ニュースレター No.142 2011年6月18日発行 (発行部数:1224部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:再生可能エネルギー電気の調達法案の木材業界への課題(2011/6/25)
2. 公表された木材・木材製品のカーボンフットプリント算定基準(PCR)続き3(2011/6/15)
3. 木材製品の出荷に関する事業者の義務に関するEU規則日本語訳公開(2011/6/18)

フロントページ:再生可能エネルギー電気調達法案の木材業界への課題(2011/6/25)

再生可能エネルギー電力を電力会社が全量買い取り制度については、本HPでもフォローしてきましたが、3月11日に午前中に東日本大震災の直前の閣議で法案が決定し、4月5日国会上程されています。

買取価格の上乗せ分をサーチャージとして電力会社が需要家に請求するという仕組みとなっているため、鉄鋼などの大手需要家が反対姿勢を示しており、行方が注目されていましたが、菅直人首相が辞任する条件のひとつとしてこの法案の成立を条件としたた一躍脚光を浴びています。

法案概要、条文本文などは経産省のHP「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案について」に掲載されています。

買取の対象となるのは一定の施設で再生可能エネルギー源を変換して得られる電気(再生可能エネルギー電気)で、当然木質バイオマスを燃料として得られる電気もその中に入っていますが、政省令の検討の過程で「紙パルプなど他の既存産業に影響がないものを対象とする」(法案の概要)という整理がなされたようです。

法令に基づく買取義務が、その製品を買い取ることがある産業に影響がないものかどうかに係っているとすると、それをどのように判定するのか実務的に結構難しい課題が残されているものです。

チップ業者から電力会社への納入段階で他産業の意見をいちいち聞く仕組みをつくることは至難の業であり、ある原料段階で影響なしと認定された原料を分別管理して証明するなどの仕組みが必要になるでしょう。

木質資源でできた製品について、品質・性能・価格以外の生産流通過程の取り扱いの違いによる属性を業界の責任とコストで証明するという作業は、合法性の証明と基本的に同じ性格の課題だといえます。

木質資源でできた製品を環境製品としてマーケットに提供する場合、どうしても避けて通ることができない宿命なのかもしれません。

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公表された木材・木材製品のカーボンフットプリント算定基準(PCR)その(2011/6/25)

3月下旬に公表された木材・木材製品のカーボンフットプリント算定基準(PCR)の解説をしています。
承前

製材の原料調達過程のもう一つは丸太の輸送過程のついてのCFPの算出です。

この点について算定基準はウッドマイルズ研究会の研究成果を利用しています。

輸送過程の算出については、@燃料法(直接係った燃料を把握する方法)、A燃費法(輸送手段ごとの単位距離あたりの燃料と輸送距離を把握して計算する方法)、Bキロトン法(積載率、輸送負荷(輸送距離と輸送重量)を把握しトンキロあたりの燃料消費の二次データを利用して計算する方法)の三通りが望ましい順に記載され(6-6その他)、詳しい計算過程が記述されています(付属書B)が、原料丸太の輸送距離の調査を要求する@Aはなかなか難しく、結局簡易なトンキロ法の基づく輸送シナリオ(付属書C)にしたがうことになるでしょう。

付属書Cの中の丸太の輸送シナリオC1は、国産材の場合、特定の都道府県内で生産されたことが明確な国産材の場合とそうでない場合と二つに場合分けて排出量が算出されるようになっていいます。

まず輸送距離に関して前者の場合産地と加工施設の所在地によってマトリックスで輸送距離が検索できるようになっており、たとえば東京にある製材所が多摩産材を使う場合28キロ、神奈川産材を使う場合は30キロなど検索できるようになっています。

また、産地が特定できない国産材の場合は69キロという数値を使うようになっています。

以上の輸送距離について、輸送過程の排出量算出に関するシナリオは、丸太の国内輸送は10トントラックを利用し積載率は62%帰りはカラで帰るという設定がされています。またスギの生材の密度は642kg/トンとうい数値が与えられています(付属書D)。これらを前提とすると、輸送距離が10キロメートルスギ丸太1立方メートルを輸送した場合、約1.6kgのCO2を排出するとなります。
10トン車積載率の62パーセント10キロメートル輸送時の燃料消費3.3リットル
同積載率ゼロパーセント(帰り)の燃料消費2.4リットル、合計5.7リットル
CO2排出量に換算し15kg(2.6kg/Lを適用)
輸送されるスギ丸太の量は、6.2トン→容積換算9.6立方メートル
15kg/9.6m3=1.6kg

以上から、国産材の一般的な輸送距離としている69キロメートルであれば、1.6kgの6.9倍、11kgの排出量ということになります。

付属書Cのシナリオには、輸入材の場合の輸送距離も、輸入材産地国における伐採地から輸出港まで、輸入された我が国の中での輸入港から加工施設までの数値が掲載されています。さらに別途二国間の輸送距離などのデータが二次データとして提供されています。

おおざっぱに計算すると輸出国内の陸上輸送で15kg、日本国内の陸上輸送で10kg、海上輸送は地域によりますが、1000キロトンあたり8kg程度の排出量が二次データとして掲載しているので、北米で60kg程度となりあわせて、北米産の丸太が日本の工場に入荷するまでの輸送過程の排出量は80kgていどでしょうか。

(つづく)

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木材製品の出荷に関する事業者の義務に関するEU規則日本語訳公開(2011/6/14)

既報の通り、昨年7月にEU議会は、違法伐採木材の使用を禁止し、木材業者に購入元や販売先の届出を義務付ける法律を可決し、木材規則(Timber Regulation No.992/2010)として12月2日に施行が始まりまっており、13年の全面施行(規則の全面的な適用)に向けた準備が進んでいますが、EUの関係HPに今回作成された規則の日本語訳が掲載されました

欧州連合法の該当ページには正規に21カ国語に翻訳された木材規則が掲載されていますが、日本語訳が掲載されたのは、EUの森林法執行・ガバナンス・貿易(FLEGT)に関する行動計画、及び自主的二国間協定( VPA)に関するHPです。日本の森林総合研究所国際研究推進室が欧州森林研究所のIUFLEGTアジア支援プログラムの協力により作成されたものです。

基本的には国境での説明責任ということがポイントになっている(「市場への出荷」には域内取引は含めない第二条(b))ようですが、取引に関わる事業者の説明責任をベースに信頼性とコストのバランスをどうとっていくのか、その中での業界団体の役割と登録、事業者の検査など日本のガイドラインの評価にも関係する文書です。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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