森林認証プロセス拡大の可能性ー次世代の森林づくりを消費者とともに(2022/11/1) |
10月19日、宮城県石巻市の石巻地区森林組合で開催された職員の研修会で、「次世代の森林づくりを消費者とともにー森林整備の課題と森林認証への期待と課題」というタイトルで話をさせていただきました。 (研修会実施のいきさつなどは→「石巻地区森林組合でー森林整備の課題と森林認証への期待と課題」) 森林認証に関しては、このサイトでもずーっと追いかけてきましたが、今回のイベントの準備過程や主催の森林組合組合長のお話をお聞きする中で、現時点で森林認証制度の意義とか、普及の道筋など、いろいろ考えるところがありました。 プレゼンの内容などを紹介しながら、森林認証への期待と課題を検討していきましょう。 お話した内容にそって、以下の3つのセッションで紹介します。 @日本の森林づくりの課題と森林認証への期待、A森林認証とは?歴史と現状ーその役割と課題、B森林認証に吹く追い風 日本では人工林が高齢化し、「伐って・使って・植えて・育てる」ことが大切になっています(右の図)。 そのうち、「伐って・使って」の部分について、大きく動き始めています。 (「伐って・使って」を引っ張る人たち) この点にピッタリのテーマについて、たまたま、準備過程の2週間の間に、川下の3人の方の話を聞いたり、話をしたりする機会がありました。(のでご紹介左の図) 左上、1人目は、東京海上日動相談役隅修三さん 10月7日木づかいシンポジウム2022でという都内で開催されたイベント(別途ご報告「木づかいシンポ2022ー木材利用とビックビジネスー企業の環境志向の中での新たな可能性」)でお話を聞きました。 経団連副会長で、ウッドチェンジ協議会という団体の会長とし「国産材でビルをつくろうと」情報発信をされています。 今回のお話は、丸の内の丸ビルのとなり、東京海上の新本店ビル、20階建て高層木造のイメージが明らかに 24年度から着工予定で、準備中なのだそうです。 左中、2人目は、東京大学生産技術研究所腰原教授(林政ジャーナリストの会の取材) Team Timberizeという建築関係者の団体の中心人物として、「伝統や慣習にとらわれることなく木・木造の新しい可能性を模索」されています。(別途ご報告予定) 左下、3人目は竹中工務店、木材木質建築統括松崎裕之さん 10月17日フラッツウッズ木場の視察の林政ジャーナリストの会での共同取材(別途ご報告予定) スーパーゼネコンの一角竹中工務店は、木造・木質建築建築推進本部を2016年に立ち上げ、推進本部のミッション「木のイノベーションで森とまちの未来をつくる」を厚く語られました。 「木造オフィスに入居するテナントは、環境意識が高く、ESG投資の観点から評価が高い」ということがば、心に残りました。 ということで、都市の森林づくりともいうべき、中高層の木造ビルの普及が重要な段階に。(それぞれ別途ご報告する予定) 以上「伐って・使って」の部分は大きな動きが生まれていますが・・・、植えて育てるの部分は? (「植えて・育てて」の懸念と課題) 右の図は宮城県内の主伐面積に対する植え付け面積の比率。(宮城県のサイト造林面積400 ha/年の実現に向けた再造林の推進についてから) 宮城県では主伐面積に対して、再造林率は20-30%。全国の数字をフォローしている林野庁のサイトでは「主伐面積に対して人工造林面積が3〜4割程度で推移」とありますから、全国平均より宮城県の方が再造林率は低いんですね。(林野庁の担当者も東の方が低い傾向といっていました) この点について、組合長に聞いてみました。 「組合員の立木を組合が買うとき、造林はどうします?ときくと、ほとんどの人が『その必要はない。(余裕がない)』という」のだそうです。「そこで、組合側が『植え付けと5年分の下刈りを組合負担でやります』、というと、それでなんとか、植林の話がまとまる」んだそうです。 もちろん、組合員が自分の持っている人工林をだれに売るかは本人次第。(高く買ってくれる)組合以外の人に売ると、植林がされる道筋は?心配です。 いずれにしても、令和の時代に立派な建築物になる木材を生産した、次世代の森づくりが大きなリスク下にあります。 ということで、第1セッションのまとめは、左の図のように、このリスクに対応するため「行政と森林関係者だけでなく、環境指標を気にし始めた川下の需要者・消費者との連携」です。 それでは中心の内容、森林認証って何?FSC、PEFC,SGECて?第2セッションです。 右の1枚の図をもって森林認証の歴史を説明。(元の図は「森林認証制度、CoC認証の基礎知識」-堀尾牧子氏によっています) タイトルは「地球規模の森林破壊ー地球サミットと森林認証-森林認証制度の世界的な発展」 出発点は、米国政府が1980年に発表した、「2000年の地球」そして翌年にFAOとUNEPが発表した「熱帯林評価報告書」という2つの報告書。 これによって、毎年世界中の森林が熱帯林を中心に1千万ヘクタール以上(本州の半分以上の面積)減っているという事実が、共有され、世界中でそれぞれローカルな課題だった森林政策が、突然グローバルな課題に。 1992年の地球サミットで、米国政府が森林条約を合意すべきと先進国サミットで提案し、画策したが、途上国の反対で国際森林条約はできずに、法的拘束力のない森林原則声明に。そのあと持続可能な森林の基準作りなどがのプロセスが始まっている(図の左側ー政府を中心とした動き) 図の右側は、環境NGOを中心とした動向。政府がうまく有効な解決策を提示できないのなら・・・といってできたのが、FSC(グローバルな基準に基づきFM認証とCOCのセットで消費者に訴求) PEFCは、左側の基準作りなどをうけて、国ごとの基準をベースにFM認証とCOC認証を構築(PEFCのPEは最初、PAN EUROPIANがPEだったけど、Programme for the EndorsementのPEに変更) (FSCとSGEC/PEFCはどう違う) 以上の歴史を背負った二つの森林認証システム 持続可能な開発や、持続可能な森林管理を見ていく視点が、@環境保護、A社会的包摂、B経済発展の3つあるとすると、@とAがFSC、AとBがPEFCの強みかも(全くの思い付きの左の図) SGEC7つの基準、FSC10の原則を並べてみたのが、右の図です。 さまざまな関係者の意見によって、大きな流れは一つの方向になっては来ているようです(ロンドンオリンピック・パラリンピックの伝説から学ぶ)が、大きなコンセプトを明確にして妥協しないで厳格にというFSCと、現場の相違をくみ上げてステップアップ効率的にというPEFC、といった感じでしょうか。(この辺は今回の研修会の大きなテーマでないんですが、質問されたらどうしよう、と、準備の過程で私が頭の体操をしてみましたという部分です) 森林認証には追い風が吹いています(ので、がんばってください) 木材輸出が進んでいます(西の九州方面が中心みたいですが) 輸出先は中国、米国が主流になって、丸太や製材品と多様な製品が(左の図上) 輸出をすると、相手国の水際で違法伐採問題は大丈夫かという、チェックがあります(左の図下)。できる限りの注意を払ってリスクを排除しているか?(dd デューデリジェンス) これに対応するので、最もわかりやすいのが森林認証ですね。 地元の木をグローバルに売っていこうとしたら、森林認証を。 25年に実施予定の大阪関西万博。 木材の調達コードには右の図にあるように、五つの基準がしめされています。 が、「 FSC 、PEFC 、SGEC による認証材については、上記2の@〜Dへの適合度が 高いものとして原則認める。」となっています。 東京オリパラにつづいて、大阪万博で森林認証が進みます! (炭素固定量・吸収量に関する関心のたかまり) このサイトでは、何回も紹介していますが、企業による森林づくり木の利用で吸収固定される二酸化炭素の量を、簡単に計算できるガイドラインのダウンロード数が急上昇中。 大きなビジネス関係者が、本社ビルを木造化、といった動きは、企業の環境志向の現れです。 当然そういう方は、違法伐採木材でなく森林認証木材にしようとなります。(なるはずです) コストがかかっても。(丸の内の本社ビルの総工費のうち、木材の値段は少しだし、その値段が5割上がったとしても、元がとれるはず→)。「本社ビルが認証材でできた高層木造ビルです」と言えば、グローバルな環境志向の立派な企業として、世界の消費者、ESG投資家にアピールできるでしょう。(多分) ((まとめ)) 日本の森林は次世代の森づくりに向けた重要な局面。再造林ができるか? と結びました 現地の森林組合の方々と話をしていて、まだ、ななかな、マーケットが広がっていないなーという思を再認識しましたが、準備過程でお会いした、ビッグビジネスに人たちが、森林認証という便利なツールをつかって、認証材の普及に大きな役割を果たせるのでないか、と、期待が広がりました。 sinrin1-23<isinomaki> |
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