2017年に国連で「国連森林戦略計画2017-2030」合意されました。
国連森林戦略計画2017-2030ー国連での最初の森林に関する戦略計画ー(2017/7/23、7/25修正)
30年までに、設定した、世界の森林減少を逆転(目標1)、持続可能な森林面積の顕著な拡大(目標3)、大幅に増加された資金の動員(目標4)などの目標を、法的拘束力のない仕組みでどのように達成するのか?
その達成手段の一つとして、各国の貢献を2019年末までに報告することになっており、提出された報告が国連のサイト上に公表されています。
National reports to UNFF15
日本の報告も12月9日に提出され、国連のサイト上の公開されています。
Progress towards the implementation of the United Nations strategic plan
for forests 2017–2030, the United Nations forest instrument and voluntary
national contributions、Japan
32ページにわたる大論文ですが、日本の森林林業政策が国際的な持続可能な森林管理にどのように貢献するか?国際的な持続可能な管理への動向が日本の森林林業政策にどのように貢献している(可能性がある)のか?大変興味があり読んでみました。
以下が要約版(藤原作成)です
左側は国連森林戦略計画2017-2030で規定されたGlobal Forest Goal and associated Target、右側がそれぞれの項目毎に今回日本政府が提出した進捗状況の中から、引用された日本政府等の施策の名称(と参照先のネット情報(原文にはない))です。
国連森林戦略計画と日本が実施した施策概要 |
国連森林戦略計画2017-2030 |
日本が2015年以降に
実施した施策 |
世界森林目標GFG |
ターゲット |
y/n |
施策名称 |
1 |
保護、再生、植林、再造林を含め、持続可能な森林経営を通じて、世界の森林減少を反転させるとともに、森林劣化を防止し、気候変動に対処する世界の取組に貢献するための努力を強化する。 |
1.1 全世界で森林面積を3%増加させる。 |
ー |
1.2 世界の森林の炭素蓄積を維持または増加させる。 |
Yes |
森林林業基本計画策定 |
森林経営管理法施行 |
パリ協定長期戦略策定 |
1.3 2020年までに、あらゆるタイプの森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再造林を大幅に増加させる。 |
Yes |
森林林業基本計画策定 |
森林経営管理法施行 |
パリ協定長期戦略策定 |
1.4 あらゆる森林の自然災害や気候変動の影響に対する強靱性や適応能力を世界全体で顕著に強化させる。 |
Yes |
森林林業基本計画策定 |
森林経営管理法施行 |
パリ協定長期戦略策定 |
2 |
森林に依存する人々の生計向上を含め、森林を基盤とする経済的、社会的、環境的な便益を強化する。 |
2.1 森林に依存する全ての人々の極度の貧困を撲滅する。 |
Yes |
国際林業協力事業推進 |
2.2 特に開発途上国において、森林関係の小規模企業による手頃なクレジット等の金融サービスへのアクセス並びに森林関係小規模企業のバリューチェーンや市場への統合を顕著に増加させる。 |
Yes |
国際林業協力事業推進 |
2.3 森林及び樹木による食料安全保障への貢献を顕著に増加させる。 |
ー |
2.4 森林関連産業、その他森林を基盤とする企業及び森林生態系サービスの社会的、経済的、環境的な開発への貢献を顕著に増加させる。 |
Yes |
国際林業協力事業推進 |
2.5 関連する条約等のマンデートや実施中の活動を考慮しつつ、あらゆるタイプの森林の生物多様性の保全や気候変動の緩和及び適応への貢献を増加させる。 |
Yes |
名古屋議定書ABS(遺伝資源 へのアクセスとその利用から生ずる益公正つ衡平な配分)指針 |
3 |
世界全体の保護された森林面積やその他の持続可能な森林経営がなされた森林の面積、持続的な経営がなされた森林から得られた林産物の比率を顕著に増加させる。 |
3.1 世界全体で、保護地域として指定された森林や、その他の効果的な地域指定型の保全措置により保全が図られた森林の面積を顕著に増加させる。 |
Yes |
国有林保護林制度の改正 |
ITTO天然熱帯林ガイドライン改訂 |
3.2 長期的な森林の管理経営のための計画がたてられた森林の面積を顕著に増加させる。 |
ー |
3.3 持続的な経営がなされた森林から得られた林産物の比率を顕著に増加させる。 |
Yes |
クリーンウッド法施行 |
4 |
持続可能な森林経営の実施のための、大幅に増加された、新規や追加的な資金をあらゆる財源から動員するとともに、科学技術分野の協力やパートナーシップを強化する。 |
4.1 持続可能な森林経営に資金を供給するため、あらゆる財源からあらゆるレベルで相当程度の資金を動員するとともに、開発途上国に対し、保全や再造林を含む持続的な経営を推進するための適正なインセンティブを提供する。 |
Yes |
緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律施行 |
地球環境ファシリティーの7回増資期間トップドナー |
森林環境税・森林環境譲与税の導入 |
ODAによる森林分野の協力 |
緑の募金による森林整備推進法による緑の募金 |
4.2 公的資金(国庫資金、二国間協力、多国間協力、3ヶ国協力)、民間及び慈善的な団体による融資等、あらゆる財源からの森林関連の資金供給をあらゆるレベルで大幅に増加させる。 |
Yes |
同上 |
4.3 森林分野における科学、技術、イノベーションに関する、南北、南南、北北及び3ヶ国間の協力や官民パートナーシップを顕著に向上・増加させる。 |
Yes |
同上 |
4.4 森林の資金供給戦略を策定及び実施するとともに、あらゆる財源からの資金にアクセスした国の数を顕著に増加させる。 |
No |
4.5 例えば多くの専門分野にわたる科学的な評価を通じ、森林に関する情報の収集、利用可能性、入手可能性を向上させる。 |
ー |
5 |
UNFI等を通じ、持続可能な森林経営を実施するためのガバナンスの枠組を促進するとともに、森林の2030アジェンダへの貢献を強化する。 |
5.1 森林を国の持続可能な開発計画及び/または貧困削減戦略に統合した国の数を大幅に増加させる。 |
Yes |
5.2国及び地方の森林セクターを顕著に強化する等、森林法の執行及びガバナンスが向上するとともに、違法伐採や関連の取引を世界中で大幅に減少させる。 |
Yes |
森林林業人材育成対策 |
クリーンウッド法施行 |
5.3国及び地方の森林関連の政策や計画が、各国の法令に基づき、省庁やセクター間で一貫的であり、連携が図られ、それぞれ補完的であるとともに、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を十分に踏まえ、関連のステークホルダー、地域社会及び先住民の参加が確保される。 |
Yes |
国交省:公共建築物木材利用促進法など |
文部科学省:学校施設への木材活用のための手引書 |
外務省:気候変動対策生物多様性保全 |
環境省:気候変動対策、生物多様性保全 |
経済産業省:木質バイオマスの利用推進 |
全省庁:SDGsガイドライン |
5.4 森林に関連する課題や森林セクターが土地利用計画や開発に関する意思決定プロセスに十分に統合させる。 |
Yes |
6 |
国連システム内やCPF加盟組織間、セクター間、関連のステークホルダー間等、あらゆるレベルにおいて、森林の課題に関し、協力、連携、一貫性及び相乗効果を強化する。 |
6.1 国連システム内の森林関連プログラムが一貫的かつ補完的であり、必要に応じて世界森林目標及びターゲットを統合する。 |
ー |
モントリオールプロセス国際シンポジウムの開催 |
6.2 CPF加盟組織間の森林関連プログラムが一貫的かつ補完的であり、それらが全体として森林及び森林セクターの2030アジェンダへの多面的な貢献を包含する。 |
ー |
同上 |
6.3 持続可能な森林経営を推進するとともに、森林減少や森林劣化を阻止するためのセクター間の連携や協力があらゆるレベルで大幅に増加させる。 |
ー |
同上 |
6.4 持続可能な森林経営の概念に関する理解がさらに共通のものとなり、関連する指標セットが定められる。 |
Yes |
森林認証システムの展開(指標のセット) |
森林林業白書(普及啓発) |
行政機関が行う政策の評価に関する法律(普及啓発) |
国有林モニター制度(普及啓発) |
6.5 UNSPFの実施や、会期間活動を含むUNFFの活動において、メジャーグループやその他のステークホルダーのインプットや関与が強化される。 |
Yes |
林政審議会 |
行政手続法 |
原文は英語和訳は林野庁仮訳 https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/attach/pdf/index-11.pdf |
参照リンクは原文にはない |
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クリーンウッド法、森林環境税・環境譲与税、森林経営管理法、など2015(平成27)年からの日本の森林林業施策が、国際コンセンサスであるGlobal
Forest Golesの中に位置づけられています。
表の左側の計画部分は上記の林野庁の仮訳をそのまま使っていますが、右側の今回提出された「貢献している施策」の部分は現時点では日本語訳が公開されてないので、私が推測して施策名を記述し、ネット上の参照情報も当方の推測です。
(日本の施策がサクセスストーリーとして参考にされる可能性のあるもの)
少し面倒下さい?この作業をしてみようという気になったのは、「地球から見た日本の森林の展望 日本から見える地球の森林の将来」という大言壮語の勉強部屋ページで、日本の施策が海外から見てこんなことができるんだ、というサクセスストーリーとして見てもらえるモノは何なんだろう、という問題意識が、ありました。
この勉強部屋の英語のサイトJapan Forest Invormentan Feviewでも、海外の方に日本の施策で海外の方に是非参照してほしいと思ったモノを、Gobernment Policyというページに掲載してきました(最近少しサボっていますが)。①なんといっても森林環境税・環境譲与税、②業界団体認定を含む違法伐採問題とクリーンウッド法、③公共建築物木材利用促進法、④体系的な森林林業基本計画といったところでしょうか?
②と③については2015年に南アフリカで開催された世界林業大会でサイドイベントを開催してPRしました。、第14回世界林業会議サイドイベントー持続可能な木材製品の需要の拡大のための緑の消費者との連携 Cooperation with green consumers
toward demand expansion of sustainable timber products(2015/9/26)
今回公開された日本の貢献策は、2015年以降というので時点が制約されていますが、上記のことがらが、殆どが上記の表の中に含まれています。
ただ、日本政府が提出した原文を読んでみて気になったのは、海外の方が興味をもって情報収集しようとなったときに、紹介されたこれらの日本の施策についての英語のネット上の参照情報が少ないこと。少し残念です。
(国連森林戦略計画の課題)
それから、上記の表を作成してみて、左側の国連戦略計画で気になるのは、「木材の利用促進」というコンセプトが戦略計画の中にしっかりと位置づけられていないことですね。
日本の場合2010年に公共建築物木材利用促進法が施行され(G7の国では初めて)、国交省のHPにも「官庁営繕における木材の利用の推進」というページが有り、なぜ今木材利用をすすめるか?といったことが丁寧に説明されています。その他文部科学省も含めて各省が、建築物の利用促進について位置づけるようになったことが、大変重要なサクセスステーリーですが、それがうまく収まる計画事項になっていません。
上記の表では、これらの事項は、5UNFI等を通じ、持続可能な森林経営を実施するためのガバナンスの枠組を促進するとともに、森林の2030アジェンダへの貢献を強化する。というところに整理されています。
が、戦略計画の2森林に依存する人々の生計向上を含め、森林を基盤とする経済的、社会的、環境的な便益を強化する。ー 2.4 森林関連産業、その他森林を基盤とする企業及び森林生態系サービスの社会的、経済的、環境的な開発への貢献を顕著に増加させる、あたりに、「循環可能な資源である木材利用の利用推進をはかる」といったコンセプトが確り位置づけられる必要があるのでないかと思いました。
今後の課題なんでしょう。
ーーーーー
今回報告された日本の施策が今後サクセスストーリーとしてどのように評価されるのか、また、膨大な各国のデータが特に、主として途上国向けに編纂されて行くのでしょうが、日本の森林林業行政にとっても注目しておく必要があるのでないでしょうか?
National reports to UNFF15
5月上旬に予定されていたUNFF15は、新型コロナ騒動で6月までに縮小して開催するようです。As the result of its extensive discussion, the Bureau made the following
decisions regarding UNFF15
今後ともフォローしていきます。
chikyu1-39<UNSPFreJ>
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