動き出した排出量取引と森林バイオマスの関係(2008/11/16) | ||||
(排出量取引の募集始まる) 10月21日政府の「地球温暖化対策推進本部」(麻生首相本部長)で、国内の排出量取引制度の内容が決定され、参加企業の募集が始まりました。 経済産業省「排出量取引の国内統合市場の試行的実施及び国内クレジット制度の募集開始について」 主要企業が温暖化ガスの自主削減目標を設定し、その達成を目指して排出削減を進めるのですが、目標に達成しない企業は、超過達成した企業から排出量を買い取る制度をつくる他、別途設定される国内クレジット(京都議定書目標達成計画に基づき、中小企業や森林バイオマス等にかかる削減活動による追加的な削減分として創出されるクレジットなど)も買い取り対象となるというものです。
排出権取引の前提となる上図@の排出枠が「企業の自主的削減目標」(目標の妥当性については、政府が審査・確認を行う)という形で設定されるということが特徴ですが、本ページでは、森林や木質バイオマスの環境貢献がどのように、国内クレジットとして認定されるのか検討をしてみます。 (国内クレジットの承認手続きと承認要件) 今回公表された文書の中に、「国内クレジット制度の運営規則」という文書があります。(環境省HPpdf 本サイトHTML) 国内クレジット制度の概要のページをつくりました。 クレジットの認定に至る長いプロセスですが、その第一歩は排出削減事業者が、「承認された方法論」とよばれるひな形に沿って事業計画を作成し、審査機関に審査ををうけて承認をもらうことから始まります。 承認の要件は、@ 日本国内で実施されることA 追加性を有することB 自主行動計画に参加していない者により行われることC 承認排出削減方法論に基づいて実施されることD 審査機関又は審査員による審査を受けていることE その他委員会の定める事項に合致していること。の6つとなっています。(運営規程第4章第二節1) この中で、「追加性」というのは、聞き慣れない言葉ですが、京都議定書で認められる温暖化ガス削減事業に認定される要件の一つで「その事業がない場合に生じる排出削減に対する追加的な排出削減」(議定書12条5(c))の条項に由来しています。 追加性を具体的な例で見てみましょう。事業のひな形となる「方法論」が7つ公開されています(環境省HPからpdf)が、木材業界に関係ありそうな「ボイラーの更新」(第一番目の方法論としてリストされている(こちらに方法論の本文))(重油炊きボイラーを木くず焚きボイラーに変換したときなど)を例にとってみると、「重油炊きボイラーが壊れたので木くず焚きのものに変えた」のでなく、「十分に使えるのにわざわざ(追加的)木くず焚きボイラーにして、二酸化炭素排出を減らした」、という証明が必要になるようです。 原油高もあり、ボイラーを木くず焚きに転換した企業はたくさんあると思いますが、上記の基準などについて関係者に聞いてみると、これらの企業が国内クレジットを申請する場合、次のようなチェックポイントがあると考えられます。
募集要項はこちらにあります→(国内クレジット制度 募集要項) ご関心のある向きは、11月から12月にかけて全国で説明会が開催されるそうですので、のぞいてみたらいかがでしょう。 (森林吸収量と国内クレジット) さて、いままでは化石燃料を燃焼していたボイラーをカーボンニュートラルな木くず燃料にした場合の国内クレジットについての検討ですが、森林吸収源そのものが国内クレジットになるものか、気になるところです。現在の方法論リストに掲載されてはいません。 方法論自体も、提案型になっている(運営規程第4章)第一節)ので今後いろいろな提案がなされるでしょう。 少し考えても以下のハードルを越える必要があります。 1 国内クレジットの定義に「京都議定書目標達成計画(平成20 年3 月28 日閣議決定)に基づき、日本国内で実施した排出削減事業により実現された温室効果ガスの排出削減量に対して、国内クレジット認証委員会が本運営規則により認証した排出削減量をいう。」とあり、明確に「排出削減量」と限定しているので吸収源がこの制度になじむのか(まずは、制度の一部手直しが必要になるでしょう) 今回のフレームの中で解決するには結構難しい問題ですが、将来の排出量取引、吸収量取引などの制度設計を考える場合の素材としてこれを機会に議論が進むことが大切だと思います。 その他に関連して、林野庁では来年度予算で、ボイラーの木質バイオマス利用への燃料転換などの取組により、発生が予想される国内クレジットの検証、支援などを行う、「山村再生支援センター」の立ち上げを計画しているところです。(こちらに排出量取引の国内統合市場における山村再生支援センターの位置づけ) kokunai4-10<EmT&FoB>
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