ニュースレター No.152 2012年4月22日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:改正森林法の施行に当たって(2012/4/22)
2. UNEP「グリーンエコノミー(GE)報告書」森林編;GEと森林勉強ノート(3)(2012/4/22)

フロントページ:改正森林法の施行に当たって(2012/4/22)

2011年7月に成立した、森林法の全面的施行が4月から始まりました。
改正森林法新旧対照表(PDF版html版

小サイトでも成立時に紹介しましたが、①所有者が不明の場合を含む適正な森林施業を確保すること(第50条2項、3項)、②無届け伐採が行われた場合の造林命令、伐採中止命令を発出できることとし(第10条の9第4項)、罰則規定が強化されてこと(第209条)、③森林所有者が作成する森林施業計画を森林経営計画に改め計画事項・認定手続きの改善をはかり(第11条1-3項)認定要件を拡大したこと(同5項)、④森林の土地所有者となった旨の届出義務が規定されたこと(第10条の7の2第1項)などがポイントです。

施行を前にして、林野庁のHPに説明用の資料が掲載されています。
森林・林業再生プランの進行管理(森林計画関係)
参考資料森林計画制度の見直し

(森林法の改正と合法性証明)

林野庁の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドラインによると、グリーン購入法要求する合法性が証明された木材の、合法性の定義は、「伐採に当たって原木の生産される国又は地域における森林に関する法令に照らし手続が適切になされたものであること」とされており、日本で伐採された木材については、この森林法が規定する手続きが問題となります。

今回、それに関連して改正された事項は、上記の②、市町村長に対する「伐採及び伐採後の造林の届出」の罰則規定が強化されたことと、届出がされない場合、不適切な措置に対する措置命令が新設されたことです。

この部分が強化されたことは、日本国内の伐採届けの執行措置状況についての厳しい認識があるものです。地域によってまちまちのようですが、市町村段階で所有者に対して厳しい指導が行われていない場合もあるようです。国産材の合法性問題は、日本の人工林の次世代を豊かなものにしていく上でも重要な課題だと思います。

(違法伐採問題は海外の課題?)

森林法という、施行現場が人里離れたローカルな地域で広範にわたる森林法規の施行を確保することは、どこの国にも共通に結構負担のかかる事項で、残念ながら施行が徹底されていない場合が見られます。これが違法伐採問題の背景となっています。

「違法伐採問題は海外の問題」という、日本の関係者に広く普及した「共通の理解」のようなものがありますが、森林法の施行状況を市民支援や協力を得て改善していくことは、発展途上国だけでなく日本にも共通の課題で、重要でやりがいのあることです。

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UNEP「グリーンエコノミー(GE)報告書」森林編;GEと森林勉強ノート(3)(2012/4/22)

先月からの続きで、UNEPのグリーンエコノミー報告書Towards a green Economyに関して、40ページほどの森林編があります。

目次は以下の通りです

ontents
List of acronyms . . . . . . . . . . . . . . . . .
Key messages . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1 Introduction . . .. . . . . . . . . . .
1.1 Current state of the forest sector . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1.2 Scope of the forest sector . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1.3 Vision for the forest sector in a green economy . . . . . . . . . . .
1.4 Indicators . . . . . . . . .
2 Challenges and opportunities . . . . . . . . . . .
2.1 Challenges . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2.2 Opportunities . . . . . . . . . . . . . . . .
3 The case for investing in greening the forest sector . . . . . . . . . . . . . . . .
3.1 Options for green investment in forests . . . . .
3.2 Investing in protected areas . . . . . . . . . .
3.3 Investing in PES . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.4 Investing in improved forest management and certification . .
3.5 Investing in planted forests .
3.6 Investing in agroforestry . . .
4 Modelling green investment in forests . . . . . .
4.1 The green investment scenario . . .. . .
4.2 The baseline scenario: business-as-usual . . .
4.3 Investing to reduce deforestation . . . . . .
4.4 Investing in planted forest . . . . . . . . .
4.5 Impacts of investment in reducing deforestation and in planted forest .. . . .
5 Enabling conditions . . . . . .
5.1 Forest governance and policy reform . . . . . .
5.2 Tackling illegal logging . . . .. . . . . . . .
5.3 Mobilising green investment . . . . . .
5.4 Levelling the playing field: Fiscal policy reform and economic instruments
5.5 Improve information on forest assets . . . . . . . . . . . . . . . .
5.6 Making REDD+ a catalyst for greening the forest sector . . . . . . . .
6 Conclusions . . . . . . . . . .
References . . . . . . . . . . . .

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key Massageの部分を訳してみました

2 限定的な民間の利益のための森林の短期間での破壊が基盤を揺るがしており、阻止しなければならない。

森林減少の速度は少し減速の兆候はあるが、いまだに一年間に13百万ヘクタールと危険な規模が続いている。ネットの森林減少は5百万ヘクタールとなっているが、これは新たな人工林造成により緩和されているもので、人工林は天然林よりも生態系サービスの提供力が劣るものである。森林の減少・劣化の大規模に起こっている背景は、木材の需要と、換金作物、放牧地など他の土地利用からの圧力である。これらの「フロンティアアプローチ」は、投資アプローチとちがって、森林生態系サービスと経済的な機会が失われることを意味している。森林破壊を止めることはよい投資であり、森林破壊を防ぎ気候変動を制御することは、他の3つの要素のコストを5割上回ると推計されている。

3 REDD+の体制による国際的国内的な交渉は、森林を保全しグリーンエコノミーに貢献する重要な機会である。

現在のところ、森林に由来する公共財に投資し、公正で持続可能な森林生産を保証するための明快で国際的な制度が構築されていない。この様な制度は、持続可能な森林管理の長期的な達成に貢献する財政や政策の実現を支援するものであり、現時点で持続可能な管理の定義の曖昧さを解決することになりだろう。森林の公共財の管理は新しいタイプの森林に関する雇用や、所得を生み出すこととなり、森林住民が森林と生態系管理の管理者となることができる。REDD+の基準や効率的な現地での森林管理のシステムがや地元住民の利益実現の方法が、明らかにされる必要がある。
4 取って代わるべきあるいは拡大されるべき試行された経済政策と市場の存在

認証木材の仕組み、熱帯雨林の製品認証、生態系サービスに対する支払い、利益共有制度、共同体を基礎とするパートナーシップなど十分なグリーンエコノミーに関する事例がある。それらの事例は総括され、生態系サービスに応じて評価され、普及されるべきである。この章でその部分に貢献している。
5 天然林と人工林への投資が経済的利益を生み出す

グリーンエコノミーのモデル化作業によれば、僅か毎年400億ドルの造林や森林管理のための所有者への支払いという投資が2010年から2050年にかけて続けられると、木材工業の付加価値がそうでない場合に比べて20パーセント増加すると見込まれる。その上森林の炭素蓄積は28パーセント増加する。これらの投資は農業の投資の効率性も生み出すので、森林の拡張が農業生産と競合することもない。しかしながら、人工造林の拡大は、所有権が曖昧な貧困な農民の移転を伴わないよう、また、地元住民に別の利益を得られるように慎重に計画されるべきである。
法制度と管理システムの変更し森林及び競合する分野に依然として残る持続可能でない行為から決別することが、持続可能な森林管理に向けたバランスの改善のために必要である。
よく管理された森林は生態的な管理の基盤をなすものである。たとえば、対価を最大化するための資産クラスとして認めさせる必要がある。これらの対価は、炭素貯蔵、生物多様性保全、水源の保全など公共財とサービスであり、国の勘定制度の中でこれらが反映する必要がある。民間の森林材はそれが持続的な生産されるならば、経済社会的な利益である。持続可能な森林管理とグリーン投資の拡大は持続可能でない違法な木材や木質繊維製品との競合や、放牧農業、鉱業など競合する土地利用への政策誘導の危機にサラされている。にんじん(人材育成への支援、持続可能な森林管理のための独立した認証制度)とムチ(違法伐採とその取引に関する厳しい規制など)が必要である。また、森林が悪影響を受けている他の分野の政策見直し、例えば、農業に対する補助金のコストと利益に関する見直しが必要である。

kokusai0-5<UNEPGe2>





最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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