森林認証制度の広がりとEUDRーSGEC/PEFCジャパン評議委員会から(2025/4/3)

2月27日森林認証を運営しているSGEC/PEFCジャパン理事会評議委員会が開催されたので、評議委員である私は対面で出席しました。

6月26日開催予定総会のための議案内容確定、という内部の事務手続きの一環なのですが、その中に、ーEUDR(欧州森林減少規制)の施行を受け、PEFCの規格がかわったので、それに応じてSGECの規格を改正しますーという重要な議案(議案2)、があったので・・・

SGECとPEFCの関係とか、EUDRというEU市場が提起する木材流通ハードルといった重要の内容を知る機会だったので、ご紹介します。

会場で説明された、「SGEC規格改正について」といわかり易いプレゼン資料をいただいたので、こちらに掲載しておきます(以下プレゼン資料)。以下、そのデータに基づいて説明します。

(SGECとPEFCの関係)

御案内のように、SGECは、森林の持続可能な管理を推進するために、2011年からPEFCとの相互承認に向けた活動を開始しました。この取り組みは、2014年7月のPEFC加盟を経て、2015年3月に相互承認の申請を行い、2016年6月3日にPEFC総会での承認を受け、国際認証制度としての新たなスタートを切りました。

その結果、右の図(プレゼン資料P2)のように、日本のSGEC森林認証林(左上の森林)から生産され、分別管理されて供給された丸太(左上から斜め下への→)は世界中のPEFC認定企業(中下の企業)にPEFC認証材として出荷され、加工されて分別管理されて出荷されると(下の右の→)、PEFC製品として市場に提供されます(右下の製品群)。 

このようなシステムができるためには、SGECの森林認証基準とCOC認証基準が、PEFCのそれぞれの認証基準がリンクしている必要がありますね。(それが前述の2011年から2016年までかけたプロセスでした)、。

そんなシステムができているところで、EUの木材調達基準が、EUTRからEUDRに転換、という情勢を踏まえて、それに対応するように、PEFCの基準が変更された(その手続きにSGECは関わっていたのかどうか?)ので、それに合わせてSGECの基準も変更、というのが今回のトピックスなんですが、内容をプレゼン資料にそって、さらに説明します。

(EUDRとは)

EUDR=EU Deforestation Regulation欧州森林破壊防止規則についてはEUの森林問題に関する最新の情報として、勉強でもフォローしてきました。

EUDRとは欧州の木材DD(デューデリジェンス): 違法伐採から拡大 - CW法改正の参考ー2023年度勉強部屋Zoomセミナー第1回報告(2023/7/15)

あらためて、プレゼン資料にわかり易い資料があったので、紹介します。

P4 EUDR の目的

IPCCによると、?
人為的な温室効果ガスの23%は農業、林業、その他土地利用によるとしている
?トータルの排出量の約11%が森林の減少による

EUDRの目的
deforestation-freeの製品の消費の促進、EUの世界の森林に対するインパクトを減らすことにより、森林減少による温室効果ガスの発生を抑制するとともに生物多様性の保全に貢献
Deforestation-free
森林減少=森林の農業的利用への転換、に基づくものでないこと
森林劣化=木材の場合、森林の構造的変化、をもたらすものでないこと 
P5  EUDRの主な内容

EU市場に出荷及びEUからの輸出される産品及び製品に関係するオペレーター(EU市場に持ち込む者)及びトレーダー(EU市場内販売者)に対するDDSの義務化

対象産品
〇木材、大豆、牛肉、パームオイル、ココア、コーヒー、天然ゴムの7品目

〇及びこれら由来の加工品(木材関連では、例えば家具)


認められる条件は
・deforestation-freeである(2020年12月31日以降)
・生産国の関連法令に違反していない
・DDSが実施されている
P9 DDSの実施とそのステートメント

EU市場に出荷する製品については、
〇その製品が森林減少あるいは森林劣化(プランテーションへの転換等)の土地由来のものではないことの確認を含むDDSステートメント
〇その製品が人権及び住民の権利を含み関連法制に違反していないことの確認が求められる。

DDSの内容:①原産国、樹種等に関する情報→②リスク評価→③リスクの低減措置

①については生産地(木材であれば、伐採箇所の地理的な位置(緯度、経度など)に関する情報が必要(EUが低リスクと認めた国からのものについては、①だけの簡略DDSが認められる)
国別の「高リスク」、「低リスク」、「標準リスク」の分類(森林減少・劣化の速度、農地の拡大率、関連製品の生産動向等を考慮)は2024年12月30日までに公表
オペレーター等によるDDSステートメント記録する中央情報システムは2024年12月30日までに構築される予定

(EUTRとEUDRの関係)

いままで地球環境の視点からEUの木材貿易を規定していたEUTRと今回のEUDRを比べると(左の図)、上記P5  EUDRの主な内容にありますように

①対象品目が木材製品から→大豆、牛肉、パームオイル、ココア、コーヒー、天然ゴムに拡大していること、

②その製品が、森林破壊と関係ないかしっかり管理するためのDDS(デューデリジェンスシステムが義務付けられること。(DDSには、上記をありますように、生産地(伐採箇所の地理的な位置(緯度、経度など))の提供、というものが含まれます。)

(なお、当日に説明のあった、施行時期は2025年12月30日で中小企業の施行時期は半年遅れとなっていたのは、中小企業も同じ時期になったと、後から説明がありましt)

(SGEC規格何が変わる?)

ということで、上記に関連して、上記DDSを実施するための、SGEC規準文書4-1「SGEC EUDR デュー・ディリジェンス システム(SGEC EUDR DDS)実施のための要求事項」(議案(議案2)別紙1))という文書を可決しました。

右の図が概要ですが

(1)(EUに輸出する製品に)リスク評価の結果、リスクがないか極小でありEUDRで輸入可能製品と主張(PEFCEUDR主張)できる

(2)そのために年に一回はDDSを実施

(3)DDSの際、当該製品がPEFCEUDRの主張関連製品であれば、その種類によって容易になる

といった、ことが記述されています(今までの説明通り)

(作成途上皆が、これおかしいのでないか?とした質問事項)

作成途上で、パブコメをとった結果が公表されていますが、その中でたくさんの質問があった事項について紹介します

項目   意見 回答   
 改定案の位置づけ  ・改正案については、現行規格とは別のEUDR対応用の規格とすべき【10件】  ・本規格については、任意の規格ではなく、PEFC規格のEUDR適用等のための改正を踏まえた規格本体の改正です。したがって、現行規定と2本立て適用されることはない。PEFCの相互承認を維持するうえで必須の改正という点ご理解を。 PEFC総会で本STの採択の際にEUDRに輸出を行っていない国にも適用するのは問題ではないかとの意見もでたが、PEFCのSTとして国際的に求められている森林減少・劣化を食い止める上で必要なことは取り入れる必要があり、単にEUDR対応としてだけの改正ではないとの見解が示されている。 なお、本改正によりSGEC FM 規格はEUDR適合FMとなり、認証保有者から、100% SGEC認証の主張とともに供給された原材料はEUDR DDSにおいて、ディフォレステーションのリスク及び関連法令に準拠していないリスクが極小となるメリットもある。  
 同上  ・現行の規定を改定せず、PEFCの相互承認が取り消されても国内規格としての規格は維持されるので、それでよいのではないか  ・森林管理規格の承認が取り消されるということはSGEC規格全体が国際的に認められなくなり、日本の国産木材は国際的にはPEFC管理材のみとなるなど相互承認以来のこれまでの国際的に認知された認証制度の定着と認証木材の供給のための努力、成果を全く無にすることとなる。相互承認を取りやめるかどうかは今回の規格改正を超えた議論が必要。  
  地理的位置情報  ・EU向けの流通に限定すべきで国内の流通には必要ない。 弾力的な運用を【9件】  地理的位置情報の保持については、PEFC規格のEUDR適応のための改正を踏まえたもので、PEFCの相互承認を維持するうえで必要であり、適用外とはできない点ご理解を。 なお、SGEC FM認証取得者が保持する規定で、SGEC COC認証取得者から求められた場合に提供するもので、実態上求める者はEU諸国向け輸出を行う者に限定される。 情報としては、座標データが必要で、また多角形のデータが必要なのは4ha以上の場合。  

以上です

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森林減少ゼロに向けた先進国の消費者が取るべき取組に関する重要な内容を示すEUDR!
大切な事案ですが

農産物を主たる対象としたEUDRなので、木材の出所というコンセプトが、林業関係者にはこんなことできるか?という内容に、なっている雰囲気です。

うまく運用する智恵を蓄積する必要があるようですネ

関連情報

トランプ大統領はなんていうかな?米国製紙業界、トランプ大統領にEU森林破壊防止規制の緩和を求める

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オリジナル情報はこちらのようです

Regulation on Deforestation-free Products(EU環境部局のページ)

Sinrin3-17 <pefceudr>.

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