ニュースレター No.080 2006年4月16日発行 (発行部数:1300部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:「新生産システム」と「儲かる林業」(2006/4/16
2 中国とグローバル化した林産物市場(2006/4/16)
3. 違法伐採問題と「グリーン購入法」同時進行レポート(3)ー全木連行動規範(2006/4/16)
4. 木材・木材製品の合法性、持続可能性証明のためのガイドライン英訳版(2006/4/16)
5. 新刊書紹介「エコフォレスティング」2006/4/16)

フロントページ:「新生産システム」と「儲かる林業」(2006/4/16)

↑事業概要pdf
林野庁の18年度予算の目玉である「新生産システム」のモデル地域が内定し公表されました。(→こちら

その趣旨は「全国から選定された地域において人工林資源を活用しつつ施業・経営の集約化、施業コストの削減、原木供給の確保と山元還元の向上、低コストで安定的な大ロットの生産・流通・加工体制の構築、安定的な製品需要の確保等を図る取組を集中的に実施することにより、林業採算性の改善と地域材需要の拡大を図り、我が国における森林整備の推進と林業・木材産業の再生・発展のモデルケースとする」(林野庁HP「モデル地域の募集について」より)と、なっていますが、国産材供給の弱点となっている川上から川下までの効率性に真正面から取り組もうというものです。(事業の概要

「低コストで安定的な大ロットの生産・流通加工体制の構築」というのは、今まで何回の聞いたキーワードですが、@それを山側の集約化、施業技術の革新などと結びつけて山元への還元を向上させること、A生産流通加工体制を協同組合以外にもオープン化して完全なコンペ方式にしたこと、が特徴だと思います。

本HPでも紹介してきた「儲かる林業研究会」などの活動が、インパクトを与えた形になっています。

国産材や地域材を考える場合、@環境負荷やトレーサビリティという点から消費者に訴求していくというアプローチがありますが、もう一つAマーケット側の求める効率性を流通加工過程がしっかりこなしておかないと大きな流れにならないという側面を忘れてはならないと思います。

先般熊本で開催された、森林木材認証フォーラム九州に出席する機会がありました。いわば上記@に焦点をあてた熱気あふれるイベントでしたが、パネリストとなった山田九州森林管理局長がAをターゲットとした新生産システムの仕掛け人でもあるため、フロアから関連質問があり、@とAの関係がよくわかるおまけもついたすばらしい機会でした。

新生産のモデル事業地も下表のとおり、11のうち4つは九州です。戦後植林の最先端をいった九州地域がその市場開拓の上でも、二つの道の最先端をいっていといえるかもしれません。

このHPでも今後随時フォローをしていきたいと思います。

内定地域は以下の通りです。
モデル地域 対象流域 取組の概要
秋田
(秋田県)

 
秋田県下各流域

 
森林組合、素材生産業者、スギ製材工場が連携し、原木の一元的な安定供給を行うとともにニーズに合った加工体制を確立し、地域材の利用拡大を図る。
奥久慈八溝
(福島県、茨城県)
 
福島県阿武隈川流域、奥久慈流域
茨城県八溝多賀流域
スギ製材工場と森林組合等が連携し、原木の直送化等による安定供給と生産規模の拡大により、収益性の改善と地域材の利用拡大を図る。 
岐阜広域
(岐阜県)
 
岐阜県下各流域

 
森林組合が素材生産の機械化や原木の直送化等のコスト削減に取り組み、安定的な供給・加工体制を構築し、地域材の利用拡大と森林整備の推進を図る。
中日本圏域(三重県、岐阜県、愛知県) 三重県・岐阜県・愛知県下各流域
 
森林組合等とヒノキ製材工場が連携し、原木の協定取引により広域な供給体制を構築するとともに、工場の規模拡大により地域材の利用拡大を図る。 
岡山
(岡山県)

 
岡山県下各流域

 
森林所有者とスギ・ヒノキ製材工場が連携し、原木の直送化による安定供給と生産規模の拡大等に取り組み、収益性の改善と地域材の利用拡大を図る。
四国地域
(徳島県、愛媛県、高知県)
徳島県吉野川流域、那賀・海部川流域
愛媛県東予流域、中予山岳流域
高知県嶺北仁淀流域・四万十川流域
森林組合、製材工場、プレカット企業、大手ハウスメーカー等が連携し、需要にあった木材生産、広域にわたる原木供給体制の構築、ニーズを踏まえた加工体制の構築により、地域材の利用拡大に取り組む。

 
高知中央・東部地域
(高知県)

 

高知県嶺北仁淀流域、高知流域、安芸流域
 

森林組合、スギ・ヒノキ製材工場等が連携し、素材生産性の向上と原木の安定供給、加工施設の整備により地域材の利用拡大と森林整備の推進に取り組む。
熊本
(熊本県)
 
熊本県下各流域

 
森林組合とスギ製材企業が連携し、素材生産のコストダウンと原木の安定供給、製材工場の規模拡大等により、地域材の利用拡大に取り組む。
大分
(大分県)
 
大分県下各流域

 
森林組合、流通業者(原木市場)、スギ製材工場が連携し、生産・流通コストの削減と原木の安定供給、工場の規模拡大により地域材の利用拡大に取り組む。
宮崎
(宮崎県)
 
宮崎県下各流域

 
森林組合、素材生産業者、スギ製材工場が連携し、加工施設の整備と物流改善により、地域材の利用拡大と森林整備の推進に取り組む。
鹿児島圏域
(鹿児島県)
 
鹿児島県下各流域(奄美大島流域を除く)
 
スギ製材工場が森林組合等と連携し、原木の安定供給と加工施設の規模拡大に取り組むことにより、地域材の利用拡大と森林整備の推進に取り組む。 


kokunai8-3 <sinseisan>

2 中国とグローバル化した林産物市場(2006/4/16)

国際林業研究センター(CIFOR)が定期的に配布している、林業政策についての最新の論文の紹介をしているPOLEXの最新号が上記の論文を紹介しています

中国の木材輸入が急増しており、周辺国の違法伐採の違法伐採拡大の原因になっていると指摘する向きもありますが、中国は欧米への輸出を急増させており、違法もしくは持続的でない伐採を阻止するために、木材製品が疑わしいものから作られていないことを確認する中国の取り組みに協力する立場にある、との主張です。

CIFORの日本語情報と過去のPOLEXメッセージはhttp://www.cifor.cgiar.org/polexjpn


基の論文はA. White, X. Sun, K. Canby, J. Xu, C. Barr, E. Katsigris, G. Bull, C. Cossalter, and S. Nilsson. 2006. China and the Global Market for Forest Products: Trends, Implications, and Steps to Transform the Trade to Benefit Forests and Livelihoods, Washington D.C.: Forest Trends, Center for International Forestry Research, and Chinese Center for Agricultural Policy.
ダウンロードはhttp://www.forest-trends.org/programs/pacific_rim.phpから。

boueki4-14 <chinaex>


3 違法伐採問題と「グリーン購入法」同時進行レポート(3)ー全木連の行動規範(2006/4/16)

全国木材組合連合会では3月24日の理事会において、「違法伐採対策に関する(社)全国木材連合会の行動規範を」決議しました。全木連HP)

全木連は2002年11月「森林の違法伐採に関する声明」を発表して、「安定的木材供給と我が国木材産業の健全な発展を期すため」、「傘下の木材業界に対して、違法に伐採され、又は不法に輸入された木材を取り扱わないように」呼びかけてきました。

今回の行動規範は、その精神に基づくとともに、さらに、林野庁が作成した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(本HP関連)に基づき「合法性等の証明のための会員事業者の認定」を行うこととしています

このことに関連し、同じ理事会で「合法性・持続可能性の証明に係る事業者認定実施要領(PDFファイル)」を決めました。


林野庁のガイドラインで打ち出した、業界認定による合法性の証明方法の概要は上記の通りです。

伐採を行うにあたって、日本国内では森林法に基づく保安林の伐採許可や、その他の箇所での伐採届けなどが行われているかどうか証明する文書が出発点になります。

そのあとは、山で伐採を行う業者から政府に納入する業者まで、合法性のある木材を原料としたものであるという申告をすることがベースになります(図の右側)。

そして、その申告の信頼性は、申告をした業者が一定の基準で業界団体により審査を受けた認定業者であるという手続きをふむことによって、裏書されているという仕組みになっています(図の左側)。

全木連が会員を審査する基準は上記の認定実施要領に記載されています。

第五 合法木材供給事業者の認定要件

認定事業者は、次に掲げる要件をすべて満たさなければならない。
(分別管理)
@合法性又は合法性・持続可能性が証明された木材・木材製品(以下「合法木材」という。)とそれ以外の木材・木材製品(以下「非合法木材」という。)を分別して保管することが可能な場所を有していること。
A入出荷、加工、保管の各段階において合法木材と非合法木材とが混在しないよう分別管理の方法が定められていること。
(帳票管理)
B合法木材の入出荷、在庫に関する情報が管理簿等により把握できること。C関係書類(証明書を含む)を5年間保存すること。
(責任者の選任)
D本取組の責任者が1名以上選任されていること。


boueki4-15<jfwkihan>

4 木材・木材製品の合法性、持続可能性証明のためのガイドライン英訳版(2006/4/16)

木材・「木製品の合法性、持続性の証明のためのガイドラインの英文が以下に公表されました。

Guidline for Verification on Legality and Sustainability of Wood and Wood Products(Provisional Translation) 【PDF】


boueki 4-13 <>

5 新刊書紹介「エコフォレスティング」(2006/3/12)

林野庁の柴田晋吾さんが「エコフォレスティング」という書籍を著しました。
日本林業調査会のページより

森林管理に関する教育を受け森林管理を職業とする人をフォレスターといいますが、フォレスターが担ってきたのが林業(フォレストリー)であるとすると、都市住民や民間企業など、森林環境に関心のある者ならだれでもその担い手となりうる、新しい時代の森林の保全と利用についての活動を「フォレスティング」といおうといおうのが、柴田さんの提唱です。

欧州や米国のフォレスターたちの森林とその管理に関する認識の変遷についての丹念な検証を元にした労作です。

「順応的管理」や「協働による管理」など世界の共通財産となっているコンセプトが日本の森林管理の現実とどう関係してくるのか、といった点で、もう一歩踏み込んだ議論がほしいところですが、次作に期待します。

前書きをこちらから


kyotu (ecofore)

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

■いいねボタン