途上国の森林管理を世界中で支援する法的な仕組みが、初めてできるかーREDD+の先にあるもの(2013/10/26

気候変動枠組条約での森林からの排出削減に関する事業であるREDD+に関して、森林総研のREDD研究開発センターが主催する、公開セミナー「途上国の森林保全活動に向けた民間企業の役割と課題」に出席の機会がありました。

REDD+は気候変動枠組み条約COP11(2005年)にペルーとコスタリカが提案した、Reducing emissions from deforestation in developing countries and approaches to stimulate action(途上国における森林減少・劣化からの排出の削減)の頭文字に、COP13(2007年)で「森林保全・持続可能な森林経営・炭素吸収の強化を加えたREDDプラスとなったものです。 (基礎知識

気候変動枠組条約の側からいうと、「現在の温暖化ガス排出量の5分の1を占める森林減少由来の排出量に取り組む重要な取組み」ということですが、国際的な森林管理の枠組みを求める側からいうと、92年の国際森林条約合意の障害となった、途上国の森林管理の国際的な法的な枠組みが初めてできる、重要な取組みです。

(REDD+に関心ある方は、森林総研REDD研究開発センターのREED+クックブックが必読)

(気候変動変動枠組条約の中での議論の進展)

REED+は気候変動枠組み条約COP16カンクン合意で大枠の合意があり、その後、セーフガード(危険性のあるリスクの回避策)の検討など、技術的な検討をすすめてきましたがこれらの部分はCOP19で決着の見込みであり、、これから本丸の資金問題などに議論の重点が移る見通しのようです。

赤堀聡之 気候変動枠組条約のもとにおけるREDDプラスの議論についてより

COP17でのダーバンプラットフォームにおいて、途上国と先進国を含めた次期枠組みは、「遅くとも2015年中に作業を終えて2020年から発効させ,実施に移す」との合意がなされています。

REDD+に基づく途上国の森林資源の確保の法的約束とそれに対する資金提供という、画期的な枠組みが動き出すのは、次期枠組みのなかでのことになります。(REED+クックブック 12ページ)

(REDD+についての枠組条約以外での自主的取り組み)

気候変動枠組み条約による合意に基づく実施前に、早期にREDD+を実施する自主的な仕組みが進んでいます。

国際的な政府間の仕組みとして、2010年5月に関係国際機関、NGOや原住民代表が多数参加して行われた「気候変動と森林に関するオスロ会議」で設立合意されたREDD+パートナーシップ世界銀行の森林炭素パートナーシップ基金 (FCPF)、国連食糧農業機関 (FAO) や国連開発計画 (UNDP)、国連環境計画 (UNEP) によるUN-REDDです。

また、日本政府は、二国間オフセット・クレジット制度を進めることを表明しており、REDD プラスをその活動の一つとして取り入れることを検討しています。

新メカニズム情報プラットフォームより

さらに、民間の炭素クレジット認証機関VCSはREDD+事業のクレジット化を制度化しています。

VCSの概要について 一般社団法人 日本森林技術協会 宗像 和規参照

(森林の温暖化ガス削減の効率性)

今後、資金問題などが議論される中で、資金を森林吸収源保全に投入するのと、排出削減など他の手法に投入するのとどちらが効率的なのかという議論が始まるでしょう。

2007年に発表されたスターンレビューは、森林減少の抑制は温室効果ガスを削減するうえで費用対効果が高いと指摘し、REDD+の追い風となりました。

ただし、これには「REDD+で求められている国内体制の整備やモニタリングシステム構築に関するコストは考慮されていない」(REDD+クックブックp11)ものです。

途上国で森林の管理がいかに困難なことかは、首都から離れた森林地帯にはまじめ優秀な管理者を沢山配置しなければならないこと一つとってわかることで、地道な取り組みが必要です。

だたし、資金を供給する側からは、森林のプロジェクトは排出削減だけでなく、地方經濟の活性化、生物多様性の保全、水と緑を守るなど、大変魅力的なプロジェクトで、温暖化ガス削減のプロジェクトにかかるクレジットの値段は、森林吸収系のクレジットは、排出削減系のクレジットより5割ほど高価格で取引されているようです。

オフセットクレジットの市場動向カーボンオフセットフォラム

このことが、セーフガードの議論の中などに反映しています。

いずれにしても、国際的なしっかりとした枠組みで取り組んでいかなければならない世界中の持続可能な森林の管理ですが、気候変動枠み条約で出発した議論が、さらに幅広い議論に発展していく可能性を持っています。

kokusai2-45(redd+1)

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