ニュースレター No.064 2004年12月12日発行 (発行部数:1120部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:米国の建築基準の中の「輸送過程の環境負荷基準」改訂案(2004/12/12)
2. 自由貿易と森林の持続可能性:Eclogilcal Economics 誌掲載論文紹介(2004/12/12)
3. ウッドマイルズ研究会ニュースレター木のみち6号(2004/12/12)
4. 気候変動枠組み条約における伐採木材製品の取り扱い(寄稿小論)(2004/12/12)
5. 地域材の利用推進と森林認証制度(「森林科学誌」寄稿小論)(2004/12/12)

フロントページ:米国の建築基準の中の「輸送過程の環境負荷基準」改訂(2004/12/12)

意見募集テキストリンク↑

 

 

 

 

 

12月3日から、米国の緑の建築基準(LEED)が基準の改定に向けてパブリックコメントの募集をしています

LEEDは既報の通り、一定距離以内で作られ、加工・製造・収穫された建築資材を「輸送過程での負荷を減らし、地域経済の活性化に資する」として推奨しています。

今回の改定案のその部分についての新旧対照表が下表です。(関連部分テキスト英文pdf

第一の変更点は、「意図」の中に、今まで、@「輸送過程の環境負荷を減らす」こととともに、A「地域の活性化」というコンセプトが入っていたのですが、改定案には、@はそのままにしたままで、Aは「土地に固有の(indigenous)な資源利用の推進」という記述に変更されました。この辺の議論は大変興味深いところです。「地域の活性化」と「環境」の関係を論理的に説明するのかが結構難しかったのではないかと思います。

第二の変更点は、鉄道と船舶輸送に得点を与えようという、「モーダルシフト」の考え方を取り入れた点です。この点は日本のウッドマイルズ研究会が輸送手段ごとに環境負荷を指標化していることと相通ずるところです。

以上の二点は、「地域材の利用」を環境という観点からとらえる場合の問題点の明確化という意味で分かりやすい変更点だと思います。

ただし、現行で区別していた、最終加工地点である加工・製造(manufactured)と、産出地点(extructed, harvested)という概念が、区別されなくなったというのは、解りづらい点です。

「輸送過程の環境負荷」の概念が、米国の環境建築基準の中でうまく育ってもらうように願っています。

現行の規定 改定案
推奨事項5 地域の資材

(意図)
地域で産出する原材料の消費を増やし、もって、輸送過程での環境負荷を減らし、地域経済の活性化に資する。

(要求事項)
推奨事項5.1(1ポイント) 
500マイル以内加工製造された建築資材を最低20%使用すること。




推奨事項5.2
(1ポイント) 
上記のうち最低50%500マイル以内で産出、収穫、再生産されたものを使用

(技術および戦略)
この目的を達するため、地域の資源および供給者の特定に関する目標策定。建築期間において当該資材が搬入を確認し、全体資材のうちの量を確定。
推奨事項5 地域の資材

(意図)
地域で産出する原材料の消費を増やし、もって、、輸送過程での環境負荷を減らし、土地に固有の資源利用推進に資する。

(要求事項)
推奨事項5.1(1ポイント)
原料の80%以上が300マイル以内で産出・加工・製造された建築資材を最低10%使用すること。
あるいは
原料の80%以上が1000マイル以内で産出・加工・製造され、かつ鉄道、船舶で輸送された建築資材を、最低10%使用すること。
あるいは
原料が上記の二つの基準をあわせたものをクリアした建築資材を、最低10%使用すること。
推奨事項5.2(上記に加えて1ポイント)
同上の基準を満たす建築資材を最低20%使用すること。

(技術および戦略)
同左

改定案はこちらから→pdfファイル

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自由貿易と森林の持続可能性:Eclogilcal Economics 誌掲載論文紹介(2004/11/30)

英文誌Ecologila Economics国際生態経済学会ISEEの機関誌ですが、9月号に「森林の持続可能性と林産物の自由貿易:東南アジアの事例」、と題する論文が掲載されました。主筆者は法政大学の島本美保子助教授です。

Forest sustainability and the free trade of forest products: cases from Southeast Asia
Ecological Economics, Volume 50, Issues 1-2, 1 September 2004, Pages 23-34
Mihoko Shimamoto, Fumikazu Ubukata and Yoshiki Seki  

なかなか英文の原著論文に目を通す機会がないのですが、テーマがテーマですし、よく知った方の執筆で抜き刷りをいただいたので、拝読しました。

二つのパートに分かれており、前半は環境と林産物貿易問題に関する文献のレビュー、後半は東南アジア3カ国の分析です。

前半部分はこのテーマを研究される方の貴重な案内となっています。北米自由貿易協定がメキシコの森林に与えた影響に関する研究などが、興味深いです。

また、後半は自由貿易が東南アジアの森林管理に障害となりつつあり、森林資源についての貿易制御ルールを作るべきであるという、議論になっています。森林林業関係者が最も関心を持っているこの分野の議論がさらに進むきっかけとなる重要な論考だと思います。

ご本人に無理を言って、日本語のサマリーを作成していただきましたので、以下に掲載します。(こちらから

本文はこちらに請求下さい。(→請求先
エリゼビア社のページからサマリー

本論文の骨子となった
「「林産物の自由貿易と森林の持続可能性」論争と東南アジア諸国の現状」,『林業経済』第639号,pp.12-21,2002年1月. 島本さんのHPよりダウンロード

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ウッドマイルズ研究会のニュースレター木のみち6号(2004/12/12)

ウッドマイルズ研究会の木のみち最新号が12日配布されました。こちら
巻頭言は全国森林組合連合会飯塚会長が書かれています。

今号は研究会の事業の中心になっているウッドマイルズ関係指標算出マニュアルの改正案が掲載され、意見募集をしています。(研究会HPを参照下さい

輸入材の輸送途上のエネルギーを計算する原単位を変更するなど、重要な変更が行われています。

目次

1.  巻頭言             全国森林組合連合会 代表理事会長 飯塚昌男 

2. 「建築物ウッドマイルズ関係指標算出マニュアル」 改訂案の公表

 -1 公表にあたって
 -2「建築物ウッドマイルズ関係指標算出マニュアル Ver. 2005」 改訂案
 -3「建築物ウッドマイルズ関係指標算出マニュアル Ver. 2005」への改訂の概要
 -4 パブリックコメント募集要項
 -5 ウッドマイルズ関連指標およびツールの更新規程

3. 研究会ニュース

 -1 学会報告とウッドマイルズ・輸送距離の環境負荷
    環境経済・政策学会 2004 年大会の報告から   
        藤原 敬
 -2 ウッドマイレージ CO2を組み込んだ府内産木材認証制度の概要   白石 秀知
 -3 「現代町家」を地域材でつくる  〜木材のふるさとを伝える    三澤 文子

4.【新連載】ウッドマイルズ研究ノート その1             藤原 敬

5.【連載】第5回環境問答 
      『木の家は環境にやさしいか(その4)』          野池 政宏

6. 読者の広場                      大智寺住職 東海良寛

7. 会員紹介 

8. 事務局だより


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気候変動枠組み条約の中の伐採木材の取り扱い(寄稿小論)(2004/12/12)

「二酸化炭素吸収源としての伐採木材製品」の議論については小サイトでもとり上げてきたところですが、会員制寄稿誌「日本の森林を考える」の12月号に、小論を寄稿しました。

この問題は、いろいろな論点があるのですが、気候変動枠組み条約が森林が果たしている温室効果ガスを吸収・排出する機能の算定基礎を拡充してゆくと、「自国内だけでなく、地球サミット以来先延ばしてきた熱帯林の国際的な管理という重要な課題に取り組む責務を再認識することになるだろう。」という指摘をしています。

編集部の許可を得て、テキストを資料室におきます。

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地域材の利用推進と森林認証制度(「森林科学誌」寄稿小論)(2004/12/12)

既報の2004年日本林学会大会のシンポジウムで私がお話しした内容が「森林科学」誌の10月号に掲載されました。

編集部の許可を得て、テキストを資料室におきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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