ディ―プグリーンを牽引した籾井さんー籾井さんお別れ会に出席(2025/4/20)

4月19日に開催された、籾井まりさんお別れの会に出席しました。

籾井さんはディ―プグリーンコンサルティングという会社を立ち上げて、持続可能なサプライチェーン管理・ディユーデリジェンス等追いかけてきた方。

一昨年2023年7月に開催された勉強部屋ZOOMセミナーのゲストにも来ていただき、「欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考という話をしていただきました。

その時すでにガンが発病中で、昨年4月になくなったのだそうです。

北米や欧州の環境ガバナンスの最前線の情報を伝えていただいた籾井さんには、「地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える」産官学民の情報交流の広場をめざします。という勉強部屋では本当にお世話になりました

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南東アラスカ温帯雨林ートンガス国有林とその周辺の旅(2006/09/10)
シンポジウム世界の違法伐採問題と日本の木材消費(2017/5/30)
EU 木材規制のリスク木材デューディリジェンスとクリーンウッド法の今後の展開 (2019/11/15)
行政・市民・企業の役割-シンポジウムグローバル森林新時代(2020/10/15)
欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考ー2023年度勉強部屋Zoomセミナー第1回報告(2023/7/15)
 環境ガバナンスと日本企業(1)、日本製紙グループの取組(2023/8/3)

(勉強部屋の原点になったー南東アラスカ旅行)

初めて、私が籾井さんにお会いしたのは、2006年に開催された籾井さんの関係団体(温帯雨林ネットワークWTRN)が主催する南東アラスカの旅。前年のイベントに参加された速水亨さんからのお誘いでした。

勉強部屋にも紹介しましたが、(主催者側の思いと、参加した私の立場)

WTRNの考えは「国有林からは買わない、私有林にはFSCを求める」とされています。同地域の開発が及んでいない大規模な森林地域の管理を巡って、WTRNは同地域の約8割を占めるトンガス国有林の管理計画に対する異議申し立て、民間会社の生産林を森林認証したうえでその製品を日本への販売促進、という方針で臨んでおり、今回の旅行の中でその背景への理解を得たいというのが主催者側の思い

 籾井様、速水様

温帯雨林ネットワークの目指すものが重要な点を含んでいることは十分に理解できますし、その活動には敬意を表するものです。
ただし、事情が十分に理解できない北米の森林管理の事案について、そして、たぶん関係者の意見が対立しているであろう事案についてネットワークの主張にたって何らかの活動をするということは、むずかしいです。
私としては、ネットワークの皆さん方の意見に十分敬意を払いながら、関係者の意見を聞いて、森林管理に関するコンセンサスがどうやって醸成していくのかということを勉強してみたい、というのが私の関心です。
また、生物多様性という概念が、森林管理の中で取り入れられる相場が、先進国の中でどの程度になっているのか、特に森林管理の当局者の中でどんなに受け止められているのかに興味があります。
そういう意味で、是非連邦有林の管理者の方々の主張をお聞きしたいです。もしもそれができないなら、事前に かれらの主張をよく理解しておきたいです。

5月3日
藤原敬

このようなレターを差し上げて、参加しました

世界に少ない温帯多雨林の中の木材生産の位置づけ。重い課題です。環境NGOの人たちの国有林の衝突と調整過程ですね。どこにでもある課題

現在どうなってるかと、少しネット上を調べてみました。籾井さんに報告。

現時点でのトンガス国有林サイトTongass National Forestに現行の森林計画Land and Resource Management Plan(2016)が掲載されています。

その中にAppendix A Identification of Lands Suitable for Timber Production and Limitations on Timber Harvestというセクションに左の図が出ていました。

トンガス国有林全体の面積のうち、木材生産が可能な土地が、3.4%でしょうか。

籾井さんたちの運動が実ったということですね。(2006年の計画には行き着きませんでしたが)

でもトランプ大統領が、この結果を見てなんていうか、米国トランプ大統領の国際戦略の中の木材(1)ー米国の木材増産命令・自給率アップの号令。フォローしますね。、トランプ大統領VS籾井さん

(クリーンウッド法へ提言と宿題)

具体的政策提言という視点で、籾井さんの仕事をフォローすると、林業経済誌2020年6月号に「世界の森林資源と日本のクリーンウッド法(特別寄稿)日本の木材業界はデューディリジェンスという概念を導入できるか?」とい「特別寄稿」が掲載されています。

2016年に成立したクリーンウッド法が22年に改正予定というスケジュールを念頭に、5点の具体的提言がされています。

課題 改善案
短期的対応
1 法的拘束力はないため、登録しない事業者もおり、それに対する罰則規定もない。 :合法性確認と登録を第一種事業者のみを対象とし、法的拘束力のある義務とする。 登録していない事業者に対する政府による検査やモニタリングが有効である。
2 合法性を確認するための法律が特定されず幅広い(= DD を実践しづらい リスクの概念を明確にし、合法性確認方法について政府によるより詳しいガイダンスを発行(ガバナンスや社会的要素も入れる)する 、各社は調達方針を設けリスクベースで DD を実践し、業界団体が情報提供などを行い、これを支援する。
3 合法性が確認できなくても流通してよい。 確認できないものは流通しない(期日を設定)。
4 :登録実施機関による審査基準や報告義務の最低範囲が明確でない。 上記を統一し公開する。ただし各登録機関がそれ以上のことを要求することによる差別化は自由とする。
5 従来の業界団体主導の団体認定制度と登録制度が並行して採用されている。 団体認定制度に DD の要素を反映し、特に中小企業には一括登録のサービスを提供し、登録実施機関は一括登録の場合には価格に反映させる。

わかり易いな提案ですが、その後のクリーンウッド法の改正で、上記がどのように取り扱われたかな?

上記指摘事項の、「2 リスクの概念を明確にし、合法性確認方法について政府によるより詳しいガイダンスを発行(ガバナンスや社会的要素も入れる)する」については、改正クリーンウッド法6条に「当該木材等が違法伐採に係る木材等に該当しない蓋然性が高いかどうかについての確認(以下「合法性の確認」という。)をしなければならない。」として、DDに関する説明規定が入るとともに、第10条では、「主務大臣は、木材関連事業者に対し、第六条第一項の規定による原材料情報の収集若しくは整理、第七条第一項の規定による記録の作成及び保存又は第八条の規定による情報の伝達(第十三条第一項において「原材料情報の収集等」という。)の実施に関し必要があると認めるときは、必要な指導及び助言をすることができる。」との条文が加わりました。(籾井さんのアドバイスの通りかな。)

後の項目は、勉強部屋で提唱してきた、指摘事項5の業界団体の取組との連携を含めて、4月に施行された改正クリーンウッド法ですが、施行後3年の見直しの際にまでの、宿題ですね。

以上です

籾井さん!しっかり見守ってくださいネ。

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jyunkan10-24<momiimarisan>

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