ニュースレター No.259 2021年3月15発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:「論語と算盤」で持続可能な森林は?ー渋沢栄一の中の森林の位置(2021/3/15)
2.   森林バイオマスはカーボンニュートラルか?500名以上の科学者が日本政府に(も)書簡(2021/3/15)
3.  オフィスから森林を救うー東京からの国産材を活かす繋げるMOCTION(2020/3/15)
4. 「2050カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略」を出発点として市民と共に歩む森林・木材政策にー森林部門技術士会会員への期待(2021/3/14)
5.  東日本大震災3.11_10年ー福島に国際研究機関をつくるとしたら(2021/3/15)
6. 東日本大震災から10年ー勉強部屋ニュース259編集ばなし(2021/2/12)

フロントページ:「論語の算盤」で持続可能な森林は?ー渋沢栄一の中の森林の位置(2020/3/15)

NHKの大河ドラマ、60作目の今年の主人公は渋沢栄一、題名は青天を衝(つ)け

毎年面白がってみている大河ドラマですが、10,000円札の顔、「日本資本主義の父」で生涯に約500の会社に関わり、同時に約600の社会公共に尽力(渋沢栄一記念館)

その渋沢の業績がいまの、ビジネス社会とどうかかわり森林をどのようにみていたのかな?

たくさんあるネット上の情報や「論語と算盤(そろばん)」などを読んで少し情報収集をしてみました。

(SDGsと渋沢栄一)

金儲けと道徳、と一人も取り残さない社会。今の社会をリードしている企業の社会的責任論につながります。

渋沢栄一の子孫、、渋沢健氏:『論語と算盤』の現代的かつ地球的規模での実践がSDGsであり、これをさらに一歩進めて、投資と結びつける「SDGs投資」であるーSDGs投資 資産運用しながら社会貢献』「資本主義の父」渋沢栄一、SDGsとの深い関係

国学院大学杉山里枝:現代において、自社の経済的活動とCSR(企業の社会的責任)を直結させるのは困難なケースが多々あります。しかし、渋沢が最も大切にしていた「継続性」という観点に立ち、自社が目指す将来像を実現しうる社会(良い人材を育成するための教育システムや豊かな生活環境など)を作るためには、どのようなCSRを行えば良いのかを考えてみると、これまでとは違った施策が出てくるかと思います。渋沢栄一から学ぶ次世代型CSRのヒント

(算盤は資本主義、論語は不平等への対応?それでは)

資本主義の行きついたグローバルマーケットは、市民がコンビニに行けば世界中の資源を組み合わせて作った便利な製品を安く買えるシステムを作り出し、そして、世界中の情報を皆が共有するインターネットの社会など、だれもだれも思っていなかったシステムを創造してきました。

が、他方で、不平等の拡大(-なぜ1%への富の集中が加速するのか-)と、地球環境危機の悪化(人新性の資本論など)など非常事態を加速させています。

私が「論語と算盤(そろばん)」という本を読んんでみようかなと思ったのは、資本主義(算盤の世界)の父が、「不平等の拡大」というリスクをしっかり踏まえて、道徳を論じ、社会福祉の世界に晩年をささげた(論語の世界)というストーリーのことはわかるんだけど、環境危機のようなことはどんな認識だったのかな?そして、森林のような目先の収益と別の社会的視野をもって管理していかなければならない問題をどのように、処理していたのかな、という問題意識でした。

(王子製紙と渋沢栄一)

森林とかかわりがありそうなのが、創設にかかわった王子製紙。

「明治維新後、渋沢栄一は、あらゆる事業を盛んにするためには、人々の知識を高める書籍や新聞などの印刷物の普及が必要で、そのためには安価で大量印刷が可能な洋紙製造をすべきと考えます。そして、明治6年、抄紙会社(後の王子製紙株式会社 現・王子ホールディングス株式会社の前身)を創立」したんだそうです。企画展 渋沢栄一と王子製紙株式会社 〜国家社会の為に此の事業を起す〜

金もうけのためのビジネスでなく、社会の将来のための投資が王子製紙だったのですね。

それでは、そのインフラの立地は、原材料木材の入手を視野に入れて・・・・なんで、王子だったのでしょうか?

「工場立地条件の一つに、東京近郊であることが挙げられていますが、これは当時の製紙原料は、古着などの「木綿ボロ」でしたので、人口が多くて、その発生量が多く集荷しやすい都会地が適していたのです。また、市場が近いということのみならず、渋沢栄一自身が工業思想を鼓舞奨励するのに政治の中心である東京に近いことが、条件に合っていたわけです。」ここ王子が洋紙生産の地に選ばれた理由

なんだそうです、その後、欧州の技術の流れをおって、木材パルプによる製紙が試みられ、木材の効率的な調達の観点から、明治43年(王子で工場が操業した明治5年から38年後)に苫小牧工場が操業がされました。

渋沢栄一社史データベースというすごいサイトから王子製紙山林事業史という資料を見ることができます。

渋沢栄一は実業の世界をリタイアしたあとなので、本人の森林に対する考え方は直接出てきませんンが、製紙メーカーが自社の森林を管理するシステム作りをしてきたことは、間違えないです。

今後、日本の製紙ビジネスの方々も、ビッグビジネスの社会的責任で、日本の森林管理の行く末、今後の展開、渋沢栄一だったらどうなのか、さらに議論を深めてほしいですね。

晩年渋沢は東京都北区西ヶ原に居をかまえ、そこには、現在渋沢史料館などがあります。この場所は創設した王子製紙が見渡せる場所で、500近く創設にかかわる、会社のなかで、王子製紙が大きな存在だったのでしょう。

(吉野林業と女子教育と渋沢栄一)

ご案内の様に渋沢栄一が、日本の女子教育にかかわり、日本女子大の創立にかかわり、第3代校長をしました。その創設過程の重要な役割を果たしたのが、奈良吉野林業の山林王土倉庄三郎でした

「日本女子大の創設者である「成瀬仁蔵」が「大阪梅花女学校」の教師であったときに、「庄三郎」がとみ子、まさ子、大糸、小糸、すえ子などの6人の娘の教育を託しています。当時は女学校へ上がるということ自体が珍しく、しかも吉野の山奥から率先して女子を出すということは驚くほどの英断であった時代

「成瀬」が明治29年(1896年)に「女子大学創設案」を発表したとき、吉野の山林王「庄三郎」は巨額の基本金づくりを計画し、協力して寄付金を募り、自らも多額の設立資金を寄付して、「日本女子大学」創設への協力を惜しみませんでした。

吉野林業を次の500年へ吉野かわかみ社中) 

明治の中期、我が国で都市のインフラを支える唯一の資源であった木材の、供給ビジネスや供給基地の管理をしていた林業。当時のビジネスの中心の一つに林業や木材問屋があったんでしょう。

その中心人物が、次世代を見据えた広い視野から、女子高等教育や、自由民権運動などを支えていた構図が見えてきます。

その後、化石資源が席巻した新たな社会が生まれ、森林ビジネスは後ろに下がっていましたが、150年たって、今度は、カーボンニュートラルに向けた循環社会をつくる新たな時代。

森林に関係するビジネスが、また社会に中心になって来るのでしょう。

青天を衝(つ)け楽しみですね。

junkan10-1<shibusawa-sinrin>

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  森林バイオマスはカーボンニュートラルか?500名以上の科学者が日本政府に(も)書簡(2021/3/15)

「500名以上の科学者が日本政府に書簡を提出:森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」というタイトルでFOEjapanのブログが発信されました。

本文は→Letter Regarding Use of Forests for BioenergyーHundreds of scientists affirm that trees are more valuable alive than dead — both for climate and for biodiversity.

米国バイデン大統領、日本菅首相とEU、韓国の首脳宛の書簡が、2月上旬に公表されました。

大切なものなので、読んでみました。こちらに英文と日本文の対訳を置いておきます

まとめてみると、(A)「バイオマスエネルギーのために樹木を伐採すると、当初は炭素排出量が大幅に増加し森林を再生し化石燃料を代替することで、最終的にはこの炭素負債が解消されるかもしれないが、森林再生には時間がかかり、世界が気候変動を解決するためにはその時間的猶予がない。」、そこで(B)「各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません」という主張です。

(木質バイオマスはカーボンニュートラルか)

まずAについて、議論しましょう。

「森林を構成する個々の樹木等は、光合成によって大気中の二酸化炭素の吸収・固定を行っています。森林から生産される木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素を発生しますが、この二酸化炭素は、樹木の伐採後に森林が更新されれば、その成長の過程で再び樹木に吸収されることになります。このように、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。」(林野庁木質バイオマスを利用するメリット)

これが林野庁(というか関係者、私も含めた)の見解。

これに対して、今回の提言Aを繰り返すと、「今のような一刻もあらそう非常事態には、エネルギーのために伐採して燃焼すると、数十年間トータルの大気中の二酸化炭素は増えるので、注意」ということです。

このページでも、そのことについては触れました。欧州の過ちから学ぶ森林バイオマスエネルギー-海外における木質バイオマスエネルギー推進についての最近の論調より(2019/2/24)

左の図が、そのとき議論した、マイケルノ―トン氏が提示した図です。

横軸が時間、縦軸が伐採して燃焼させた場合の、固定量と化石資源を代替した効果を足した貢献度。

伐採して木材を燃焼させ化石資源代替の貢献度は、伐採しないで山で成長した場合(青い破線)と比較すると、最終的には山が成長してプラスになる(カーボンニュートラルだから)が、山が成長するまでの数十年は化石燃料を燃やした方が空気中の二酸化炭素濃度は低い状態がつづく。

というものです。今回の提言のロジックはこの通りです(マイケルノートン氏も署名者に入っている)。

しっかり管理された森林の生産物を燃焼させてエネルギーを得ることは、将来の循環社会を視野にいれたらカーボンニュートラルだが、現在のような一刻をあらそう、非常事態では注意が必要。

(木質バイオマスエネルギー利用を冷静に考える)

その時(一昨年)、私もそのとおりだな、と思いました。

そしてそのことが私たちに何を問いかけているのかということですが(Bについて)。大切な視点は、「木材のエネルギー利用をするために森林を伐採することには注意が必要です」ということです。

ただし、他の目的のために森林を伐採し木材を利用する過程で発生する廃棄物由来の木質燃料や森林の育成のために間伐をしたものを集めた木質燃料(未利用木材)を、化石資源に代わって燃焼させてエネルギーを得る(発電する)のは問題ないし、積極的に推進すべき、ということですね。

エネルギー利用のためにあらた現在の森林を伐採することがないように監視が必要です。輸入燃料には特に注意が必要。

もう一の注意点は木質バイオマスを成長輸送する過程で、化石資源を使うということです。その排出量を評価してコントロールしようと欧州では取組が進んでいますが、日本ではまだ。(参照国際セミナ-森林バイオマスの持続可能性を問う

ということで・・・

(提言の結論部分の改定提言)

この提言の結論部分は以下のとおり変更が必要でしょう。

(B)「各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを廃止しなければなりません」

ではなく。

(B)「各国政府は、自国産であれ他国産であれ、木材を燃焼させることに対する既存の補助金やその他のインセンティブを注意深く実施し特に他国産の木材には注意を払わねえればなりません」

せっかくの重要な内容を含む提言なので、シッカリした議論が必要だと思います。

energy1-39<scientistsF&B>

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 オフィスから森林を救うー東京からの国産材を活かす繋げるMOCTION(2021/3/15)

東京都が国産材の魅力発信拠点MOCTIONを開設した(昨年12月)というので、気になっていました。東京に多摩産材だ!というだけでなくいよいよ首都圏に国産材!!新宿パークタワービル5階

たまたま、3月7日土曜日の昼、(自転車で)新宿に行く用事があったので、訪問しました。

甲州街道沿い都庁の隣にそびえる、新宿パークタワ―ビル(東京ガスグループが所有者:そういえば、このあたりに大昔(昭和の中頃)、大きなガス貯蔵施設があったっけ?)。その3階から7階までリビングデザインセンターOZONという建築関係のショウルーム群のようなスベースがあり、その一角5階の一番奥のいいところ?に「国産木材の魅力発信拠点MOCTION」ありました!。(少しここにたどり着くまでに時間がかかりましたが、もう大丈夫)

120m3ほどの空間が二つに仕切られていて、左側は「国産材のオフィス空間」右側は、「国産材の普及PR空間」(右の図)

右側の普及空間スベースはこの日は青森県の関係者でつくっているSOMA青い森という団体が、企画した展示会をしていました。(3月一杯まで)

『新宿リビングデザインセンター OZONE で青い森を・・・』 3月新宿にてSOMAシリーズ全5点が長期展示

説明される方が数人いて(いった時は昼休みだったので1名)丁寧に説明してくれました。名刺も交換。それに基づいて概要説明します

(ターゲットはオフィス)

左が、チラシの冒頭のメインメッセージ。

「いつの間にか途切れてしまった都市と森林との繋がり、あなたと木々との繋がりを、MOCTIONの活動を通じて、まずはオフィスから取り戻していきたいと私たちは考えています。」

家づくりでなく事務所から。

ターゲットを多くのビジネス関係者のオフィスにしぼって、事務所に国産木材を!

わかりやすい戦略ですね。

オフィスを訪れたビジネスパートナーに、打ち合わせが終わったときに、家具や部屋の○○産の木材を手で触りながら、とある森林と自社との関係をポジティブにかたっているうちに、次の仕事の話が生まれるかも・・・

右の写真は配布された冊子の表紙で、ネット上にも掲載されているので、MOCTONの一部なのかと思っていましたが、これは、東京都公文書館の写真だそうです。

オフィス空間をこうしたらいろいろ話がはずむんでないですか?という例示なんですね(多分)。

(新しい東京モデルー隈研吾館長のメッセージ)

上記の筋書を理解するときにわかりやすいのは、MOCTIONの館長(なんだそうです)の隈研吾さんのメッセージ。

是非こちらをそうぞ隈研吾のMOCTIOM

つまみ食いします

「20世紀の都市ってある意味、超高層のニューヨークモデルでずっときて、世界中に広まったわけですよね。それに対するカウンターとして、東京の新しいモデルを立ち上げることができれば、21世紀の色んな都市のモデルになる可能性も十分あると思いますね。」

「これからの建築は、形を競うというよりも、空間の持ってる基本的な質感を楽しむとかね、そういう時代になってくる。その時、木質化っていうのは、単なるデザイナーのクリエイションや美観の問題じゃなくて、社会全体の健康化みたいな問題に関わってるという意識を持ってほしい。

日本の木の使い方って、トータルなシステムとして凄いと思っていて、木のどの部分を使うかっていう「木取り」みたいなところから、ある種洗練されたシステムを持ってる。そこを担ってるのが林業や木材産業の人たちなんで、そういう意味でも、ぜひ誇りを持って進めてほしいなって思います。」

林業や木材産業の人たちに向けた、すごい応援メッセージでもあり、重い課題も提起されていますネ。(がんばれ、がんばろう。)

(MOCTIONしよう!?)

MOCTIONが開設された」、というのが初めのMOCTIONという言葉との出会いだったので、新宿に開設された施設のことなんだと思ていました。

が、いろいろ話を聞くうちに、「隈研吾のMOCTION」?「みんなでMOCTIONしよう!」?

MOCTIONという言葉がどんどん広がっていく過程なんですね。

一歩広がった都市と地方の森林のコミュニケーションの具体的な活動。

勉強部屋でもMOCTION始めます。是非フォローしてまいります。時々新宿に自転車で行く用事があるので。

junkan3-21<MOCTION1>

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「2050カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略」を出発点として市民と共に歩む森林・木材政策にー森林分野技術士会会員への期待(2021/3/15)

森林部門技術者会の機関紙フォレストコンサル誌3月号の巻頭言に「『2050カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略』を出発点として市民と共に歩む森林・木材政策」と題する藤原の原稿を掲載していただきました。

どうもありがとうございました。

ーーーー

勉強部屋でも話題とした、2050カーボンニュートラルにむけたグリーン成長戦略と森林・木材政策を紹介しながら・・・・

これでは、少し足りないところがあるんで、森林分野技術士会の皆さん頑張って下さい!

ーーーー

ご了解をえて、本文をこちらに掲載させていただきました(ダウンロード→こちらから)。

要旨は以下の通りです。

 (カーボンニュートラル(以下CN)にむけて「成長戦略」だけでよいのか)

「成長戦略」だから産業界向けのメッセージになっているので、仕方がないことなのかも知れないが、CNという社会の大転換をしようというのに、主役である市民向けのメッセージがないことが、モノ足らないところである。

「皆さん、そんなにエネルギーを使う生活をしていてはだめですよ!消費生活をこう変えて下さい!」「手近にある資源を循環させる可能性のある地方の生活と、(効率性をもとめた)大都市の生活はどちらがCN?」などなど・・・。

産業政策に限っていうと、図2の右側の最終需要と結びつきが強い、「家庭・オフィス関連産業」との連携が重要だろう。森林・木材産業の物品サービスに関して、現在上記のように、⑫住宅・建築物産業での記述がされているが、さらに⑬⑭についてとの結びつきも重要だといえる。

(市民と共に木材利用の推進などフォレストコンサル会員への期待)

いずれにしても、グリーン成長戦略という産業政策をこえた市民を巻き込んだ政策が必要になってくるだろう。成長戦略が木材利用については、「高層建築物等の木造化や木質バイオマス由来の新素材開発など」といった開発課題が中心の記述になっているが、今後市民や需要者に木材利用の拡大の話をどのようにしていくのか?

そのために、Nature Sustainability誌に最近掲載された「地球の炭素貯蔵庫としての都市の木造ビル群」 といった、吸収固定量の話を市民に確り示しながら、直接市民と対話してくプロセスをぜひ開発する必要があるだろう。

木材利用を使った場合の環境貢献の「見える化」 や、Jクレジット(植林活動と森林経営活動の二つの「方法論」しかなく木材の利用にかかる方法論がまだない)などで、具体的な提案ができるようなシステムを開発していくことが大切!

一生懸命二酸化炭素排出削減に頑張った企業や自治体が、どうしても削減しきれなかった部分を、森林整備や木材利用の資金提供をしてカーボンニュートラル完成!!

 開発段階でなく普及段階のすぐやるべきことがたくさんありそう。

是非フォレストコンサルの会員の皆さんの出番がたくさんあるので、注目して頂きたい。

kokunai4-49<forestconsul>

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東日本大震災3.11_10年ー福島に国際研究機関をつくるとしたら(2021/3/15)

原発事故から10年たって、福島の今後をどうする?そういうというテーマでNHKの日曜討論をみていたら、福島の浜通りに国際研究教育機関を創るんだそうです。

世界中の科学者が福島にきて、研究したいことって何かな?

復興庁に、福島浜通地域の国際研究拠点に関する有識者会議という組織が立ち上げられ、昨年の2月に作成された報告書が公表されています。

「国際教育研究拠点に関する最終とりまとめー福島浜通地域Jの復興・創生を目指してー」(以下「とりまとめ」といいます)読んでみました。

左の図が「とりまとめ」で研究テーマのまとめた図(16ページ)です。

森林に関係ありそうなのは、①新産業創出分野の「農林水産業」、②原発事故対応・環境回復分野の環境影響フォローですが・・・

(農林水産業分野)

農林水産業分野というセッションに記述してあるのは、農地の利用者が少なくなったんで、農地を集積して、無人ロボット、センシング技術を利用した「スマート農業」の可能性がひろがったと、いうことです。圃場の水管理とか、獣害対策などが森林分野がすこし、関係あるかもしれません。

同じロジックで、スマート林業の展開、是非研究テーマに入れて欲しいですね。

(環境回復分野)

環境回復研究として記載されているのは「汚染状況モニタリング、放射能環境動態、食物や農作物への影響、放射線生命影響調査、低線量放射線被ばく、内部被ばく、放射性微粒子による被ばくの長期影響・発がんリスク等です。、」

これらは、「地域のレジリエンス強化や住民生活基盤の回復の面からも、被災地のニーズが高く必須の分野であるとともに、原子力政策を推進してきた国の社会的責任として、国として長期間にわたり科学的知見をさらに集積することが必要である。そしてこの分野の研究は、この地域だからこそできる研究であるとともに、国際的にも貢献できるものである。」

その通りですね。

原発事故のあと、周囲の森林につもった廃棄物がどうなっていくのかな?

生活周りでは除染作業が行われて、放射線汚染物質が取り除かれていきますが、森林ではそれができないので、長期に汚染物質がのこり続けます。

(チェルノブイリの環境回復分野の研究)

ーーーー

国際原子力機関IAEAが2006年に出版したチェルノブイリ事故をフォローした報告書を、日本学術会議が翻訳した「チェルノブイリ原発事故による 環境への影響とその修復: 20年の経験」がネット上に公開されています。

30年が半減期のセシウム137の動態は?森林生態系をめぐるカリウムの動態から推定できるんだそうです

260ページほどの報告書の16ページが森林に関するセッションにあてらています

 第1章要約
第2章序文
第3章 環境の放射能汚染
3.4. 森林環境 70
3.4.1. ヨーロッパの森林で放射性核種 70
3.4.2. 事故後初期の森林汚染動向 72
3.4.3. 森林における長期間の放射性セシウム挙動 ... 73
3.4.4. 林産食品への取り込み ... 76
3.4.5. 木材の汚染 ...... 79
3.4.6. 予想される将来の動向 .... 79
3.4.7. 森林と製品に関連する放射線被曝経路 .
第4章 環境への対策と修復 .
4.4. 森林での対策
4.4.1. 森林汚染への対策に関する研究 . 147
4.4.2. 放射性セシウムで汚染された森林への対策 147
4.4.2.1. 管理による対策 147
4.4.2.2. 技術による対策 . 149
4.4.3. 森林対策の例
第5章 人の被曝レベル .
第6章 動植物に及ぼす放射線影響
第7章 石棺シェルター【放射線防護壁】解体における環境と放射性廃棄物の管理

福島も関連データが積み重ねられているようです

森林総研の関連ページ森林と放射能
東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が各地に飛散し、森林も広く汚染されました。森林の樹木や生息する生物、木材、きのこ山菜等の特用林産物の汚染も心配されています。このサイトでは森林の汚染状況の研究結果を概説するとともに、森林への放射性セシウムの拡散や分布状況、森林内における放射性セシウムの動態、渓流水における動態、野生動植物、森林除染、木材、特用林産物に関する重要な情報源を収集しましたので、ご活用下さい。 

IAEAの報告書が2014年に出ているようです
The Fukushima Daiichi Accident(外部サイトへリンク)
東京電力福島第一発電所の事故に関する報告書が2015年に公表された(全5巻)。森林に関しては第4巻に記述があり、森林の汚染については4.1.2. Releases of radionuclides to the atmosphere and radioactivity in the terrestrial environment(大気中への放射性物質の放出と陸上における環境中の放射能)及びAnnex IIIに示されている。そのほか、動植物への影響については4.5. CONSEQUENCES FOR NON-HUMAN BIOTA(人以外の生物に及ぼす影響)に記述されている。

まだ、10年目ですから、先の長い取組になりそうですね。

国際拠点で、人類が20世紀に踏み出し(てしまっ)た原子力利用という巨大なプロジェクトの負の側面に真っ正面から向きあい、後世の人に対して責任を果たしていく仕事の大切な一部になるであろう、森林生態系と放射能について、の研究が積み重ねられることを期待します。

また、【震災10年】汚した山を「元の姿にして返そう」 福島で「150年」先を見据えた新たな動きといった取組についての情報発信がされていくとよいですね。

junkan1-24<fukushima-res-center>

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 東日本大震災3.11_10年ー勉強部屋ニュース259編集ばなし(2021/3/15)

大震災から10年。2万人以上の方がなくなりました。こころからご冥福お祈りします。

福島原発の廃炉作業の情報などが流れます。どれだけ、時間が掛かるか見通せないのだそうですが、森林の生態に対する放射線汚染の影響は、それより長いんでしょうね。森林の関係者の長い目線が大切なのかも。

森林のバイオマスエネルギー利用政策を批判する、500名の世界中の科学者が管総理に書簡。1週間ぐらい過ぎてから、担当するであろう林野庁の幹部に聞いてみたら、「そんなもの、来ていたのですか?エネ庁に聞いてみます」

結構重要な問題提起のような気がするんですが。重要な政策に関するグローバルな批判に立ち向かうのは、その政策にとっても大切なアクションだと思います。頑張って欲しいです。

日経新聞と都市木造化のはなしー都知事が20分にわたって政策紹介の続き、「地方と大消費地をネットワークでつなぐ拠点が新宿に」 MOCTIONいってきました。やっぱりオンラインより実際にいったほうがいいですね。さわって、においをかいで・・・

次号以降の予告、建築物への木材利用と炭素クレジットーGHGゼロ排出に貢献する道筋(132森林学会報告)、成長産業化創出モデル事業-財務省が関心を持つ理由、バイデン大統領の森林問題、地域の未来自伐型林業で定住化、森林ビジネスイノベーション研究会、御殿場の木質バイオマス発電ーローカルな林業の可能性、欧州の炭素国境調整措置の内容

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com