既報のとおり、昨2012年9月にFAO林業委員会が開催され、世界林業白書State of the World's Forests
2012(英文)公表されました。
1995年からほぼ2年に一回出版されてきたもので、地球上の森林全体とその管理の現状について、問題提起をしてきました。
この報告書は1995年以来第10作目になるため、いままでの概要が掲載されています。その和訳を別途のページに掲載します。
2012年のサマリーを翻訳したので掲載します
世界森林白書
2012年度「世界森林白書」では森林の持続可能な生産と消費のシステムに焦点を当てることとした。その道しるべとなる第10版では、今日の世界を形づくるうえで森林・林業が果たしてきた重要な役割を理解するためには、過去を振り返るのが適切であろう。
第1章:世界の森林状況:第10版まで
この白書は森林・林業分野では最も重要なFAOの出版物の第10版である。1995年に初版が出版されて以来、白書を通じて世界の森林、林産物、生態サービス及び森林政策の状態と移り変わりを知ることができる。
この章では、10版までの各版において言及された重要な問題を、簡単に概観した上で、この時期における主要な世界の動向に焦点を当てる。
1990年代、世界の国々では森林政策に関する幾つかの深刻な対立が生じていた。1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた地球サミットでこの相違がはっきりと明らかになった。各国が地球の森林条約を巡って対立したのである。この対立の解消への努力の一端として、1995年に、森林に関する政府間パネルとともに国際的な森林政策の対話が立ち上がり、それに続いて森林に関する政府間フォーラム、そして2000年から国連森林フォーラムが開かれた。「世界森林白書」はこれらの成果を追っている。
今日、持続可能な森林管理は世界の森林を管理する上で極めて重要な原則として、広く知られている。「世界森林白書」では国、地域、地球全体といったレベルにおける持続可能な森林管理の進行状況の報告を重ねている。
その他に、この白書は森林が現代のグローバル経済と世界環境に重要な役割を持つことに焦点を当てて主要な経済傾向を分析している。
第2章森林と現代社会の進化
人間の歴史は森林とその利用の歴史である。森林は有史以来、人類社会に主要な燃料、建築資材を提供し続けている。しかしながら、森林資源を持続的に管理してきた社会は、ほとんど存在しない。人間の文明の歴史とは、自分の生活水準を向上させるために人類が森林資源を利用してきた歴史であるのと同時に、森林の破壊の歴史であるともいえる。
この章では、森林の歴史を人類が誕生した時代から振り返る。実際、世界のどの国においても森林は経済発展を支える主要な物質であった。しかし、時代の変遷に伴い、人口増加や経済発展によって森林が減少していった。一般的には、急激な森林減少は、常に大きな経済成長を伴っている。幸いなことに、国の経済発展が一定の水準に達した後に一般的には森林率が次第に安定し、増加する傾向もみてとれるようになった。長期的な視点でみると楽観的な理由もみられる。
人口が増加していくにつれて、国・地域ごとに森林は異なる変化、発展を示している。この章ではこうした発展について追求し、森林が人に与える影響及び人が森林に与える影響という二つの面を考慮していく。
森林の科学と実践はこの数世紀にわたって大きな発展を遂げた。森林が行った人類の啓発への最も大きな貢献の一つが、持続の概念である。この300年にわたって、木材生産の確保を前提とした森林保護からグローバルな範囲で持続可能な発展に対する更なる理解にまで、この概念が広がっている。
第3章 持続可能な未来に向ける森林・林業・林産品
ここ20年の環境と開発に関する国際連合会議をみると、世界経済の1年間での消費と生産が24兆ドルから70兆ドルまで増大している。この経済発展は、主に発展途上国によるものである。しかしながら、このようなかつてない発展は資源の持続性の犠牲のもとでなされ、その結果、不平等な利益分配が生じている。
天然資源の継続的な減少に基づく経済発展は、持続可能ではないという認識が益々高まってきている。このため、発展を促す新しい方法を考えることが必要とされ、農林業はこうした転換において益々重要な役割を担うであろう。大量に消費される生産物が光合成に基づくことに伴い、経済が環境保全へと進むことになるだろう。要するに、植物が食料として収穫される際、次のサイクルにおいてより多くの食料を生み出すために新しい穀物へと置き換わっていく。この原則は森林にも適用できる。持続可能な未来を追及するならば、エネルギーを含む生産システムは持続可能な過程、特に光合成に基づかなければならない。
多く人々が、森林はグリーン経済に役立つと理解しているが、その役割が持続可能な社会の唯一絶対の選択肢であると認識している人は多くはない。森林が存在しなければ、世界の生態系は崩壊する。しかし、木質エネルギーを含む再生可能エネルギーの広範囲な利用を促進すれば、世界経済が無限に持続できる。
森林は人類に再生可能エネルギーを含む資源を提供する。世界経済の持続には、持続可能な森林経営として広く一般に知られている土地利用の原則、政策及び慣例を全世界に広げなければならない。また、再造林すれば、大気中の純二酸化炭素量が減少するであろう。
この章では、重要であるがしばしば無視されがちな経済発展、特に、木製家具、木彫、手細工及び他の小規模または中規模の事業といった木材の利用に着目する。木質に関連する事業への投資の増大は、新たな雇用を生み出し、実際の耐久性のある財産をつくり、農村における貧困を緩和させる。広い範囲で見ても、このグリーン経済というアプローチ(低炭素、資源効率と社会的な包括)は、現在のグローバル経済の下で不利な箇所に新たな可能性を広げる。また、新興国の農山村の人々に非常に多くの機会をもたらす。
この章は持続可能な将来のために、4つの広い戦略とともに締めくくっている。
造林と生態系サービスへの投資
森林に関連する中小企業と男女共同参画の促進
木質エネルギーの利用、木製品の再利用とリサイクル
コミュニケーションの促進と発展の協調 |
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