日中韓FTA自由貿易協定と森林のガバナンス・違法伐採問題(2024/5/28)

ソウルで5月27日4年半ぶりに日中韓首脳会議が開催され、共同宣言が採択され、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉を加速などの報道がされています。

日中韓、FTA交渉再開で合意 朝鮮半島の安定に「責任」

このサイトでも、過去に二国間地域間で結ばれた貿易関連協定(経済連携協定など)について、違法j伐採問題などの森林ガバナンスをサポートする機能についてフォローしてきました

日EU経済連携協定の中の森林の取り扱い(2017/7/23)
環太平洋パートナーシップ協定TPPと森林の国際枠組み(2015/10/24、2016/1/8改訂)

今回の共同宣言に記載されている自由貿易協定について森林ガバナンスにプラスの影響を与えるのか、その可能性を見てみましょう。(どのマスコミでも報道していない・・このページでしか追いかけない情報?)

(自由貿易協定FTAを含む経済連携協定の中の森林ガバナンス問題)

外務省のサイトに、我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組というページがあります。

21の交渉済みの(TPPとかEUEPAなど含む)協定と、日中韓を含む3つの交渉中の協定についての情報が掲載されています

ほとんどがEPA経済連携協定で、日中韓のようなFTA自由貿易協定は少数派です。

その違いも含めたネット上の解説以下の通りです

幅広い経済関係の強化を目指して、貿易や投資の自由化・円滑化を進める協定です。日本は当初から、より幅広い分野を含むEPAを推進してきました。近年世界で締結されているFTAの中には、日本のEPA同様、関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまらない、様々な新しい分野を含むものも見受けられます。

FTA:特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定
EPA:貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野(藤原コメント:環境分野なども含む)での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定  

グローバルな枠組みでやっていたGATT・WTOといった仕組みが効率的に進まないので、二国間や地域間の枠組みが進んでいるということですね。

(自由貿易協定も含む経済連携協定の中での環境の位置づけ)

前出のTTP(環太平洋パートナーシップ協定)の中で、違法伐採問題を含む環境問題は大きな要素でした。このサイトの解説記事から見てみますね。環太平洋パートナーシップ協定TPPと森林の国際枠組み(2015/10/24、2016/1/8改訂)

 20.環境
TPP締約国は、世界の人間、野生生物、植物及び海産の種の相当な割合が生息する地として、環境に関する課題(汚染、違法な野生生物の取引、違法伐採、違法な漁業、海洋環境の保護等)に対処するために協働すること等により、環境を保護し、及び保全する強固な約束を共有する。


さらに、締約国は、持続可能な森林経営を促進すること

さらに、2022年に締結された日EU経済連携協定では日EU経済連携協定の中の森林の取り扱い(2017/7/23)

 伐採
日本EU経済連携協定の貿易と持続可能な開発の条項は違法伐採問題を含む森林と木材貿易に関する規定を含んでいる。
日本EU条約の条項は、EUとカナダと貿易条約の条項に類似し、それと同等の厳しい条項となっている。この規定は、EU日本の第三国との貿易に関する事項も対象としている。
EU木材規則は日本からの木材輸出にも適用される。EUの木材輸入者に対して、日本の輸出業者とともにサプライチェーンを通して違法伐採材が含まれないように適正な注意義務DDを要求している。

このように、GATTWTOから続く貿易問題の環境的側面に関する議論はこのサイトの関心事項でもありました。林産物貿易のページのはじめに (2000/10)

(中国を含む連携協定の先行事例

さて、外務省の上記のサイトの中に、中国を含む先行協定があります

RCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)

このページでも紹介してきました東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の環境問題 (2018/7/16)

TPPと章立てを比べてみましたが途上国を含むRCEPではTPPにはいっていた(米国が主導して組み入れた)社会的がガバナンス(違法伐採問題など)問題が抜けています

(日中韓FTA協定の中で、森林ガバナンづ問題は)

さて、RCEPから東南アジアの熱帯諸国が抜けた日中韓FTA協定は?

今回の声明にあるように「再開」なんで、外務省のサイト上の再開前の交渉経緯をあたってみました。

この交渉が始まったのは2010年ごろ。2009年10月の日中韓サミットにて,産官学共同研究の立ち上げを目指すことで意見が集約。翌2010年5月に韓国・ソウルにおいて第1回共同研究会合開催。

そのころの関係者の討議をふまえた、交渉のバックグラウンドとなる報告書が「日中韓FTA産官学共同研究報告書2011年12月16日 」という文書(ずいぶ昔ですが)をみつけて、開いてみました。以下のような記述が

1.4.3 林業
林業では,日中韓FTAによって,消費者がにとってはより安価でより幅広い林産品へのアクセス,輸出者にとっては相手国市場へのアクセス改善など潜在的な利益がもたらされるだろう。 その一方で,三か国が地理的に近接していること及び類似の植物相を有していることから,林産物の貿易量の増加に伴い,森林の様々な有益な機能を維持する上での基礎となる持続可能な森林経営に悪影響が及ぶ危険性が高まる可能性があるとの懸念が示された。 中国,日本及び韓国の森林輸入量の合計が世界の約4分の1を占めていることから,日本は,あり得べき日中韓FTAがこの割合を増加させ得る点に注目し,違法伐採対策のために,合法的に伐採された林産物の貿易促進に配慮がなされるべき旨主張した。中国は, そのような違法伐採対策への努力が,貿易に対する不当な障壁になるべきではないと指摘した。  

2012年12年前の合意文書ですが、出発点のころの合意が、再開された交渉のなかで、どのように生かされてくるのか、注目してまいりましょう。

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boueki7-14<JCKFTA>

 

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