サステイナブル建築世界大会とエコマテリアルとしての木材(2005/10/10) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
建築を社会・経済・環境という様々な面から評価し持続可能な方向に持って行こうというテーマでですが、最も大きなポイントは環境負荷の評価とその軽減という問題です。 木材関係者としては、建築は主たる需要先であり、競合する建築材料の中でも、再生可能で製造過程でのエネルギー消費がきわめて少ないエコマテリアルとしての特質を売り物にしているのですから、この世界学会は目の離せないイベントです。 私は,@全木連が協賛団体として参加向け展示会で日本の木材利用推進についてPRする企画と、Aウッドマイルズ研究会が「木材の輸送エネルギーとウッドマイルズ」Energy consumption through timber transportation and the Woodmiles:The Possibilities of the Woodmiles Indexes for Evaluation of Building”と題する報告をポスターセッションで発表、という二点を通じて参加する機会がありました。 700件におよぶ、学術報告についてはテーマごとの18のユニットに分類され、そのサマリーは、大会のHPの学術プログラムのページから読むことができます。(10月5日現在) <<世界の緑の建築基準>> 18のユニットの中で「建築物の環境評価ツール」という大きなユニットがあり、ここに70ほどの報告がされていました。 エコマテリアルとして世の中に訴えている木材の将来にとって最も大きな需要先である建築物の環境評価はきわめて重要なものであり、小HPでも関心を持って「緑の建築基準」をフォローしてきました。 報告を聞き、世界各国の緑の建築基準の関係者と意見を交換することができて大変有益でした。 緑の建築評価は、90年に英国で開発された認証評価の仕組みが出発点となり、ライフサイクルアセスメントの研究開発、ISO14000の動きを吸収しながら発展してきました。(この辺のところは今回の報告の中のNigel Howard,"Building environmental assessment methods: In practic"に大変要領よくまとめられています。関心のある方はgリンクされた発表論文の一読をおすすめします) 実践的には、先行した英国のBREEAMと北米で開発されたLEEDが二つの大きな流れを作っています。それにつづいて近年各国が競って開発を進めており、その中で大きなな役割を果たしているのが日本のCASBEEということのようです。 上記のHoward論文や今回の他の報告書から一覧表を作ってみると以下の通りです。
ほとんどの仕組みはその中に「資材」というカテゴリーがあり、環境負荷の少ない資材を多く使うことを奨励する仕組みになっています。 木材に関係するところでは、CASBEEではLR2.2「持続可能な森林から算出された木材の活用」、GBToolでは「持続可能な資源に基づくバイオマス製品の計画的使用」といった具合です。(何人かの発表者と話をしていると、木材自体をローインパクト資材として推奨するように位置づけている仕組みもあるようです(がペーパーでは確認できないので、テキストを請求しておきました))。 資材のカテゴリーの中で、ローカルな資材を奨励するというのは多くの制度が受け入れていることころです(この点についてはウッドマイルズ研究会HPウッドマイルズのインパクトとウッドマイルズを共有する条件を参照下さい)。 また、資材のカテゴリー以外にも、CASBEEでは「室外環境」というカテゴリーの中の「1 土地が持っていた場所の記憶への配慮、地域文化の継承」という項目の中に「地域産材の利用」という記述があります。 いずれにしても、建築物が建築、運営、廃棄のすべての過程でそれが建築された敷地の内外にインパクトを与えるのみではなく、資材の生産流通など幅広い影響を持っているものであるため、その環境評価の方向は、木材の生産流通業者、その原料の供給者である森林の管理のあり方に影響をもってくるものです。 今回の関連報告にすべて目を通すことはできていませんが、何人の方とは意見交換をし、プロシーディングはCDで配布され、また報告者のアドレスも公開されているので、この面でネットワークを広げてゆくことができると思います。関心のある方は、ご連絡下さい。 <<CASBEEの期待と課題>> 日本で開催されたこともあり、日本で開発されたばかりのCASBEEは大変注目をされていました。 CASBEEについては多岐にわたる建築の関連指標をQ(Quality=環境品質・性能)と、L(Load =環境負荷)の二つのカテゴリーに分け、Q/Lを建築物の環境性能効率(BEE)として平面上に図示する仕組みを建築基準の中に取り込にだことで、各国の評価手法に影響を与えています。 CASBEEの環境負荷についての規定の中の木材に関する記述の問題点については小HPでもすでに指摘したところですが、これがだんだん大きな役割を持ってゆくとなると、関係者のコンセンサスを基準の中にどのように取り入れていくのかの方針を明確に示す必要があると思います。 例えばleedのLEED Foundations Policy ManualのSection 7LEED Process Guidelinesでは、メンバー委員会各段階での投票、原案を会員に示す期間、公表する期間、意見の処理方法など、ということが事細かに公表されています。 このことに関しCASBEEの関係者と話をしたのですが、@建築物の総合的環境評価研究委員会(委員長村上周三慶応大学教授)が最終的な責任を持っている、A毎年7月に改訂がなされる、B改訂は現行の基準の実践過程からの意見をふまえて行われる、C原案を公開するプロセスにはなっていない、などのことがわかりました。 ただし、そのようプロセスを記述した文書自体が存在せず、透明性に疑問があるといえます。 建築関係者以外に社会の幅広い部分にこの基準の記述が影響を及ぼしてゆく可能性があるだけに、基準の策定手続きが明快になり、多くの関係者のコンセンサスの上にCASBEEが発展してゆくことを願います。 <<学術プログラムの中の木材関係>> なお、700件におよぶ、学術報告の中で木材に関係するものは、タイトルをキーワードで検索した限り、17件で、日本が11件、米国2、スウェーデン2、イタリア2です。一覧表とをこちらにおきます。
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