ニュースレター No.273 2022年5月15発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:グローバルな森林政策の方向性ー第15回世界林業大会から(2022/5/15)
2.  グローバルな視野から見た地域木材の可能性―東京2021主会場木造国立競技場の環境性能ー第15回世界林業大会の提出文書(2022/5/15
3.  戦争と木材貿易ーローカルな輸入材ロシア材の輸入トラブル (2022/5/15)
4. 木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている?ー課題と期待(2022/4/28)
5. 山の利、都市の利-暮らしから森を見つめなおす(2022/4/28)
6. コロナ渦の7年ぶりの海外旅行・・・ー勉強部屋ニュース273編集ばなし(2022/5/15)

フロントページ:グローバルな森林政策の方向性ー第15回世界林業大会から(2022/4/15)

5月2日から6日韓国ソウルで開催された第15回世界林業会議に行ってきました。

6年に1回世界中の林業関係者が集まる会議。146か国から実際の参加とZOOMでの参加を含めて15,000人が参加のだそうです。

公式ページXV World Forestry Congress
XV World Forestry Congress (主催者FAOの関連ページ)
XV World Forestry Congress (IISDの紹介ページ)

テーマは、BUILDING A GREEN, HEALTHY AND RESILIENT FUTURE WITH FORESTS「森林とともにグリーンで健康そして堅牢な未来を創造!」(本ページの仮訳です)

5月2日の開会式(韓国ムン大統領も出席)から6日の閉会式まで、概要をご紹介

(会議の全体構成)

6つのサブテーマ30の分科会の全体像は以下のとおり(仮訳です)。それぞれの会議の録画が4か国語で公開されています(いるようです)(日本語はありません)。

サブテーマ1 潮流を変える。森林破壊と森林劣化の回復
セッション1 世界の森林減少:2030年までに森林減少を阻止し回復させるための具体的行動のための課題と機会
セッション2 森林破壊を阻止するための資金調達の可能性と規模拡大
セッション3 森林破壊の流れを変えるために必要な農産物市場の変化への対応
セッション4 森林減少及び森林劣化を食い止めるためのガバナンスと検証システムの強化
セッション5 森林減少の要因の評価-政策立案への示唆
サブテーマ2 気候変動への適応・緩和と生物多様性保全のための自然を基盤とした解決策
セッション1 自然に基づく解決策としての森と木の場面設定
セッション2 生物多様性のための持続可能な森林管理
セッション3 「国連生態系の10年」における世界の修復プログラム
セッション4 NDCにおける気候変動の緩和と適応のための森林による自然ベースの解決策の活用
セッション5 健全で強靭な森林を維持するための森林遺伝資源と病害虫の統合管理の役割
サブテーマ3 成長と持続可能性へのグリーン・パスウェイ
セッション1 SDGsのための森林管理:林産物と生態系サービスから価値、平等性、回復力を創出する
セッション2 森林セクターにおけるディーセント・ワーク、グリーン・ジョブ、持続可能性の促進
セッション3 森林セクターにおけるイノベーション。成長と持続可能性への新たな道
セッション4 持続可能なランドスケープを推進するための小規模農家とその組織による資金調達へのアクセス拡大
セッション5 持続可能なランドスケープを支援するための金融の融合
サブテーマ4 森林と人間の健康・福祉:その関連性の再検討
セッション1 森林生態系と人間の健康、福祉、社会的安定との関連性の概要
セッション2 人間の健康のための森林
セッション3 暮らしを支える森林
セッション4 社会的結束のための森林
セッション5 人類のための森林と平和
サブテーマ5 森林の情報、データ、知識の管理と伝達
セッション1 オープンで、透明性のある森林データの報告・普及に向けて
セッション2 森林モニタリングの実践(I)-「森に目を」-リモートセンシング技術、イノベーション、イニシアティブ
セッション3 森林モニタリングの実践(Ⅱ)-「森の中へ」-フィールドベースのアセスメント
セッション4 生態系を回復するための森林モニタリング
セッション5 コミュニケーションと教育の強化

サブテーマ6  境界のない森林:管理と協力の強化"
セッション1 舞台設定:森林管理におけるランドスケープ・アプローチと協力
セッション2 SDGs達成のための森林と水のつながり
セッション3 脆弱な生態系における持続可能な森林管理を実現する先住民族・地域社会との連携
セッション4 持続可能な森林経営に向けたパートナーシップと協働
セッション5 今後の展望 -持続可能な森林管理のためのパートナーシップの強化

(ソウル森林宣言など)

全体の内容を総括する三つの宣言が採択されました。
The Seoul Forest Declaration
Work with Us – Youth Call for Action
Ministerial Call on Sustainable Wood

ソウル森林宣言の内容は以下の通りです(5月11日現在本文draft版))(仮訳です)

 The Seoul Forest Declaration  ソウル森林宣言
We, the participants from 141 countries gathered in person and online at the 15th World Forestry Congress in Seoul, Republic of Korea, on 2–6 May 2022, assert that forests, forestry and forest stakeholders offer major nature-based solutions to climate change, biodiversity loss, land degradation, hunger and poverty, but we need to act now – there is no time to lose.   私たちは、2022年5月2日から6日にかけて韓国ソウルで開催された第15回世界森林会議に、141カ国から直接またはオンラインで集まった参加者は、森林、林業、森林関係者が気候変動、生物多様性の損失、土地劣化、飢餓、貧困に対する主要な自然ベースの解決法を提供するが、今すぐ行動する必要がある-失う時間はない、と主張する。
 We convey the following urgent messages to encourage actions for a green, healthy and resilient future with forests, as a contribution to Sustainable Development Goals, UN Decade on Ecosystem Restoration, Post2020 Global Biodiversity Framework and green recovery from COVID-19 pandemic.  持続可能な開発目標、国連生態系の回復の10年、ポスト2020年生物多様性世界枠組み、COVID-19パンデミックからのグリーン復興への貢献として、我々は以下の緊急メッセージを伝え、森林と共にグリーンで健康で回復力のある未来のための以下の行動を奨励する。
 • Forests transcend political, social and environmental boundaries and are vital for biodiversity and the carbon, water and energy cycles at a planetary scale. The responsibility over forests should be shared and integrated across institutions, sectors and stakeholders in order to achieve a sustainable future.
 - 森林は政治的、社会的、環境的な境界を超え、生物多様性や炭素、水、エネルギーの循環に惑星規模で不可欠である。持続可能な未来を実現するために、森林に関する責任は、制度、セクター、利害関係者の間で共有され、統合されるべきである。
 • Vast areas of degraded land require restoration. Investment in forest and landscape restoration globally must be at least tripled by 2030 to implement global commitments and meet internationally agreed goals and targets.
 - 劣化した広大な土地の回復が必要である。世界的な公約を実行し、国際的に合意された目標やターゲットを達成するためには、2030年までに世界の森林や景観の回復への投資を少なくとも3倍にする必要がある。
 • There is no healthy economy on an unhealthy planet. Production and consumption need to be sustainable and policies should foster innovative green financing mechanisms to upscale investment in forest conservation, restoration and sustainable use.
 - 不健康な地球には健全な経済も存在しない。生産と消費は持続可能である必要があり、政策は森林の保全、回復、持続可能な利用への投資を拡大するための革新的なグリーンファイナンスのメカニズムを促進する必要がある。
 • Wood is one of humanity’s most ancient raw materials but can take us into the future – it is renewable, recyclable and incredibly versatile. The full potential of legal, sustainably produced wood must be used to transform the building sector, provide renewable energy and innovative new materials, and move towards a circular bio-economy and climate neutrality.
 - 木材は人類にとって最も古い原材料のひとつですが、再生可能でリサイクル可能、そして驚くほど用途が広いため、私たちを未来へと導いてくれるものです。合法的で持続可能な方法で生産された木材の可能性を最大限に活用し、建築分野を変革し、再生可能エネルギーと革新的な新材料を提供し、循環型バイオ経済と気候ニュートラルに移行しなければなりません。
 • Forest degradation and destruction have serious negative impacts on human health and well-being.Healthy, productive forest must be maintained to reduce the risk of, and improve responsiveness to, future pandemics and provide other essential benefits for human physical and mental health.
 - 森林の劣化や破壊は、人間の健康や福祉に深刻な悪影響を及ぼす。将来のパンデミックのリスクを低減し、対応力を高め、人間の身体的・精神的健康に不可欠なその他の利益を提供するためには、健全で生産性の高い森林を維持しなければならない。
 • Innovative technologies and mechanisms are emerging for the provision of, and equitable access to, accurate information and knowledge on forests. These must be applied widely to enable evidencebased forest and landscape decision-making and effective forest communication.
 - 森林に関する正確な情報や知識を提供し、それを公平に利用するための革新的な技術や仕組みが生まれつつあります。これらは、根拠に基づいた森林や景観の意思決定と効果的な森林コミュニケーションを可能にするため、広く適用されなければならない。
 Forest-based solutions must be inclusive of the perspectives of family farmers, smallholders, forest communities, Indigenous Peoples, women and youth and respectful of their rights, and they must empower them to participate equitably in decision-making and sustainable forest value chains.  森林に基づく解決策は、家族経営農家、小農、森林コミュニ ティ、先住民族、女性、若者の視点を取り入れ、彼らの権利を尊重 し、意思決定と持続可能な森林バリューチェーンに公平に参加できる ようにしなければならない。
 Greater investment and capacity building in forest communication and education and more research are needed to strengthen understanding and awareness of the benefits of sustainably managed forests and trees.  持続可能な方法で管理された森林と樹木の恩恵に対する理解と 認識を強化するために、森林コミュニケーションと教育への投資と能力 開発を拡大し、さらに研究を進めることが必要である。
 Close cooperation among nations is required to address challenges that transcend political boundaries. This was strengthened at the Congress by new partnerships such as the Assuring the Future of Forests with Integrated Risk Management (AFFIRM) Mechanism, the Sustaining an Abundance of Forest Ecosystems (SAFE) initiative and the Platform for REDD+ Capacity Building.
 政治的な境界を越えた課題に対処するためには、国家間の緊密な協力が必要である。今回の会議では、統合リスク管理による森林の未来の保証(AFFIRM)メカニズム、豊かな森林生態系の維持(SAFE)イニシアチブ、REDD+能力構築のためのプラットフォームなどの新しいパートナーシップによって、この点が強化された。
 The outcomes of this Congress, including this declaration as well as the Youth Call for Action and the Ministerial Call on Sustainable Wood, should be transmitted to the next Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change, to the upcoming Conference of the Parties to the Convention on Biological Diversity and to other important forest-related fora.  この宣言、「若者の行動要請」、「持続可能な木材に関する閣僚級要請」を含むこの会議の成果は、気候変動枠組条約次期締約国会議、生物多様性条約次期締約国会議、その他の重要な森林関連フォーラムに伝達されるべきである。
 The Congress calls on governments, the private sector, research organizations, educators, communities and youth organizations to take the urgent actions outlined above, in partnership, as a means for achieving a better future for all.  大会は、政府、民間企業、研究機関、教育者、地域社会、青少年団体に対し、すべての人にとってより良い未来を実現する手段として、上記の緊急行動をパートナーシップでとることを呼びかけるものである。
 Congress participants gratefully acknowledge the hospitality of the Government and people of the Republic of Korea and the support of the Food and Agriculture Organization of the United Nations.  大会参加者は、大韓民国政府および国民の歓待と、国際連合食糧農業機関の支援に謝意を表する。

(宣言の新たな指摘)

森林の関係者が各国から集まり、森林の関係者以外の人たちに、森林の大切・森林の抱える課題を共有し一緒に解決を願う、という気持ちの入った宣言です。

パンデミックからの回復など、その時々の課題と森林の大切さの関係が示されていますが、今までの宣言との違いは何か、前回のダーバン宣言などを比較して考えてみました。

2015年の前回の宣言が、勉強部屋のサイトに掲載されています。世界林業会議2015南アフリカダーバンから(2015/9/26)

一つは、具体的な目標に応じた資金投入に目標額が示されたこと。森林と景観に関する投資額を30年までに3倍にする、として、森林投資に関するフレームワークが示されたことです。(緑のセルの部分この辺については、追ってもう少し報告する予定です)

もう一つは、木材利用の関する項目が一項目入ったことです。

前回の宣言でもその点が気になり、「(木材利用については)、セッションの議論の中では多面的な討議がされましたが、必すしも、まとめの宣言の中には十分に反映していない面があります。」と指摘しました(日本にとっての宣言)

宣言の当該部分
「木材は人類にとって最も古い原材料のひとつですが、再生可能でリサイクル可能、そして驚くほど用途が広いため、私たちを未来へと導いてくれるものです。合法的で持続可能な方法で生産された木材の可能性を最大限に活用し、建築分野を変革し、再生可能エネルギーと革新的な新材料を提供し、循環型バイオ経済と気候ニュートラルに移行しなければなりません」

世界林業会議で、途上国を中心とした森林の減少荒廃問題にくわえて、木材の利用が課題に。都市化する先進国の中で木材の役割、先進国消費者の消費態様と持続可能な森林管理といた重要な点が共通の認識になってきました。この辺はについては、閣僚級の会合(Ministerial forum on Sutainable Wood)の中で、林野庁の次長も参画して話をされましたが、今後も含めて日本の経験蓄積がしっかり発進されていく必要があると思います。閣僚級会合の議論の中身も含めて追って報告します。

(勉強部屋とウッドマイルズフォーラムの情報発進)

私は、Possibility of local wood from a global perspectiveーThe Environmental Performance on Wooden Main Stadium of Tokyo 2020(国際的な視点で見た地域材の可能性ー東京オリパラ2020の木造主会場の環境性能)と題するボランタリーペーパーをウッドマイルズフォーラムの藤原として、提出し、報告する機会がありました。

報告内容と関連事項は、別途ページでおお示しします(グローバルな視野から見た地域木材の可能性―東京2021主会場木造国立競技場の環境性能ー第15回世界林業大会の提出文書

ローカル(地域・地元)というキーワードは、森林原料を生産する国が市場の関係で地元でどこまで付加価値を高めるか?小規模な生産者が森林のサプライチェーンを管理するうえで地元の管理が大切、など様々な広がりがあると思いました。

そのことも含めて、私の勉強部屋のページを中心とした活動内容、ウッドマイルズフォーラムの活動内容などをふくめたパンフレットを作り、多くの方と話し合い、名刺交換をして、ネットワークを広げることができました。

パンデミックの中での、7年ぶりの外国への旅行、大変でしたが充実した旅でした。

chikyu1-42<WFCXVrepo>

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グローバルな視野から見た地域木材の可能性―東京2021主会場木造国立競技場の環境性能ー第15回世界林業大会の提出文書(2021/5/15)

5月第一週にソウルで開催された第15回世界林業大会に論文の提出規程があったので、提出(大会10日前になってやっと)アクセプトされました。

提出者はウッドマイルズフォーラムの藤原(主筆)と滝口さん、タイトルはPossibility of local wood from a global perspectiveーThe Environmental Performance on Wooden Main Stadium of Tokyo 2020(国際的な視点で見た地域材の可能性ー東京オリパラ2020の木造主会場の環境性能)

そして、いろいろ日程調整の結果、3日目5月4日の午後のスピーカーズコーナーで、紹介することができました。(5人一組で3分ずつスピーチ、その後15分間の質疑応答、1セット30分。これが毎日数セット。

プレゼン内容を説明します(英語で3分間やりました)

皆さん今日は!
 日本の一般社団法人ウッドマイルズフォーラム藤原が、「国際的な視点で見た地域材の可能性ー東京オリパラ2020の木造主会場の環境性能」というタイトルで、報告します
   ウッドマイルズフォーラムという団体(以下WMF)は、2001年から、木材の環境的側面と地域性という点で研究活動を開始し、14年に一般社団法人ウッドマイルズフォーラムになりました。
輸送過程の温室効果ガスとか、トレーサビリティコストなど調べています
左の図は、2年ほど前ネイチャートレーサビリティl誌に掲載された、本報告の背景となる図です。

地球の炭素貯蔵をめぐる歴史的動向
左端は、「地球の炭素貯蔵庫形成期」、真ん中は「炭素貯蔵庫破壊期」、右端は「炭素貯蔵庫再構成期」。私たちは第3の時代の入り口にいます。

生物起源の材料により都市が形成され貯蔵庫おなっていく・・・
WMFが行った、2012ロンドン大会と2021東京大会の木造主会場のウッドマイルズ指数の評価結果です。

前者は世界中から木材が集められ、後者は日本中から木材が集荷されました。
上から順に、木材輸送距離、木材単位材積当たりの輸送過程CO2排出量、木材全体の輸送過程CO2排出量(a)、木材に固定されたCO2の量(b)、最後がa/b。
ロンドンでは固定されたCO2の4割が輸送過程で排出されている。
グローバル木材GWとローカル木材LWの比較。
物理的経済的品質だと、GWは市場の要求に世界中の木材で柔軟に対応できるが、LWは供給材料の品質が限られているので、市場を管理する必要(こういう材料使ってください)がある。GWが勝ち
環境的社会的品質だと、GWは品質を証明するのに世界中のサプライチェーンに関して第三者管理が必要だが、LWはサプライチェーンは知っている人なので、管理が簡単。GHGの排出量ではGWでは固定量の半分以上を輸送過程で排出してしまう可能性がある。LWの勝ち

(質疑応答)

質疑の時間では、5人の報告に対して3つほどの質問があり、そのうち二人がTakashiへの質問。

Q1 日本の国立競技場がローカル木材だというが、どうしてローカル木材といえるのか?

A2 国立競技場を取り巻いている木材は、日本の各都道府県から取り寄せた木材で構成されており、どの方向はどの都道府県からきた部材なのかわかるようになっている。地域性を大切にしている。

Q2 施設をつくるときのコンクリートパネルが、マレーシア産でトレーサビリティに問題がある、と指摘されたケースがあるのでないか?LGではないのでないか?

A2 指摘の通りのことがあったが、今回の計算は、実際に建築物ができたときに存在が見える構成要素で図っている。コンクリートパネルは除いている。

(森林と木材利用の議論なのかでの地域性LOCALITYの議論の位置づけ)

地域性というキーワードでプレゼンをしてみて、その言葉が、どの程度広がりがあるか、問題意識を感じていました。

森林に基づく解決策Forest-based solutionsという言葉が、ソウル森林宣言の中にもありますが、inclusive of the perspectives of family farmers, smallholders, forest communities, Indigenous Peoples,これらの人たちをまきこんで、意見を聞いて、権利を尊重し、地域の知恵を大切に・・・と話が続きます。大きなバリューチェーンに頼るだけでなく、まさに地域性を大切に、というコンセプトだと思います。

そのほかに、全体の会議のなかで、もう少し追いかけていきたいと思います。

(パリ2024の木材調達方針の問題点?)

5月4日の午前中Plenary session 3 Wood the most ancient raw material taking us to the future と(「最古の原料である木材は我々を未来に導く」、と題する会合があり、内容は別途ご報告しようと思いますが、そこに出てたコンゴ共和国の森林経済大臣H.E. Rosalie Matondoさんは、発言の中で、パリ2024大会の事務局の木材調達方針に異をとなえるような発言がありました。

パリ2024の木材調達方針の中で、熱帯木材を排除するといった、規定があるようです。
Paris 2024 Olympics’ timber commitment excludes tropical suppliers

大臣には私のペーパーの概要もお渡しして、興味があるので今後教えてください、と申し上げておきました。

今後フォローしておきますね。

chikyu1-42-1<WFCXVLW>

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 戦争と木材貿易ーローカルな輸入材ロシア材の輸入トラブル (2022/5/15)

ロシアによるウクライナ侵攻に基づいて、ロシアからの木材の輸入が厳しい状況に置かれています。

3月9日ロシア側からは「非友好国」への輸出禁止措置として単板、丸太、チップについて輸出禁止
4月12日日本側がロシアからの一部物品の輸入禁止措置

ロシアからも木材輸入額600億円ほどのうち100億円程度がロシアの侵略で貿易禁止です

また、森林認証制度もロシア産材は「紛争木材」だとして認証材としての流通禁止

PEFC/SGEC :ロシア及びベラルーシからの木材 は 「紛争木材」
FSC:ロシア・ベラルーシ産木材の認証を停止

紛争木材とは:「COC のいずれかの時点で、武装集団(反乱軍であるか通常兵士であるかを問わない)、ある いは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目 的が紛争の永続化または個人的な利益のために紛争状態を利用することにある場合。(・・・) 紛争木材は必ずしも「違法」であるとは限らない。」FAQ :ロシア及びベラルーシからの木材 は 「紛争木材」

世界中のどこかで、行われている国家間の紛争が、市場に与える影響。

日本のマーケット全体で考えると、大した問題ではないかもしれませんが、旧ソ連時代から、国際政治の難しい問題を解決しながら、ロシア材の輸入加工、日本のマーケットへの投入という仕事に取組んできた北洋材関係者にとっては大きな問題でしょう。

例えば北海道の市場にとっては、九州より近いロシア材。地域材ですね。

地球上の貴重な循環資源である木材を、市民が環境的・社会的・経済的観点から、合理性選択していくという当然のことが、できなくなっている現状を解決していかなければなりませんね。

boueki10-1<russtimwar1>

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木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている?ー課題と期待(2022/4/28)

木質バイオマスエネルギーによる発電は、FIT制度により結果として電力消費者に負担をかけ、木材の環境的側面に対する消費者からの支援という、大切な機能を含んでおり、持続可能性の証明方法などEUの動向など視野にいれて、しっかり構築していかなければならないと、このサイトでも関心を持ってフォローしてきました。(シンポジウム「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて~英国の事例と日本の課題~」など

森林ビジネスの環境側面に関するNGOや学会関係者の情報発信をしっかり受け止めていかなければならないのですが(森林バイオマスはカーボンニュートラルか?500名以上の科学者が日本政府に(も)書簡)、このところ、「気候危機を悪化させるバイオマス発電~1.5℃目標との整合性を問う~石炭より悪い輸入木質バイオマス~森林保全による炭素固定の重要性」など、NGOの発出する森林由来のバイオマスに関するネガティブなな情報発信がステップアップしているようです。

COP26でカーボンニュートラルな「第四の化石燃料」となった木質バイオマス発電燃料

(欧州のバイオマス発電に関する動向)

これらの議論の背景には、昨年(2021年)1月に発表した「欧州委員会の共同研究センター(Joint Research Center:JRC)が、森林由来の木質バイオエネルギーの気候変動への効果を分析する報告書」があったんだようです。The use of woody biomass for energy production in the EU

欧州の政策当局者である欧州委員会が、公式に「森林バイオマスはカーボンニュートラルではない」という内容を含んだ、最初の公式文書

日経新聞が配信した記事もインパクトを与えました。輸入に頼る木質バイオマス発電 持続可能といえるか-科学記者の目 編集委員 滝順一

先の森林学会の企画シンポジウム「森林バイオマス利用はカーボンニュウートラルか?炭素負債問題を理解する」をリードされれた相川さんにいただいた、「やっかいな問題」として森林バイオエネルギー問題を捉える-JRCレポートを読み解くを読んで、周辺情報を復習して少し、問題を解明してみました。

(木質バイオマス発電のカーボンはニュートラル?)

まず、林野庁の見解から、「森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。
このように、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。」(林野庁HP「なぜ木質バイオマスを使うのか」より)

そうですね、炭素中立。「化石資源燃焼の二酸化炭素が何億年前に吸収された炭素由来なのに対して、少し前に吸収した炭素を再排出するのだから、カーボンニュートラルだよね」というように私も考えてきましたが、「中立でないよ」というのが、NGOの言説の一つの柱になっています。

バイオマス発電は環境に優しいか?-”カーボンニュートラル”のまやかし」というFOEJapanの記事にしたがってその論理を見てみます。

第3章 バイオマス発電とカーボン・ニュートラルの嘘

1. カーボン・ニュートラルの定義

「「カーボン・ニュートラル」とは、ライフサイクルの中で、二酸化炭素(CO2)の排出と吸収が プラスマイナスゼロであることと定義され、炭素中立とも呼ばれている。バイオマス発電は、燃料 となる植物の燃焼段階でのCO2排出と、植物の成長過程における光合成によるCO2の吸収量が相殺 されるとされ、「カーボン・ニュートラル」であると説明されることが多い。」

2. 森林減少・劣化による炭素ストックの減少

「土地利用転換を伴わない伐採である場合、伐採の程度や森林が貯蔵している炭素量がど のくらいの時間で回復するかが問われる。皆伐もしくは森林劣化を伴うような伐採である場合、森 林が元の状態に回復したとしても、伐採から数十年から100年以上かかる場合もあり、その間は伐 採した燃料を燃やした結果生じたCO2は大気中にとどまり、CO2の増加に寄与することとなる」

「バイオマス発電による森林減少・劣化によるCO2排出を評価する場合、バイオマス発電事業がある場合(with project)、ない場合(without project)双方の一定期間後の当該森林の炭素蓄積量の変化を評価することが必要である。バイオマス発電事業を実施しない場合でも行われている、森林管理のための間伐によって発生した材や、製材生産による端材などを燃料として使用する場合は、森林が貯蔵している炭素量は、バイオマス発電事業によっては減少しない」

3. 栽培、加⼯、輸送、燃焼など各段階でのGHG排出

「栽培、加工、輸送、燃焼といったライフサイクルの各段階でのCO2を含むGHG排出も当然考慮されるべきで・・

例えば、カナダで生産された木質ペレットを日本に輸入した場合、ライフサイクルでのGHG排出は23.5g-CO2/MJ-Feedstockであるが、これは日本国内で生産した木質チップのライフサイクルでのGHG排出3.3g-CO2/MJ-Feedstockの7倍となる

4. 結論

バイオマス発電は、「カーボン・ニュートラル」ではない。バイオマス発電を再生可能エネルギーとして促進する場合、GHG排出削減や生物多様性保全の観点から、生産段階での森林減少など土地利用変化を伴うものは除外すべきである。またライフサイクルにわたるGHG評価を行い、十分にGHG削減が見込めるもののみを対象とすべき。

とりあえず、この部分がNGO の主張を要約していると考えると、政策的な文脈で考えると二つの重要な指摘があると思います。

(原料の由来)

一つのポイントは、エネルギー供給のために森林を伐採する場合は、注意が必要。

間伐材由来とか、廃棄物由来の二次的なエネルギー利用では問題ないのですが、エネルギーのために森林を伐採する場合、どんな形で伐採後の森林が成長して排出量を回収するのか、分析する必要があるという指摘ですね。

発電所の計画策定時点で、燃料由来をチェックする必要、そして、すでに認可されて事業者に対しても、説明をもとめる・・・。結構大変な作業ですが、森林学会のプレゼンでも、森林施業木材利用シナリオを作成して計算する報告がされています。

海外から輸入されるものでは難しい。(我が国の大規模バイオマスエネルギー発電所が調達する(予定となっている)北米由来の木質ペレットは、問題が多い。カナダにおける木質ペレット生産とその環境社会影響

国内原料では、早生樹の活用などが、どのように貢献するのか、この辺の研究をすすめることの重要性が示されていると思います。

現在の利用形態で、どの程度のリスクがどの程度あるのか?という点について、私自身ももう少し勉強してまいりたいと思います。

大きなハードルですが、木質バイオマス発電が消費者から支援を受ける前提で、越えなければならないハードルなのかもしれません。

(製造・輸送過程の排出量)

もう一つの指摘。バイオマス燃料を燃焼させる場合、固定されていた炭素が放出されるだけでなく、燃料の製造輸送過程のGHGがどの程度減らすかが重要な視点。

この点は、このページでも主張してきました。森林バイオマス発電の次のステップは?-FIT提案セミナー(2019/10/15)

事業計画策定ガイドラインでもそのことを念頭において改訂がされました(「事業計画策定ガイドライン改正案」に対する意見公募の実施結果について)。事業計画策定ガイドライン (バイオマス発電)

今後認定される大型工場がほとんどないであろうなか、すでに、認定されたものは努力義務では駄目なんではないかという意見があります。

だれが考えても、供給過程のGHGを一定以下にすることは、当然のことです。供給側も体制をととのえる事が必要だと思います。

ー---

およその議論の概要ですが、今後具体的にどんな課題があるかなど、フォローしてまいります。

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 山の利、都市の利-暮らしから森を見つめなおす(2022/4/28)

4月17日「生活の中から、日本の森林・林業を考える」というシリーズシンポジウム「山の利、都市の利」〜暮らしから森を見つめ直す〜に参加(zoom)しました。

法政大学 網野禎昭教授が「山の利、都市の利」、三浦林商合同会社代表社員 三浦妃己郎氏が「生活を黒いj化する隙間林業はってます」、二つの面白い話を聞きました。

なかなか、話の内容を直接紹介することが難しいんですが、面白かったので、まず、網野先生の話の概要を、三つのトピックスに応じてご紹介します。

(トピックス1エネルギー自立と木造建築 なんで今木造?)

参考サイト欧州の歴史から学ぶ、持続可能な木造文化

右の図は、紹介された「ホンブルクの街並み。木造5階建て、1階は石造の集合住宅が隙間なく連なる(写真:Klaus Zwerger)」という写真、上記参考サイトに掲載されてたものから)

都市部で狭い範囲に集合住宅が密集して建てられている。

こんな住宅街が形成された背景に「森林資源の問題が関係している」というのです。

「都市を広げたくても、建物を建てるための用材が不足し、暖房やパンを焼くためのしん炭材も欠乏していった。そこで、『森林を活用するためのルールをつくろう』という動きが表れたのだ。例えば、各地の『ヴァイステューマー(中世の習慣法)』や『「フォルスト条例(森林条例)』だ。」

 「『建物の定期検査・修理』『建物の1階は石で仕上げる』『建物を高く増築することの禁止』など、建物をしっかりつくって、長持ちさせようというという考え方を決めた。つまり、都市や建築の持続可能性を目指した。」

「地域の森林が、街づくりの態様に影響を与えたんではないか」というトピックス1の話でした。

(トピックス2住みよい中山間地域の開発ー人口減少地方創生どんな都市を目指す?)

欧州と日本の自治体の規模を比べると、日本は拡大しているけれど、欧州は小さい。

中心部に木造の学校兼、役場兼、高齢者の集合住宅をつくり、周りに若者がやってくる。オーストリア・クルンバッハの街並み(写真:松尾 浩樹)

参考サイト:欧州の歴史から学ぶ、持続可能な木造文化-中山間地域でも木造建築村島 正彦 ライター

今後の日本の田園都市街づくりの参考になります。

都市の大きさを小さくすることはウクライナ戦争とも関係している?ーどこに爆弾落としたらいいかわからない・・・という話にも

(トピックス3山が豊かになる建築デザイン)

参考サイト:設計者は木造でも万能か-都市木造を山から考える(前編)

このセッションが一番紹介しようと思った部分です。

CLTのような、「高度に加工され安定化した部材で市場拡大」も一つの方法だが、この方法は歩留まりが悪く(丸太からとれる利用材積が少ない)、地方で加工施設(地方の小さな製材所ではCLTは作れない)が限定される。

歩留まりの高い、あら加工の製品をたっぷり使った、建築物を増やしていくのがもう一つの方法です(地元の山の材木を地元の工場で加工し地元の建物を建てる)。

ご自身がお住まいのバウマイスターの家、の紹介がありました。

参考サイト:網野禎昭「バウマイスターの家から考える林業と木造」(自邸よりオンライン配信)|『住宅建築』講演会 #56WORK 110バウマイスターの家(平成建設)

そのためには・・・

「きちんと木材の情報を提供できるコーディネーターのような役割を増やさなければならない」「日々の仕事が忙しい設計者に、「山や製材工場まで木を見に行きなさい」と言っても、実際は難しいでしょう」

「川上から川下まで木造関連の産業は構造が複雑で、地域によっても異なります。大工によっては言うことが違うし、生半可に学ぼうとして誤解を生むリスクもあります。だからこそ、木材活用のコーディネーターが役立ちます。」

(以上)

網野先生のネット上の情報にそって紹介なので、シンポジウムの話と少し違うところがあるかもしれませんが、納得できたストーリーを紹介してました。

楽しかったです

junnkan3-27(yamaritosiri)

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コロナ渦の7年ぶりの海外旅行・・・ー勉強部屋ニュース273編集ばなし(2022/5/15)

パスポートの更新をして、第15回世界林業会議出席のため韓国へ。前のパスポートを見ると、前回海外にいったのは前回の第14回世界林業大会南ア行きでした。

ビザをとって、ワクチン接種の証明書をとり、PCR検査をして、出発。帰りはPCR検査問題で一日、帰国が遅れ、現在(15日)自宅待機中・・・いろいろありましたが。できるだけたくさんの人と、コミュニケーションをひろげて・・・情報収集。

その内容に、今回二つの記事を書きました。

大会事務局のHPには主要な会合の動画が4か国語で再生できるようになっているんですが、文字のアウトプット情報が整理された掲載されるんでなかと思うので、今後少し時間をかけて整理していきます。

特に、「森林の事案をとおして世界における韓国の地位を向上」(パンフレット)という意気込みの韓国のパフォーマンス、「木材は最古の資源であり、我々を未来に招待する!the most ancinet raw material taking us to the future」、といった、木材に関する情報は今後すこしまとめて紹介します。

6月下旬に持続可能な森林フォーラム総会をやる予定です。追ってご連絡します。会員の皆さん、よろしくお願いします。

次号以降の予告、世界林業大会出席記録(続き)、クリーンウッド法検討会の中間報告に何が書いてあるかな?、木材ビジネス最前線、カーボンニュートラルと都市の緑地ー市街化区域の緑地の二酸化炭素吸収量、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com