ハーバード大学E.O.ウィルソン)、などと言われています。 気候変動と生物多様性は世界二大環境問題です。世界経済フォーラム2022(ダボス会議)によると、今後10年で最も被害が大きくなるリスクは?①気候変動の失敗,② 極端な気象,③生物多様性の喪失とされています。 長期リスクの見直しが始まっています。世界経済フォーラムでは長期リスクの上位の5位が環境問題(左の図) ⚫次のリーマンショック級のリスクは何か?→環境問題 二つの地球環境問題を比べると、気候変動対応が進んでいて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が普及し、 気候変動に関係して、日本は中国、インドと並んで半分以上が化石資源による電力だが、他の先進国は半分以下(図右)。 石油、石炭、天然ガスは、社会的規制によって、市場や社会環境の大きな変化で、価格が大きく下落する、座礁資産になる可能性。 生物多様性も追いついて・・・ 自然資本の一部が座礁資産になる可能性がある。(森林の一部が座礁資産に)そして・・ TCNDに変わる、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース、Task Force on Nature-Related Financial Disclosures)が最近最終報告V.01を公表しました。 これによると、勧告された開示事項は、TCFDと同じ「ガバナンス」、「戦略」、「リスクとインパクトの管理」、「指標と目標」の4つの柱で構成され、14のうち、11はTEFDと同じ項目。 右の図の黄色い部分が、TCFDにない項目で、一番左のガバナンスの柱では①「人権方針とエンゲージメント」、左から二番目の「戦略」の開示の柱に追加された②「優先地域」、右から2つ目の「リスクとインパクトの管理」の柱に追加された③「上流から下流までのバリューチェーン全体の考慮」です。 三つとも、自然資本を提供する土地に関係するもので、どの土地に関係するリスクか(②)、さらに原料供給のサプライチェーンはどの土地に関係するか(③)、そして、その土地に関わる関係者は(①)といったことの開示が求められるようです。 4つの柱のうち一番右の赤い四角で囲んだ、具体的に現場に関してどんな測定指標をもとめて、目標値を定めるか?という「指標と目標」について、すこし説明がありました(左の図)。下の青い三角にあるように、core global metics(開示が必須の測定指標)で14あるとされます。 (D&I)Dependencies and impacts:依存と影響、(R&O)Risks and opportunities:リスクと機会の二つに分類され、
依存と影響に関する指標が9つ、
TNFDについての説明の最後に、⚫「地域性」が高く、場所と紐づけて開示する必要がある⚫セクターごとにやることが違う⚫自社でシナリオ分析をする必要がある・・・「難しい理由をあげだしたらキリがないので、できることから始めよう」というまとめ
最後に、バイオーム社の業務紹介。 研究者時代からリモートセンシングは有効だけれど、現地のデータとセットになることが必要なのに、それが組織的にできていないという問題意識。 スマホで生物多様性をモニタリングしよう。「自然環境(生物多様性)をデジタル化して、保全を加速させるプラットフォームをつくる}(会社のミッション)ということで、会社を立ち上げ、左の図の三つのアプリを開発。ユーザーが85万人います。 詳しくは、バイオーム社のサイトを ーーーーーーーーーーー 以上プレゼンの説明です 私からは2つの質問をしました Q1 お二人の話は気候変動と生物多様性を比較して、前者が進んでいたが後者が追い付いてきたというストーリーをおっしゃいました。私もこの二つの比較した場合、進捗の差がなぜ出てくるか?ということに関心があり、その要素は色々あるかもしれないが、対応の進展度合いを計る指標が、前者はGHGの排出削減で、非常に明快な一つの指標をもっているけれど、生物多様性はそれができていない、という問題があったかと思います。いろいろ単純な指標を形成しようという努力はされているようですが、その辺どうなっているか?単一指標に向かっていくのか、そうでないのかなども含めてお話を伺いたい。 A1from 香坂教授: 数値目標は愛知目標から今回の昆明枠組で増えている。23のターゲットの中にヘッドライン指数、コンボ―ネント指数など階層化するなど。なかなか一本化することにならないが、土地の利用という側面がわかりやすい指標としてと整理をされて来ていることは需要。 A1frpm 藤木さん: 個人的に数値を一本化する話は重要だと思っていて研究者時代(10年以上前)には、そのことばかりやってきた。 関連する学術関係者も30年ぐらい前から取組んで来たがうまくゆかず、個人的には生物多様性保全利用の効果の指標を一本化するのは無理だということのように思う。その理由の一つは「地域ごとに取組むしかない」という側面があるから。ただ、面積という指標が大切になっていて、OECMに取組む面積を増やしたら、あそこを開発してよいなど取引につかわれる動きもある。 ーーー了解しました、一本化することはない、それでもいくつかの指標をしっかり念頭に取組んでいくことの重要性を今後学んでいくことが大切だと再認識しました (30by30にに向けた自然共生サイトに貢献する企業のありかた) Q2 昆明枠組みを具体化する動きで我々の回りで動き出している重要事項は、30by30 2030年までに陸地の30%を保全する目標で、具体的な手続き「自然共生サイト」への登録が、始まっています。(10月6日に今年度前期の認定結果が発表)。企業や行政を相手に、これにどうとる組むべきか?という点を伺いたい。 A2 from 香坂先生:企業が自然共生サイトに取組むと、投資家や地域からレピュテーション評価という形で、あきらかに良い環境なることは間違えない。また、気候変動と比較して生物多様性の良い点だが、「地域に貢献」ということがわかりやすい。だから全国紙でなくて、地域のコミュニケーションで重要な役割を果たしている地域新聞などにわかりやすく報道される可能性があるだろう。これが気候変動対策との違いである。また行政との関係では、フィンランドでは、木材生産をやめて生物多様性に貢献した場合、地域によって(多様性の豊かな南部など)は補助金を出す制度がある。フィンランドより日本の方が多様性豊かなんで、もっと発展した制度ができるのでないか?また、地方行政では、国の自然共生サイトでなく、たとえば三重県版の認定などもつくられてきている。地域との連携という点では、他の地域でも是非展開してほしい。 ーーーーありがとうございました。藤木さんのプレゼンの中には、この点にいついて、自然共生サイトに登録する過程で、バーオームで収集したデータが大きな貢献をしている具体的な事例があがっています。是非プレゼンデータをご覧いただければと思いますし、このサイトとしても藤木さんの事業展開を30by30の観点から是非フォローしてまいりたいと思います ーーーーまた、今日のダイアログて土地をどのように管理していくのか、線引きしていくのかということが生物多様性サイドかどんどん提起されてくることになるようなので、森林ガバナンスというサイドからも重要な提起だと思いました。今後勉強部屋でも是非深めてまいりたいと思います 全部は答えられなかったのですが参加者から質問をいただきました。
今回セミナーを企画してみて、気候変動と多様性を比較して、多様性の方が遅れている理由をいろいろ考えてましたが、市民にとって地域にとっては、気候変動より生物多様性の方が取り組みやすいと面があるということが、よくわかりました。TNFDもまだ、いろんなどんぶりに具体的なよい事例を盛り込む段階のようです。TNFDなどこれからの構築、勉強部屋としてお勉強すべき内容がたっぷりありそうなので、しっかりフォローしてまいります、よろしくお願いします ・・・・ (森未来と連携) 昨年から素晴らしい内容を多くの方の共有できるように、持続可能な森づくり向けたビジネスネットワーク構築を進めている株式会社森未来さんと、共催企画としました。 zoomの設定とか、皆さんへの案内、アンケートの回収など、大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いします また、近くの山の木の環境パフォーマンス見える化に取組んでいる一般社団法人ウッドマイルズフォーラムさんと連携して開催しました。 国産材の時代を迎えた関係者の方々にWMFの蓄積を紹介する場ともしてまいります。 konosaito3-24<zoommt23-3rdrepo> |
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