ニュースレター No.273 2022年5月15日発行 (発行部数:1560部) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬 |
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フロントページ:グローバルな森林政策の方向性ー第15回世界林業大会から(2022/4/15)
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グローバルな視野から見た地域木材の可能性―東京2021主会場木造国立競技場の環境性能ー第15回世界林業大会の提出文書(2021/5/15) 5月第一週にソウルで開催された第15回世界林業大会に論文の提出規程があったので、提出(大会10日前になってやっと)アクセプトされました。 提出者はウッドマイルズフォーラムの藤原(主筆)と滝口さん、タイトルはPossibility of local wood from a global perspectiveーThe Environmental Performance
on Wooden Main Stadium of Tokyo 2020(国際的な視点で見た地域材の可能性ー東京オリパラ2020の木造主会場の環境性能) そして、いろいろ日程調整の結果、3日目5月4日の午後のスピーカーズコーナーで、紹介することができました。(5人一組で3分ずつスピーチ、その後15分間の質疑応答、1セット30分。これが毎日数セット。 プレゼン内容を説明します(英語で3分間やりました)
(質疑応答) 質疑の時間では、5人の報告に対して3つほどの質問があり、そのうち二人がTakashiへの質問。 Q1 日本の国立競技場がローカル木材だというが、どうしてローカル木材といえるのか? A2 国立競技場を取り巻いている木材は、日本の各都道府県から取り寄せた木材で構成されており、どの方向はどの都道府県からきた部材なのかわかるようになっている。地域性を大切にしている。 Q2 施設をつくるときのコンクリートパネルが、マレーシア産でトレーサビリティに問題がある、と指摘されたケースがあるのでないか?LGではないのでないか? A2 指摘の通りのことがあったが、今回の計算は、実際に建築物ができたときに存在が見える構成要素で図っている。コンクリートパネルは除いている。 (森林と木材利用の議論なのかでの地域性LOCALITYの議論の位置づけ) 地域性というキーワードでプレゼンをしてみて、その言葉が、どの程度広がりがあるか、問題意識を感じていました。 森林に基づく解決策Forest-based solutionsという言葉が、ソウル森林宣言の中にもありますが、inclusive of the perspectives of family farmers, smallholders, forest communities, Indigenous Peoples,これらの人たちをまきこんで、意見を聞いて、権利を尊重し、地域の知恵を大切に・・・と話が続きます。大きなバリューチェーンに頼るだけでなく、まさに地域性を大切に、というコンセプトだと思います。 そのほかに、全体の会議のなかで、もう少し追いかけていきたいと思います。 (パリ2024の木材調達方針の問題点?) 5月4日の午前中Plenary session 3 Wood the most ancient raw material taking us to the future と(「最古の原料である木材は我々を未来に導く」、と題する会合があり、内容は別途ご報告しようと思いますが、そこに出てたコンゴ共和国の森林経済大臣H.E. Rosalie Matondoさんは、発言の中で、パリ2024大会の事務局の木材調達方針に異をとなえるような発言がありました。 パリ2024の木材調達方針の中で、熱帯木材を排除するといった、規定があるようです。 大臣には私のペーパーの概要もお渡しして、興味があるので今後教えてください、と申し上げておきました。 今後フォローしておきますね。 chikyu1-42-1<WFCXVLW> ■いいねボタン |
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戦争と木材貿易ーローカルな輸入材ロシア材の輸入トラブル (2022/5/15)
ロシアによるウクライナ侵攻に基づいて、ロシアからの木材の輸入が厳しい状況に置かれています。 3月9日ロシア側からは「非友好国」への輸出禁止措置として単板、丸太、チップについて輸出禁止 ロシアからも木材輸入額600億円ほどのうち100億円程度がロシアの侵略で貿易禁止です また、森林認証制度もロシア産材は「紛争木材」だとして認証材としての流通禁止 PEFC/SGEC :ロシア及びベラルーシからの木材 は 「紛争木材」 紛争木材とは:「COC のいずれかの時点で、武装集団(反乱軍であるか通常兵士であるかを問わない)、ある いは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目 的が紛争の永続化または個人的な利益のために紛争状態を利用することにある場合。(・・・) 紛争木材は必ずしも「違法」であるとは限らない。」FAQ :ロシア及びベラルーシからの木材 は 「紛争木材」 世界中のどこかで、行われている国家間の紛争が、市場に与える影響。 日本のマーケット全体で考えると、大した問題ではないかもしれませんが、旧ソ連時代から、国際政治の難しい問題を解決しながら、ロシア材の輸入加工、日本のマーケットへの投入という仕事に取組んできた北洋材関係者にとっては大きな問題でしょう。 例えば北海道の市場にとっては、九州より近いロシア材。地域材ですね。 地球上の貴重な循環資源である木材を、市民が環境的・社会的・経済的観点から、合理性選択していくという当然のことが、できなくなっている現状を解決していかなければなりませんね。 boueki10-1<russtimwar1> ■いいねボタン |
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木質バイオマスエネルギーは厄介な問題を抱えている?ー課題と期待(2022/4/28) 木質バイオマスエネルギーによる発電は、FIT制度により結果として電力消費者に負担をかけ、木材の環境的側面に対する消費者からの支援という、大切な機能を含んでおり、持続可能性の証明方法などEUの動向など視野にいれて、しっかり構築していかなければならないと、このサイトでも関心を持ってフォローしてきました。(シンポジウム「固体バイオマスの持続可能性確保へ向けて~英国の事例と日本の課題~」など) 森林ビジネスの環境側面に関するNGOや学会関係者の情報発信をしっかり受け止めていかなければならないのですが(森林バイオマスはカーボンニュートラルか?500名以上の科学者が日本政府に(も)書簡)、このところ、「気候危機を悪化させるバイオマス発電~1.5℃目標との整合性を問う~石炭より悪い輸入木質バイオマス~森林保全による炭素固定の重要性」など、NGOの発出する森林由来のバイオマスに関するネガティブなな情報発信がステップアップしているようです。 COP26でカーボンニュートラルな「第四の化石燃料」となった木質バイオマス発電燃料 (欧州のバイオマス発電に関する動向) これらの議論の背景には、昨年(2021年)1月に発表した「欧州委員会の共同研究センター(Joint Research Center:JRC)が、森林由来の木質バイオエネルギーの気候変動への効果を分析する報告書」があったんだようです。The use of woody biomass for energy production in the EU 欧州の政策当局者である欧州委員会が、公式に「森林バイオマスはカーボンニュートラルではない」という内容を含んだ、最初の公式文書 日経新聞が配信した記事もインパクトを与えました。輸入に頼る木質バイオマス発電 持続可能といえるか-科学記者の目 編集委員 滝順一 先の森林学会の企画シンポジウム「森林バイオマス利用はカーボンニュウートラルか?炭素負債問題を理解する」をリードされれた相川さんにいただいた、「やっかいな問題」として森林バイオエネルギー問題を捉える-JRCレポートを読み解くを読んで、周辺情報を復習して少し、問題を解明してみました。 (木質バイオマス発電のカーボンはニュートラル?) まず、林野庁の見解から、「森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。 そうですね、炭素中立。「化石資源燃焼の二酸化炭素が何億年前に吸収された炭素由来なのに対して、少し前に吸収した炭素を再排出するのだから、カーボンニュートラルだよね」というように私も考えてきましたが、「中立でないよ」というのが、NGOの言説の一つの柱になっています。 「バイオマス発電は環境に優しいか?-”カーボンニュートラル”のまやかし」というFOEJapanの記事にしたがってその論理を見てみます。
とりあえず、この部分がNGO の主張を要約していると考えると、政策的な文脈で考えると二つの重要な指摘があると思います。 (原料の由来) 一つのポイントは、エネルギー供給のために森林を伐採する場合は、注意が必要。 間伐材由来とか、廃棄物由来の二次的なエネルギー利用では問題ないのですが、エネルギーのために森林を伐採する場合、どんな形で伐採後の森林が成長して排出量を回収するのか、分析する必要があるという指摘ですね。 発電所の計画策定時点で、燃料由来をチェックする必要、そして、すでに認可されて事業者に対しても、説明をもとめる・・・。結構大変な作業ですが、森林学会のプレゼンでも、森林施業木材利用シナリオを作成して計算する報告がされています。 海外から輸入されるものでは難しい。(我が国の大規模バイオマスエネルギー発電所が調達する(予定となっている)北米由来の木質ペレットは、問題が多い。カナダにおける木質ペレット生産とその環境社会影響) 国内原料では、早生樹の活用などが、どのように貢献するのか、この辺の研究をすすめることの重要性が示されていると思います。 現在の利用形態で、どの程度のリスクがどの程度あるのか?という点について、私自身ももう少し勉強してまいりたいと思います。 大きなハードルですが、木質バイオマス発電が消費者から支援を受ける前提で、越えなければならないハードルなのかもしれません。 (製造・輸送過程の排出量) もう一つの指摘。バイオマス燃料を燃焼させる場合、固定されていた炭素が放出されるだけでなく、燃料の製造輸送過程のGHGがどの程度減らすかが重要な視点。 この点は、このページでも主張してきました。森林バイオマス発電の次のステップは?-FIT提案セミナー(2019/10/15) 事業計画策定ガイドラインでもそのことを念頭において改訂がされました(「事業計画策定ガイドライン改正案」に対する意見公募の実施結果について)。事業計画策定ガイドライン (バイオマス発電) 今後認定される大型工場がほとんどないであろうなか、すでに、認定されたものは努力義務では駄目なんではないかという意見があります。 だれが考えても、供給過程のGHGを一定以下にすることは、当然のことです。供給側も体制をととのえる事が必要だと思います。 ー--- およその議論の概要ですが、今後具体的にどんな課題があるかなど、フォローしてまいります。 energy1-41<wickWE> いいねボタン |
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山の利、都市の利-暮らしから森を見つめなおす(2022/4/28)
4月17日「生活の中から、日本の森林・林業を考える」というシリーズシンポジウム「山の利、都市の利」〜暮らしから森を見つめ直す〜に参加(zoom)しました。 法政大学 網野禎昭教授が「山の利、都市の利」、三浦林商合同会社代表社員 三浦妃己郎氏が「生活を黒いj化する隙間林業はってます」、二つの面白い話を聞きました。 なかなか、話の内容を直接紹介することが難しいんですが、面白かったので、まず、網野先生の話の概要を、三つのトピックスに応じてご紹介します。 (トピックス1エネルギー自立と木造建築 なんで今木造?) 参考サイト欧州の歴史から学ぶ、持続可能な木造文化 右の図は、紹介された「ホンブルクの街並み。木造5階建て、1階は石造の集合住宅が隙間なく連なる(写真:Klaus Zwerger)」という写真、上記参考サイトに掲載されてたものから) 都市部で狭い範囲に集合住宅が密集して建てられている。 こんな住宅街が形成された背景に「森林資源の問題が関係している」というのです。 「都市を広げたくても、建物を建てるための用材が不足し、暖房やパンを焼くためのしん炭材も欠乏していった。そこで、『森林を活用するためのルールをつくろう』という動きが表れたのだ。例えば、各地の『ヴァイステューマー(中世の習慣法)』や『「フォルスト条例(森林条例)』だ。」 「『建物の定期検査・修理』『建物の1階は石で仕上げる』『建物を高く増築することの禁止』など、建物をしっかりつくって、長持ちさせようというという考え方を決めた。つまり、都市や建築の持続可能性を目指した。」 「地域の森林が、街づくりの態様に影響を与えたんではないか」というトピックス1の話でした。 (トピックス2住みよい中山間地域の開発ー人口減少地方創生どんな都市を目指す?) 欧州と日本の自治体の規模を比べると、日本は拡大しているけれど、欧州は小さい。 中心部に木造の学校兼、役場兼、高齢者の集合住宅をつくり、周りに若者がやってくる。オーストリア・クルンバッハの街並み(写真:松尾 浩樹) 参考サイト:欧州の歴史から学ぶ、持続可能な木造文化-中山間地域でも木造建築村島 正彦 ライター 今後の日本の田園都市街づくりの参考になります。 都市の大きさを小さくすることはウクライナ戦争とも関係している?ーどこに爆弾落としたらいいかわからない・・・という話にも (トピックス3山が豊かになる建築デザイン) 参考サイト:設計者は木造でも万能か-都市木造を山から考える(前編) このセッションが一番紹介しようと思った部分です。 CLTのような、「高度に加工され安定化した部材で市場拡大」も一つの方法だが、この方法は歩留まりが悪く(丸太からとれる利用材積が少ない)、地方で加工施設(地方の小さな製材所ではCLTは作れない)が限定される。 歩留まりの高い、あら加工の製品をたっぷり使った、建築物を増やしていくのがもう一つの方法です(地元の山の材木を地元の工場で加工し地元の建物を建てる)。 ご自身がお住まいのバウマイスターの家、の紹介がありました。 参考サイト:網野禎昭「バウマイスターの家から考える林業と木造」(自邸よりオンライン配信)|『住宅建築』講演会 #56、WORK 110バウマイスターの家(平成建設) そのためには・・・ 「きちんと木材の情報を提供できるコーディネーターのような役割を増やさなければならない」「日々の仕事が忙しい設計者に、「山や製材工場まで木を見に行きなさい」と言っても、実際は難しいでしょう」 「川上から川下まで木造関連の産業は構造が複雑で、地域によっても異なります。大工によっては言うことが違うし、生半可に学ぼうとして誤解を生むリスクもあります。だからこそ、木材活用のコーディネーターが役立ちます。」 (以上) 網野先生のネット上の情報にそって紹介なので、シンポジウムの話と少し違うところがあるかもしれませんが、納得できたストーリーを紹介してました。 楽しかったです junnkan3-27(yamaritosiri) いいねボタン |
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コロナ渦の7年ぶりの海外旅行・・・ー勉強部屋ニュース273編集ばなし(2022/5/15)
パスポートの更新をして、第15回世界林業会議出席のため韓国へ。前のパスポートを見ると、前回海外にいったのは前回の第14回世界林業大会南ア行きでした。 ビザをとって、ワクチン接種の証明書をとり、PCR検査をして、出発。帰りはPCR検査問題で一日、帰国が遅れ、現在(15日)自宅待機中・・・いろいろありましたが。できるだけたくさんの人と、コミュニケーションをひろげて・・・情報収集。 その内容に、今回二つの記事を書きました。 大会事務局のHPには主要な会合の動画が4か国語で再生できるようになっているんですが、文字のアウトプット情報が整理された掲載されるんでなかと思うので、今後少し時間をかけて整理していきます。 特に、「森林の事案をとおして世界における韓国の地位を向上」(パンフレット)という意気込みの韓国のパフォーマンス、「木材は最古の資源であり、我々を未来に招待する!the most ancinet raw material taking us to the future」、といった、木材に関する情報は今後すこしまとめて紹介します。 6月下旬に持続可能な森林フォーラム総会をやる予定です。追ってご連絡します。会員の皆さん、よろしくお願いします。 次号以降の予告、世界林業大会出席記録(続き)、クリーンウッド法検討会の中間報告に何が書いてあるかな?、木材ビジネス最前線、カーボンニュートラルと都市の緑地ー市街化区域の緑地の二酸化炭素吸収量、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容 konosaito<hensyukouki> いいねボタン |
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