ニュースレター No.268 2021年12月15発行 (発行部数:1544部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:地域の未来がきりひらかれるかー自伐型林業で定住化(2021/12/15)
2.  美しい木組みの家ー古民家になる家と森林との関係(2021/12/15)
3.  気候変動枠組条約COP26と森林(2ー本体の会議結果)(2021/12/15)
4. 森林・林業基本計画の形成にかかる関係者の参画過程の動向―過去の基本計画策定過程における意見募集結果のテキスト分析から―(2021/12/15)
5.  国交省と建築士連合会の木材利用促進協定ー木の建築賞など(2021/12/15)
6.  第3回持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー開催します(2021/12/15)
7. 東京を離れる機会が少しずつ・・・ー勉強部屋ニュース268編集ばなし(2021/12/15)

フロントページ:地域の未来が切り開かれるかー自伐林業で定住化(202/12/15)

「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」という本を読んでみました。

筆者はNHK番組クローズアップ現代プラスでクローズアップされた「森林・大国日本の飛躍のカギ」に登場、重要な役割を果たされた九州大学大学院農学研究院 環境農学部門森林政策学分野佐藤宣子教授。

(「小さな林業」の可能性は)

「国産材時代」というが、森林にめぐまれた現代日本の次世代の森林づくりはうまくいくのか?

国産材時代を切り拓く、マーケット主導の「大きな林業」のリスクをに対処する「小さな林業」。

このページでも、近くの山の家づくりなど建築関係者が主導する小さな林業の例を挙げてきました(令和の国産材時代の次世代の山創りの課題ー森林ガバナンスはユーザーとの連携で)が、川上主導の「小さな林業」というのが、自伐型林業の意味だと理解しています。

(山づくりの現場から)

北海道から九州まで、全国17か所を訪問して(右の図)、月刊誌現代林業に40回にわたって連載された「自伐林業探求の旅シリーズ」の書籍化!。

このサイト(勉強部屋)が現場をしっかりフォローしていないので、大切な勉強の機会!!

(自伐(型)林家・林業とは)

とりあえず言葉の意味を明確にしておきます。

自伐林家とは:「自家山林を自家労働力中心に施業する林業家」。そこが実施する事業が自伐林業

自伐型林家とは:「地域を固定して森林所有者から施業や管理を受託している小規模林業家」。そこが実施する事業が自伐型林業

両方合わせていうときは自伐(型)林家、自伐(型)林業という。

(何故注目される自伐(型)林業)

左の図は、特定非営利活動法人ふるさと回帰支援センターが開催するふるさと回帰フェアや移住セミナー、相談会等への参加者数。一極集中から流れが変わってきていることを示しています(「田園回帰」への動き)。

若者が、地方に定住するためのツールとしての自伐型林業が大切な役割を果たしているのだそうですです。

この本を読んでみて、若者(第三世代)をサポートする、山林を管理してきた第1世代と定年後に自宅の山を管理する第2世代、など山づくりの将来を自分のことにしている、素晴らい人間関係が分かって、この動きが着々と進展していくんだと、あらためて分かりました。

ーー

(1)自伐型林業の魅力の源泉は?自分で考える稼ぐ力?

佐藤教授が全国をまわって追いかけてきたのは、所有者と連携をとりならが、この山にどんな道をつけ、どの木をどんなに切ったら稼げるし、所有者の次の世代の山づくりに貢献して喜んでもらえるのか、といった仕事を自分で見つけられるとうい道筋ですね。デジタル社会で分断化された大きな生産過程の一部をになって毎日働いてきた、都会の世界では考えられない、自然資源の森林とマーケットをつなぐプロセスを自分で考えられる素晴らしいビジネス。(第2章自伐型林業お経営スタ売る(愛媛県西予市編など)

もちろん、長い道筋なんですが、魅力的な先輩が近くにいて教えてくれる。

そして、彼らの中には、集約化した山林は、将来の集落の森林として、財産区のような形で管理したい」財産区のような形でといった未来の社会づくりに参画!(第3章自伐林業と農山村地域社会岐阜県恵那市編など)

(2)大きな林業と小さな林業との関係ー小さな林業の役割分担は?

自伐型林業が主流化する可能性は?と佐藤教授に話をしたら、「そんなことはありません!」という答え。どのように役割分担をしていくかですね。

関連して、効率性を追いかけて大型機械を作業道にとおして、皆伐をして、グローバル市場に対抗!昔の皆伐跡地にできた、人工造林(宝の山)を再び、皆伐してどんな問題があるのか?という議論を佐藤教授としました。

昔は架線集材で森林にかかる負担が軽く、道路をつけて林地沿いに引っ張る今の集材と林地の保全のリスクが違う」という答え。そして、皆伐跡地が3割しか植えられていない実態は、林野庁も認める事実。

こういうリスクを、しっかり管理して、効率を徹底的に追及していける対象地をしっかり線引きし、その他のところは自伐型林業が主人公の一人となり、間伐を繰り返し高齢級な森林にして管理していく、前回植えすぎたところは天然林に返していく(恒続林を目指した施業)森林にするということでしょうか。(第3章自伐型林業と農山村地域社会 高知本山町編など)

(3)ビジネスとの関係

この制度が定着していくうえで、ビジネスとの関係をどのように構築するかは、一つのポイントだと思っていました。製材技術と設計者がつなぐ信頼のサプライチェーンなど素晴らしい経験が照会されています(第2章自伐型林業の技術と経営スタイル熊本県芦北町・水俣市編など)

それを通り越して、自動ドアの生産販売管理を全国で展開する会社が自伐型林業のネットワークに注目というのはびっくりですね。(第4章自伐型林業の人材育成・継承埼玉県飯能市編)

自動ドアのメンテナンス作業の担い手として、「現場現場の状況を自分の頭で判断して行動する」といった自伐林業者のスキルが期待され、同社が実施している自伐型林業研修の卒業生が働いているんだそうです。

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まえから、気になっていた本ですが、林業の現場でどんなことが起こっているのか林業と若い人の関係性など分かってすばらりかったです。どこまで、広がりが形成されるのか、政策の課題の中にはまっていくのか、森林組合・一人親方・・・既存の事業者などとの関係など、不明なところが多いですが、その糸口が見えてきます。

関心のある方は是非手に取ってください。「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」全国林業改良普及協会

読んで著者と議論をしたくなった方は、佐藤教授を1月29日勉強部屋Zoom会議にお招きしています。

おいでくださいね

持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第3回御案内

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kokunai6-58 <jibaturingyo>

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 美しい木組みの家ー古民家になる家と森林との関係(2021/12/15)

建築設計事務所主宰、ワークショップ木組みの代表をされている、松井郁夫さん(ウッドマイルズフォーラム会員)から、美しい木組みの家「いつか古民家になる」という題の近著をいただきました。

木にこだわる建築関係者が今後の森林ガバナンスの一つのカギを握るはず、と気になっていた(★2 次世代に向けた山づくりのリスクへの対応、再造林に関するガバナンス ☆意見2-2 消費者と連携したガバナンスの確立)、私としては木の建築賞審査過程などで、本当に木にこだわっておられる松井さんの著作はしっかり勉強しよう!!!

ご紹介します。

(作品集でなく仕事集)

「美しい木組みの家」とい主タイトルにあるように、いままでの建築例を写真で見せるのですから、こんな中に住んでみないなー、左の表紙にもある美しさを訴求するすばらしい建築事例の写真集。

それも特別の家でなく、一般の人が手の届く!!、木組みの家、だれが建てたんだろうなーとなるんですが・・・

もっとすごいのは、建築プロセスが詳しく紹介されていることです。

「「作品集」とは呼ばずに、あえて「仕事集」と呼ぶことにします。なぜならば「家づくり」は、設計者と山や職人たちの「つくり手」が「住まい手」に家を提供するために、協働した「仕事」の成果だと考えるからです。」

(ワークショップ「き」組)

そのシステムを支えるのが、各地の工務店と、山の木材事業者(少し少ないですが)などを集めた、ワークショップ「き」組みという組織です。

ワークショップ「き」組は、「一般的なサラリーマンでも手の届く価格で本格的な木の家を提供したい、という気持ちで始めた住生活向上運動」なんだそうです。

山に育つ樹木の「き」/職人の心意気の「き」/伝統的な木組みの「き」/きれいな空気の「き」

少し時間はかかるけど、山の木を自然乾燥させ、(人工乾燥ではリスクがある)金物を使わない職人の技の木組み、それでできた骨組み(架構)に支えられて「いつか古民家になる」庶民の家!

(直接山から木を買うわけ)

左の図は「直接山から木を買うわけ」と題するコラムからもってきたものです。

原木データは「一本の木がどこの山で育てて伐ったのか、生まれも育ちもわかる木の「トレーサピリティ」という仕組みを作って、一軒の家のすぺての木の「履歴」を表示しています。」

山を守る木の値段は「植林費用から逆算して一本の木の値段を決めて、山主に払っています。一般に流通している木材より割高ですが、その代わりに直接山に行って買付をしているので、流通のマージンをカットできます。番付を打った図面を持って山の製材所に行くので、木は選り取り見取りで良い木が買えます」

といった説明が。

本当にそんなことができるの?

とおもって、ワークショップのメンバーである木材供給元天竜T.S.ドライシステム協同組合(以下天竜TS)森下代表理事に電話をかけて聞いてみました。

原木データは、月齢伐採をおこなっているので一本一本の原木を伐採する日がわかる、葉枯らし乾燥をしているので原木の搬出日がわかる、天然乾燥を行っているので製材日がわかってるなどのデータが、製材の木口にはあってあるんだそうです(天竜TSのサイトの動画にもあります

そして値段。「植栽育林の値段をもとに山林所有者に払う値段に、伐採搬出輸送製材の経費を載せて、製材販売価格109千/m3を認めてもらいました」ということで、この価格表は天竜TSと打合せ済み(原木事業者と検討して作成したんだそうです)の図のようなのです。

究極のトレーサビリティですね。

ただ、この絵と実際が違うのは、「植林と育林経費が計算されてますが、環境負荷・皆伐新植の経費などを考慮し、すべて間伐です!」

なんだそうです。日本の木材産地として有名な天竜で、皆伐して次世代森林をつくることはないの?できないの?この辺は今度天竜にいっていろいろ勉強していきます。

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ご関心のある方は、どうぞ美しい木組みの家「いつか古民家になる」。

junkan1-28<kiguminoie>

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気候変動枠組み条約COP26と森林(2ー本体の会議結果)(2021/12/15)

10月31日から11月13日)まで、英国・グラスゴーにおいて、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)、京都議定書第16回締約国会合(CMP16)、パリ協定第3回締約国会合(CMA3)が行われました。

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)、京都議定書第16回締約国会合(CMP16)及びパリ協定第3回締約国会合(CMA3)の結果について(環境省)
COP26閉幕:「決定的な10年間」の最初のCOPで何が決まったのか?(国立環境研究所)

GLASGOW CLIMATE CHANGE CONFERENCE – OCTOBER-NOVEMBER 2021(UNFCCC公式ページ)
31 OCT - 12 NOV 2021 GLASGOW COP26(英国政府正式ページ)

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このページでもCOP26の期間中に開催されたリーダーズサミットで合意された、森林共同宣言について報告しました。

それでは、本体のCOP26で議論された内容で森林に関係あることがらは? 林野庁の出席者の報告を、フォレスト―カーボンセミナーCOP26当報告会に出席して聞いたので、これに基づいた報告します。

報告①COP26における森林関連分野の動きー透明性枠組みを中心に
川島 裕氏(林野庁 森林整備部 森林利用課 森林吸収源情報管理官)
報告②森林関連分野の市場メカニズム等の動向
石川 貴之氏(林野庁 森林整備部計画課 国際森林減少対策調整官)
報告③COP26サイドイベント オンライン参加報告
藤間 剛氏(森林総合研究所 企画部国際戦略科長)
報告④森から世界を変えるプラットフォーム COP26泥炭サイドイベント報告
西村 貴志氏(JICA地球環境部次長(森林・自然環境グループ長))

(COP26で合意した内容の全体像)

下の図は、日本政府(環境省)がネット上に掲載している(12/11現在)COP26交渉結果の全体像を示す図です。

225名の政府からの参加者の中で、林野庁から出席したのは5名(だそうですー昔はもう少し多かった?)のうちの2人の報告。

その報告は、5つの●のなかの●市場メカニズムと●透明性枠組みの2つです。

報告の順に概要説明します。

まず、「報告①COP26における森林関連分野の動きー透明性枠組みを中心に」に関連する報告です

(パリ協定「強化された透明性枠組みETF」と森林のガバナンス)

「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」という気候変動枠組み条約の目的(2条)に向けて、京都議定書では国ごとに削減量明記しましたが、パリ協定では、それはせず、国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に提出・更新する義務、を規定しています(4条2項)。

それをフォローするため、パリ協定第13条は、各締約国が取組みを事後的に報告し、国際的なレビュー・検討を受けるための「強化された透明性枠組み」(ETF: Enhanced Transparency Framework)を規定。

そのために毎年排出量がどうなっているか排出目録・インベントリ(NIT)を提出し、2年に一回隔年透明性報告書(BTR:Bilateral Tranceperacy Report)(左の図上)

今回その様式などがやっと正式決定されたのだそうです。(先進国と途上国が同じ報告枠組みになった)

下の図が赤字が、今回の報告にあった、森林に関係する部分です。

LULUCFは 「土地利用、土地利用変化及び林業部門(Land Use, Land Use Change and Forestry

HWPは伐採木材(Harvested Wood Products)

現在も毎年インベントリが提出されてます。(その中の2021年森林関係部分第6章 土地利用、土地利用変化及び林業分野 [PDF 1.7MB]

これらは、今までの枠組みにしたがって報告されたのでこれが今回の決定でどのようにかわっていくのか?・・・・

日本の国際的な枠組みがどのように達成され、森林や木材の取り扱いに、市民の生活とどのような関係になっていくのかな?

この辺について、少し説明をしていただきましたので・・・、勉強して今後報告してまいります。

透明性については、分かりやすい説明がネット上にありました→COP26で完成したパリ協定下における透明性枠組みの実施ルール(MUFJ)

次に、報告②森林関連分野の市場メカニズム等の動向

(市場メカニズムと森林ガバナンス)

COP26の一番のトピックスは、市場メカニズム【COP26速報】「1.5℃」強調、クレジットのルール(市場メカニズム)合意

パリ協定上の市場メカニズムとは、各国が「国の決定する貢献NDC」を実施する過程で、他の国で実施した削減・吸収の活動に資金支援をした場合、削減吸収の量に応じて資金に応じた自国の貢献をしたことしてカウントすることができるとするシステムです。

特に森林分野の「途上国の森林減少劣化に由来する排出削減等(REDD+)」の円滑な実施のために重要な手続き。(右の図)

パリ条約では、第6条で2つの方式を規定しています。

6条2項協力的アプローチ(締約国が独自に実施している取組をパリ協定で認めるシステムー日本の二国間クレジット制度JCMなど)

6条4項国連管理型メカニズム(パリ協定の管理下でトップダウン的に実施するメカニズム(京都議定書のCDMに類似))

(6条8項はその他の途上国支援(非市場アプローチ)

あるプロジェクトが、実施された国、実施を支援した国の両方に貢献し二重計上しないように等、など、(当然ですが)厳しいガイダンス・規則が決められました。(削減努力を回避するため市場メカニズムが働くので反対!という意見があるので厳密な取り扱い!!)

今後実施過程が隔年透明性報告書などで報告されることとなります。

今回一連の情報収集をするなかで、途上国の森林保全を支援する日本企業の素晴らしい事例の紹介を受けました。

ジャカルタ水源地のグリーンウォールプロジェクト」(コンサーベーションインターナショナル

この炭素市場メカニズムに関する国際的取り組みの要件は、二国間のクレジットだけでなく、民間企業の取引や、環境パフォーマンスデータ開示などの基準としても重要な指針となるでしょう。(右の図)

民間のパフォーマンスが国の報告とどのような関係になっていくのか、都市における木材利用は・・・など、今後の作成過程でフォローしてまいりますネ。

(質疑)

報告会でQ&Aから質問する時間があったので、気になってることを質問。

木材の利用促進に関連する議論はありましたか?(ありません)
途上国と先進国の調整に全力投球でやっと出来上がった思わない全文合意を取り組む中で、そんな余裕はなかったんでしょうね。

(参考情報)

What COP26 Means for Forests and the Climate(World Resources (World Resources Institute)
COP26: Pivotal Progress Made on Sustainable Forest Management and Conservation(UNCC)
Coming into COP26 in Glasgow, nature was expected to feature heavily at the summit – one-fourth of UK prime minister Boris Johnson’s mantra of “coal, cars, cash and trees”(Carbon Brief)

kokusai2-83<fccccop26>

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森林・林業基本計画の形成にかかる関係者の参画過程の動向―過去の基本計画策定過程における意見募集結果のテキスト分析から―(2021/12/15)

12月4-5日Web上で開催された、林業経済学会2021年秋季大会発表会で、標記タイトルで報告しました。

(報告の趣旨と構成)

「森林・林業基本計画は、 グローバルな 森林 ガバナンス強化の中で FAO などにより提唱されている National ForestryProgmamm e の我が国版であるとされている 。 グローバルな位置づけから森林 ・ 林業基本計画を評価する場合、策定プロセスの 関係者の参画過程が重要な評価要素になる 。」ということで、グローバルな視野から参画過程の分析の重要性をイントロで紹介

少し前のことになりますが、森林林業基本法が改正された次の年のカナダのカナナキスで開催された、G8サミットで合意された二つの文書の一節を引用しました(右の図)

Action Programme on Forests - Final Report Kananaskis Summit(2002)
G8 ACTION PROGRAMME ON FORESTS – BACKGROUNDERS

そして、構成は左の通り

2006年から4回にわたる基本計画の策定過程で提出された400件ほどのパブコメ(右の図)がネット上に公開されています。

これを分析対象としました。

(セッションごとのパブコメ提出動向)

基本計画は、森林林業基本法で法律で、「① 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針、② 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標、③ 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、④ 前三号に掲げるもののほか、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項の構成」と4つの構成とするよう規定されており、サブセッションもおよそ同じような構成になっています。

それごとの、パブコメ提出状況は?

左上の図です。

全体に「第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」という具体的施策に応じたセッションの中の、1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策、3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策という部分に提出数が多く、さらに左下の図。

それらの中で、近年の1の中の「地球温暖化問題への対応」、「国土保全・災害防止」のサブセッションに、また3の「マーケットの拡大」に対するパグコメ提出が少し多くなってきていることがわかります。

これらのことは、右の図の国民の関心事項の調査結果との関係性など、一定程度説明しています。

(計量的テキスト分析)

計量的テキスト分析とは、「人の言葉として表現されたテキストデータから、情報を可視化。 個人の経験や勘に左右されない安定した情報を提供することによって、目的に応じた知見を掘り起こし、新たな発想、思 わぬ発見につながる提案を実現。」

前述のセッションごとの分析は、時系列に分析する場合、毎回同じセッションで構成されるのか?という、不安定感があります。時間軸がもっと長くなった場合不安定(セッション構成の変化)になります。そこで、テキストをそのまま取り出し、どんな文言が多いのか、また、どんな文言とどんな文言が一緒に使われるケースがおおいのか?

先行研究では、2時点の2年分の新聞記事をすべて分析対象とした、人々の「森林」に対する認識の変化に関する研究ー―1980 年代後半と 2000 年代後半の言説空間の比較から(片野 洋平 2012 環境情報科学論文集/Vol.26 (第 26 回環境情報科学学術研究論文発表会) 書誌というのがあります。

左の図が今回のテキスト分析の結果の一部です。

上記のセッションのうち、「第3の1. 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策」の寄せられたパブコメの内容を分析した結果です。

上の図が、パブコメに記載している名詞と一定の言語の連鎖(あわせて「抽出語」)を、三つのカテゴリーすなわち、1森林・林業・木材産業に関する事柄、2社会経済に関する課題、3枠組み制度に関する事例に分けてその頻度を分析したもの。

下の図は地球温暖化に関連する抽出語の経年変化です。

記載しているように、「森林・林業を取り巻く社会が直面する課題についてパブコメによって反映の機会を得ている」ことがわかるところまでは、いったのでないか、というのが今回の分析結果です。

右の図の報告の「まとめ」にもあるように、また、質疑の中で指摘されているように、今後の課題がたくさんの報告でもありました。

(質疑)

問   答
 会場での質疑  
 パブコメが増えている背景は何があるという考えか?  政府側の聞く姿勢も変化が出てきているので、それを反映しているのでないか
(カテゴリーごとの分析で) 社会経済に関する課題抽出語とはどんなテキストか具体的に示してほしい  森林・林業も社会システムの一つであり、多面的機能の概念を広げていくと、すべてが森林・林業・木材生産に関する事柄=1に該当することになるため、ここでは狭義の木材生産、森林管理に関係するものを1としています。
 2の例は以下のような語句です
 学会に意見をもらったりしていたので、もっとコメントが多いかと思っていた(感想)  
 パブコメのテキストだけでなく、対象となった基本計画本文のテキストとの関係を分析すべきでないか?  適切なご指摘ありがとうございました
 質問者A  
 1. テキストマイニングを用いた政策資料の研究はたくさんありますが、どのような研究群を参照されたのでしょうか?
 日本語のテキストマイニングの先行研究で参照したのは資料17ページにある
人々の「森林」に対する認識の変化に関する研究ー―1980 年代後半と 2000 年代後半の言説空間の比較から(片野 洋平 2012 環境情報科学論文集/Vol.26 (第 26 回環境情報科学学術研究論文発表会) 書誌
林業の労働災害分析へのテキストマイニングの適用可能性(猪俣 雄太他 2020 森林利用学会誌 /35 巻(2020) 4 号 書誌)
です
政策論とテキストマイニングでネット上でひろったものですが、ほかに参照すべきものがあれば、ご教示いただけますか?
 グローバルなガバナンス比較への貢献を目指されたということは、海外のいくつかの文献を参照されたのでしょうか?   前書きでグローバリティについてふれたのは、資料4ページにあるように、日本政府が基本計画を、National Forest Programmesであると主張しているので、それなら、They have become secure platforms for dialogue with other sectors of the economy and well established coordinating instruments for stakeholder participation. Successive iterations of these
参画過程の分析が重要です、というこの報告の意義を強調する文脈です
 2.当日の報告資料は見られていませんが、要旨集には方法の説明がほとんどされていませんでした。
どのようなソフトを用い、どのように形態要素分析をされたのでしょうか?
例えば、「森林」が頻出語となっていますが、「森林組合」は一つの単語として区分されるように設定されたのでしょうか?
「公共」がしばしば出ていますが、これは「地方公共団体」がぶつ切りされたものですか?
 ソフトは、資料18ページにあるように大阪大学樋氏開発KH Coder©です
先行研究も大体これを使っていると思います
おっしゃる通り、単語の前処理過程が重要ですね
単語の処理の具体的なところ、森林組合、地方公共団体に関しては以下の以下の通りです
ーーーー
作業としては、以下の手順で実施しております。
1.各年度PC公表資料(PDF)のテキスト化:Adobe社のacrobat_readerを用いて、テキストに転換(excelファイルとして出力)
2.ご変換の修正:excelに出力したテキストが正しく転換されているかを確認(元のPDFとの照らし合わせ)
3.表記ゆれの調整:例えば「スギ」「杉」「すぎ」を「スギ」に統一、「GHG」「温室効果ガス」「二酸化炭素」「温暖化ガス」などの表記を「温室効果ガス」に統一など
4.用語のリストアップ:2.3.の過程で確認された用語をリスト化
5.用語の抽出:KHCoder上でterm extractを用いて前処理を実施
6.森林林業関連用語の抽出:4.でリストアップした用語をKHcoder上で「強制抽出語リスト」に登録し、テキスト(excel)の前処理を実施。
7.抽出語リストを作成:KHcoderを用いて抽出語リストを作成
8.品詞による分類:各年度のトピックの傾向を見るために「名詞」「タグ(6.の強制抽出語)」に絞り、出現文書数順に並べ替え(文書数としたのは、一つの文章内で同じ用語が繰り返し記述されているケースが多く見られたため)
9.抽出された用語の分類:森林・林業・木材生産に関する事柄=1、社会経済における課題に関する事柄=2、枠組み・制度に関する事柄=3に分類し、集計
このような手順で実施しました。

しかし、一部強制抽出語(例えばご指摘の「森林組合」)が「森林」と「組合」に分解される一方、「森林・林業基本計画」は認識されるなどの不具合が発生し、まずは森林で認識させることとしました。ご指摘の通り、本来分解しては異なる意味を持つ用語が「森林」でカウントされてしまうことには問題があり、今後検討を進めるうえで、不具合の原因を究明し、用語として正しく認識されたものを用いて、改めて集計を行います。
 3.今回は、単語の出現頻度の集計のみを行われたようですが、共起ネットワーク分析は行われなかったのでしょうか?
2で述べたように要素形態分析に問題があるとしても、共起ネットワーク分析がなされていればある程度文脈を類推することができますので、もし行われていればその結果が興味深く存じます。
 ありがとうございました。重要な視点ですね
23ページ(上記「まとめ」)にありますように、今後の課題としています
 4.テキストマイニングは、大量の文章を機械的に処理できることに強みがあり、今回行われた程度の分量であれば、人力で処理できると考えられなくもありません。
その意味で、今後どのような方向にご研究を展開して行かれるのでしょうか?
 おっしゃるとおでですね
先行片野研究は、朝日新聞と読売新聞の2年間の全記事を対象に分析しています
今回の報告に至る過程は、テキストマイニングより、基本計画のパブコメの時系列分析というのが主たる問題意識でしたので、今後パブコメの分析手法を少しさらに進めてまいりたいと思います。そのツールとしてKHコーダーを一つの選択肢としてまいります
今後ともよろしくお願いします
 質問者B  
 1)どういう意見が採用され、同意見が採用されないか、傾向は分からないでしょうか。  上記10ページ目にセッションごとの傾向がわかるかどうか、確認してみましたがなかなか、ご報告できるような内容には、なっておりません。
重要な視点なので、採用された内容の傾向分析など今後のテーマとしてまいりたいと思います
 2)個人情報保護の制約はあるでしょうが、コメントを出す人、団体について、または数について傾向は言えないでしょうか。  政府の公表されたデータから提出者の属性はわかりません
ただ、テキスト分析というツールで、その属性を特定していく可能性はあるかと思います
資料の23枚目(上記「まとめ」)の今後の課題「ステークホルダー(川上・川中・川下・市民学術関係者)の特定、と報告させていただきました。これも今後の課題です

関連資料を以下に掲載していますので、関心のある方はどうぞ

要旨プレゼン資料

kokunai1-25 <BPPctext>

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 国交省と建築士連合会の木材利用促進協定ー木の建築賞など(2021/12/15)

国交省が(公社)日本建築士会連合会と建築物木材利用促進協定を締結~建築物木材利用促進協定制度により国が締結する協定の第1号~そして、第63回 建築士会全国大会「広島大会」式典において、協定の締結式を実施され、たんだそうです。

(木材利用促進協定とは)

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が改正され今年10月1日に施行された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(新たな木材利用促進法ーl公共建築物木材利用促進法改正案成立(2021/6/15)

この法律で、建築物における木材利用をより一層促進するために「建築物木材利用促進協定」制度が創設されました。

第15条に規定されている、建築物木材利用促進協定は「建築物における木材利用を促進するために、建築主である事業者等と国又は地方公共団体が協定を結び、木材利用に取り組む制度です」

「建築主たる事業者等が国又は地方公共団体と協働・連携して木材の利用に取り組むことで、民間建築物における木材の利用を促進することを目的としています。
協定により、建築主たる事業者等が、建築物木材利用促進構想の実現のために国や地方公共団体と連携して取り組むことで、民間建築物における木材利用(ウッド・チェンジ)を促進し、脱炭素社会・持続可能な社会の実現を目指します。」

(国交省と建築士連合会の協定の内容は)

林野関連ページより

たのしみですね。

(木の建築賞は)

協定の「構想達成のための取り組み」の中に、「木の建築賞」があります。

このページでもフォローしてきた「木の建築賞」
「おかえりモネ」と木の建築賞ー第16回「木の建築賞」(東北地区)公募始まる

木の建築フォーラムと、今年から建築士連合会が一緒になって開催される大切なイベントの位置づけ。どのように発展していくのかフォローしていきますね。

kokunai3-64<sokusinkyo1stt>

持続可能な森林経営のための勉強部屋Zoomセミナー第3回御案内(2021/12/15)

持続可能な森林フォーラムでは、皆さんとのコミュニケーションを双方向で深めていくため、ゲストをむかえて、Zoomセミナーを開催しています。

第3回目は年明け1月29日土曜日13時半から。

「国民の田園回帰」、「小さな林業による森林ガバナンスの確立」などに重要な役割を果たす可能性のある、自伐(型)林業について、著書「地域の未来・自伐林業で定住化を図る」をだされている、九州大学大学院農学研究院 環境農学部門森林政策学分野佐藤宣子教授をお迎えし、全国17か所をまわれた実績を踏まえて、林業のこれからをお話しいただきます。

どうぞ皆さん、ご参加下さい。

参加予約はこちらからどうぞ→(Zoomセミナー第3回参加申し込み窓口

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東京を離れる機会が少しずつ・・・ー勉強部屋ニュース268編集ばなし(2021/8/15)

今月のフロントページは地域の未来が切り開かれるかー自伐林業で定住化

九州大学の佐藤宣子教授が北から南に全国17か所を訪問された結果を、40回にわたって、月刊誌に掲載された内容が詰まった書籍。自伐林業とはいったいなにか、とことばが少し、分かりにくい面があるんようなんですが、大きなマーケットに対して小さな市場への対応に、本当に真剣に向かい合っている方々が全国にたくさんいることがわかります。

このページも森林政策を題材とするなら、少しは自分で足を運ぶべき!コロナで1年半ほど東京から、出ることはなかったのですが、このところ少し地方へ行くチャンスが増えています。

10月11-12日全国木材産業振興大会で札幌へ、11月8-9日輸出研修素材作成で岩手県久慈市で開催された研修、12月6日同愛媛県西条市での研修、12月13日秋田市・16日(予定)新庄市に木の建築賞の審査会

次号以降の予告、地球温暖化対策の推進に関する法律改正は?森林所有者は幸せか?森林に関する主観的幸福度論文が公開、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com