ニュースレター No.181 2014年21日発行 (発行部数:1190部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原
目次
1 フロントページ:紛争ダイヤモンドと違法伐採木材2014/8/21)
2 持続可能な開発目標と森林の将来(2)、OWGの議論の結果、素案の中の森林(
2014/8/21)
3. 中国における合法木材と違法伐採への取組み(2014/9/21)
4. 私たちの生活と森林(母校の小学校特別授業3回目)(2014/8/21)

フロントページ:紛争ダイヤモンドと違法伐採木材(2014/9/21)
 
 緑の中の
法政大学多摩キャンパス

9月13-14日環境経済・政策学会の大会(seeps2014)が、法政大学の多摩キャンパスであり、10年ぶりで学会での報告をしました。

題して「持続可能な森林経営にとっての合法性証明木材の可能性ーグローバル環境レジームの中での日本の林野庁ガイドライン意味」(発表資料はこちらに)

8年間全木連でやってきた、違法伐採問題の日本型アプローチについて、(その作者の意図とは別に)、どんな意味のある取り組みなのか、長いこと感じていたことを、少し皆さんとの間で議論をしてみよう。

学術団体の大会報告の趣旨とあっているのかどうか若干疑問もありましたが、あえて挑戦してみました。

結果はファールフライだったかもしれませんが、打たなければならない球筋も自分なりに明らかになり、次の打席の準備ができた、と思います。。

とりあえず、発表用のデータをこちらにおいておきます

趣旨は以下の通りです

「持続可能な森林経営にとっての合法性証明木材の可能性
ーグローバル環境レジームの中での日本の林野庁ガイドライン意味
藤原敬 全木連・ウッドマイルズフォーラム

国際森林条約など、各国が自国の森林を管理する場合、自国のためだけでなく地球的な視点を持って管理する責任がある、という視点を共有し、各国がその執行を確保する法的拘束力のある仕組み(「国際森林管理レジーム」という)は必要であるが、その具体的議論はほとんど進んでいない

他方、先進国主導で違法伐採問題への取り組みが進んでおり、日本、欧州、米国などでそれぞれ法令に基づく施策が施行、評価されており、今後の国際森林管理レジームのツールとして重要。日本の林野庁ガイドラインを、環境森林管理マネジメントのツールという視点で評価する 。

サプライチェーン全体をビジネス管理の対象とするサプライチェーンマネジメントSCMの手法を環境管理に応用する環境SCMの手法は、違法伐採問題にとって重要な視点。FSCや日、欧、米の違法伐採対策はこの手法の展開例。

紛争ダイヤモンド紛争鉱物など自然資源の採取地点の社会問題をその製品のサプライチェーン管理を通じて対応する先行事例はあるが、木材のサプライチェーンは、他の自然資源製品のサプライチェーンに比べて、ローカルで極めてきめ細かいネットワークという特徴。

このため木材のサプライチェーン管理の特質は、①企業の社会的責任CSRを基にマネジメントの主体として有力なグローバル企業の存在が薄く、②SCMで決定的な役割を持つ国境における貿易管理がカバーしきれない側面があり、また、③市場で代替資材との競争にさらされ管理費用の負担力が弱い、というという点に注意が必要。

これらの点は、違法伐採問題が、同じ原料採取地点の社会問題を解決するスキームでも、紛争ダイヤモンドと決定的な違いを生じる理由となっているところ。

上記を「踏まえると、企業の社会的責任CSRを中小企業の業界団体のCSRに置き換えることを提起した林野庁ガイドライン方式は、違法伐採問題のような森林の管理に関して普遍的な意義があり、課題も多いが、グローバルな展開の可能性。 

合法性証明された木材が全体の供給量の中での占める位置など、具体的なデータを持っての説明不足など、いろいろな指摘をうけました。また、林野庁ガイドラインの課題は山ほど指摘することができます。

が、場所を広げて、日本型アプローチの冷静な評価の作業をしていきたいと思います。

gakkai(seeps2014f)


持続可能な開発目標と森林の将来(2)、OWGの議論の結果、素案の中の森林(2014/9/23)

リオ+20を契機として、作成することとなった、持続可能な開発目標に関して、検討をすすめていた公開作業グループ(OWG)が13回にわたる会合の結果を、まとめ、持続可能な開発目標に係る公開作業グループOWGの合意文書Outcome Document - Open Working Group on Sustainable Development Goalsを公表しました。

持続可能な開発目標公式ページに掲載

17の目標のうち、森林に関する指標が含まれているのは、目標6.すべての人に対する、持続可能な水源と水と衛生の確保、目標15.陸圏生態系の保護、回復および持続可能な活用の促進、森林の持続的な管理、砂漠化への対処、土壌侵食の防止および転換、生物多様性の損失の防止、の二か所

関連部分を翻訳してみました

持続可能な開発目標に係る公開作業グループOWGの合意文書
Outcome Document - Open Working Group on Sustainable Development Goals
提示された持続可能な開発目標の森林に関連ある部分仮訳

目標1.すべての場所における、あらゆる形態の貧困の解消

目標2.飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進

目標3.あらゆる年齢のすべての人に対する健康な生活の確保、福祉(well-being)の促進

目標4.すべての人に対する包括的、公正かつ良質な教育の確保、生涯学習の機会促進

目標5.ジェンダー平等の達成 すべての女性および少女のエンパワーメント

目標6.すべての人に対する、持続可能な水源と水と衛生の確保

6.6 西暦2020年までに山岳、森林、湿地、河川、帯水層及び湖沼など水に関連する生態系の保全保護を図る。

目標7.すべての人に対する、手頃で、信頼ができ、持続可能で、近代的なエネルギーへのアクセスの確保

目標8.継続的、包括的かつ持続可能な経済成長、すべての人に対する完全かつ生産的な雇用の促進

目標9.レジリエントな(回復力のある)インフラの構築、包括的かつ持続可能な産業化、およびイノベーションの促進

目標10.国内および国家間の不平等の削減

目標11.包括的、安全、レジリエント、かつ持続可能な都市および居住区の実現

目標12.持続可能な消費および生産形態の確保

目標13.気候変動およびその影響と闘うための緊急の行動
(付記:気候変動に関する国際連合枠組条約が、気候変動に関する政府間協議の優先的な場である)

目標14.持続可能な開発のための海洋、海浜および海洋資源の保存および持続的な活用

目標15.陸圏生態系の保護、回復および持続可能な活用の促進、森林の持続的な管理、砂漠化への対処、土壌侵食の防止および転換、生物多様性の損失の防止

15.1 西暦2020年までに、国際協定において合意された義務に基づき、特に森林、湿地、山岳及び乾燥地において、陸域および陸域淡水における生態系とそのサービスの保全、保持及び持続可能な利用を確保する。

15.2西暦2020年までに、全てのタイプの森林の持続可能な管理を実施を促進し、森林減少を止め、劣化した森林を保全し、造林再造林を地球規模でX%拡大する。

15.4西暦2020年までに、持続可能な開発に不可欠な便益を供給する能力を確保するため、生物多様性を含む、山岳地の生態系の保全を確実にする。

15.5自然の生息・生育地の劣化を抑え、生物多様性を減少を阻止する緊急で重要な活動を実施し、西暦2020年までにこれらを保護し、絶滅危惧種の絶滅を防ぐ。

15.6遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を確保し、遺伝資源への適切なアクセスを促進する

15.7西暦2000年までに、動植物の保護種の密漁及び輸送を終了する緊急の行動を実施し、違法な野生生物製品の需要と供給の両方に対処

15.9西暦2020年までに、国及び地方の計画作成、開発プロセス、貧困削減戦略及びその評価に、生態系と生物多様性の価値を統合

15.a生物多様性と生態系の保全と持続可能な利用のため、すべての財源からの投入を動員し、増加させる

15.b保全と森林再生を含む、持続可能な森林経営を推進するために、持続可能な森林経営の資金調達について、すべての財源からすべてのレベルで、大幅に資源を動員し、また、途上国への適切なインセンティブを提供する

15.c地域住民が、持続可能な生計の機会を追求する能力を向上させるなど、保護種の密猟や売買を防止するための取り組みの国際的支援を強化する

目標16.持続可能な開発のための平和でインクルーシブな社会の促進 、すべての人に対する公正へのアクセスの提供、あらゆるレベルで効果的かつ責任を伴う、包括的な公的機関の設立

目標17.持続可能な開発のための実施手段の強化および、グローバルパートナーシップの再構築

各目標の訳は一般財団法人CSOネットワーク仮訳を参照した
http://www.csonj.org/mdgsnews/sustainable-development-goals-draft 























森林は目標6水源の管理、15 陸域生態系の管理の二つの目標の中に森林関係の指標が入っていますが、FAO林業委員会では森林は10の目標に関係あると指摘されているように、今回の目標、指標の案は不十分と言わざるを得ません。

SDGsの議論の中で、森林問題は、基本的には陸域生態系の保全と利用という枠内で取り扱われてきたことが反映されているようですが、再生可能エネルギーとしての木質バイオマスエネルギーや再生可能な建築資材としての違法伐採問題フリー持続可能な木材、など森林の生み出す財が、需要サイドの枠組みあるいは供給過程の経済枠組みの目標体系の中で、位置づけられてこそ、森林のもっている可能性が将来の持続可能な社会の中で正確に位置づけられるのでないでしょうか。

関連した目標は
標2 飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進
目標7.すべての人に対する、手頃で、信頼ができ、持続可能で、近代的なエネルギーへのアクセスの確保
目標11.包括的、安全、レジリエント、かつ持続可能な都市および居住区の実現
目標12.持続可能な消費および生産形態の確保
目標13.気候変動およびその影響と闘うための緊急の行動


これらの目標の中に、森林や持続可能な木質バイオマス、木材の利用に関する指標が重要な役割を果たすべきと考えます。

関連するウェブページ
Target the forests! Forests in Sustainable Development Goals – a view from Europe(UNECE国連欧州経済委員会)
COFO/2014/5.1 Forests and the Sustainable Development Goals(FAO林業委員会)

本サイトの関連ページ
持続可能な開発目標と森林の将来、FAO森林委員会での議論(2014/7/21)
持続可能な開発に関する公開作業グループ会合ー森林の行方(2014/5/31)

chikyu1-27(SDGsOWG13)

中国における合法木材と違法伐採への取組み(2014/9/21)

 第五回日中木材・木材製品貿易検討会の会場となった、緩芬河市郊外天長山賓館

8月24日(日)から8月28日(木)まで、違法伐採問題に関連して中国の業界の関係者と意見交換をするために、中国の黒竜江省と北京にいってきました。

主たる目的は、黒竜江省緩芬河市で開催された第五回日中木材・木材製品貿易検討会への出席。

 
 緩芬河辺境経済合作区産業発展計画

会場となった緩芬河市はロシア国境のロシア材の流通拠点で、新たな加工施設群が建設の最中。

ここで開催された中国木材保護工業協会(喩廼秋会長)主催の「第二回中国木造グリーン産業会議―木材建設業界の地域戦略開発サミットフォーラム」との同時開催で、違法伐採問題に関連するセミナーが開催されました。

中ロ国境の違法伐採材の動向は、国産NGOも関心を持って調査活動が続けられ、当サイトでも紹介してきたところです(最近の違法伐採問題に関する話題(2014/6/27))

ここに、新たな木材加工拠点を作り国際的な市場にに打って出ようという人たちに合うたびに、違法伐採問題について問いかけましたが、「いくらでも証明書はとれる。」「当社は原料はFSCの証明木材」との返答が返ってきました。

裏付けが得られる訳ではなくまた、これらの調査をするための訪中ではないのですが、当事者たちはこの問題が自分たちのビジネスのリスクとなっているという認識はもっていることは分かりました。

また、日本に輸入される木材に中に、彼らが発行する証明書を根拠として合法性証明がされれているものもあるようだ、ということも分かりました。

中国から輸入される主要な木材製品、北から天然林広葉樹の製材品、華中の人工林ポプラ材を基礎とした合板、集成材、華南の人工林ユーカリ材を基礎とした合板、集成材

中国政府の環境問題への取組は力が入っている(環境省:中国における環境汚染の現状と対策)ので、世界中の木材の流通加工拠点となっている中国が、違法伐採問題について前向きになってくる可能性はあると思います。

そのためにも、日中間のこの分野の連携関係は重要だと再認識しました。

今回の経緯も含めて、9月9日に開催された合法木材供給事業者認定団体研修会で報告しておきました。

中国側の対応が変わってくる可能性にふれ、、中国からの輸入材を取り扱う会員には、①合法性の証明を中国側に要求すること、②現在証明書が提示されいる場合ガイドラインに基づく確認をすること、の2点が重要であることを指摘しました。

発表資料中国における 合法木材と違法伐採対策の現状を参照下さい。

boueki4-52(chinagoho-wood)

私たちの生活と森林(母校の小学校特別授業3回目)(2014/9/21)
 
校長先生に卒業生です!と丁寧なご紹介をいただきました。皆さんのおじいさん、おばあさんと同じぐらいの年です

母校である新宿区立牛込仲之小学校の6年生が伊那市にある新宿の森などに移動教室に行ってくるのを前に、私たちの生活と森林というタイトルで「特別授業」をさせてもらった話は一昨年の勉強部屋で紹介しましたが、今年は、9月10日に三回目の授業をしてきました。

1 水道の蛇口からいつでも水が出る理由
2 人と地球に優しい森林が育てた宝物ー木材
3 伊那市ますみが丘新宿の森について

というプログラムは昨年と一緒ですが、昨年まで。1時間だった時間が2時間になって、時間が少し自由になり、2部は、政府公報番組のウェブ上で配信されている徳光&木佐の知りたいニッポン!~木づかい『森を育てるエコ活動』20分のビデオを見てもらうことができました。

(昨年の反省)

昨年の反省は、6年生に担任に感想を聞いたら、「私はわかりました!」といわれたこと。6年生といっても小学生なのだから、集中力は15分、時々子供にいろいろ考えさせることが必要、ということでした。

問い ブルキナファソでは水道から水が出ないが、なぜ日本では蛇口から水がでるの?
答え  水道が作られているからです
問い そうだね。
でも、ブルキナファソでは、水道管を整備しようとしても、安定的な水源がないので、水道管が引きません。掘った井戸から水道は引けません。日本には荒川のような安定的な水源があるけど、BFにはないね。なぜかな。
答え 日本の方が雨量が多いから
問い そうですね。安定水源の基は、降水量が多いこと、日本の降水量1700mm/年は世界平均の倍、BFの二倍半ほど。
でも、今日のように、晴れていて雨が降らなくても荒川に水が流れているのは、どうしてかな?
森林があることなんだ。その理由を勉強しよう
と、いうことで、2時間の授業をしてきました。

事業内容のプレゼン資料は、こちらにおいておきます

junnkan4-2(nakano201409)


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp