「【研究成果の紹介】決定版!!ホントの日本の森林の二酸化炭素吸収量」は、何を生み出すか?(2026/5/3)

東京大学農学部熊谷教授から、標記の研究成果を送っていただきました。

原文はこちら→Revised estimates of forest carbon sequestration reveal the true sink capacity of Japanese forests(Tomo'omi Kumagai, et.al)

熊谷教授には、いままで日本の森林のCO2吸収力で公表されている数値が不正確で、最新の吸収力をリアルに学術的に明らかにした結果などを教えていただいてきました。

地球と森林と二酸化炭素の物語ー勉強部屋Zoomセミナー第2回報告(2023/8/15)

など

その決定版!!?

ネット上(東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部)に、 「決定版!!ホントの日本の森林の二酸化炭素吸収量」というわかり易い解説ページがありますので、それに応じてご紹介します。

ーーー

(「改正森林炭素隔離量推定手法により日本の森林の真の吸収能力が解明」、発表のポイント)

標記発表(以下「今回発表」)のポイントに記載されているのは以下の通りです

◆直接的な森林現地調査の最新のデータをまとめてみたところ、日本全体の森林の二酸化炭素吸収量は年間1億6900万トンにまで上り、これまでの推定値の約2倍にもなることがわかりました。(左図)

◆その吸収量のうち43.1%を、驚くべきことにたった1樹種の「スギ」が担っています(右図)。

また、日本の主要人工林(スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ)を見ると、これまで信じられてきたような年齢による二酸化炭素吸収の低下は100歳くらいまで起こらないことがわかりました。

◆日本の森林の二酸化炭素吸収能力を推定する際、何よりも一番大切なのは「何の樹種がそこに生きているか(森林タイプ)」です。そして次に効いてくるのが「今、どのくらい大きく育っているか(現在の蓄積量)」という点であり、他の要素の影響はそれらに比べると極めてわずかです。(左の図)

◆日本が目指す2050年の「カーボン・ニュートラル」を実現するためには、こうした精度の高い森林調査データと、それに基づく緻密な解析が、計画を立てる上でとても重要になってきます。その結果、日本では、「カーボン・ニュートラル」のほとんどが森林のチカラで成し遂げられることがわかったのです。

ーーー以上がネット上に掲載されている「発表のポイント」です

英文の学術誌に掲載された、学術論文について、ネット上でわかり易く、市民や行政関係者に紹介し、政策論に反映させようという、熱意!改めて深く敬意を表します

(日本国温室効果ガスインベントリ―報告書との関係は?)

日本が毎年気候変動枠組み条約の事務局に提出しているに日本国温室効果ガスインベントリー報告書(以下NID)の内容との関係をみてみましょう。

右の図は、ネット上に公開されている、NID
2026
年(以下公開報告書)の2-19ページに掲載されている「LULUCF分野(土地利用、土地利用変化及び林業)からの温室効果ガス排出量及び吸収量の推移」です。

以下のような説明がついています。

2024年度の土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)分野の純吸収量(CO2、CH4及びN2O排出量を含む。)は4,940万トン(CO2換算)であり、1990年度比35.5%の減少、2013年度比34.5%の減少、前年度比1.9%の減少であった。なお、2004年度以降の長期的な吸収量の減少傾向は森林の高齢化によるところが大きい。
2024年度のLULUCF分野の温室効果ガスの排出及び吸収量の内訳を見ると、森林におけるCO2吸収量が5,700万トンと最も多く、LULUCF分野の純吸収量の115%に相当している。

ーーーここまで

今回発表によると、一番下の4Aの青の部分、一番大きな森林の吸収量が、本当はこの数値の2倍以上になり、また吸収量は減っておらず、森林の高齢化で減ることはない、ということですね。

(FM率は)

少し注意点ですが、報告書の森林吸収量は、日本の森林の吸収量全てでなく、1990年以降に間伐を含む森林施業が確実に行われている森林の比率(FM率)を乗じた数値です。

(インベントリ報告書 2026 年別添 9-8表A 9-8 育成林の民有林・国有林別のFM率(2024年度適用値)に記載されているように人工林ではFM率9割ぐらい、天然林では半分ぐらいです)

今回発表資料はこの分のどのように処理されているかわかりません。が・・

いずれにしtも、いいままで、国際的に対外的に公表していたインベントリー報告書の内容を書き換えなければならない、インパクトのある今回発表ですね。

(政策へのインパクト)

左の図は、NID2026の「各分野の温室効果ガス排出量及び吸収量の推移」という総括的な推移(2-14ページ)です。

このグラフの数値を2050年までにゼロにするというのがカーボンニュートラルという対外約束ですね。

一番下のLULUCFという部分の大半が森林の吸収量です。

「2024年度のLULUCF分野の純吸収量の温室効果ガス総排出量に対する割合は4.7%となった。」と説明があります

今回の発表は、その数値が10%以上となり、少しずつへっていたのが、今後へらなくなる、ということですね。

(日本では、「カーボン・ニュートラル」のほとんどが森林のチカラで成し遂げられる?!)

一番最初の発表概要の最後の部分

「日本では、「カーボン・ニュートラル」のほとんどが森林のチカラで成し遂げられることがわかったのです。」というのは、どんな意味があるでしょうか?

日本全体の政策にインパクトを与えそうな重要なフレーズなのですが、少し解らづらいので、K教授ご本人に聞いてみました。

それで、示されたのが右の図です

ベースとなっているがのがバイオマスをCO2吸収源とした ネガティブエミッション技術:国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(2022)

それによると、2021年度総排出量: 11億2200万トンを2050年までに2億8000万トンまで減らし(削減目標)、その残りをバイオマス炭化技術(BECSS)、直接空気回収(DACCS)など今後開発されるであろう技術で2億トンオフセット予想なので、残りは8000万トン!!というシナリオなのですが・・・

「わけの解らない回収技術に頼らないで、森林吸収に頼る方が便利で安全だ!!」と言うことを言いたかった」のだそうです(K教授ご本人)

一部の学術関係者が共有しているる「目標シナリオ」というのがあったとしても、普通の人が「2050年までの(ゼロエミッション)目標シナリオ」と言われてで一番大変だと思うのは、エネルギー起源などのCO2削減(削減目標)、ですよね。それも含めて「ほとんど森林でかたが付く」と誤解されそうなのでご注意を、と申し上げておきました。

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以上が、日本の森林の吸収量の正確な数値解明作業の最前線で、「地球環境に貢献する森林の関係」をアピールされている、K教授の最新の研究成果と、ご本人と勉強部屋とのコミュニケーション報告です。

いままでの、K教授グループの研究成果とそれが、日本の森林政策に反映されつつある、経緯を、勉強部屋で追いかけてきました。

GX(脱炭素社会にむけた社会変革)の中の森林吸収源のポテンシャルーもっと大きいかな?(2023/4/15)
新しい日本の気候変動枠組み条約NDCの中の森林吸収量ー少し心配?(2025/3/13)

さらに、森林政策への反映がステップアップされる可能性があるので、しっかりフォローしてまいります。

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