環太平洋パートナーシップ協定TPPと森林の国際枠組み(2015/10/24、2016/1/8改訂)

10 月 5 日、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加 12 か国はTPP交渉閣僚会合において、閣僚レベルの交渉を終え、協定 の大筋合意に至ったとされました。

この協定に対する一般的な関心は市場アクセス(関税の撤廃)分野に関してですが、このサイトでは森林管理や木材の流通に関する分野として、その他に、環境分野の協議について関心をもって、フォローしてきました。

7.貿易自由化の環境影響評価
7-9.TPPのもう一つの面ー環境条約での話し合いの内容(2014/3/30)
7-7.環太平洋パートナーシップ協定TPPとつきあう場合の留意点(2012/3/25)

現時点(10月25日時点)で合意内容のすべてが公表されているわけではありません(11月5日に合意事項全文が公表されました英文米国政府WEB)、2016年1月7日に全文の暫定仮訳が公表されました(日本国TPP政府対策本部)が、政府から公表されているのは以下の通りです

  ・TPP協定交渉の大筋合意に関する情報について掲載しました。
   ・「環太平洋パートナーシップ閣僚声明」(現地時間2015年10月5日発表)
      日本語(仮訳)【PDF:114KB】  英文(原文)【PDF:37KB】
   ・「環太平洋パートナーシップ協定の概要(暫定版)」(現地時間2015年10月5日発表)
      日本語(仮訳)【PDF:309KB】  英文(原文)【PDF:118KB】
   ・TPP協定の概要<更新版>(日本政府作成)【PDF:3110KB】
    (なお、当初作成版はこちらをご覧ください)
   ・TPP交渉参加国との交換文書一覧【PDF:156KB】
  【関税交渉の結果】
   ・TPPにおける関税交渉の結果【PDF:267KB】

以上内閣官房TPP対策本部

農林水産物市場アクセス交渉の結果(一次公表・PDF:903KB

追加資料(二次公表・PDF:1,289KB)

関税に関する交渉結果(三次公表)

最終更新 平成27年10月20日


以上の中で森林や林産物にかかる合意事項を見てみましょう。

(林産物の関税問題)

 

林産物関税は丸太・製材品等で無税となっている一方、製材品の一部、合板、集成材等の関税率は3.9〜10%となっています(こちらに概要、林野庁)。

今回の合意では、林産物を含む鉱工業製品の関税撤廃率は100パーセントとしています(TPPにおける関税交渉の結果)が、合板や製材の関税撤廃までのプロセスに特別の配慮がなされています。

林産物の品目別の交渉結果概要(担当:林野庁)(PDF:204KB)

合板は6パーセントから10パーセントの関税がかかっていますが、10年かけて順次減らしていって11年目に撤廃するとされています。

さらに、マレーシアなど輸入量が多い国からの輸入品は発効時に半分にして撤廃時期を16年目にすることとし、その間に輸入が急送すればセーフガード(緊急措置)で関税を戻す措置をとるとしています。

同様に、針葉樹製材のうち関税がかかっているSPF(マツ・モミ・トウヒ属)製材については10年かけて順次削減11年後に撤廃。

同様に輸入量の多いカナダについては、発行時に半分にして撤廃時期を16年目に、阻止で同様なセーフガード措置がとられるそうです。

(林産物の丸太輸出管理

カナダのBC州で丸太の輸出が原則として禁止され、国内での原料価格が国際市場よりやすくなっていた問題で、二国間で取り決めがあり、手続きにそった「輸出申請には応じる」こととされました。

(環境条項)

環太平洋パートナーシップ協定の概要(暫定版)には協定の全30章の「概要」が記載されていますが、そのうち20章環境の全文は以下の通りです。

地域の貿易の自由化が地域の自然資源の乱開発などの環境破壊につながらないように、自由貿易協定に環境条項がセットされるのは重要な点ですが、森林の管理についての協働した管理がどこまで達成できるか、重要なポイントです。

 20. Environment
As home to a significant portion of the world’s people, wildlife, plants and marine species, TPP Parties share a strong commitment to protecting and conserving the environment, including by working together to address environmental challenges, such as pollution, illegal wildlife trafficking, illegal logging, illegal fishing, and protection of the marine environment.
 20.環境
TPP締約国は、世界の人間、野生生物、植物及び海産の種の相当な割合が生息する地として、環境に関する課題(汚染、違法な野生生物の取引、違法伐採、違法な漁業、海洋環境の保護等)に対処するために協働すること等により、環境を保護し、及び保全する強固な約束を共有する。

 The 12 Parties agree to effectively enforce their environmental laws; and not to weaken environmental laws in order to encourage trade or investment. They also agree to fulfil their obligations under the Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES), and to take measures to combat and cooperate to prevent trade in wild fauna and flora that has been taken illegally.  TPP協定において、12の締約国は、自国の環境法令を効果的に執行し、及び貿易又は投資を奨励する目的で環境法令を弱めないことに合意する。締約国は、また、絶滅のおそれのある種の国際取引に関する条約(CITES)に基づく義務を履行することに合意し、並びに違法に採捕された野生動植物の取引に対処するために措置をとり、及び当該取引を防止するために協力することに合意する。
 In addition, the Parties agree to promote sustainable forest management, and to protect and conserve wild fauna and flora that they have identified as being at risk in their territories, including through measures to conserve the ecological integrity of specially protected natural areas, such as wetlands.
 さらに、締約国は、持続可能な森林経営を促進すること、及び特別に保護された自然の区域(湿地等)を生態学的に本来のままの状態に保全するための措置を通ずること等により、自国がその領域において危険にさらされていると特定した野生動植物を保護し、及び保存することに合意する。
 In an effort to protect their shared oceans, TPP Parties agree to sustainable fisheries management, to promote conservation of important marine species, including sharks, to combat illegal fishing, and to prohibit some of the most harmful fisheries subsidies that negatively affect overfished fish stocks, and that support illegal, unreported, or unregulated fishing.  TPP締約国は、締約国が共有する海洋を保護するため、持続可能な漁業管理、海産の種(さめを含む。)の保存の促進、違法な漁業への対処及びいくつかの最も有害な漁業補助金(濫獲された状態にある魚類資源に悪影響を及ぼすもの並びに違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を支援するものに限る。)の禁止について合意する。
 They also agree to enhance transparency related to such subsidy programs, and to make best efforts to refrain from introducing new subsidies that contribute to overfishing or overcapacity.  締約国は、また、そのような補助金制度に関連する透明性を高め、及び濫獲又は過剰な漁獲能力に寄与する補助金を新たに導入することを差し控えるよう最善の努力を払うことに合意する。
 TPP Parties also agree to protect the marine environment from ship pollution and to protect the ozone layer from ozone depleting substances. TPP締約国は、また、船舶による汚染から海洋環境を保護すること及びオゾンを破壊する物質からオゾン層を保護することに合意する。
 They reaffirm their commitment to implement the multilateral environmental agreements (MEAs) they have joined. 締約国は、自国が参加する環境に関する多数国間の協定(MEAs)を実施する約束を再確認する。
 The Parties commit to provide transparency in environmental decision-making, implementation and enforcement. 締約国は、環境に関する意思決定、実施及び執行における透明性を確保することを約束する。
 In addition, the Parties agree to provide opportunities for public input in implementation of the Environment chapter, including through public submissions and public sessions of the Environment Committee established to oversee chapter implementation.  さらに、締約国は、公衆の意見の提出及びこの章の規定の実施を監督するために設置する環境に関する小委員会の公開の会議を通ずること等により、環境章の実施に当たり公衆からの意見を得るための機会を提供することに合意する。
 The chapter is subject to the dispute settlement procedure laid out in the Dispute Settlement chapter. 本章は、紛争解決章に定める紛争解決手続の対象となる。
 The Parties further agree to encourage voluntary environmental initiatives, such as corporate social responsibility programs.
Finally, the Parties commit to cooperate to address matters of joint or common interest, including in the areas of conservation and sustainable use of biodiversity, and transition to low-emissions and resilient economies.
 締約国は、更に、環境に関する任意の自発的活動(企業の社会的責任に関する計画等)を奨励することに合意する。最後に、締約国は、共同の又は共通の関心事項(生物の多様性の保全及び持続可能な利用並びに低排出型の及び強靱な経済への移行の分野等)に取り組むために協力することを約束する。

「違法伐採問題(など)に協働して取り組むことにより、環境を保護し、及び保全する強固な約束を共有する」、「締約国は持続可能な森林経営を促進することに同意する」今後この条項がどのように生かされていくのか注目されます。

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