TPPで森林と木材はどうなる(2013/7/27)

7月15日から25日まで第八回TPP拡大交渉会議がマレーシアサバ州コタキナバルで開催され、日本は途中から初めて交渉会議に参加しました。

共同のプレスリリース(英文日本語訳

関税問題だけが話題になりますが、TPPは21の交渉会議が並行して行われます。

1)物品市場アクセス、2)原産地規則、3)貿易円滑化、4)衛生植物検疫、5)貿易の技術的障害、6)貿易救済(セーフガードなど)、7)政府調達、8)知的財産、9)競争政策、●以下サービス分野 10)越境サービス、11)一時入国、12)金融サービス、13)電気通信、以上サービス分野、14)電子商取引、15)投資、16)環境、17)労働、18)制度的事項、19)紛争解決、20)協力、22)分野横断的事項 

公式のニュースで一つ一つの交渉分野についての状況が逐一発表されないれないのですが、内閣府TPP政府対策本部のページに「TPP協定交渉について」という概説が掲載されています。

森林や林業に関連する分野は、もちろん関税や原料の輸出規制などに関連した、1)物品市場アクセスが重要ではあるのですが、直接木材の貿易に関連がある事項が議論される可能性があるのは、6)貿易救済,7)政府調達,16)環境分野などなど、です。

勉強部屋サイトでも、環太平洋パートナーシップ協定TPPとつきあう場合の留意点(2012/3/25) でふれましたが、林産物の国際取引のグローバルな仕組みを目指す場合、@ 違法伐採問題に関する共通認識と、途上国への支援を前提とした、共同した違法伐採材を排除する国境措置の制度化(将来に向けては、取引される木材の持続可能性を担保する仕組みの構築)、A 林産物の原材料の輸出を禁止するマレーシア半島部、インドネシア、カナダBC州の措置の改善の明確化、B カナダから米国に輸出される針葉樹製材の課税(米加針葉樹製材協定2006年)の根拠となっていた、立木価格の適正化、製材ダンピング問題の国際化・制度化 、の三つの課題を指摘しました。

@が環境分野、Aが物品市場アクセス分野、Bが貿易救済分野かと思います

このうち、「TPP協定交渉について」という概説の中で具体的な交渉の中身が記述されているのは環境分野です(昨年の2月に公表された内容)

 1.貿易・投資促進のために環境基準を緩和しないこと,環境規制を貿易障壁として利用しないこと,多国間協定の義務を遵守すること等,TPP交渉参加国間の既存のFTAで定められている規定について議論が続いている。
2.これに加え,野生動物の違法取引,漁業補助金,違法伐採,サメの保護等に関する米国の提案【注】等につき議論が行われているが,議論は収斂していない模様。漁業補助金については,過剰漁獲を招く漁業補助金を禁止する提案があるが,各国との間で対立があり,合意に至っていない。
【注】2011 年 12 月 5 日,米通商代表部(USTR)は「環境保全及びTPPに関するUSTRグリーン・ペーパー」を発表。(勉強部屋サイト:TPPの環境協定と違法取引・違法伐採問題(USTRの提案)))その中で,環境保全の枠組み(野生動物・森林・海洋生物資源の保護のための国内法に違反して捕獲または輸出された製品の取引の禁止等)を提案したことを明らかにしている。また,この枠組みを補完するため,@特別に懸念される野生生物,A海洋漁業(漁業補助金に関する規律,サメのヒレ切り活動を抑止する特定の義務等),B違法伐採と関連する貿易,の3つの分野について,特定の規定を提案したとしている。(ただし,提案された条文案については明らかにされていない。)
3.この他,生物多様性,気候変動や環境物品の関税撤廃,紛争解決手続章の手続きの適用等に関する議論も行われている模様。

これは昨年2月に公表された内容に基づいたもので、毎回の交渉会合で環境協定の書きぶりが議論されているという報道はされていますが、具体的な中身は公表されていません。今回の共同プレスリリースでも中盤にむけて困難な課題を持っている三つのグループの一つだとされています。

関税が全体的に下がっていくことに異論はありませんが、このような機会に資源管理に関する国際的なコンセンサスが広がる場となることを期待します。

日本の交渉会合参加にあわせて内閣官房のTPP政府対策本部が広く意見募集をするというので、ウッドマイルズ研究会の藤原という立場で、意見を提出しました。

また、消費のみちしるべという消費科学センターの機関誌からお誘いがあったので寄稿しました。林産物貿易・森林の持続可能な管理とTPP

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