ニュースレター No.272 2022年4月15発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:まち再生の議論を早急にー都市が森林・自然を見直すチャンス(2022/4/15)
2.  企業による森林づくりー脱炭素経営に向けた取組の広がり関連して森林学会報告(2022/4/3)
3.  春の学会シーズンー第133回日本森林学会コレクション (2022/4/15)
4. グリーンインフラ官民連携プラットフォーム 第3回シンポジウム(2022/4/15)
5.  生物多様性保全の枠組み30by30アライアンスが発足ーメンバーになりました(2022/4/15)
6.   第15回世界林業大会に出席する準備中(2022/4/15)
7. ソーシャルビジネスと森林の可能性ー森林×脱炭素チャレンジ・森林投資の在り方・・・ー勉強部屋ニュース271編集ばなし(2022/3/15)

フロントページ:まち再生の議論を早急にー都市が森林・自然を見直すチャンス(2022/4/15)

ウッドマイルズフォーラム会長、もと日本建築士会会長藤本昌也さんから、お住まいの山形県新庄市で、だれでも読んでいるメジャー紙山形新聞のオピニオンというコラムに掲載された、「まち再生の議論早期に❗️ 人口減少顕著な県内▪小規模、共用、共同が鍵」という記事のコピーを送っていただきました。

また、関連資料金田和夫氏「大規模過剰建設がもたらす環境破壊」、(同)「自然と正面から向き合ってみませんかー環境異変を回避するために」を同送いただきました。

建築エンジニアの世界を長年リードされてきた藤本さん。建築物という私有財産であり社会資本であるインフラをめぐっては、当然「それで儲かるのか?もっと儲かる道はないのか!」という所有者や施工関係ビジネスの強い意向をとらえながら、後世の社会の人たちに「「よいものを作ってくれた!!」と言われる、社会資本をどのようにつくっていくのか?」という建築技術者魂の軌跡。

多分そのことは、同様に私的財産であり社会資本である森林の関係者にとっても学ぶことが多いはず、ということで、藤本さんの贈り物はこのページでも大切にしてきました。

ある建築家の60年にわたるまちづくりの経験と「小さな林業」ー「新ローカリズムの思想を語る」から(2020/9/3)

コラム記事の内容を紹介します。

(まち再生の必要性と方向性)

 「日本の人口は2050年に1億人を下回ると予測されています。この超人口減少に少子高齢化が重なり、まちの中心部も郊外も空き家・空き店舗・空地化が進み、いずれまち全体で総合的な空間再編に取り組む「まち再生の時代」が始まるのです。その時の目標は「若い世代にも住み継ぎたいと思われる魅力あるまちに再生すること」

(まち再生のための三つの問題提起)

そのために、三つの問題提起がされています。

第一は、多様な「スモールコミュニティー」によるまち空間の再編

「戦後、私たちは爆発的な人口増に対応するため、数多くの画一的なビッグコミュニティ(住宅団地)を作り上げてきました。しかし、それではこれからの若い世代が求めるライフスタイルを受け止められません。地域社会単位としてまとまりのよい「小規模」なコミュニティと、その生活空間の多様性が求められるのです。」

第二は、多様な「コモンスペース」によるまち空間の再編

「「コモンスペース」とは、コミュニティ内の居住者が共用地や共有地を確保し、路地、広場、緑地など様々な形態のオープンスペースとして整備した屋外空間全体を意味します。これからは、この空間の量的確保と空間形態のありようをどう工夫するかが生活環境の質を決定付けます。空地や空き家を否定的にとらえるのでなく、オープンスペースこそ「最大の価値」との思いを皆で共有し、オープンスペースを主役とした、魅力的なまち空間の再編が求められているのです。」

第三は、まち再生を実現する新たな事業手法、地権者も参加するコーポラティブ方式による共同建て替えの提起

「コーポラティブ方式とは、そこに住みたい人が集まって建設組合を設立し、その組合が事業主となって建築設計や新築工事を発注し、各会員が自らの住まいを取得するものです。その特徴は建築過程でおのずと良好な人間関係が形成され、住む人の思い思いのニーズに応じた設計が可能で、取得費用がオープンになるなどの利点が挙げられます。これから求められる持続可能なまち再生の事業手法として検討に値する代表的手法の一つと考えます。」

(街(まち)づくりと森林(もり)づくり)

以上が藤本さんの主張の概要です。森林づくりとどのような関係があるかな?

街づくりと森林づくりを比較すると、所有者は建築物の所有者と森林所有者、社会資本としてのサービスの受け手は「街の住民」と「流域住民・地球市民」となります。

そう考えたうえで、森林づくりから、上記の上記の3つのまちづくりが抱える課題を考えると、すぐ気が付くのは、第二の「オープンスペースが主役になる」という、新たな課題に建築関係者が挑戦を始めることになってきた、ということですね。街から見ると森林はオープンスペースそのもの。その主役である森林がどんなサービスを市民に提供できるのか?森づくりの関係者が、いままで培ってきたノウハウが試されることになると思います。

それから、第3の所有者の活動を支える建設組合、コーポラティブ方式。まだ、建築関係では主流にはなっていないでしょうが、森林づくりの方は、森林組合という所有者のコープラティブが主流で大きな役割を果たしてきました。現在森づくりの所有者の方は「所有者意識がなくなってきて大変という」、課題を抱えてすぐ共通の土俵にのることは、難しいかもしれませんが、長い目で見たときに、森林組合の経験が建設組合の発展に資するというコラボが大切な役割を果たす可能性があるような気がします。

それから、第一の小さなコミュニティ問題。戦後の大規模団地の画一的なフレームワークでなく多様性のある空間を提供、というチャレンジですね。森林の場合はマーケットと対峙するため、大きな集団づくりという形が当面の重要な課題となっていますが、マーケットに対峙する場合、多様な市民とどのように対応していくのか、森づくりの多様な小さな林業を一つの柱に据えていくことの重要性があるんだと思います。

以上がコラムの内容についてのコメントでした。

(省エネから省資源へ)

あと、背景説明でいただいた、二つ論文ですが、「大規模過剰建設がもたらす環境破壊」、(同)「自然と正面から向き合ってみませんかー環境異変を回避するために」という、タイトルかラ分かるように、市場の主流をいっている大規模再開発批判が一つのポイントになっています。

詳しくご紹介することはできませんが、キーワードの一つが、「省エネから省資源」

前者の論文に掲載してある図をご紹介しておきます。

中高層建築物の環境負荷は、低層より大きい」という節の、説明資料です。

「(環境負荷が)木造はRC,SRCの3分の1で、木造を基本とする低層に比して、S,RC,SRCは環境負荷が著しく大きくなる。」

そして、まとめの文章が「人類の英知をまだ使える建物を壊して大規模高層開発や、高性能建築機器の開発にそそくより、高耐久や中低層でも成り立つ都市と農村の均衡、機器に極力足らないパッシブな室内環境作りにシフトするなら、環境異変の回避、持続可能な地球環境に光がみえてくるのではないでしょうか。」

ご関心のある方はぜひ、お読みください。

藤本昌也氏「まち再生の議論早期に❗️ 人口減少顕著な県内▪小規模、共用、共同が鍵
金田和夫氏「大規模過剰建設がもたらす環境破壊」、
(同)「自然と正面から向き合ってみませんかー環境異変を回避するために」を同送いただきました。

junkan1-29<yamasin-fujimoto>

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企業による森林づくりー脱炭素経営に向けた取組の広がり関連して、学会発表(2021/4/3)

3月27日から29日にかけて開催された第133回日本森林学会大会の3月28日のセッションで、標記の発表をしました(例に拠ってオンライン)。

演題は:「企業による森林づくりー脱炭素経営に向けた取組の広がり関連して」。

昨年の学会でも紹介したんですが、林業経済研究所で6年前に作成しネット上に公開している、企業の森林づくり・木材利用のCO2吸収固定量の見える化ガイドラインと、見える化計算シートをネットの月別のダウンロー数。

昨年報告では「この1年間のダウンロード数は5年間の累積数の半分!」といっていたんですが、さらに急拡大で(右の図)、今年の1月は1か月で、今まで6年分の累積の3分の1がダウンロード。(これには、特殊事情がありますが)

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)など企業の環境パフォーマンスデータ開示の背景(上の図)を探り、いままで、距離のあった一般企業が森林政策の関係者(ステークフォルダー)になってくる兆しがあるんで、森林の学会関係者としてもどんな関係性をもっていくのか、関心を持ってくださいね!というのが話の内容でした。(学術報告でなくて?ごめんなさい)

こちらにプレゼン資料を置いておきます

(プレゼン概要をご説明)

概要を報告します

背景 企業の森林づくり・木材利用のCO2吸収固定量の見える化ガイドラインと、見える化計算シートをネットの月別のダウンロー数。

左下の赤い四角は昨年発表した1年前の数字。
「どんどん増えています」といったんですが、月で一番多いのが35件でした。

ところが、今年の1月は1か月で350件
林野庁が年末にプレスリリースをした影響でもあるんですが、急増しています。
 ダウンロード団体情報 6年間にダウンロードした団体のカテゴリー別の分析。

学術団体が4%、行政機関が12%、森林組合など森林関係団体が4パーセント、一般企業(直接森林と関係がない企業)が62%です。

今年の1月は年末の林野庁からプレスリリースがあったので、行政機関が増えましたが、一般企業も増えています。
 企業の脱炭素取り組みを支えるツール  企業の脱炭素経営に向けた取組の広がり(環境省)です。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
企業の科学的な中長期の目標設定を 促す枠組み(SBT)
企業が事業活動に必要な電力の100%を 再エネで賄うことを目指す枠組み(RE100)

それぞれに、取組んでいる企業の固有名詞が載っています。

下に記載している3つの取組すべて参加している40企業のリスト。この中で10企業が計算シートをダウンロード!

TCFDとは  企業が、国際的なESG投資の潮流の中で、自らの企業価値の向上につながることを期待して・・・
気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)などを通じ、脱炭素経営に取り組む動きが進展していますす。

全体の枠組みをしめすTCFDを例にとって、森林との関係を検討。

TCFD:Taskforce on Climate related Financial Disclosure
企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する枠組み
金融機関の国際機関、金融安定理事会(FSB、Financial Stability Board)が主導している、気候変動リスクに対応する企業の情報開示の枠組み提案です

ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の三つの要素を提案(左上)。最初の二つは「取締役会に説明しているか?」等枠組みに関してなので、森林との関係をリスク分できで見ていきます。
気候変動リスクを分析するとき、移行リスク(気候変動に対する政府の政策が自社の行動をそのように制限するかな?・・・)、物理リスク(気候変動で大雨が降りやすくなって、自社工場への災害の危険性が高まる・・・)の二つに分けて分析するんだそうです(左下)
気候変動リスクの様々な側面
気候変動リスクと森林  移行リスクは、①政策法規制リスク(政府自治体の規制が強化されて対応が必要・・・))、②技術リスク(今まで使っていた原料が使えなくなる・・・)、③市場リスク(今までの製品が急に売れなくなる・・・)、④評判リスク(評判が悪くなる・・)
物理リスクは①急性リスク(大雨が降りやすくなって・・・)、②慢性リスク(海面が上昇・・)

それぞれについて、一般の会社から見て、森林を考える機会が増えてきます。

自社の森林の吸収力を開示しよう、吸収力をカーボンオフセットに、ゼロデフォレステーション製品を原料に、などなど
 この一枚をご紹介したかったです ということで、気候変動の移行リスク・物理リスクに応じた森林のパフォーマンスの学術的エビデンスの説明が求められまーす

◦ 移行リスク(政策法規制リスク、評判リスク)に対応する各社のゼロエミッション戦略の中での自社森林のパフォーマンス
◦ 物理リスクに対応した、森林の防災機能などの対応

そして、 ガイドライン・ダウンロードした一般企業とのコミュニケーションで、森林政策の新たなステークフォルダーをさらに解明
  ダウンロードしてくれた関係者とコンタクトして、意見を聞いたり、チェックリストを作成する方向性を検討したり、いろいろやるべきことは、たくさんありまーす!

関心ある方は連絡をください

以上
     

(質疑)

質問ご意見いただきました。ありがとうございましたー。セッションの最後の発表だったので、他の方の報告にはそれぞれ質問が出てるんで、質問が出なかったらどうしようと心配していました

質問1
Jクレジット以外に、森林のGHG吸収量を認識、確定するシステムが広がっていく傾向があるということか? 
 答え1
その通りだと思います。企業の環境パフォーマンスデータ開示、などが広がっているので。林業経済研究所でも、具体的な相談の話が来ています。
 質問2
Jクレジットの方は、方法論がきまっていて、開示するデータの信頼性などが担保されるようになっているが、そのほかの場合データの信頼性に問題がでてこないか?
 答え2
おっしゃる通り、Jクレジットの方はその結果算出されたデータを根拠にあるプロジェクトの成果が売買される可能性があるので、政府が関与した方法論に沿っているのかどうかがチェックされます。それに対して、環境パフォーマンスデータ開示などは、データ精度の要件が決まっていないので各社にゆだねられている面があります。ただ、対外的な評価を念頭に置いた作業なので、第三者のチェックを受ける手続きなどを経ていて、そのことを公表していることが多です。前述した相談案件も、外部のコンサルタントから指摘をうけて、相談に来たケースです。

以上でした

(ズームでの学会発表の問題点)

ネット上の学会は交通費がいらないで、学会発表ができる。世界中の学会で広がりを見せているんだと思います。もう後には戻らない?

森林学会の場合は事前に動画を送って登録し、手持ち時間の15分のうち、12分はその放映。当日対応は3分間の質疑の時間にパソコンの前に座っていて対応するというものでした。

春休みの学会シーズンだから、いくつかの学会を掛け持ちで発表するなどというときは、これほど便利なことはないでしょう。名刺交換ができない、というのが問題点の一つ。これもチャットでいろいろ質問しておくと、あとで、メールでご挨拶などということになるのでしょうね。

今回の一番の問題点は、学会発表の重要な点は、発表当日までどんな発表にしようかと、情報収集点検作業をぎりぎりまでやって、その作業が知的集積?の重要なタイミングになるんですけど、一か月前にビデオを送ってしまうと、その重要な時間が取れなくなってしまうことでしょうかね。これは個人的な事情ですが。

以上報告でした。

kokunai4-57<morikigyo>

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 春の学会の季節ー133回日本森林学会コレクション (2022/4/15)

年度末に開催される森林学会、今年もオンラインで開催されました。第133回日本森林学会大会

「森林学の進歩と普及を図り、学術の振興と社会の発 展に寄与・貢献することを目的」(定款の目的規定)とする森林学会の大会に、私のような学術経験者でないものが、報告する意味はいったい何なのか、とは思いますが、日頃少し気になっていたことを、少しまとめて考えるチャンスになるだろう、と、時間がありそうなときに、学会発表するようにしてきました。

また、重要な政策的課題もピックアップされています。

気になった報告をすべてフォローすることはできませんが、本人のご厚意によりいただいた発表資料データ、大会誌に掲載された概要をもとにを紹介します。

森林学会の報告全体はこちらから

 標題  発表者  関連データ  趣旨・注目点
森林ガバナンスの道
A1市町村森林行政の業務実態と実行体制(1):施業監督業務に着目して 石崎涼子(森林総研) 第133回日本森林学会講演集P.77 森林所有者と対面し業務が急拡大している、市町村森林行政が抱える業務と体制のギャップを軽減・解消しうる体制整備のあり方を検討する三つの報告。人づくりが大切!
A2 市町村森林行政の業務実態と実行体制(2):県や外部組織の支援に着目して 笹田敬太郎(森林総研) 第133回日本森林学会講演集P.77 市町村が抱える業務と体制のギャップを軽減・解消する上で、都道府県や外部組織の果たす役割は重要。その中でも、森林組合やコンサル会社、外郭団体など専門性を持った外部組織が、データの収集や分析などを受託しており外部組織の果たす役割と重要性
A3 市町村森林行政の業務実態と実行体制(3):情報システムの整備に着目して  鹿又秀聡(森林総研) 第133回日本森林学会講演集P.77 市町村が抱える業務と体制のギャップを軽減・解消する上で、適切に管理された森林情報を有した森林GIS の導入により作業効率の改善(スマート化)が大切
A4 森林経営管理制度における広域連携の役割─埼玉県秩父地域を事例に─ 江田星來(筑波大学) 第133回日本森林学会講演集P.78A4 現場の体制強化のモデル事例。本制度を運用する専門組織を設立して1市4町を核に多様な主体が連携する埼玉県秩父地域1市4 町
森林環境譲与税・独自の森林環境税
A6 森林環境譲与税のPES 化に対する市区町村の意向について 高橋卓也(滋賀県立大学環境科学部) 第133回日本森林学会講演集p.78
プレゼンデータ
森林環境譲与税を生態系サービスに対する支払い(Payment for Ecosystem Services;PES)あるいは支払いの支援財源として用いることの可能性は?
A7 自治体独自の森林環境税が獣害対策としての里山林整備にもたらす影響 岸岡智也(沢大学先端科学・社会共創推進機構) 第133回日本森林学会講演集p.78 都道府県の独自課税として導入されている、森林保全を目的とした森林環境税を活用して実施される野生動物保護管理を目的とした事業が、基礎自治体での獣害対策としての里山林整備にどのような効果をもたらしているのか
森林産物の市場との関係
 A11 地域産材の利用拡大をめぐる地域林業関係者の問題認識の考察  石 佳凡(早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科)  第133回日本森林学会講演集p.79
要旨
 西川材産地埼玉県飯能市を対象にし、森林整備計画における地域産材利用拡大に関する取り組み方策の進捗状況を確認することにより、林業関係者間の問題認識の相違が取り組みの実施に
与えた影響を考察
A12 国産材産地形成における木材流通研究の動向 茂木もも子(林業経済研究所) 第133回日本森林学会講演集p.80 国産材の生産地と消費地とを結ぶ木材のサプライチェーンマネジメントの重要性が指摘されている。そこで、本研究では国産材に関する木材流通研究の動向を整理することとした
A17 森林化学産業の展望─木質バイオマスの新用途についての課題整理 峰尾恵人(京都大学大学院農学研究科) 第133回日本森林学会講演集p.81
要旨
日本では、「木の文化」といわれるような多様な木材需要を再び形成するため、木質バイオマスからのセルロースナノファイバー(CNF)や改質リグニンなどの化学品の製造木質バイオマスからの化学品製造の実用化に向けた森林政策論的課題を整理
グローバルな森林ガバナンス
A18 J クレジット制度における森林分野の現状 福嶋崇(亜細亜大学国際関係学部) 第133回日本森林学会講演集p.81
要旨
JC は国のGHG 削減目標達成への貢献というよりも、CSR を主な目的とするカーボンオフセットとしての活用や、「山のための制度」(JC 事業のみでのビジネス展開は不可能)としての位置づけることが適切な政策
A19 企業による森林づくり─脱炭素経営に向けた取組
の広がり関連して
藤原敬(林業経済研究所) 第133回日本森林学会講演集p.81
プレゼンデータ
「企業による森林づくり・木材利用の二酸化炭素吸収・固定量の「見える化」ガイドライン」データに関する関心が高まっており,ダウンロードが急拡大、後これら一般企業の森づくりへの関与が、わが国の森林政策にどのようにかかわってくるのか
森林バイオマスエネルギー利用の環境負荷
 S4-1 導入:森林バイオマス利用における炭素負債問題  相川高信
(自然エネルギー財団)
 第133回日本森林学会講演集p.69  エネルギー用に森林から持ち出されて直接利用される木質バイオマス(森林バイオマス)については、気候変動対策効果についての論争あり。再吸収に要する時間を巡る議論への問題提起
 S4-2 森林由来の輸入バイオマスによるバイオマス発電の気候変動対策効果の検討  泊みゆき
(NPO 法人バイオマス産業社会ネットワーク)
 第133回日本森林学会講演集p.69  副産物でない森林由来バイオマスの燃焼は、その目的に相反する可能性がある。主産物である森林由来バイオマスの場合、炭素蓄積が回復するかどうか不確定であり、FIT 等の再生可能エネルギーの支援対象から一旦原則的に除外するのが適切
 S4-3 森林の成長と利用に係る炭素負債問題についての一考察  古俣寛隆
(北海道立総合研究機構森林研究本部林産試験場)他
 第133回日本森林学会講演集p.69  木材由来の炭素をカウントすると、バイオマス発電およびバイオマスボイラーは、商用電力および化石燃料ボイラーよりCO2 排出原単位が大きいため、大気中のCO2濃度を一時的に増加させる。大丈夫か?単位森林面積あたりのCO2 収支を評価するとともに、森林を伐採せず、化石燃料および非木質材料を利用するシナリオのCO2 収支を算定した比較結果。どうなる?
 S4-4 木質バイオマス燃料のサプライチェーン別ライフサイクルGHG 排出量推計  大久保敏宏(一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会・早稲田大学人間科学学術院)  第133回日本森林学会講演集p.69  中間土場の導入や移動式チッパーの活用も広がっており、こうした取組みは木質バイオマス利用におけるライフサイクルGHG 排出量の低減に貢献すると想定されるが、これまで定量的な評価を行ってみると?
 S4-5 木質バイオマスの低炭素エネルギー利用に向けた課題  久保山裕史(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林業経営・政策研究領域)   第133回日本森林学会講演集p.70  木質バイオマスはカーボンニュートラルなのかという疑義が、環境NGOだけでなく、IPCCに関わる研究者からも示されている。欧州ではGHG 排出削減効果が80% 以上でない発電施設等を助成対象から外す計画を公表した。これらのことを踏まえて、今後の日本の木
質バイオマスエネルギー利用のあり方について検討

発表資料をいただける方は、ご連絡いただけるとありがたいです。

たくさんの報告の中から、立場上政策がらみの報告をピックアップしていますが、全部がフォローできていないません。最後のバイオマス利用の助成問題など、結構重要な課題を含んでおり、もう少し突っ込んで勉強していきたいと思います。

gakkai<sinrin2022>

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グリーンインフラと森林ー第3回グリーンインフラシンポジウム(2022/4/15)

森林政策との関係が少し気になっていた、グリーンインフラの話。グリーンインフラと森林ーグリーンインフラ運動の進展(2020/7/15)

たたまた、茨城県の最南端守谷市の森林と緑のことを調べる機会があり、この市が、昨年第一回グリーンインフラ大賞を獲得という話を知りました。

茨城県守谷市における官民連携による戦略的グリーンインフラ推進プロジェクト

少し関連が生まれてきた、グリーンインフラの官民連携プラットフォーム第3回シンポジウムが開催されたので、ズームで出席しました。

1日目 3月14日【YouTube ライブ配信URL】  2日目3月15日【YouTube ライブ配信URL】
 
開会あいさつ
二宮 雅也 氏 グリーンインフラ官民連携プラットフォーム会長
経団連自然保護協議会会長

第2回グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」表彰式

基調講演
涌井 史朗 氏 グリーンインフラ官民連携プラットフォーム会長代理
東京都市大学環境学部特別教授


特別講演
山井 梨沙 氏 株式会社スノーピーク代表取締役社長
パネルディスカッション
テーマ:グリーンインフラの社会実装に向けて
<コーディネーター> 福岡 孝則 氏
<パネリスト>
小笠原 奨悟 氏 パシフィックコンサルタンツ㈱ グリーン社会戦略部 課長補佐
佐藤 留美 氏 特定非営利活動法人 Green Connection TOKYO 代表理事
高橋 富美 氏 ㈱建設技術研究所 東京本社 都市部 次長
竹内 和也 氏 エコッツェリア協会((一社)大丸有環境共生型まちづくり推進協会)専務理事
地引 汰一 氏 東京農工大学大学院 農学研究院
南崎 慎輔 氏 茨城県守谷市役所 市長公室企画課 企画・統計グループ
政金 裕太 氏 ㈱グリーン・ワイズ コミュニティグリーン事業部 デザイナー
和田 紘希 氏 国土交通省 総合政策局 環境政策課 課長補佐
 関係府省庁の取組の紹介 国土交通省・環境省・農林水産省
各部会の活動報告
<企画・広報部会> 福岡 孝則 氏 企画・広報部会 部会長
西田 貴明 氏 企画・広報部会 部会長
<技術部会> 中村 圭吾 氏 技術部会 部会長
<金融部会> 北栄 階一 氏 金融部会 部会長

会員セッション(予定) ~会員からの取組紹介~
環境影響評価手続をきっかけとしたグリーンインフラ導入の取組
重吉 実和 氏 中央復建コンサルタンツ(株) 環境・防災系部門 環境グループ プロジェクトマネージャ
市民とつくるグリーンインフラ、ランドスケープデザイン
金清 典広 氏 高野ランドスケーププランニング(株) 代表取締役
ゼロエミッションパーク(ZEP)への取り組み
大西 竹志 氏 (株)日比谷アメニス 環境エネルギー部 課長
雨水利用とグリーンインフラ
金内 敦 氏 東急建設(株) 環境技術部 兼 技術研究所
日建連委員会の取組と清水建設のGI事例紹介
橋本 純 氏 清水建設(株) 環境経営推進室グリーンインフラ推進部長
海外の事例に学ぶグリーンインフラ
川合 史朗 氏 (株)創建 取締役 副社長

上記が二日にわたるシンポジウムのプログラムで、記載されているように、すべてのプログラムがユーチューブ中で公開されています。(私自身も全部見ているわけではありませんが)

すべてを紹介することはできませんが、第一回も伺いました、涌井会長代理の基調講演は、インパクトがあります。

(涌井副会長の基調講演ーNbS(Nature-besed Solusin)の時代とグリーンインフラーポストコロナは自然共生)

タイトルは明示されていないんですが「NbS(Nature-besed Solusin)の時代とグリーンインフラーポストコロナは自然共生と人々の共創の文明へ:シンクロする新たな都市や地域・・・」

1時間の基調講演を正確にここで、説明することはできませんが、中世が近世、近世が近代、の変換たときにどちらもパンデミック(感染症の世界的な大流行)が関与しているんで、今回のCOVIT18の次の次の社会い転換する。

そのキーワードがグリーンインフラだ。パンデミックはエゴロジー(涌井さんの造語だそうです)からエコロジーへの転換

といった趣旨の話をされました。ご本人は余談だと言われましたが。幾つかキーワードを拾いました

 古い社会   新しい社会 
 産業革命
工業化社会
情報社会初期型
成長型社会

防災・減災
 →  x型(環境)革命?
ソサイアティ5.0型

成熟型社会

備災・克災

(グリーンインフラは「社会益共通課題に対する包摂性の高い多面的効用」)

最後の方のコマで、涌井さんが標記のタイトルで「グリーンインフラの効能」をまとめた一節を紹介しておきます。

①突発的で激甚化し、しかも予見しがたい気象災害や地震災害などを緩和する要素として働く、
②近未来の社会は幸福度を尺度とした成熟社会を希求する→癒しと安心という二大要因プラス新しいライフスタイルの導入による魅力
③新たな「共(コミュニテイ)」を構築する社会に最も有効な媒体となる
④とりわけ災害などを含めた緊急時に、避難や延焼防止をふくめて、ハード・ソフト両面から効用が極めて大
⑤高齢社会の中で、ひきこもらず心も体も元気な高齢者を社会的位置づけられる
⑥あらなた産業社会で(第4次産業革命)に負の要素として働くと懸念されるストレスマネージメントに有効
⑦国際的都市間競争に打ち勝つ地域創生の必要性が
⑧地域の自然の魅力を磨き、インバウンドを含めた観光交流を産業化し、次いで交流から対流の方向に結びつく政策を誘導
⑨人間は生物であり、生命現象により支えられている。0:1の数学的解による判断は、シー、ムレスに時間とともに歩むアナログな生命体の人間であるがゆえに、心理的適合を起こしやすい

前回の話の中でもキーワードとなっていた危機に対する緩和(鉄壁の防御)だけでなく適用(柳に風)を。(緩和系が①あとは、適応系?)

森林と社会との関係は新しい時代の中に入っていくという、視点をもって、行く必要があると思います。

最初に守谷市での一度話をすることになっているんで、そんな中でも念頭において、起きたいと思います。続きはまた

junkan6-12<GISympo3>

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 生物多様性保全の枠組み30by30アライアンスが発足ーメンバーになりました(2022/4/15)

4月8日「30by30ロードマップの策定と30by30アライアンスの発足について」という環境省の報道資料がネット上に公開されました。

いったい何のこと?30by30とは何か?

(30by30とは)

「ポスト2020生物多様性枠組」案の主要な目標として検討されている、2030年までに世界の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す目標を指します」(環境省のネット上の解説

2020年までの目標を明らかにした生物多様性条約のCOP10で決められた「愛知目標」の次の枠組みをどうするのか?

このページでも紹介しましたが昨年7月に英国で開催されたG7首脳宣言で、も議論された(G7サミットの中の森林と木材ーG7/2030年「自然協約」とは(2021/7/15))「2030年までに世界の陸地の少なくとも30%及び世界の海洋の少なくとも30%を保全又は保護するための新たな世界目標」です。

G7も含めてなんとなくコンセンサスにはなっているんですが、まだ正式に決まった枠組みでなく、今年4月に昆明で開催されるCOP15の第2部でコンセンサスになるようです。追ってご報告

30パーセントにどんな意味があるのなど、少し注意しなければならないところがあるので、これも追ってご報告。

いずれにしても、「地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える」として森林に関する国際的環境的枠組みの議論と、日本の森林政策のと関係を追いかけてきた勉強部屋としては、重要な取り組みです。

(30b30ロードマップ)

左の図が今回公表されたロードマップの概要です。

30by30の数字だけでなく生物多様性を確保するという国民的なコンセンサスをどう構築するのか?というのがロードマップの趣旨だとすると、左の図にあるように①「国立公園等の保護地域の拡張と管理の質も向上」(国自分が直接管理する土地の生物多様性をがどのような管理をしていくのか(林野庁の国有林は?))というのと、もう一つ、②「保護地区以内で民間人を巻き込んだ、運動をどのようの構築していくのか?」といのが一つのポイントです。

このため「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域について、国によって「自然共生サイト(仮称)」として認定する仕組みを2022 年度に試行し、その制度の構築と認定等の実施を進め、既存の保護地域との重複を除いてOECM(条約の流れので出てきた大切なコンセプト)Other effective area-based conservation measures)国際データベースに登録する」(ロードマップ3ページ)のだそうです。

新しいシステムが、どんな役割をはたしていくのかフォローしていきます。

(30by30アライアンス)

そして、報道資料のもう一つのコンセプト「30by30アライアンス」という団体。9日にネットが団体のHPが公開されました。

「里地里山、 企業林その他の 様々な 主体によって守られてきたエリアの OECM O t her Effective area basedConservation Measures としての 国際 データベース登録 及び保全等を促進 し 、又はその取組を積極的に発信す ることを目的として、 行政 、企業、 NPO 等 の有志連合として、「生物多様性のための 30by30 アライアンス」 を設置する。」(設立要項より)のだそうです。

新しい団体がどんなことをしていくのか、しっかり勉強して、とくに森林関係者に紹介していこうという考えで、持続可能な森林フォーラムも参加することとしました。

(気候変動と生物多様性)

92年地球サミットで一緒にできた、気候変動枠組み条約、生物多様性条約は、二つを比べると・・・

地球上の人がどんなことをやったらいいのか?という「システムの明快性」という視点からは、前者は温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算した数値を削減というと明快な指標を持っているのに比べると、30by30は分かりにくい?かも

ただ、二つ比べて、どんな社会を創ろうとしているか、「目標の明快性」という視点で比較すると、前者が気温上昇が1.5度におさまった社会、と、後者が緑あふれる社会、後者がわかりやすいです。

その両方にかかわる森林のガバナンス、今後ともフォローしていきますね。

kokunai2-13<30by30>

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 森林とともにグリーンで健康そして堅牢な未来を創造!ー第15回 世界林業大会に出席予定(2022/4/15)

一年遅れになっていた第15回世界林業大会が5月1日から開催されることになりました。

ハイブリッドでも開催。しっかりした手続きをとれば、7日間の待機時間なし、などの情報が4月上旬に送られてきて、出席しようと準備しています。

およそ6年に一度世界の森林林業関係者が集まる世界林業大会

「地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える」産官学民の情報交流の広場をめざします。」を標榜しているこのサイトとしても大切なイベントです。

前回に14回南アフリカダーバン大会に私も出席し世界林業会議2015南アフリカダーバンから (2015/9/26)

はじめてアジアで開催される世界林業大会のテーマは、BUILDING A GREEN, HEALTHY AND RESILIENT FUTURE WITH FORESTS「森林とともにグリーンで健康そして堅牢な未来を創造!」(本ページの仮訳です)

そして以下のように6つのサブテーマが提示されていますXV World Forestry Congress Theme

BUILDING A GREEN, HEALTHY AND RESILIENT FUTURE WITH FORESTS
森林とともにグリーンで健康そして堅牢な未来を創造!
 
 1. Turning the tide: reversing deforestation and forest degradation
1.流れを変える:森林破壊と森林劣化の逆転
2. Nature-based solutions for climate-change adaptation and mitigation and biodiversity conservation
 2.気候変動の適応と緩和、および生物多様性の保護のための自然に基づくソリューション
 3. The green pathway to growth and sustainability
3.成長と持続可能性へのグリーンな道筋
  4. Forests and human health: revisiting the connections
4.森林と人間の健康:つながりを再考する
5. Managing and communicating forest information and knowledge 
5.森林の情報と知識の管理と伝達
  6. Forests without boundaries: enhancing management and cooperation
6.境界のない森林:管理と協力の強化

ウッドマイルズとか、環境に優しい木材利用などがどのように取り扱われているのか、しっかり勉強して参加しようと思います

chikyu1-41<WFCXV>

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世界林業大会出発までの準備が間に合うかな?・・・ー勉強部屋ニュース272編集ばなし(2022/4/15)

1年遅れとなったソウルの世界林業大会の15回大会が迫ってきました。7年前の前回は南アフリカだけど、今回は隣の国なんで、グローバルな視野にたった勉強部屋では当然取材も兼ねて、ネットワークっを広げるためにいってこよう!、と思っていいるんですが、あと半月で準備ができるかな?

準備をしないと、とパスポートを見ると4月18日に10年の期間が切れる!気が付いて手続き(都庁に行ってきました)してまた昨日14日都庁にいって新しくなりました。あとはビザだとか、予防接種の証明書だとか・・・。それと、勉強部屋の英語のサイトをもう少し充実させて、PRできるようにしなければ・・・間に合うかな?

5月は持続可能な森林経営フォーラムの年度替わりなんで、ズーム会議で小さなイベントをして、総会。皆さんに支えれてているサイトなんで、会員として支えていただく方が一人でも多ければ・・・よろしくお願いします。

次号以降の予告、世界林業大会出席記録、ロシアに対する経済制裁と木材、クリーンウッド法検討会の中間報告に何が書いてあるかな?田園回帰と森林サービス産業、カーボンニュートラルと都市の緑地ー市街化区域の緑地の二酸化炭素吸収量、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com