6月から、森林環境税の課税がはじまりました。
地方自治体のウェブページに以下のような情報が掲載されています
多くの皆さんが、これなんだ、といって電話をかけてくるんですかね?
市民と森林のガバナンスの将来にとって直接対話できるチャンスでもありますが・・・
これに対する行政側の情報提供が以下の二つ
林野庁のサイト→森林を活かすしくみ 森林環境税・森林環境譲与税(資料A)
そこに掲載さえれている市民向けパンフレット「森林を活かすしくみ」(左図)(資料B)
この2つに基づいて、ストーリーを紹介したうえで、関連して財政学の関係者の動きなど紹介します
(何故環境森林税を支払う?この税の目的)
背景説明1森林の置かれた状況:日本の森林は、国土の約7割。この豊かな森林が持つ多くの機能を活かすには、 森林をしっかりと整備していくことが必要。 しかし、林業の採算性の低下や、所有者が不明な森林の顕在化、担い手の不足などにより、手入れ不足の森林が増加。
背景説明2関連施策の動向: このような中、令和元年度に、市町村による森林整備等の新たな財源として「森林環境譲与税」の譲与と市町村が私有林の経営管理を受託する仕組みとして「森林経営管理制度」がスタート。
当該税金の目的: 森林環境譲与税の財源となる「森林環境税」の課税が始まり、各市町村では、貴重な財源を活用して、森林の整備を進めてまいります。
以上資料B_1ページ
(この財源で市町村は何やるの?用途)
A 森林の整備:間伐等の整備で、明るい森林へ?(資料B_2ページ)
植栽:下刈り、間伐、花粉発生源対策としてのスギの植替え、インフラ施設周辺の森林の整備等の事例紹介(資料A)
森林の無い(少ない)都市部の市町村が、山村部の市町村の森林整備等を支援する取組も見られますなどの、都市と山村の連携活動も紹介されています(資料A)
B 人材の育成:継続的な森林整備の担い手づくり(資料B3ページ)
森林整備を行うためには、現場で働く人材が必要で、それを担う人材育成として、林業の担い手を育成するための研修経費への助成等の取組が行われています(資料A関連部分)
C 木材の利用や普及啓発:地域お木材利用等で森林を身近なものに(同上)
森林整備に伴い伐採・搬出される木材を建築物等に利用していくこと、森林整備の必要性や木材利用の意義等について住民の皆様にお伝えするイベント等の都市部を中心に行われています。(資料A関連部分)
以上ですが、税の目的からいってAが主たる用途で、BとCはそれに向けた手段と言えなくもないですね。
「BがAの手段」はわかり易いですが、CがAの手段となるには?すこし課題がありそうですね?
(木材利用と森林整備の関係は)
上記の、A 森林の整備:間伐等の整備で、明るい森林へ?とC 木材の利用や普及啓発:地域お木材利用等で森林を身近なものに(同上)の関係でCがAの手段という位置づけになっている点についてですが
それをしっかり他の分野の人たちにわかり易く理解してもらうためには、その木材の来歴がどんなものか?間伐材なのか皆伐材なのか?皆伐した場合はそのあとの再造林がどうなっているか、違法伐採ではないなど、しっかりしたシステムを明確にしておかないと、このような、議論を続けるのか難しい面がありますね。
(学術関係者アカデミアの世界での議論ー問題だらけの増税)
6月から課税された森林環境税に関する議論をネット上で検索していたら・・・
書評 青木宗明 編著国税・森林環境税─問題だらけの増税─(石崎涼子2022.8林業経済誌)という論文が掲載されていたので、読んでみました。そして元になった書籍国税・森林環境税 ― 問題だらけの増税 ―(No.16)青木宗明 編著(地方自治総合研究所)も購入
国税・森林環境税 ― 問題だらけの増税 ―目次
はじめに 青木 宗明
第1章 国税・森林環境税:租税理論に反する不公平極まりない増税ー青木 宗明
第2章 国税・森林環境税創設の経緯とその問題点ー飛田 博史
第3章 国税・森林環境税の配分問題と望ましい財源配分のあり方ー吉弘 憲介
第4章 大都市における森林環境譲与税の使途 ― 事例からの検討ー其田 茂樹
第5章 国税・森林環境税の導入による 府県・森林環境税への影響についてー清水 雅貴
第6章 国税の導入よりも林業の改革が必要:わが国の林業の再生に向けてー佐藤 一光
おわりに |
財政学の専門家がどんなロジックで森林環境税が問題だらけだと批判をするのでしょうか?
編者であり第一章の著者の示す2大問題は以下の通り(16ページ)
1. 租税理論からの逸脱と不公平の極みである人頭税
国税に適用してはならない地方税の理論を、不当に国税へ「流用・悪用」した結果、国税•森林環境税が極端に不公平な人頭税になってしまっている問題点。
2. 増税の目的・根拠と増税によって目指す政策効果が極めて不明瞭
何のために増税するのか、増税によっていかなる政策効果を実現するのか不明確で、国民に対する増税の説明責任をまった<果たせていない問題点。 |
人頭税:負担能力に関係なく納税者に定額を課すのが人頭税というようですが、財政学の議論では不公正税制の典型的な事例として語られているのようです(「生きているだけで税金取られるなら役立たずは殺した方が得だ」、恐怖の悪税『人頭税』)
森林関係の公的な資金をどのように集めるか?今回の森林環境税は地方税の人頭割として徴収されていた東日本大震災の復興特別税がなくなる機会にそれと同額森林環境税を徴収することになったので、今までのは人頭税でなかったのか?低所得者などは非課税だけど・・・など人頭税にはいろんな議論があるとは思いますが、今後森林環境税をベースにいろんな国税は同じような形で拡大するなどの場合、課税論などの議論の中で深刻な理論を含んでいることを認識しておくとよいと思いましした
課税目的不明:上記の指摘で、森林ガバナンスの財政論としてより重要なのか、課税目的が不明瞭という二つ目の論点ですね。
森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律
第三十四条 市町村は、譲与を受けた森林環境譲与税の総額を次に掲げる施策に要する費用に充てなければならない。
1 森林の整備に関する施策
2 森林の整備を担うべき人材の育成及び確保、森林の有する公益的機能に関する普及啓発、木材の利用の促進その他の森林の整備の促進に関する施策 |
上記をうけて、以下のような指摘がされます
「人材育成や木材利用促進についても、一見すると事務事業のイメージが湧くと思いがちだが、良く考えてみれば具体的な内容は想像しにくい。おそらく現実には、森林整備の促進に役立つかどうかの関係が見えにくい事業も多いように思われるのである。ましてや普及啓発については、猜疑心はより一層膨らむ。森林との関係を「要領良く」語りさえすれば、あらゆる事業が使途として適格扱いになってしまう恐れがあると思われるますね。」(30ページ)
(他の分野の学術関係者とのコミュニケーション)
この本が出版されたころに比べて、事例集がネット上にたくさん掲載されているので、上記のような心配は少なくなってきているとは思いますが、森林政策という「狭い分野」の議論にあまり関心がなかった、財政学・政治学といった分野の方々が、森林分野に関心を広げつつあることを前提に、しっかりわかり易く情報共有する必要があるのでしょう。
そんな観点で、冒頭に紹介した、書評 青木宗明 編著国税・森林環境税─問題だらけの増税─(石崎涼子2022.8林業経済誌)是非読んでいただければと思います
「小さな政策分野である森林に政策に対して強い関心を抱く財政学者が何人も登場して本書のような書籍が出版されたことには、・・・時の流れを感じる」(はじめに)
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なお、先ほどの「問題だらけの増税」と、議論されている方々も、各県の森林環境税の構築に関わってこられてこられた方も多く、森林整備やその財源確保の必要性には「十分以上の認識をもっている」(4ページ)かたがた、だそうですねので、そのような方々との議論をしていくことの積極的な意味を再認識していくことが大切だと思います
kokunai14-13<Fkankyozei>
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