ニュースレター No.173 2014年1月19日発行 (発行部数:1170部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:気候変動枠組み条約COP)19の中の森林吸収源2014/1/19)
2. メリーランド大とグーグルによる森林減少の分析結果(2014/1/19)
3. エコプロダクツ2013の中の森林と木材(2014/1/19)

フロントページ:気候変動枠組み条約COP19の中の森林吸収源(2014/1/19)

昨2013年11月11日から23日まで、ポーランド・ワルシャワで、国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)、京都議定書第9回締約国会合(CMP9)等の会議が開催されました。

途上国が参加しない京都議定書に対して、すべての国が参加する新たな枠組みの議論(ダーバンプラットフォーム)がどこまで進むのか注目されていた会議ですが、「2020年以降に始める地球温暖化対策の次期枠組みに向け、すべての国が温室効果ガス削減の目標や貢献策を作ることで合意した」(大会記者発表)とされました。

国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)京都議定書第9回締約国会合(CMP9)等の概要と評価(日本政府代表団)
温暖化ガス削減、自主目標導入で合意 COP19 (11/24日経)
COP19合意文書採択 15年の早期に温室ガス削減策(朝日)

公式ページ(英語)

(森林分野の合意事項、途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減等REDD+についての技術課題の合意)

この会合で、森林分野の議論の中心は、途上国が自国の森林減少劣化に由来する排出量を削減する努力に対してインセンティブを提供する枠組み(REDD+)です(途上国の森林管理を世界中で支援する法的な仕組みが、初めてできるかーREDD+の先にあるもの)が、途上国の参画が次期枠組みのカギをにる中で、REDD+について議論は多くの次期枠組み議論の中でも重要な役割をもっているものです。

REDD+が次期枠組みの中で法的な位置づけをもって規定されるようになるためには、①森林の状況を監視する仕組み、②吸収量の測定報告検証MRVの仕組み、③努力の基礎となる通常の排出レベルの決定手続き、④炭素固定以外の森林の機能(セーフガード)についての情報開示の仕組み、⑤森林減少劣化の要因(ドライバー)とその対策の評価手法の五つの技術課題の検討が必要とされてきました(カンクン合意(2010年))。

このうち、積み残しとなっていた①、②、⑤についての議論が進み、全体としての合意にいたりました。

森林の減少劣化に由来する温室効果ガスの排出削減に関する政府間の合意(プレスリリース)
PRESS RELEASE Governments in Warsaw make breakthrough in agreements to cut greenhouse gas emissions from deforestation

REDD+のためのワルシャワ枠組み dthe Warsaw Framework for REDD Plus

  項目  合意文書名とリンク  備考
技術的課題に関する合意   
   森林の状況を監視する仕組み  Modalities for national forest monitoring systems (55 kB)  透明性、一貫性、MRVに適した情報提供、さまざまな森林タイプに応じた対応可能
  吸収量の測定報告検証MRVの仕組み  Modalities for measuring, reporting and verifying (36 kB) 活動結果の測定報告検証は2年に一度の報告書で開示
   努力の基礎となる通常の排出レベルの決定手続き  Guidelines and procedures for the technical assessment of submissions from Parties on proposed forest reference emission levels and/or forest reference levels (85 kB)  参照レベル策定のガイドラインを決定、評価チームの人選、年一回の評価会合など
   炭素固定以外の森林の機能(セーフガード)についての情報開示の仕組み  The timing and the frequency of presentations of the summary of information on how all the safeguards referred to in decision 1/CP.16, appendix I, are being addressed and respected (19 kB)  活動開始直後に国別報告書等で関連情報開示、提出頻度は国別報告書の頻度に応じ
   森林減少劣化の要因(ドライバー)とその対策の評価手法  Addressing the drivers of deforestation and forest degradation (56 kB)  関係機関に要因対策と継続を奨励、当該国にその結果の活用を奨励
政策的課題についての合意   
   支援の調整や組織に関する検討 Coordination of support for the implementation of activities in relation to mitigation actions in the forest sector by developing countries, including institutional arrangements (64 kB)  途上国に窓口を指定。支援調整に関する情報教諭、ニーズの特定など必要事項の整理
  REDD+活動の完全実施促進のための結果にもっと付く資金に関する作業プログラム  Work programme on results-based finance to progress the full implementation of the activities referred to in decision 1/CP.16, paragraph 70 (75 kB)  資金を申請する途上国は、モニタリング体制、セーフガード情報などすべて事前提出、情報公開のためのハブを開設、資金常設委員会に検討を要請

(その他の森林に関する議論

先進国の森林吸収源についての議論では、条約や議定書に基づく現況報告のガイドラインに合意し、2015年4月に提出する報告書から適用されることとなりました。

途上国の植林活動の先進国の京都議定書の約束の中で位置づけるCDMの仕組みについては、日本のように第二約束期間に参加しない国は、途上国の植林活動のクレジットを自国の目標達成に取得することは可能だが、そのクレジットを国際取引に遣うことはできない、といった仕組みが決定さされました。(続く・・・)

国際緑化推進センター(JIFPRO)のCOP19等報告会(森林分野))、気候変動枠組み条約COP19,CMP9ワルシャワ会合における関連の議論、林野庁森林利用課佐藤雄一を参照しました。ありがとうございました。もう少ししたら、オリジナルのデータがアップされるそうです。

kokusa2-46(unfcccCOP19)


メリーランド大とグーグルによる森林減少の分析結果(2014/1/19)

米メリーランド大学ぢグーグル社などの研究チームの地球森林の推移に関する分析結果に基づいて、世界中の任意の地点の森林の2000年から2012年の間の増減結果を表示することができるページが公開されています。

Global Forest Change
Published by Hansen, Potapov, Moore, Hancher et al.

また、もとになる論文が米科学誌サイエンス13年11月号に掲載されています。
High-Resolution Global Maps of 21st-Century Forest Cover Change

編集者による要約は以下の通り。

Quantification of global forest change has been lacking despite the recognized importance of forest ecosystem services. In this study, Earth observation satellite data were used to map global forest loss (2.3 million square kilometers) and gain (0.8 million square kilometers) from 2000 to 2012 at a spatial resolution of 30 meters. The tropics were the only climate domain to exhibit a trend, with forest loss increasing by 2101 square kilometers per year. Brazil’s well-documented reduction in deforestation was offset by increasing forest loss in Indonesia, Malaysia, Paraguay, Bolivia, Zambia, Angola, and elsewhere. Intensive forestry practiced within subtropical forests resulted in the highest rates of forest change globally. Boreal forest loss due largely to fire and forestry was second to that in the tropics in absolute and proportional terms.)、 These results depict a globally consistent and locally relevant record of forest change.    地球上の森林の変化の定量化は、森林の生態系サービスの重要性の認識に関わらず、なされていない。この研究では衛星の地球観測データを用いて2000年から2012年までの森林の減少(2.3百万ha)と増加(0.8百万hp)を30メートルメッシュごとに明らかにした。熱帯は森林の減少が年率で2010万ヘクタール発生し減少傾向を示す唯一の地域である。ブラジルの森林減少の明確な縮小傾向は、インドネシア、マレーリア、パラグアイ、ボリビア、案ビア、アンゴラの拡大で帳消しにされている。亜熱帯地域における林業展開は森林の変化に影響を与えている。亜寒帯地域における森林火災林業に起因する森林の減少は熱帯林に次ぐものである。これらの結果は、地球規模で整合性のとれた地域レベルでも的確な、森林変化についての情報を提供するものである。

出だしに森林減少の定量化がlacking(欠如している?)という書き出しになっているの注意が必要です。地球規模の森林減少の定量化はFAOが一貫して追及してきたことで、1980年代からFAOが提供してきた地球の森林の減少を示すデータは熱帯林の管理を地球環境の問題とする大きな役割を果たしてきました。

今回の報告が今までのFAOのデータとどのような関係になっているかは大変興味深い内容です。早稲田大学の天野正博さんにコメントをもらいました。

 FAOが実施してきたものは各国の報告をリモートセンシングで補正しているボトムアップ方式、今回のものはリモートセンシングで一挙に把握するトップダウン方式。

IPCC第4次報告書ではFAOが主体となって実施している積み上げ型の森林面積と、リモートセンシング(殆どがLANDSAT)を世界全体に適用して算出したデータには大きなギャップがあるのが問題と指摘している。

今回も、そのときの指摘と同じくらいの開きがあり、過去の同様の成果と大きくかけ離れていないと言える。

その結果例えば、以下のような数値の違いがある。

林業統計上、中国は2000年代に旺盛な植林をしていることになっている(FAOの統計には反映されている)が、画像ではそうした傾向が見られない。
シベリアも森林火災による減少が(今回の報告では強調されているが、ロシアは土地利用区分が森林であり一時的に土地被覆として森林がなくなっても、いずれ回復するということで、FAOへの報告ではこれだけの森林減少を報告していない。
(今回の報告では)開発されたアブラヤシ農園がForest GainとLoss and Gainと区分されている。FAOではアブラヤシ農園を森林に入れていいないので、森林の定義がことなっている。

chikyu4-17(formapgoogle)


 エコプロダクツ2013の中の森林と木材(2014/1/19)

13年の12月12-14日の3日間、東京ビックサイトでエコプロダクツ2013が開催されました。

小サイトではグリーン購入パワーを示す指標としてエコプロダクツ展の来場者をフォローしてきました。
エコプロダクツ展2005が示す組織的グリーン調達パワー(2006/1/9)
エコプロダクツ2011のグリーン購入パワーの回復度(2011/12/23)

2008年のリーマンショックでからトレンドが変わってなかなか苦戦をしているようです。

今年のトピックスは~木の良さ体感企画~ 会場装飾の木質化


会場全体の入口、環境コミュニケーションステージなど会場の主な共有スペースの木質化が図られていました。

「エコプロダクツの元祖である木材業界が、増大するグリーンパワーとどうつきあうか戦略が求められています。」グリーン購入パワーとエコプロダクツ展(2007/1/22) ,と、小サイトでも課題と考えてきましたが、「地球温暖化防止に向けて、エコマテリアルである木材利用への要請が高まっています。」(紹介ページ)というメッセージが会場全体にとどく、良い企画でした。

kokunai3-47(ecopro2013)
 

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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