儲かる林業研究会の設立について
設立趣意
「国産材の時代」という言葉が期待と希望をもって語られたのはいつの頃だったろうか。しかしながら国産材のシェアは年々低下し、今や20%を切っている。林業関係者の間には「輸入材の流入が激しく、このままでは林業はやっていけない」との悲観論が台頭してきている。
それでは輸入材はなぜかくも大量に流入しているのだろう。それらの木材輸出国は国情が安定し、豊かな生活を営んでいる北米やヨーロッパであり、森林資源管理が適切に行われ合理的な林業・木材加工体制が確立し、国際競争力を確保している。今後もその充実した資源をもとに国際的なマーケットへの展開を続けていくであろう。このような状況下で国産材は抜本的な手を打たない限り、常にそして永遠に熾烈な国際競争に勝つ見通しが立たないのである。
我が国は森林面積が十分に広く、森林資源が充実しつつあるにも関わらず、国際競争力において一方的な劣勢にある。まさにわが国の林学、木材工学、経営技術、更には行政・民政の資質までが問われかねない局面であり、国産材に関わる者としてこの惨状を座視できない。
一方、木材価格が低迷を続ける中、拡大造林期以降育成されてきた人工林は、間伐や再造林が進まず環境機能も十分発揮できない質的低下が生じている。これら人工林を健全に育成するには間伐などの保育が必要であり、そのために間伐材などの販路・収益拡大が必須である。また、大規模なスギの集成材工場、合板工場の出現により国産材の大量消費がはじまりつつある。さらに、製材設備の革新により従来では利用できなかった原木の利用が可能となり、新しい育林体系・素材生産の仕組みが必要となってきている。
これらの課題を克服するために、日本、特に南九州地域における持続的な林業・国産材利用の姿を提示することが必要であり、例えば、市場逆算価により許容される低コスト林業の提案とともに、国産材の販路・収益拡大のための方策を徹底的に研究すべきである。問題は大きいように見えるが、個々の問題をきちんと解決していけば展望は必ず開ける。
まず悲観主義・他力本願から脱しよう。ここに有志を募り、それぞれの専門分野・職域の壁を取り除き、目標に向かって問題を解決していきたい。そこで、国産材を資源として再び位置づけ、活力ある新たな国産材産業を創造するために、川上・川下を含めた産官学関係者で「儲かる林業研究会」を発足させる。国内林業や国産材を取り巻く事態は急を要している。この研究会では以下の目的を掲げ,目標を達成するため3年間を目途に活動して行きたい。問題意識を共有する仲間を募り、研究会への参加を呼びかけたい。
研究会の目的
人工林の健全化、木材の持続的安定供給を可能とする新しい国内林業の姿を提示することにより、林業経営者を激励し山村地域の振興を図り、ひいては森林資源の循環利用の推進などに寄与すること。
3年間の目標
・林業がやり方次第で儲かる仕事であることを提示する
・価格、品質、供給力で輸入材に対抗できる競争力モデルを確立する
・持続的で安定した木材の生産体制を構築するための手法を確立する
平成17年11月1日
設立発起人
鹿児島大学農学部長 下川悦郎
九州森林管理局長 島田泰助
鹿児島県林務水産部長 諏訪弘美
鹿児島県森林組合連合会副会長 平瀬戸 茂
肝属木材事業協同組合理事長 佐々木幸久
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