森林・林業基本計画(案)に関する意見(2016/4/27)

林野庁では5年に一回の森林・林業基本計画の改定作業中で、作業中の案が公表され3月22日(火曜日)から4月10日(日曜日)までの間、パブリックコメントがあ公募されていました。 

森林・林業基本計画(案)に関する意見・情報の募集(パブリックコメント)について

どこの国でも森林政策の重要性がなかなか理解を得られないのは、市民から遠くにあるからで、皆がよくしっているグローバルな出来事との関係でみていったらどうなるか、また木材のサプライチェーンを通じた市民の参加が重要なポイントになるのでないか、といった視点で情報提供をしてきた、勉強部屋ではそんな視点で、5年に一度のこのをウェオッチしてきました。

1-11. 森林・林業基本計画案への意見 (2011/7/2)
1-5. 新たな森林・林業基本計画の決定 ( 2006/10/9)
1-4. 森林・林業基本計画の意見募集 (2006/8/6)

今回は、国内のバイオマスエネルギーの拡大、都市の大型施設の木造・木質化の動きや、パリ協定によるグローバルな化石資源の制約への流れを受けて、次世代の持続可能な森林と市場の循環をどのように構築していくのか、大切基本計画の改定です。

地球環境問題と、国内の森林ガバナンス、グローバルな市場とローカルな森林の関係など、当勉強部屋としても気になることがあり、意見を提出しました。

1持続可能な開発目標など

 (主旨)

昨年国連で採択された「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」SDGsで2020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施の促進が決議されたが、我が国の森林も何をもって持続可能な森林経営と定義するかを明確にし、国際的な課題にこたえるようにすべき

(関連部分)
第1森林及び林業に関する施策についての基本的な方針
1前基本計画に基づく施策の評価等
(3)前基本計画策定以降の情勢変化等他

(理由)

2015年9月25日−27日、ニューヨーク国連本部において開催された国連持続可能な開発サミットで、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030年アジェンダ」SDGs(以下「2030年アジェンダ」という)が採択された。(国連サミットで合意された「持続可能な成長のための2030年アジェンダ」の中の森林(2015/10/24)参照)

森林に関しては、「2020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。」(原則15-6)としている。大目標との関係を明確にしておくべき。

また、持続可能な森林経営という国際的な議論の中で、我が国のどの部分が持続可能で、どこんが違うのか、経営計画を策定したものは持続可能なのか、など議論を深めるべき。

2森林づくりの担い手

(主旨)

民間企業の森林づくりの支援に関する論点と重要性を付け加えるべき 

(関連部分)

第3政府が総合的・計画的に講ずべき施策
1森林の有する多面的機能の発揮に関する施策
(10)社会的コスト負担の理解の促進

森林整備や木材利用を推進することは、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や地方創生、快適な生活環境の創出などにつながり、その効果は広く国民一人一人が恩恵を受けるものであることから、森林の有する多面的機能の維持・増進に係るコストについては、社会全体で負担していくことが必要である。
このような森林の有する多面的機能の持続的発揮に向けた社会的コストの負担としては、一般財源による対応のほか、国及び地方における環境問題に対する税等の活用、上下流の関係者の連携による基金の造成や分収林契約の締結、森林整備等のための国民一般からの募金、(挿入→)民間企業の森林づくりの環境貢献度「見える化」の推進、森林吸収量等のクレジット化等の様々な手法が存在する。地球温暖化防止に果たす森林の役割への期待に応えつつ森林吸収源対策を含めた森林・林業の諸施策の着実な推進を図っていくため、どのような手法を組み合わせてコストを負担すべきか、国民の理解を得ながら、都市・地方を通じて国民に等しく負担を求める税制等の新たな仕組みを含め、国全体としての財源確保等を検討していく。

(理由)

「森林の有する多面的機能の維持・増進に係るコストについては、社会全体で負担していくことが必要であり」(現基本計画)その一環として、企業の社会的責任による森林づくりが進んでいる(下図:企業の森林づくりの活動の実施箇所の推移企業による森林(もり)づくり・木材利用の二酸化炭素吸収・固定量の「見える化」ガイドラインより

関連部分の記述の中に、企業の森林づくりを支援する施策を明確に位置づけるべきである(企業による森林づくり・木材利用の環境貢献度の「見える化」(2016/3/26)参照)

3木材需要の新たな拡大と木材の環境性能

 (主旨)
木材利用の拡大は地球環境の視点で、かたられるべき課題であり、森林認証や合法性証明などの環境情報を消費者に伝達して環境負荷の少ない木材利用拡大を重要性を全体の戦略のなかで、位置づけておくべき

(関連部分)
第三政府が総合的・計画的に講ずべき施策
3林産物の供給及び利用の確保に関する施策
(3)新たな木材需要の創出

(1)原木の安定供給体制の構築
(2)木材産業の競争力強化
(挿入→)
(3)木材のトレーサビリティの確保・環境性能の訴求
違法伐採対策法の趣旨を踏まえて、サプライチェーンを通じて自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的健全な発展を図るため、合法伐採木材の流通利用の推進を図り・・・東京オリンピック・パラリンピックの施設整備に関連して森林認証木材・ウッドマイルズなどグローバルな視点を踏まえてトレーサビリティの確保された地域材普及を図る。

(理由)
公共建築物木材利用促進法の目的規定に、「木材の利用を促進することが地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林の有する国土の保全、水源のかん養その他の多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献すること等にかんがみ」(第一条)とあるように、木材利用の施策のコンセンサスが、地域の活性化とともに、地球環境等への貢献である、という論理の上にたっていることを考えると、当該木材が由来する森林の持続可能性、違法伐採問題のリスクなどに関する方法が消費者に届けられる、森林認証制度や合法性証明などの制度は重要である。
東京オリンピックパラリンピック関連施設の森林認証材の調達、違法伐採問題対策法の検討などが進んでいる中で、新たな基本計画が、上記主旨を明確にして施策を展開することを明記すべきである。

4バイオマスエネルギーの利用

(主旨)

第3表であらたに燃料材が加えられたが輸入量が、今後ほとんど増えない設定となっているのは実態とことなるのでないか?
いまのFIT制度が定着すれば輸入材に対する、インパクトが拡大し、環境基準など整備しないと大きな問題となる可能性があり、そのことを認識した上で、バイオマスの環境基準の重要性について、認識に触れるべきである。

 (関連部分)
同上関連及び
(3)木材のトレーサビリティの確保・環境性能の訴求
・・・グローバルな視点を踏まえてトレーサビリティの確保された地域材普及を図る。
(以下挿入→)
また、発電用バイオマスの供給にあたっては、環境基準に配意して進めることとする。


第2森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標
3林産物の供給及び利用に関する目標、第3表

(理由)

固定価格買取制度に基づく木質バイオマスを燃料とした発電所が各地で稼働、計画されているが、原料の安定供給が重要な課題となっている。その中の一部を輸入バイオマスが担うことになるのは周知のことであるが、用途別の木材利用量の目標表3では、総需要量と利用量の差である輸入量がほとんど増えない見込みになっている。

 

輸入バイオマスがヤシガラなど木質バイオマスでない農産物残さなどに多くを依存しているが、木質ペレットなどの輸入も拡大しているところであり、これを正確に反映したものかどうか。いずれにしても輸入木質バイオマスへの依存度が拡大する動きはあるなずで、これを前提のすると、欧州などでは固体バイオマス燃料の環境基準の導入が進められており、我が国でも国際市場を念頭において、環境基準について検討をすべきである。

(エネルギー起源二酸化炭素の排出量の中での木質バイオマスエネルギー) 参照

以上でした。どんなことになるのか、今後もフォローしていきます。

kokunai1-15(kihonkeikaku2016-1)

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