総選挙のマニフェストと森林林業(2012/12/25)

12月16日に行われた総選挙は自民党の地滑り的大勝、民主党の歴史的大敗北という結果となりました。

もっとも結果は「民主党の失敗への懲罰投票」(日経社説12/17)であり、比例区の票を前回の総選挙と比べると、民主党が減らした約2000万票が第三極に回り、投票率が下がったこともあって自民党も得票数を減らしています。「決して自民が「勝者」ではない」(同上社説)といわれるゆえんです。

民主敗北の原因の一つは「2009年の前回衆院選のマニフェスト(政権公約)を達成できなかった」というものです。「総予算を組み替えて9.1兆円(埋蔵金、租税特別措置の見直しも入れ平成25年度までに16.8兆円)の財源確保」(政権政策の実行手順)といったポイントとなる施策が、事業仕分けのような大がかりなパフォーマンスの中で、数千億円しか捻出できなかったのは典型的な例です。

(森林政策に関するマニフェスト)

それでは民主党の森林政策がどうだったかをみてみましょう。

このサイトでも2009年の選挙戦でのマニフェストの森林政策部分の紹介をしています。

民主党の森林・林業に関連する政策(2009/9/20)
2009年総選挙各政党マニフェスト森林政策部分(2009/8/15)

また、今回の選挙戦の各党の森林政策を以下に掲載しました。(滋賀県立大学高橋さんの情報(facebook日本の森林)にたよっています)
総選挙2012各党の選挙文書より森林・林業関連事項の抜粋

3年前と今回の二つの文書を読むと民主党の政策の前回選挙の充実ぶりにくらべて、今回のものが貧弱なのがわかります。

2009年のマニフェストでは
 「森林管理・環境保全直接支払制度」の導入による森林吸収源対策等の確実な実行
路網の整備と林業機械の導入による林業経営の安定化
木材産業の活性化と木質バイオマス利活用の推進
国有林野事業の改革
木造住宅と国産材の振興で地域に息づく家づくり

などとなっていて、「森林林業再生プラン」の中で全体として実施に移されているものです。公共建築物等の木材利用促進法(10年5月)、森林法改正(11年5月)、再生可能エネルギー電力固定価格買取法(11年8月)、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する等の法律(12年6月)、マニフェストにそった重要な法律がこの3年間で全会一致で成立しました。

政権に座る自民党の、今回の選挙における森林政策は以下の通りです

 重点政策 2012 自民党政策 BANK Action 農林水産業

森林吸収源対策のための安定財源確保、画一的な森林経営計画の抜本改正、多面的機能を評価した森林・山村維持の直接支払い制度の創設、国産木材の利用促進と木の文化の普及、木質バイオマスの利用促進、木材価格安定対策の強化、間伐・路網整備の充実強化、災害に強い森づくり、違法伐採対策の強力な取 り組み、山村振興対策の抜本的強化等を積極的に推進します。

<Jファイル2012>
275 森林整備体制の抜本改正
 切捨間伐を一部しか認めない現行の森林経営計画による全国画一的な森林管理方式を抜本的に見直し、造林・間伐や路網整備における森林所有者の負担を軽減します。緑の雇用や森林組合の充実強化、外国資本等などによる森林買収を防止するための森林所有者の明確化を図ります。特に、木材需要拡大のためにも森林整備加速化・林業再生基金を拡充します。また、森林経営計画の申請事務手続きの簡素化を図るとともに、路網整備は地域の実態に応じて対応するよう推し進めます。
276 山村振興対策の抜本的強化
 山村地帯は、人口減少と高齢化の進展に歯止めがかからず、耕作放棄地の増大、森林の荒廃、鳥獣被害の増加、集落としての機能低下に加えて、住む人々の医療、買い物などの生活環境も危機に瀕しています。そうした状況を十分踏まえ、山村振興法を抜本的に改正し、「山村地域をとことん守る」方策を強力に進めます。
 また、水源のかん養等森林の多面的機能の維持増進の観点から、森林経営意欲を失った森林所有者の森林を公的に管理するための施策を進めます。
277 森林吸収源対策のための安定財源確保
 国土保全や地球温暖化防止に大きく貢献する森林・林業を国家戦略として位置づけ、CO2 吸収源対策として造林・間伐などの森林整備を推進するとともに、これに必要な国及び地方の財源を確保します。また、森林環境税の創設、地球温暖化対策税の森林吸収源対策への活用のため、全力で取り組みます。
278 森林・山村維持の直接支払い制度の創設
 「森は国民全体で守る」ことを基本に、山村地域の活性化を図り、厳しい環境下におかれている森林の経営と維持を将来にわたり持続可能なものとするために、森林・林業の多面的機能を評価した山村・環境・水資源保全のための直接支払い制度を創設します。
279 木材価格安定対策の強化
 木材価格を安定させるための新たな制度や木材需要拡大のための新たな制度を総合的に検討します。また、条件不利地域での切捨間伐や路網整備の先行実施など雇用にも配慮した供給調整を行います。
280 国産木材の利用促進と木の文化の普及
 国産木材の自給率を大幅に向上させるため、『木材利用促進法』により公共建築物や公共土木分野において国産材の利用を積極的に促進するとともに、木造建築基準の見直しを図ります。また、震災復興住宅や災害公営住宅への国産材の積極的な利用を進めます。さらに現行の省エネ住宅エコポイントに加え、国産材利用エコポイントを創設します。
 わが国が誇る木の文化価値の幅広い発信や木育の推進、瓦やイ草などの国産材料を使った安らぎのある和風住宅の普及推進を図ります。
281 木質バイオマスの利用促進
 山村地域の雇用拡大、エネルギーの安定供給をはじめ、山村地域の活性化を図るために、木質バイオマス利活用施設を整備し、木質バイオマスの利用を推進します。


今までの法案が自民党と民主党の間で協議にもとづいて作られてきたので、大きな転換はないと考えられますが、木材価格安定化対策など注目すべき点です。

自民党の農林水産業関係の産業政策は昔からの族議員の流れと蓄積で、深みがあって興味深いです。

民主党は、あえてその道(族議員)を選ばなかったということかもしれませんが、十分なアンチテーゼを提案し切れたかったように思います。

参議院選挙に向けた政局がらみの動きが注目されるところですが、今後も含めて政権の交代や、選挙のたびに、政策論が進化するような形になるよう願います。

kokunai6-29(sosenkyo2012)

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