欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考ー2023年度勉強部屋Zoomセミナー第1回報告(2023/7/15) |
7月1日勉強部屋Zoomセミナー本年度第1回を、ゲストに、籾井まりさん(ディープグリーンコンサルティング代表)をむかえ、「欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考」というタイトルで開催ました。 日本の森林行政をグローバルな視点から勉強しようという勉強部屋ですが、籾井さんは欧州のNGOと行政の関係を調査されて最新情報発信されてきました。 (現時点でDDを勉強する二つの意義) 今回のタイミングでお呼びしたのは、欧州発のデューデリジェンス(DD)(以下DD)に対応するCW法改正のタイミング。 川上の第一種事業者に対して合法性の確認をより、強くもとめる法改正が行われましたが、林野庁は、第一種事業者の合法確認のことをDDの実施と説明してきました。(右の図) クリーンウッド法が海外の動向を見据えているので当然なのですが、そもそもDDとはなにか? 今後のCW法の施行までの検討過程で大切なことなので欧州の森林ガバナンスの研究をすすめてきた、籾井さんの聞くことは良いタイミングです。 もう一つ、準備過程で籾井さんのプレゼン資料を勉強しながら分かったことは、木材を使うビジネス関係者が社会的環境的影響を視野にいれてビジネスを展開するうえで、DDが大切なツールになってきているということです。 ビジネスの関係者がESGなどの関心を広げている重要なタイミングでDDの勉強の意味があると気づきました。 ということで、絶好のタイミングでのDDに関するプレゼンとその後のダイヤログセッションをの概要をご紹介します。 いただいたプレゼン資料はこちらに置いておきます。 ((DDとは何か?)) Dueとは、「・・・がおこる予定であること」 二つ合わせると「勤勉な人なら普通やっていること」ですね。 一定の要求事項を満たしたい、または義務を果たしたい人(法人)が払うべき注意(左の図) 一定の要求事項とは、CW法の場合は自分が購入する木材の合法性だし、欧州の場合は、さらに進んで森林減少劣化のリスクにかかわっていない・・・(後で説明します) 「一定の要求」が拡大している話に進む前に、合法性を確認したい会社が払うべき注意とは? 右の図は、籾井さんが、プレゼンの最初と最後に示した図です。DDとはなに?本日の話のエッセンス。 DDといえば何をすればいいんですか?と聞かれるときの一枚です。 これが、DDですので、CW法に関しても林野庁がこれから様々な情報を提供してくるでしょうが、当然それもしっかり参考にし、それ以外のたくさんある情報も参考にして、取引に関する個別情報を集め、リスクを評価し、リスクがある場合はそれを少なくする措置(緩和措置)をとり・・・そのために何をやったらよいか、何をやらなくてもよいか、自分で考えて下さい。 これが、DDです。 海外の話に行く前に、日本の企業の先行事例を紹介します。籾井さんが作成過程に参画したものが多いです。 日本製紙連合会、合法証明 デューディリジェンス(DD)システム会員企業のデューディリジェンス(DD) マニュアル雛形(2017) 環境パフォーマンスデータの開示という議論を一歩進めようとされている企業の方々は、是非参考に! ((EUはEUTRからEUDRへ)) さて、欧州の話です。 欧州の違法伐採対策は、EUTR(EU Tmber Regulation 木材規則)という形ですすめられました。 最初にEUに木材を導入する事業者を(Operator)と呼びDDを義務化しました。 Operatortと日本のCW法の第一種事業者の定義と同じ(EUTRが2013年でCW法が2016年ですからCW法がEUTRのコンセプトを導入)で、DDを義務化するCW法改定は2023年なので、10年あとになりました。 (EUTRの課題・問題点) EUTRの進展状況の調査について説明がありました。 一番気になったのが森林認証との関係。 前々から気になっていました。 右は、籾井さんのプレゼン資料。認証製品は非認証製品よりもメリットはあるが、認証製品であればリスク評価をしないというのでは、EUTRのDDの義務を果たすことはできない。ということですね。 確かに最近でもベトナムで、認証取得者によって大量に虚偽表示をした木質ペレットが製造・販売された事実が公表されています。 アジアにおける木質ペレットサプライチェーンの信頼性リスクが確認(FSCジャパン) こんな背景ででてきた、厳しい枠組みですが、認証制度が提供する情報だけではだめ!DDのやるべきことを判断する基準になっています。 なんのためにFSCだとか、PEFCだとか言ったシステムを構築してきたので、智恵を出す必要がありそうですね。 その他に、米国のNGOForest Trend EUの事業者に行った調査の結果が紹介されていいます。(p.23-26) ーーー すべての事業者が社内にコンプライアンス担当者を設置、ただしコンプライアンス予算を設けているのは1/4 そして、DDとしてチェックしている項目、リスク緩和措置など、EUの平均的な事業者が取り組んでいる、勤勉な人ならふつうやっていること参考になると思います(上の図p25-26) (EUDRとは) 欧州の違法伐採対策を仕切っていたEUTRが、新しくEUDR(EU Deforestation Regulation)になるんだそうです。(p.27から) 2021年から議論してきて、今年の5月に成立。今後18か月後から施行だそうです。日本のCW法改正とタイミングはほぼ同じです。 EUTRからEUDRに移行すると、主として三つの点が変わるようです(右の図) 合法性だけででなく森林減少・劣化のリスクに対応。(つまり、森林が農地の転用されたところから生産された木材は×。原生林や天然更新を続けてきた森林を植林地にすることに伴う木材は×) 木材だけでなく農産物も管理します。(つまり、最近(20年12月31日以降)森林を農地にした場所で生産された農産物は×、先住民の権利など違法性のある農産物は×) サプライチェーンのDDの強化義務。(すなわち(DDを森林認証で肩代わりするのは×、産地の地理的な位置情報が求められることになりますよー(いつからかな?)) 今後、国、地域、製品ごとにEUから3段階にリスクレベルが公表されるそうです(これはフォローします) 最後の方にチャタムハウスお調査結果が紹介さました。(上の図は一部) 合法性から持続可能性に移行している。森林減少問題が気候変動・生物多様性・人権問題などをめぐって共有かされ、セクター間商品間の共有課題となってきた そこで、いままで二国間の協定などが進められてきましたが、協定でなく協働でDDが主役になってきますーー ーーーー 籾井さんのプレゼン概要は以上です すいません、私の勝手な抜粋になっていますので、ご関心のある方は、是非プレゼン資料を是非ご確認下さい。 プレゼン資料こちらにありますダウンロードください⇒欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考 ((質疑の時間)) 私からは三つの質問をしました Q1(DDとは何か) 林野庁の説明聞いていても、「どんなことをしてくださいというリストはしっかり作成しますので、参考にしてくださいね」、といった説明があり、「自己責任なので自分でしっかり考えてください」といったニュアンスは伝わってきません。「自己責任」は籾井さんの大変重要な説明です。日本人は苦手・不得意という説明がりましたが、どんなことに注意したらよいか、(プレゼンでも触れられましたが)改めて、コメントをいただけますか? A2 「自己責任」ということばは少し怖い感じがするので、気を付けますが・・・。林野庁さんが、リストをしっかり作成するのは是非お願いしたいです。その他のリストも英語を含めるとどっさりあるので、それは参考にしてください。なにが自己責任というかというと、どの会社も世の中のリストに書いてあることをすべてやることはできません。例えば、すべての製品のサプリチェーンで人権問題がないかをチェックするなどはできません。すべての製品でなくリスクのあるこの製品(とこの製品)をときめて、それをする。あるいは今年はこれ、来年はこれと計画を作成して順にやるなど、いろいろ検討してやる、という知恵を出していただきたいです。 Q2 日本の先進事例をことを話されましたが、これを聞いて内の会社でもやろうとうところが、でて来ていると思います。そのような会社にアドバイスをいただけますか? A2 コンサル会社と連携して作成するのは普通だと思うので、情報を収集をしてください。ゼロデフォレステーション(森林減少破壊から決別)とか、先住民の人権問題など共通の課題になっています。その辺も含めてがんばってください Q3-1EUの関係で2点伺いたいです。一点目は「森林認証システムが」ということ。FSCのシステムを前提に考えると第三がチェックしてリスクは小さいのでないでしょうか?どんなリスクを考えているのですか? A3-1 買う側の理解不足からくるものですが、COCをもっているんだから、あそこが売る製品は安全でFSCの認証製品と誤解する人がいます。もう一つは、ベトナムでなどで、FSCの認定を受けた事業者が嘘をついた事案が摘発されています。そんなことが少し続いているのでこれらがが背景にあると思います。 D3-2 森林減少劣化は重要だと思いますが、「完全なトレーサビリティ」とは何でしょう。補足を。 A3-2 この製品の原材料がどの地域からきているか、ということが、基本です。そこを分かるようにする技術もアイソトープをつかったりして発展しています。ブラジルやインドネシアでは製品にタグ付けして元の生産地が分かるようになってきています。 ありがとうございました、資料の最後に日本の立ち位置はどうなる?という記事がついています。p.46。資料の在処が記載してあるので紹介しますね (参加者からの質問) Q林野庁の説明会の新聞記事があるけど、「グレーならグレーでよい」「リスクがあっても買ってもいいよ」と書いてあるが、これはおかしくない? A 説明会に出ていたが、確かに何回もそのような説明があった。法律がそのような趣旨になっているので、そう説明したのだけれど、クリーンウッド法なんで、確認できないものは、極力買わないように!というメッセージがしっかり伝わっていないのは気になった。グレーの話は難しい、欧州では白の製品なんてない(わかるはずがない)、白に近づける努力はしているので、みんな灰色 Q 資料のに“Primary forests” “naturally regenerating forests” の ”plantation
forests” または
Q EUDRにそってトレーサビリティを確認する、先住民族の話など、USDRより詳しく勉強する方法は A これからたくさん情報がでてくるので、勉強してください。勉強部屋でもフォローしますー(皆さんに約束) Q 建築関係者ですが、どのように、トレーサビリティを確保したらよいのか? A 地道な作業が必要。取引先に話を聞いていくことから始まるでしょう。リスクが高い産地国はオープンになっているのでそういう場合は、認証材をフォローしていくなど工夫が必要。(森未来でも相談にのります!) Q 行政主導というよりは、民間主導なの? A まあそうでしょう。CW法などより、民間の方々はどんどん進んで方もいるので、足を引っ張らないようにしてほしい ーーー 質疑のあと、藤原からお礼かたがた、ひとことお話しました。 CWの説明会ではいろんな話がありましたが、「『わが社はCWしか取り扱いませ』というメッセージをしっかり伝えられるような仕組みをつくります」、という素晴らしい説明もありました。そんなシステムも利用して、頑張っっていください。勉強部屋でもフォローしてまいります。 最後に籾井さんから DDをやっていくと、同じようなことをやっている人との新しい接点ができてきて、新しいネットワーク・連携が広がっていく可能性があります。そんなことを視野に入れて、頑張ってください。 皆様どうもありがとうございました!! ー--- 報告は以上です。 プレゼン資料こちらにありますので関心のあるかたダウンロードくださいね⇒欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考 ・・・・ (森未来と連携) 昨年から素晴らしい内容を多くの方の共有できるように、持続可能な森づくり向けたビジネスネットワーク構築を進めている株式会社森未来さんと、共催企画としました。 zoomの設定とか、皆さんへの案内、アンケートの回収など、大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いします konosaito3-17<zoommt23-1strepo> |
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