持続可能な森林経営の実現のための政策手段に関する勉強部屋
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ニュースレター 033
2002年5月11日
565部発行
このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供していただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えている方に配信しています。表記HPも併せてご覧下さい。御意見をいただければ幸いです。 藤原
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フロントページ:「生物多様性損失指数」と生物多様性条約ー新たな森林の生物多様性行動計画に寄せて
県産材認証とFSC認証の間ー県産材・地域材認証にグローバルスタンダードの視点を
国際森林条約研究資料その1
全国木材組合連合会の違法伐採問題サイト
森林・林業白書の引用文献
フロントページ:「生物多様性損失指数」と生物多様性条約
生物多様性条約の新たな森林に関する行動計画に寄せて
(生物多様性条約の森林に関する決議)
4月にアムステルダムで開催された生物多様性条約第六回締約国会合で、森林の生物多様性のついての決議が採択され、「森林の生物多様性に関する新たな行動計画」が合意されました(資料参照)。違法伐採問題など我が国にとっても重要な、木材輸出国の森林の持続可能な森林経営に取り組む枠組みが提供されたほか、地球共有財産としての森林の価値の重要性を再認識する重要な文書です。ただし、具体的取り組みの多くが今後の検討課題として残されることとなりました。
(生物多様性条約の弱点)
このように生物多様性条約で活動が具体化しない理由は、他の国際条約と比べて生物多様性条約が具体的な達成指標をもっていないことにあると指摘されています(注1)。気候変動枠組条約は「二酸化炭素排出量」、オゾン層の保護のためのウィーン条約では「フロンの生産量・消費量」などがそれぞれの議定書で明記され、削減目標値と達成目標時期が合意されています。地球環境問題ではありませんがウルグアイラウンドの農業交渉の場合も各国の農産物の国境措置を関税に置き換えて交渉する「関税化」という手法が提案されました。利害関係が錯綜する国際交渉においてなるべき単純で説得力のある総合指標が有効であるということを示しています。生物多様性についての具体的な説得力のある総合的指標を人類は手にすることができるでしょうか。
(生物多様性損失指数)
こういう問題意識をもっているとき、たまたま、最近横浜国立大学の中西準子先生から、「生物多様性損失指数」という考え方をお聞きして、空想をめぐらしてみました。開発プロジェクトが生態系に与える影響を評価のための指標として開発途上にある概念のようですが、俄勉強の結果は以下の通りです。
ある開発プロジェクトが実施された場合、関連地域の絶滅危惧種の生息域が縮小されることに関連し、それぞれの種の絶滅確率の増加を算出することができる。理論的には絶滅危惧種以外の全ての種の絶滅確率も算出できる(この辺のところは松田弘之生態学におけるリスクー利益分析)。 絶滅した場合の影響度について種ごとの重み付けが可能である。この両者の積で生物多様性損失の程度を評価することができる。というものです(岡敏弘:「期待多様性損失」指数による生態リスク評価とリスク便益分析)。
(国別生物多様性損失指数)
もしもこのようなことが可能なら、各国の毎年の様々な活動が生物多様性損失指数をどれだけ高めたかという評価が可能になり、生物多様性条約議定書にその指数の目標値を提示することができるのではないか、というのが、小生のアイディアです。もちろん衛星データなどで効率的に近似的なパラメーターを把握することが必要になるのですが、これには、陸域の多様性の重要な貯蔵庫となっている森林に関する情報が利用可能ではないかと思います。農地のように管理された特定の人工林や外来樹種の人工林などを排除した上で、あるカテゴリーの森林の配置状況を衛星データにより把握することは十分可能です。森林から農地、森林から市街地、天然林から人工林などの、土地利用形態の変化が単位面積あたり生物多様性損失がどの程度になるかというモデルができれば可能になります。いずれにせよ、ケーススタディが積み重ねられ、「生物多様性損失指数」の概念の有効性が普及してゆくことが前提です。
注1 ガレスポーターほか「入門地球環境政治」p191
生物多様性条約第六回締約国会合資料
資料名 プレスリリース 農林水産省、環境省、グリンピースジャパン 森林に関する決議 英文テキスト(本サイト提供)、抄訳(同左)、新たな行動計画部分訳 閣僚宣言 英文テキスト(リンク)、和訳(環境省サイト)
県産材認証とFSC認証の間ー県産材・地域材認証にグローバルスタンダードの視点を
昨年、会員制寄稿誌「日本の林業を考える」第九号に「地域材認証ラベリング制度」を提案しました(本サイト内掲載pdfファイル)。その後反響があり愛知県東三河地域でこの提案に関して話をする機会がありました。その準備の過程での議論を踏まえ、また、最近の日本独自の森林認証制度の動きや県産材認証などの地方行政の動きを踏まえて、表記小論を同誌五月号に寄稿しました。
次のような点を明らかにしながら、地域材認証制度の具体的な提案をいています。
FSCなどのグローバルスタンダードの森林認証が、我が国の一般的な森林経営に対して何を要求しているか?(図)
我が国で独自の認証制度を導入する場合FSCとの関係はどうあるべきか?
FSCの仕組みの重荷はどこに由来するか?
最近各地で新展開している県産材認証ラベリングとFSC認証ラベリングは何が同じで何が違うのか?
興味のある方の下記に連絡下さい。
107-0052
東京都港区赤坂7−6−52ハイツ赤坂103
第一プランニングセンター内
「日本の森林を考える」編集室
電話 03−3588−0998
FAX 03−3588−0973
メール mailto:LEP07652@nifty.ne.jp
熱帯林の急激な減少の実態が解明され森林問題の危機が認識されてから20年たちますが、国際機関や各国の努力にもかかわらず、事態が好転している兆しはありません。その後温帯林や北方林の管理の課題も浮上し、また、違法伐採材の国際市場への流入など生産国のみでなく輸入国における森林管理に深刻な影響を及ぼす実態も明らかになってきました。これらを解決するには、地球規模の持続可能な森林経営を目的とした国際的な法的な強制力のある条約が不可欠です。本サイト内に関係する資料を順次整備してゆきます。今回は、地球サミット以来の国際会議で合意された文書、国際社会に向けて森林条約を初めて提案した「熱帯林行動計画独立評価報告書」(1990)、地球サミットへ向けて森林条約の議論を深化させる弾みとなったG7ヒューストン会合への先代ブッシュ大統領提案報道資料(1990)を掲載します。
作成年 文献名 著者 関連情報 備考 国際会議での合意文書 1992 A UNCEDアジェンダ21森林部分 UNCED 英文テキストリンク 1992 A UNCED森林原則声明 UNCED 英文テキストリンク 和文テキスト 1997 A 森林に関する政府間パネル最終報告 IPF 英文テキスト 和文テキスト 2000 A 森林に関する政府間フォーラム行動提案 IFF 英文テキストリンク 和文テキスト 基本的な文献 1990 B 熱帯林行動計画独立評価報告書 英文テキスト関連部分 同和文 概要 1990 B 先進国サミットヒューストン会合への国際森林条約提案 米国政府 英文テキストリンク 概要
全国木材組合連合会の違法伐採問題サイト(2002/5/11)new
全国木材組合連合会が3月に行った違法伐採に関するシンポジウムの関連資料が全木連のサイトに掲載されています。インドネシアとロシアの関係者の報告が日英の対訳で見ることができます。これらの報告を読むと、どちらも複雑に入り組んだ国内の利権構造の中で進行している違法伐採については、輸入国の消費者の協力なしには問題の解決はない、というメッセージが伝わってきます。
森林・林業白書の引用文献(2002/5/11)
基本法が改正されて初めての森林林業白書(平成13年度)の概要が林野庁のサイトに掲載されていますが、「第四章木材の供給と利用の確保」に「人と環境に優しい木材利用の推進」という項があり、小論の一部が「主な外材輸入消費エネルギー」として引用されています(該当部分)。関心のある方は本サイト内の関係ページを参照してください→循環社会と輸入木材の輸送過程消費エネルギーーー地域材利用促進の一側面ーーー。また、ご要望により掲載論文のコピーを配布します(こちらへ)。
藤原敬
〒356-8687 独立行政法人 森林総合研究所
電話 0298-73-4751 FAX 0298-73-3795
email mailto:takashi.fujiwara@nifty.com?Subject=勉強部屋ニュースレター
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