熱帯林行動計画に関する独立評価報告書
抄訳
5.13 森林条約
生物多様性条約、気候変動条約の提案が現在検討されている。国連環境計画(UNEP)、世界気象機構(WMO)が主導し熱帯林議定書を付属した気候変動条約が、1992年の国連環境開発会議で議論されることとなるだろう。
どちらの条約も林業上の重要な課題である森林資源の保全と利用に関する課題を直接扱うものではない。我々は、以下の理由により、別個の森林条約が必要であり時宜にかなったものであると確信する。
第1に森林は地方の地元住民だけでなく地球上の人類全員にとって重要である。人類の生存は各国あるいは地球上の森林に起因する要素に依存している。森林の提供する生態的な役割および人類と地球上の森林の相互関係に関する明確な認識が形成されている。
第2に国際的国内的森林の管理保全開発のすべての面に関する行動が求められているということが国際的な合意となっている。実際森林は生態的な役割だけでなく経済的価値という面でも人類にとって貴重な資源である。各国間の協力を強化するための理念的枠組みが必要である。
第3に様々な条約が森林問題を扱っていいながら、それぞれの条約が貿易など特定分野のみを所管しているか自然保護など包括的分野の一部を取り扱っている。包括的な地球規模の森林管理と保全開発にかかるすべての側面をカバーする条約が必要である。
第4に 森林条約は対立する見解を調整する役割を果たす可能性がある。森林利用にかかる生態的及び経済的見地の調整そして途上国先進国の見方を調整する役割を果たす。
もちろん我々に付託された事項は熱帯林行動計画の評価であるが、熱帯林のみを対象とする条約は不適切であると考える。すべての森林をカバーする一般的な条約を重要な要素として含むべきである。生物多様性や気候変動に関係する森林の役割は温帯林でも熱帯林でも変わるものではない。しかしながら熱帯林行動計画は疑いもなく地球規模の森林条約の枠内で実施されることになれば強化されることになり、熱帯林国における条約の実施上の重要な手段となるだろう。また、もしも条約が譲許性の高い特別の資金を準備することになれば、熱帯林国で利用できることになるだろう。
FAO憲章14条は国際森林条約の法的基礎をなすものと理解する。来る9月の林業委員会の会合でこの提案が提出され1990年の9月から10月のFAO第98回総会と続いている。そこで、1991年のパリで開催される第十回世界林業会議に対する提言となるだろう。その後1991年11月に開催予定のFAO総会に付され、1992年の国連環境開発会議に提言される。今後、森林条約は現在準備中の他のイニシアティブとの調整がはかられる必要があり、分担した議定書を作成することも可能である。