ニュースレター No.294 2024年2月8発行 (発行部数:1666部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:2024年施政方針演説と森林政策(1)-循環型林業(2024/2/8)
2. 気候変動問題から見た森林-IPCCの報告書とCOP28を踏まえてー勉強部屋Zoomセミナー第5回報告(2024/2/5)
3. 気候変動枠組み条約COP28と森林(1)公式会議での決定事項(2024/2/8)
4. 森林の未来をつくる、消費者と連携した次世代の森林づくりの方向はー勉強部屋Zoomセミナー第6回御案内ン(2024/2/8)
5. 大企業が森林に関心を持つ新潮流などー林政ジャーナル紙掲載(2024/2/8)
6. 施政方針と地球環境の関係は?・・・ー勉強部屋ニュース294編集ばなし(2204/2/8

フロントページ:2024年施政方針演説と森林政策(1)-循環型林業(2024/2/8)

毎年1回、1月中に召集される通常国会では、内閣総理大臣により、その年の内閣全体の基本方針を示すものとして、施政方針演説が行われるのが通例となっており、今年は1月30日、衆議院・参議院それぞれの本会議において、岸田総理により行われました

自民党の派閥の政治資金管理の裏金問題が捜査対象となる中で行われた演説でマスコミを含めた関心は、そちらに集まっていましたが・・・
日経新聞[社説]政策実現でも信頼回復につなげる国会に
朝日新聞(社説)施政方針演説 信頼回復の覚悟見えぬ

政府の方針の中で、森林政策がどのように扱われているのか、見てみました

(施政方針演説の構成)

内容は、首相官邸のサイトに掲載されています。第二百十三回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説

その中で章立てが示めされているので、それを拾うと以下のようになります。全文を掲載する各新聞が同じ章立てになっているので確定版。参考のために昨年の章立ても掲載しました。

(農林水産業の位置づけと林業)

施政方針演説の作成作業は各省庁が自分たちがやっている政策のプライオリティや位置づけを、国民にアピールする過程なので、大変な作業なのでしょうが、農林水産省の事案がどのにあるのか、そして林業は?

上の章立ての「地方創生」という章(昨年は「包摂的な経済社会づくり」という章にあった「地方創生」がステップアップして章に)の中に(観光・農業)という節があり、以下のような記述があります 。

六地方創生
・・・
(環境・農業)
 ・・・
地方が支える農業は国の基(もとい)です。我が国の農業が直面する、食料や肥料の世界的な需給変動、環境問題、国内の急激な人口減少と担い手不足といった、国内外の社会課題を正面から捉え、これらの克服を、地域の成長へとつなげていくべく農政を抜本的に見直します。・・・このため、農政の憲法と位置付けられる「食料・農業・農村基本法」について、制定から四半世紀を経て初の本格的な改正を行うべく、今国会に改正法案を提出します。
 さらに、不測時の食料安全保障の強化、農地の総量確保と適正・有効利用・・・、これらの関連法案も、今国会に提出します。
 あわせてグリーン農業、循環型林業、養殖業への転換など、環境に配慮した持続可能な農林水産業及び食品産業への転換を促進するとともに、国内の生産基盤の維持の観点も踏まえ、農林水産物の輸出を、より一層促進してまいります。

(食料・農業・農村基本法など)

林業の話に行く前に食料・農業・農村基本法の改正があるそうです。また、農地も送料確保と適正・有効利用のための関連法案が提出されるのですね。現時点(2月8日)で法案が提出されていないようですが、検討過程の情報をみると・・・・

「現行基本法に基づく政策全般にわたる検証・見直しを行い、国民生活の安定と安心の基盤を支える役割を将来にわたって担い得る食料・農業・農村政策の方向性を示すことが求められている。」として検討を重ねてきた、食料・農業・農村政策審議会答申(昨年9月)には、、「これまでどおり営農を継続できない農地では、粗放的管理や林地化等により、農地保全と環境保全を図る」(p39など)などといった記載があります。

日本の土地利用管理全体を視野に入れた記述で森林との関係性も内容に含まれてくる?フォローしていきます。

首相の国会演説の中の林業)

昨年の施政方針演説の中には、実は林業という言葉がありませんでした。(参考までに、岸田首相が初めて国会演説をした「所信表明」でも、ゼロ岸田新総理の所信表明と森林の未来(2021/10/15)

が、今年の施政方針演説では上記のように林業という言葉が一回はいっています。(「森林」はありません)

本体の主張のあとの、「さらに」「あわせて」という文脈で、後ろのほうですが、「循環型林業」という言葉が入っています。

(循環型林業とは)

さて、循環型林業とは何でしょう?

今回のテキストでは、「グリーン農業・循環型林業・・・への転換など、環境に配慮した持続可能な農林水産業及び食品産業への転換を促進する」となっているので、循環型でない林業がおこなわれてているので、転換をする!!という文脈ですね。

なんとなく、首相が「再造林がされていない現在の林業から決別」と言われたようなニュアンスが伝わってきます。もう一つは首相が気にしている「花粉症対策のために無花粉スギに植え替えよう」気持ちの表れでしょうか(ある林野庁幹部の解説)

正確に認識するために、「循環的林業」ということばが行政の文脈でどのようにつかわれているのかということをネット上で調べてみました。

ネット上で循環的林業とは、検索してみると、循環型林業とは?仕組みやメリット・デメリット、実践例もという丁寧な解説ページがあります。が、これはメディア情報で、行政の情報で循環的林業ということばを定義するような情報はありません(2月8日現在)

(森林・林業白書の中での「循環型林業」)

森林・林業白書の中で循環型林業という言葉を拾ってみました。

H26年度の白書8ページにH26森林及び林業の動向「1.森林資源の循環利用と木材産業」という節があり以下の記述があります。

(1)森林資源と木材利用をつなぐ木材産業
ア)森林資源の循環利用 
木材は、先人たちが植えて育てた森林から収穫(伐採)し、建築用材等として利用することによって、その販売収益を用いて伐採跡地に次の森林を植えて育てることができ、さらに将来の世代がその森林から木材を収穫(伐採)し利用することができる。この「植える→育てる→使う→植える」というサイクル(森林資源の循環利用)を推進することで、適切な森林整備が確保されるとともに、将来にわたる木材の利用が可能となる(資料Ⅰ-1左の図)。

よく見る、森林資源の循環利用のイメージ図です。「循環型林業」という言葉でで、林業関係者はこの図のことを思い浮かべるでしょう。

(森林・林業基本計画の中での、循環型林業)

それで、森林林業基本計画(2021年版)の中で、テキスト分析してみました。

ありました、43ページ

第3森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」
の中の・・・
6団体に対する施策

6 団体に対する施策

 森林組合については、組合員との信頼関係を引き続き保ち、地域の森林管理と林業経営の担い手として役割を果たしながら、・・・・。また、森林組合系統が新たに運動の基本方向を定め、地域森林の適切な保全・利用等を目標として掲げながら、市町村等と連携した体制の整備、循環型林業の確立、木材販売力の強化などの取組を展開していることを踏まえ、その実効性が確保されるよう系統主体での取組を促進する。

全森連の基本方針(運動方針、JForeetビジョン2030ー森林組合綱領−私たち森林組合のめざすもの−の中に、以下のような運動方針があります。
Ⅲ.新運動で掲げる目標及び取組項目
 2.循環型林業の確立と系統の木材販売力の強化

森林・林業基本計画で記載している「循環型林業」は、全森連の確立した運動方針の中にある「循環型林業」を支援しましょう、というのが文脈です

(循環型林業というコンセプトの課題)

ごめんなさい、岸田総理の施政方針演説に久しぶりに現れた、林業ということばを追いかけてきましたが、ネット上の情報をみる限り、以上の通りです。

グリーン農業とか、養殖漁業と横並びで、次世代に循環型資材としての木材を供給する再造林をしっかりしたシステムというコンセプトですね。総理大臣の施政方針に登場した重要なコンセプトですので、しっかり概念規定を明確にして発信してほしいっです。そして・・・

農業や漁業が提供するのは食料品で林業は木材という文脈で総理大臣の演説していますが、林業の場合、森林サービス産業的な幅広い消費者に供給する(可能性がある)モノやサービスがあります。

木材以外の多様なサービスを提供する幅広い林業の可能性、その辺の含めた林業の重要性が農林水産業の横並びで議論されると忘れられる可能性もありますね。

年に一回の施政方針を総理大臣が検討する機会に、 この辺も含めた議論が必要だと思いました

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施政方針と地球環境の関係は?・・・ー勉強部屋ニュース294編集ばなし(2024/1/11)

フロントページは、2024年施政方針演説と森林政策(1)-循環型林業

年に一回の正月の施政方針演説。

日本国の政策の中での森林や林業政策の位置づけ如何なっているかと検証する材料です。農林水産行政の中での食料農業農村基本法、循環型林業ついて、取り上げました。土地利用政策の中での森林問題などが議論される可能性とか、環境と林業との関係などいろいろ課題がありますね。

森林政策(1)としたのは、次に(1)として農林水産行政の外になるんでしょうが、GXグリーントランスフォーメーションという記述が「四経済」という章に記載されていて、平成8年にカーボンプライシングをやるんだという話があるんで、是非少し勉強と思いました。

GX実現に向けた基本方針 ~今後10年を見据えたロードマップ~という情報が昨年2月経産省のサイトに掲載されていることはこのサイトでも報告しました。グリーントランスフォーメーション(GX)の中の循環資源・持続可能な森林の将来(2023/2/15)

再来年にはカーボンプライシングを導入するんだという方針なんですね。来月号にカーボンプライシングと木材や森林との関係掲載する予定です。

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今月号のもう一つのピックスは、昨年12月に開催された、気候変動条約COP28関連の情報ですね。

ドバイまで行って、会議に出席してきた林野庁や森林総研の関係者のプレゼン資料などが公開されているので、その結果と、丁度タイミングよく、勉強部屋のZOOMセミナーで気候変動のトピックスを取りあげたので、その報告をしました。

気候変動危機で地球全体で考えると、土地政策・農地を減らして森林へ!という課題が、とりあえず取組める緊急課題ということが、世界中の科学者があつまったIPCC等の認識ですね?そんなことできるの?

各国の決意をしめすNDCをステップアップさせる、GSTが報告書をだしたので次回のNDCはそれに沿って・・というのですが、今後大幅に投入される「緑の基金」は森林に投入させることが大切なんだと思いますが、・・・途上国だけでなく日本おの政策に投入させる道筋はないのかな?

是非岸田総理お演説のGXの中に、マーケットの資金が森林分野の投入させ仕組みを、というアイディアが出せるのは森林分野の関係者しかできません

頑張りましょう

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最近新潟に行ってきました。能登半島地震直後の新潟行き、でした。

新しくできたバイオマス発電所の原料供給システム担い手の現地での審査(まだ審査途中)が目的でしたが、発電所の運営から原料供給まで担う関係者とのコミュニケーションができたので、例の新しく導入される原料バイオマスの供給過程のGHG排出量公表問題。しっかりフォローしてまいります。

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勉強部屋ZOOMセミナー第6回が3月2日13時半から開催ですー

テーマは:森林の未来をつくる、消費者と連携した次世代の森林づくりの方向は

ゲストは日本で初めて20年前にFSC認証を取得した速水林業代表速水亨さん!!

関心のある方は、こちらから!お待ちしています!!

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それではよろしくお願いします

次号以降の予告。気候変動枠組み条約COP28と森林(2)日本からの情報発信/ 2024年施政方針演説と森林政策(2)-GXとカーボンプライシング/ 沖縄の木造建築/ 第15回「新たな木材利用事例発表会」の環境ビジネス関係者/ カーボン・クレジット市場、東証が開設/ 建築物の木造・木質化に関する現状と今後の可能性調査/  

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com