ニュースレター No.254 2020年10月15日発行 (発行部数:1560部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1. フロントページ:行政・市民・企業の役割ーシンポジウム:グローバル森林新時代(2020/10/15)
2. 生物多様性条約最近の達成状況と森林ーGlobal Biodiversity Outlook 5(2020/10/15)
3. 本の紹介:「脱・国産材産地」時代の木材産業(2020/10/15)
4. 大きな林業と小さな林業ー山林会オンラインシンポ「脱・国産産材産地時代」の林業・木材産業から(2020/10/1)
5. 都市から木と森林のことを考えるーー市民大学森と木とくらしゼミ(2020/10/1)
6. 日本と東南アジアの関係ーポスト天然林時代の東南アジア林業(2020/10/1)
7. コロナ渦の中の森林と都市の交流などー勉強部屋ニュース254編集ばなし(2020/9/15)

フロントページ: 行政・市民・企業の役割-シンポジウムグローバル森林新時代(2020/10/15)

9月26日林業経済研究所が主催したオンライン「シンポジウムグローバル森林新時代」にコメンテーターという立場で参加しました。

グローバル旧時代からいよいよ新時代に!4人の報告者から内容のびっしり詰まった報告

①拡大するグローバル環境問題の中での森林の位置づけ、②欧州が提起しているグリーンなリカバリーなどの新時代のコンセプト、③農産物などをとりあつかうビッグビネスの関係者の市場を通じた森林ガバナンスへの関心の拡がり。

大切な問題提起がありました。

全般を一度に報告することはしませんが、とりあえずのご報告をします。(主催者は月刊誌で結果報告としているので、ネット上の共有はこの記事が一番早い?)

 第1報告 森田香菜子氏森林総合研究所主任研究員 国際環境ガバナンスにおける森林に関わる問題の位置づけと課題 
 第2報告  籾井 まり氏Deep Green コンサルティング代表  ゼロ・デフォレステーション:国際企業はどんな対応をしているか
第3報告  川上 豊幸氏レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表  熱帯林減少への日本のサプライチェーンと金融による対応状況
 第4報告 内藤 大輔氏京都大学大学院農学研究科森林科学専攻 助教  熱帯アジアの森を取り巻く現状と人びとの暮らし(少々お待ち下さい
 コメント   藤原敬 林業経済研究所  グローバル森林「新」時代とはなにか?

((国際環境ガバナンスにおける森林に関わる問題の位置づけと課題ー森田報告))

このサイトがずーっと追いかけてきたメインテーマ(の一つ)に関する精度の高い最新情報なので別途報告しますが、とりあえず概要

(森林分野に関わる国際環境ガバナンス)

SDGs、国連気候変動枠組み条約、生物多様性条約の三つの国際制度が対象で、ご自身も一部関わっているフォローアッププロセスを通じてフォローしてきた最近のネット上に公表されている以下の情報が紹介されました。「森林のプレゼンスすこし少なくなっている」

SDGs:SDGsサミット政治宣言(2019年9月)(外務省の和訳骨子国連広報センタープ関連ページオリジナルの本文Political declaration of the high-level political forum on sustainable development convened under the auspices of the General Assemblyも含めた関連文書にこのページから行けます。

森林に関係あるのはパラ12(15のコミットの内の一つ)

12. We commit to achieving a world in which humanity lives in harmony with nature, to conserving and sustainably using our planet’s marine and terrestrial resources, including through sustainable consumption and production, to reversing the trends of environmental degradation, to promoting resilience, to reducing disaster risk, and to halting ecosystem degradation and biodiversity loss.

12 我々は、人類が自然と共生する一つの地球を達成し、持続可能な消費・生産をなどを通じて、我々地球の海洋・陸域資源の保護・持続的な利用を図り、環境劣化の流れを変え、強靱性レジリエンスを高め、災害のリスクを減らし、そして、生態系の劣化や生物多様性の損失を阻止することを誓約する。

森林Forestということばはできてきませんが、自然との共生、陸域資源の持続可能な利用、生物多様性の保全、森林政策の重要性が指摘されています

その他、気候変動枠組み条約では、「REDD+ は、期待されたほど民間の資金を動員できていない」という重要な指摘が。生物多様性条約では最近公表されたばかりの地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)など、最新情報。別途報告します

(ポストCOVID-19)

国連食糧農業機関(FAO)や国連経済社会局(UN DESA)のUNFF事務局等が、以下の通りポストCOVID-19と森林に関するポリシーブリーフ(政策提言)したんだそうです(これもすこし詳しく別途報告します)

The inpacts of COVID-19 on the forest sector: How to respond?(FAO202004)
Forest at the heart of a green recovery from the COVID-19 pandemic(UNFF202006)

国際自然保護連合(IUCN )と欧州委員会を提案Nature-based Solution(NbS)自然を基盤とした解決策を提案

IUCN(NbS)EU(NbS) Nature-based Solutions (NbS)自然を基盤とした解決策

(森林分野の科学と政策の関係)

森林に関する協調 パートナシップ (Collaborative Collaborative Collaborative Partnership on Partnership on Partnership on Forests Forests )
気候変動問題における科学・政策の関係
The World in 2050 ( TWI2050 )(2030 アジェンダの実施を支援する地球規模研究イニシティブ)

科学と行政の連携はグローバルにも進んでいます。「森林分野と他の分野の連携ももう少し、がんばりましょうね」。(別途報告します)

(( ゼロ・デフォレステーション:国際企業はどんな対応をしているか-籾井報告))

森林の減少は破壊は進んでいます(昔より緩和したが)。コモディティ(とりあえず日用品ですか)生産のため森林減少は 500 万ha/ 年 だそうです((2010 -2015 年) (50 million hectares destroyed as companies disregard zero deforestation pledge Greenpeace, 2019)

そこで、森林破壊を行わない商品(ゼロデフォレーション商品)を買いましょう、ということで、木材、畜牛、大豆、パーム油、天然ゴムのなどを中心に、そのサプライチェーンを管理する動きが広まっています。

(森林に関するニューヨーク宣言)

2020年までに天然林減少を1/2に、30年までにゼロにという宣言に200以上の企業や、政府機関が賛同しています(勉強部屋でも紹介→5年たった「森林に関するニューヨーク宣言」の進捗状況は?進捗評価レポート(2020/4/15)

このように、日本も署名した国連の合意システムのなかで、ゼロディフォレステーションを推進しています。(ただ、どんどん広まるというふうにはまだなっていない)

(NGO による評価)

関連企業が、ゼロディフォレステーションに取り組んでいるかどうか、NGOが様々な緻密な調査を実施して結果が公表されているようです。

その筆頭が、勉強部屋でも報告したCDP(→情報公開が試す地球環境を管理するグローバル企業の可能性ーCDPフォレスト2019公開(2020/6/15)。CDPは世界中の1500社に森林利用情報に関するアンケートを送付結果公表しています。

その他、Forest TrendsというNGOのSupply Change報告書Global CanopyForest 500等、熱帯林のデフォレステーションに関わりそうな企業に向けての組織的な調査が行われています。

Amazon,McDonald's、Unileverなどだれでも知っている名前が出てきていますが、・・・(この辺は別途報告します)。

(進捗状況に見る課題 とポスト2020)

大豆と畜牛に遅れ、 小売・製造業以外に遅れ、認証制度の差、製品割合へ依存ネット VS グロス、規制の問題 など課題はたくさんです

欧州がグリーンディールの中で、森林破壊フリーのサプライチェーンの定義を検討とか、企業だけでなく金融機関も対象にし他取組を準備中、とか、ゼロデフォレステーションの次の一歩が踏み出されるか。(このへんの前報告と一緒に別途報告します)

((熱帯林減少への日本のサプライチェーンと金融による対応状況ー川上報告))

前報告に引き続き、ゼロデフォレーション。こちらの方は(NGO側からの)「戦い」の記録です。企業のNGOのキャッチボールがでうまくきているのか?

(「問題企業」が森林破壊停止宣言)

PTABNパームオイルのメーカーが森林破壊禁止宣言をしました
もう一つ、オイルパームメーカーPT Mopoli Raya がオラウータン、象の生息地を守るための合意

(キーワードはNDPE)

NDPE (No Deforestation, No Peat, Exploitation)方針

— D森林減少ゼロ、火入れ禁止
— P泥炭地開発ゼロ、適性管理と回復へ
— E搾取ゼロ (土地権、労働権など人尊尊重)
— 責任投資原則 (PRI) メンバーによる投資家団体が推奨し様々な制度に影響を与えつつある (RSPOの基準強化も実現)のだそうです

パーム油大手Wilmer社のNEDPに関する声明

(森林と金融)

Forest and Financeというブログがあります

日本語の説明書森林と金融

あなたのお金が熱帯林を破壊している?
新しいオンラインツール-forestsandfinance.org-は東南アジアの森林リスク部門に流入する資金を明らかにしています。その特徴は以下です。
» 2010年以降の資金提供者と顧客の取引についての検索可能なデータベース
» 森林セクターの環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクに関連する銀行の方針の採点表
» 森林破壊や権利侵害に関連する顧客企業の事例

((熱帯アジアの森を取り巻く現状と人びとの暮らしー内藤報告))

熱帯林の現場から、コロナ、ボルネオの森林認証と合法性証明について、山火事についてなど、東南アジアの森林ガバナンスへの厳しい道程を紹介されました。

森林認証も色んなレベルがあって、認証が得られた合法なプロジェクトでも、先住民の権利を侵すリスクの可能性/FSC認証取得地域の地域調査の結果など現場の問題点/「自由意志による事前の十分な情報に基づく同意FIPC」など共有されるコンセプトが積み上げられていますが、それを第三者がどう評価していくのか大きなハードルが・・・

その他に山火事の煙害の健康影響調査、火災発生要因調査など・・・・

リアルな報告インパクトがありますが、別途情報をいただいたらご報告します。

((グローバル時代とは何かー藤原のコメント))

報告に対する個別のコメントに入る前に、グローバル新時代と何にか?を考えたい。二つの側面があります

(森林問題のグローバル化の歴史から新しい時代を読む)

私が行政にいたときに初めて、森林問題のグローバル化を意識したのは、1976年国連貿易開発会議(UNCTD)の一次産品総合計画18品目の中に熱帯木材が位置づけられるたこと。

途上国が、戦後社会のグローバル化のなかに、どのように迎え入れるか、(入っていくのか)重要な場面で、途上国は先進国の施しをうけるのでなく、途上国産品の市場での適正な取扱を求めて、問題提起。18品目の中に、日本が世界中の産品買い集めていた熱帯木材が入りました。

ということで「途上国問題という国際政治のもっとも難しい問題に、グローバルな森林問題は真っ正面から取り組まなければならない」課題を背負っています。

それから、1980年代はじめ米国政府の西暦2000年の地球、UNEP-FAOの熱帯林評価報告書。熱帯林が急速に減少していると報告→
これで、森林問題は地球環境問題になりました。

1992年UNFCCC,CBD,UNCCDが締結、準備過程森林条約の提案(G7)したが、途上国の反対実現せず。

このへんが、グローバル森林旧時代の始まりで、その後、次のような長い道のり。

政府のコンセンサスができない→【直接の理由】途上国ガバナンス問題、【対応】森林原則声明(全ての森林の持続可能な森林に関する基準作りなどUNFF)、【とりあえずの対応】国以外の関係者(環境NGOの市場を通じたアプローチ)、他の環境条約の枠内での議論

(グロバル環境ガバナンス条件)

グローバルガバナンスの条件(Oran R. Youngなど)①公平性、②明解性、③信頼できる遵守メカニズムが最低条件だと思います。

森林問題のグローバル化の歴史からまとめると
①公平性:途上国のガバナンスの難しさ
②明解性:森林リスクの共有・「持続可能な森林経営に関する共通したコンセプト」の共有が不足
③遵守メカニズム:市場を通じた規制(森林の管理のように管理地点が広大な場合商品に拠る管理が不可欠、貿易を通じた政府規制も視野に)、他の環境条約からのアプローチ

それともう一つ、新時代の要素は、コロナ後の回復に前と同社会にもどるのでなく、グリーンリカバリー。

 

少し長くなりましたが、今回の、4つの報告は、左の図のように、新時代の内容に応える大切な内容が含まれています!

以上コメントでした

そして、ディスカッションの最後にコメントをもとめられ、気になったことを一つ

(森林新時代は大変な道程ですが)

4つのプレゼンテーションと議論を聞いていた少し心配なのは、「国際的な環境の議論の場に森林問題が最近出なくなった」、「REDD+も当初考えていたほど資金があつまらない」、「企業にアンケートをしてもポジティブな回答が少ない」・・・

それぞれ、現状を冷静に見つめる指摘ですが、「森林ガバナンスというは、森林の様々な機能が重なっていて、それを整理して確り提示すること(信頼のできる遵守メカニズム)自体が大変なこと、だから条約ができなかったと言っても良いでしょう。いずれにしても、陸域の都市・農地・草地・砂漠・森林があるとすれば、もっとも難しい森林が合理的に管理できるようになって、始めて人類は循環社会にたどり着けたというぐらい、難しい大切な仕事なんで、頑張って下さい。」

以上です

百数十名の参加者からの意見などすべてがカバーされておらず、シンポジウの内容をすべてカバーされていいない、個人的報告でした。

今回の皆さんが提起された、①拡大するグローバル環境問題の中での森林の位置づけ、②欧州が提起しているグリーンなリカバリーなどの新時代のコンセプト、③農産物などをとりあつかうビッグビネスの関係者の市場を通じた森林ガバナンスへの関心の拡がり、など重要なポイント今後もフォローして参ります。

主催者の正式な報告は、今後「林業経済」誌に掲載されるそうなので、お待ち下さい。

kokusai1-13<GFsinjidai>

■いいねボタン

生物多様性条約最近の達成状況と森林ーGlobal Biodiversity Outlook 5(2020/10/10)

9月15日生物多様性条約の進捗状況をしめす報告書、地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)(以下の報告書といいます)が公表されました。

GLOBAL BIODIVERSITY OUTLOOK 5(条約事務局サイト)
地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)の公表について(環境省)

10年前名古屋で開催されたCOP10決定された、生物多様性戦略計画2011-2020及び愛知目標のとりあえずの目標年次が2020年で、その達成状況を目標年度で評価し、次のステップを検討する大切な報告書です。

森林に関する生物多様性の評価はどうなっているのか。概要を示します。

右の図が報告書の愛知目標の達成状況を総括した図です(環境省作成)。

愛知目標で4つの戦略目標と20の目標が設定されていますが、黄色が部分的に達成した目標、赤が未達成目標です。

(森林を含む自然生息地の保全は?)

愛知目標5 「2020 年までに、森林(1)を含む自然生息地(2)の損失の速度が少なくとも半減し、また可能な場合にはゼロに近づき、また、それらの生息地の劣化と分断が顕著に減少する(3)。」の達成状況は、左のようなポンチ絵が掲載してあり(1)森林の生息地natural habitats in forest)の保全については、「進捗したが未達成」(黄)、その他の生息地の保全は「大きな変化はない」(赤)、そして、(3)生息地の劣化と分断が顕著に減少するは「達成から遠ざかる方向(紫)なんだそうです。]
三つの中で森林の保全はよい方。

以下のような説明があります

最近の森林破壊のスピードは過去10 年間より減速しているものの、その減速率は3 分の1程度にすぎないほか、一部の地域では森林減少が再加速している可能性がある。特に熱帯地域の最も生物多様性に富む生態系では、森林や他の生物圏における生息地の損失、劣化及び断片化は依然として高い状態にある。原生地域及び世界の湿地は減少し続けている。河川の分断も淡水域の生物多様性にとって重大な脅威となっているままである。
本目標は未達成(信頼性:高)

右の図は報告書に掲載されていた地域ごとの毎年の森林の拡大と消失とする図です。真ん中から上が拡大、下が消失、左から、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北中米、南米、合計です(Fig5.1)

(持続可能な林業は?)

愛知目標7は「2020 年までに、農業(1)、養殖業(2)、林業(3) が行われる地域が、生物多様性の保全を確保するよう持続的に管理される。」

こちらの方は、三つとも進捗あるが未達成(黄)。以下のような解説が。

「近年の農業従事者主導によるアグロエコロジーのアプローチ等により、持続可能な農業、林業及び水産養殖業を推進するための努力は大きく拡大。高い水準ではあるが、肥料及び農薬の使用は世界的に安定している。こうした進捗にもかかわらず、食料や木材の生産景観における生物多様性は低下し続けており、食料及び農業生産は引き続き世界的な生物多様性損失の主要な要因となっている。
本目標は未達成(信頼性:高)。」

色々努力はしているが、生物多様性の保全を確保するよう持続的に管理はされていない、ということですね。報告書本文の当該部分の林業関係は以下の記述があがありました。(66-68ページ原文は英文藤原訳)

With regard to the sustainable management of forests, actions noted in the sixth national reports include the decentralization of forest management, improving forest governance frameworks and capacity-building, promoting restoration, encouraging forest certification, and updating and reviewing forestry licences. Some reports also note actions related to compensating or incentivizing landowners not to cut forests, and to promote silvicultural practices that also help with poverty alleviation.

Countries have provided comprehensive information on the status of forests as part of FAO’s Forest Resources Assessment (see also Aichi Target 5).20
Globally, about 1.15 billion hectares of forest is managed primarily for the production of wood and non-wood forest products, a relatively stable area since 1990. In addition, a decreasing amount, now about 750 million hectares, is designated for multiple use.

The area of forest under long-term management plans has increased significantly to an estimated 2.05 billion hectares in 2020, equivalent to 54% of the forest area, an increase of around 10% since 2010.21
The area of forestry certified under the Forest Stewardship Council (FSC) or the Programme for the Endorsement of Forest Certification (PEFC) schemes has increased significantly within the last decade (by 28.5% during 2010-2019). This indicates a growing proportion of timber production for which there is third party verification of responsible forest management with regard to biodiversity conservation, as well as social, economic, cultural and ethical dimensions.23

Despite these advances, overall, biodiversity in forests continue to decline.24
 森林の持続可能な管理に関して、第6回各国報告書に記載されている行動には、森林管理の分散化、森林ガバナンスの枠組みと能力開発の改善、回復の促進、森林認証の奨励、林業ライセンスの更新と見直しが含まれている。
いくつかの報告はまた、森林を伐採しないように土地所有者を補償または奨励し、貧困緩和にも役立つ造林慣行を促進することに関連する行動に言及している。

各国は、FAOの森林資源評価の一環として、森林の状況に関する包括的な情報を提供している(愛知県の目標5も参照)。
世界では、約11.5億ヘクタールの森林が主に木材および非木材林産物の生産のために管理されており、(この面積は)1990年以来比較的安定している。さらに、現在約7億5,000万ヘクタールの減少量が、複数の用途ににより生じている。

長期管理計画が作成されている森林面積は、2020年には推定20.5億ヘクタールに大幅に増加し、森林面積の54%に相当し、2010年から約10%増加してる。21
森林管理協議会(FSC)または森林認証プログラム(PEFC)スキームの下で認証された林業の面積は、過去10年間で大幅に増加した(2010〜2019年の間に28.5%増加)。これは、生物多様性の保全、ならびに社会的、経済的、文化的、倫理的側面に関して責任ある森林管理の第三者検証が行われている木材生産の割合が増加していることを示している23

これらの進歩にもかかわらず、全体として、森林の生物多様性は低下し続けている24
 21. Globally Important Agricultural Heritage Systems. http://www.fao.org/giahs/en
22. Taken from Figure 4.3 of FAO. 2019. The State of the World’s Biodiversity for Food and Agriculture, J. Bélanger & D. Pilling (eds.).FAO Commission on Genetic Resources for Food and AgricultureAssessments. Rome. 572 pp. http://www.fao.org/3/CA3129EN/CA3129EN.pdf.
23. IPBES (2019): Global assessment report on biodiversity and ecosystem services of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services. E. S. Brondizio, J. Settele, S. Díaz, and H. T. Ngo (editors). IPBES secretariat, Bonn, Germany; Biodiversity Indicators Partnership (2020). Area of forest under sustainable management: total FSC and PEFC forest management certification. https://www.bipindicators.net/indicators/ area-of-forest-under-sustainable-management-certification
24. FAO. 2020. The State of World Fisheries and Aquaculture 2020. Sustainability in action. Rome. https://doi.org/10.4060/ca9229en

kokusai3-11<CDBOL5>

■いいねボタン

 本の紹介:「脱・国産材産地」時代の木材産業(2020/10/10)

森林技術誌に標記に本の紹介を掲載させていただきました。

ウッドマイルズフォーラムの新しい運動について、建築関係者と議論をする時にベースとなっていた、重要な本です

ご了解をえて、全文を掲載します。

森林技術2020年9月号No.941、P34~35掲載

 吉野スギ、北山スギ、尾鷲ヒノキ・・・国産材産地。周辺の地域の人々により丁寧に造成されてきた森林の木材生産機能を消費者に伝達してきた、森林と消費者を結ぶ「産地」ということば。これをキーワードに、最近の木材産業の大きな動きを分かり易く紹介したのが本書である。

結論を要約すると、国産材は、均質・大量・安定して建築材を供給する輸入材と対抗するために、サプライチェーンが大規模・短絡化し人工乾燥材、集成材と工業製品としての機能を追求する中で、「産地」という地域性に規定されるのでなく、企業のブランドによって規定されることになった。「『新』産地化でなく『脱』産地化」

2000年代から始まった、民間企業への補助金を投入も含む、「新流通・加工システム」、「新生産システム」という、思い切った林野庁産業政策が実を結んだ、ともいえる(政策担当者も執筆)。

さて、脱産地化した木材産業は、グローバル化した国際市場に立ち向かう我が国産材業界の成功物語でもあるのだが、ローカルのたががはずれて、森林はいったいどうなのだろうか?本書冒頭第一章で、「脱・国産材産地時代」が「新たな木材産業構造形成の序曲」である、といっているように、本書はこの先をにらんだ構成となっている。山林所有者への書面調査の結果なども含め、示唆しているように、脱・国産材産地時代を主導する大規模な加工事業者が、山林を所有して次世代の森林造成の旗手となる可能性があるのか、重要なポイントである。

このテーマについては、輸入材のグローバルリズムに国産材大規模事業者がグローバリズムで対抗する「大きな林業」とは別に、森林関係者・地域の木材関係者と、地域の建築関係者・消費者が連携する「新たなローカリズム『小さな林業』」といった、いろいろな絵が描けるだろう。

本書の問題提起をうけて、次のすばらしい完結編にむけた議論が深まることを期待する。

junkan8-8<datusantijidaibook>

■いいねボタン

大きな林業と小さな林業の関係ー山林会オンラインシンポ「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業から(2020/10/10)

9月17日開催された大日本山林会シンポジウム「「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業」に(オンライン)参加しました。

本年3月に大日本山林会から出版された「「脱・国産材産地」時代の木材産業」という書籍の執筆者を中心にした報告とディスカッションでした。

この本については、ちょうどウッドマイルズフォーラムの中で、国産材時代といわれているが、山づくりは大丈夫なのか?という「「地域の家と小さな林業」全国ネットワークを求めて」と言った議論をしていくなかで、今回の著作はグローバル化の進展状況を示しているが、新しいローカリズムという視点がたい大切なのでないかと、議論をしてきた経過がありました。

ちょうど、森林技術誌に本の紹介をしたばかり。

輸入材のグローバルリズムに国産材大規模事業者がグローバリズムで対抗する「大きな林業」とは別に、森林関係者・地域の木材関係者と、地域の建築関係者・消費者が連携する「新たなローカリズム『小さな林業』」

報告の概要を紹介します

ーーーーーーーーーーーー

(「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業一新たな木材生産構造形成の序曲一遠藤(基調)報告))

著作の編者で有り、冒頭の報告にあたった、鹿児島大学名誉教授遠藤日雄氏

、これまでの産地形成の歴史をレビューしながら本書の位置づけ説明する。

(戦前の産地形成)

、戦前型林業産地の特徴は、(吉野林業地が灘、西宮の酒造業と結びついた樽丸生産技術〈密植・多間伐・長伐期施業〉、飲肥地域が台風常襲地域のためスギ挿し木造林(疎植)瀬戸内の造船業と結びついて弁甲材産地、など))固有の使用目的に対して、もっとも適合する木材を生産する産地としての性格をもつもので、あった。

(戦前産地の変質と戦後製材産地形成)

①高度経済成長によって木材需要が全国的規模に拡大。②地方の少量、分散、間断的な木材生産を集積して中央消費市場へ木材を供給していた産地問屋の役割が大幅に低下。

こうした産地問屋の機能の低下に代わって、少量・分散的な木材生産と地方需要を結合する機能を製材業(素材生産業)が担うことになった。したがって「脱・国産材産地」の「国産材産地」とは製材産地となった(東濃ヒノキが典型

もともとの林業産地は農産物産地と同様、地域の森林の特性に規定されていたが、製材産地になることにより、また製材が性能を重視するEW化することにより、地域から離れて加工過程の特性い規定されることとなった(脱産地)

((「脱・国産材産地」化を進める木材産業一地域ブランドカ、ら企業ブランドへー・・・山田壽夫木構造振興代表(もと林野庁木材課長)報告))

山田氏が行政の木材行政の責任者となった時、新たに制定さえ森林林業基本法に基づく、森林林業基本計画策定議論の中で国産材利用の方向を議論(左の図)

(森林林業基本法に基づく国産材利用の方向性)

木材の需要構造の変化(品質・性能の重視等)する中で、①小規模でロットが小さく、新規殴備投資も進まない木材加工過程、②複雑多段階で高コストな木材流通過程などが重要な問題に

その課題に対応するため、二つの対応策を提示

①大量消費の市場に向けた取組

コスト、ロット、品質で外材に対抗しうる製品を大手住宅メーカ一等に供給するため、
ースケールメリットを活かした徹底した低コスト化と大ロット化を促進、
ー利用技術開発を通じた国産材の集成材、合板等の製造を促進

②顔の見える木材での家づくりの取組

関係者が連慌して、最終消費者のニーズに応じた多様な製品を供給するため、地域の特色を活かしつつ、顔の見える木材でのいえづくりシステムを構築

(取組の成果)

大量消費の市場に向けた取組については、2002年から新流通・加工システム、2024年から新生産システムというかたちで、助成システムを改定して「国産材の商品製造を低コスト化し、国際競争力のある体質にする」方向に。

右の図のように、大きな成果が上がる。

国内製材工場の大規模化、効率化した、

顔の見える木材の小さな林業の方は、各地に定着しているが、主流にはなっていない。

(脱・国産材産地時代の木材商品)

国産材産地とは、すでに存在せず、そこには、市場が必要とする商品が存在するだけ

川下の木材産業は市場が必要とする商品をつくり、その材料として国産材が選んでもらえるような取り組みを川上の林業がすることが基本

川下分野では商品の規格・品質・性能の向上が求められる基本的な流れは不変と考えるが、既存概念にとらわれず、将来の木材製品の動向を見通し、中国など世界市場での競争を視野に入れて、木材産業界自身が木材産業の体質・体力を作っていくこ

そのことが、川上である森林所有者への利益の還元になり、資源、の循環利用で、林業が本当の意味で、成長産業となり、新しい国産材産地になる

(「脱・国産材産地J化を進める住宅・プレカット産業の展開ー坂野上報告))

(拡大変化するプレカット業界)

建築材流通の中で、プレカット工場に流通が急増(左図)

そのプレカット産業は大きく変化競争が進んでいる

①大型化と淘汰の時代
②プレカット材が構造材だけでなく多機能化の時代
③さらなる効率化を目指して24時間稼働など

(脱国産材産地化時代の国産材需要とは)

口2000年代以降、プルカット向上の大型化、効率化の進展と、建築基準法品確法などの法制度改革で、変形やわれが少ない(人工乾燥材)KDや集成材への需要を高めた
□2000年代前半の積極的な設備投資は、大型プレカットやハウスメーカーが求める品質及び価格水準を備えた国産材製品を供給可能にした。
口管柱で先行していた国産材KD集成材の需要は、2010年頃からハガラ材でも拡がり、大手ハウスメーカーが主導している

(脱国産材産地化が産地になにをもたらすのかー新たな産地争奪競争)

□輸入材との価格競争の中で、国産材KD集成材にメーカーが原木産地に求める条件はっきびしい
□目合いがそろい、欠点の少ない丸太を材料として入手し、歩留まり生産性を向上させることは死活問題
□かつての銘柄材産地とは異なる基準の新たな『産地』要件が生じている。
『脱国産材産地化時代』は、新たな『産地争奪競争』が始まりっている


((四国における木材工業一旧木材産地の構造と新生産システムの相克一川田勲氏報告))

四国でも,素材生産量は、製材用、合板用、チップ用材とも増加しつつ有り、最も大きな需用者である製材が大型化しつつある

大型製材所は来歴は、①既存の工場協業化、再編、②大型外材工場が国産材に転換、③森林組合の広域合併と加工基盤強化、④資源をもとめて他地域の大型資本が新規と投資など多種多様

(国産材の需給逼迫と広域流通の課題)

①四圏内森林資源の成熟と国有林材供給の増大
②進む需要の大型化と新規需要の発生→木材需要の大幅アップ
③大型需要に対応した木材流通の再編
④従来型流通機構(市売システム等)の崩壊と小規模製材工場の後退
⑤四圏内素材生産量の大幅拡大は限界
一地形・所有・生産基盤・労働力・価格・再生産一
⑥素材生産の拡大と広域集荷体制の確立

報告の内容は以上でした

(手を上げて質問ーオンラインシンポジウムの進め方)

後で聞いたら、150名近い参加者が聞いていたらしいのですが、当方はそれがわからず、司会者が時々、ご質問がありませんか?というのですが、余り手が上がらず。

そこで、遠慮しながら?おずおずと手を上げて気になっていたことを質問してみました

(ローカルなたがが外れたら森林はどうなるの)

2000年代から始まった、民間企業への補助金を投入も含む、「新流通・加工システム」、「新生産システム」という、思い切った林野庁産業政策が実を結んだ、脱産地化した木材産業は、グローバル化した国際市場に立ち向かう我が国産材業界の成功物語でもあるのですが、「ローカルのたががはずれて、森林はいったいどうなのだろうか?」と心配があります。

(問1)山田さんに伺います。山田さんが産業政策に関わっていたとき、本日のメインテーマである「①大量消費の市場に向けた取組」の他に、「②顔の見える木材による家づくりの取組」について話をされたので、興味深く聞きました。本日の主たるテーマではなかったようですが、顔の見える木材での家づくりについて、どのような評価をされていますか?

(答)報告の中で示したように(左の図)、顔の見える木材でのいえづくりというのは、地域によって確り根をはり、存在感を示しています。今後大切な役割を果たしていくでしょう。

(感想)と前向きの答弁をいただきましたが、図の中にあるように、増えてきたといっても年間2万戸程度ということで、マーケットの主流にはなる気配はないですね。

この運動が、地方の特殊な方たちの素晴らしい文化運動のようなかたちで細々と続いていくのか、次世代の森づくりに影響をあたえるような運動になるのか、気になっています)

関連して

問2)四国の話をされた川田さんに伺います。四国は九州と違って皆伐でなく間伐材に依存する割合が多いですが、皆伐が増えていることは間違えないでしょう。皆伐跡地の森づくりという視点に対して、メインプレーヤとなってきた大規模事業者の方々はどのような意向をもっていますか?。(「なにか元気の出る話ありますか?」と言ったかどうかわすれましたがそんなニュアンスの質問)

(答)難しい質問です。なかなか、「こんな良い事例があります」と答えられません。(と率直なご回答をいただきました)

(大きな林業と小さな林業)

以上が私の目から見た、シンポジウムノやりとりです。

終わってから、山形から参加されていた、ウッドマイルズフォーラムの藤本会長から連絡をいただきました。

重要なことなので、共有しておきます

「小さな林業は放置されるから川下が支えなければならない」と考えてきましたが大きな林業も同じだとは大変驚いています。川中の業界の責任を持った議論がなされるべきではないでしょうか

このコメントの背景は、ウッドマイルズフォーラムが検討している、「地域の家と小さな林業」の全国ネットワークを求めて」というプロジェクト。

林業成長産業化の山側の条件である循環型資源である森林の次世代がうまく形成されているのだろうか?などなど、少し長くなりますので、近々ご報告します

junkan8-7<sanrinsinpo>


■いいねボタン

 都市から木と森林のことをる考えるー市民大学森と木とくらしゼミ(2020/10/1)

東京山の上大学という市民大学を運営されている方に誘われて、同大学のシリーズ「森と木の暮らしゼミ」第3回目として9月19日「都会から木と森林のことを考える」という題で話をさせていただき楽しいディスカッションをさせていただきました。

(東京山の上大学との出会い)

ある日の知人の紹介で、区内の建築事務所をしている建築家海田さんまちづくりを仕事にしている横山さんにお会いすることになりました。

海田さんは、「文京区の木質化計画」を立ち上げ(都会のビルに東京の木を貼るDIYイベント|文京区木質化計画本郷のビルに東京の木をはろう/文京区木質化プロジェクト第一弾)、横山さんと一緒に東京山の上大学という市民大学の共同代表をされています。

市民大学のなかに「森と木と暮らしゼミ」があり、勉強部屋ページを作っている藤原が文京区民であることが解ったので、「なんとか協力できないか?」

話は文京区の森林環境譲与税に及び、「「老朽化した学校施設の内装を多摩産材をつかった部材で改装する」そうだけれど、どこにどう使われているのか解らないし、こういうこが、そーっと行われていて、区民が森林のことを考えるきっかけになっていないのはおかしい!!」

文京区木質化計画もびっくりだし、森林環境譲与税で色んな可能性が広がるすばらしいはなし、ということで、「お役に立てることがあれば、何でも」、となりました。

((都会から木と森のことを考える))

山の上大学は「東京・山手線の上半分あたりの街の活性化と、何かをはじめる人を応援する市民大学」なのだそうで(山の上大学とは)、市民で、街を木質化などに関心がある方むけの入り口の情報を解りやすくという趣旨でお話ししました。

内容は、①都会で木材を使うことの意味(地球環境にとっての木材利用、住環境にとっての木材利用)、という本論をお話しした後で、具体的なアプロートをする場合の大切な話として、②違法伐採問題などの取組状況、(消費者のグリーンパワーへの期待)、③森林と消費者を近づけるウッドマイルズ、④知ってる?森林環境譲与税。

ご興味のあるかたは、都会から木と森のことを考えるプレゼン資料をこちらからに置いておきますのでどうぞ。

かいつまんで要旨を紹介します。

(都会で木材つかうとー地球環境にとって)

二酸化炭素がどんどん増えて、はやくゼロカーボンの社会を作らなければ!(左の図)

木材をつかうことは、森のCO2吸収能力を、都会にまで広げる大切な作業。

それから、建築材料としての木材は、鉄やアルミニュームと比べて、製造時のエネルギーが3-4桁少ない。

二酸化炭素をたくさん出す資材を代替する効果有り。

(都市で木材をつかうとー生活する人にとって)

木が周りにあると、心身不調を訴える率がすくないという、特別養護猟人ホームを調べた結果があります(左の図)。

樹木が自分を腐朽からまもるためのツールをもっていて、それが木の香りの中のフィトンチット(有機ガス成分)。これで住環境を安全に。

それから、木の物理的性質。

木の衝撃を吸収するのでけががない、熱伝導性が低いので暖かみがあり室内温度を安定させる、木の水分特性が室内の調湿に役立つなど。

優しい住環境を生み出します。

(違法伐採問題というリスクがありまして)

循環資源としての木材を、市民と一緒にサプライチェーンを確認していくツールがいくつかできていますので、よろしくお願いします。

(ウッドマイルズフォーラムとは)

近い山の木を使うと二つのメリットがあります!

一つは、• 輸送過程の環境負荷が少ないこと。

左の図のように、 一軒家を建てるのに必要な木材の輸送過程の二酸化炭素排出量は、地域材を利用すると欧州材を利用するより4トンの少ないのです。

もう一つは、 サプライチェーンの管理が簡単なこと。

家を建てるときに木材の持続可能性、合法性を建築関係者が気にしていますが、 地域材を利用すれば建築関係者や施主が木材伐採をした森まで把握できます。

近くの山でない場合は、サプライチェーンを管理するシステム(FSCやPEFCといった森林認証制度か、林野庁ガイドラインの業界団体認定など)に依存することになり(コストがかかる)

(森林環境税と森林環境譲与税)

森林の管理を確り行うため、2026年から国民は一人1000円森林環境税を支払うことになりました。

それを前提として昨年から各自治体に森林環境譲与税が配分されています。

税収入の3割が人口割りで配分されるので、文京区でも昨年8百万円国から配分があり(といっても区民が支払う額よりすくないですが)、これから増えて2千数百万円になります。

何に使われたの?

昨年度は「老朽化した学校施設の内装を多摩産材をつかった部材で改装する」ために使った(文京区の森林環境譲与税の使い道 (2019/4/20))とされていますが、どこにどんなに使われたのか、学校の生徒なども一緒になって、なんでなの?と森林のことを考える機会になればいいですね。市民大学の大切なテーマかも知れません。

ーーーーー以上でした

市民大学のますますの発展をお祈りします。

都会から木と森のことを考えるプレゼン資料をこちらからに置いておきます

junkan3-17<simindaigaku>


■いいねボタン

ポスト天然林時代雄東南アジア林業-林業経済学会2020年春季?大会シンポジウムから(2020/10/1)

9月4日林業経済学会春季大会のシンポジウムにオンライン参加しました。名古屋大学で3月に開催される予定が延期となって秋に春季大会イベントが開催されたモノ。

統一テーマはポスト天然林時代の東南アジア林業

結果は現時点で公表されていませんが、報告内容は、学会誌林業経済研究3月号Vol66No.12020に掲載されているので公開されています(下のリストのタイトルからダウンロードできます)。それをもとに概要説明します。

 タイトル  報告者  要旨
座長解題
「ポスト天然林時代」 
島本美保子
法政大学社会学部 

熱帯3地域の中でも,東南アジアは最も木材貿易のための商業伐採による影響が激しい地域であった。その結果一次林の伐採が進み,近年では人工林経営への移行がみられるようになった。

今改めて,天然林採取林業から人工林育成林業へと変化を遂げる東南アジア地域を取り上げ,人工林経営がどのように拡大したのか,その結果,資源管理・木材生産は持続的になされているのか,そして今後どのように変化していこうとしているかについで情報を共有し議論を深めることは,熱帯林の持続可能性を考える上で重要ではないか
検討に際しては,産地国内における政策(産業政策,資源政策等),産業(木材産業の発展,木材需要・木材輸出入の構造変化等),資源(天然林資源の賦存・利用状況等),および国際的な木材貿易・造林投資動向等の要因を整理した上で,人工林経営の経緯・現状を捉え直すと共に,天然林・人工林をあわせた木材資源の持続的育成および持続的な森林管理への影響について考察する。
 インドネシアにおける木材・木材製品生産の動向
 鮫島弘光
公益財団法人地球環境戦略研究機関
 世界的に木材原料の天然林資源から人工林資源への移行が進行している。そのプロセスを理解するため,天然林コンセッションの資源が減少し,人工林コンセッション,土地転換材,住民林業からの木材生産が増大するインドネシアにおいて,国内の木材と木材製品の主要な生産地,また両者の関係がどのように変化したのかを分析した。インドネシアでは, 1990年代までは主にカリマンタン,スマトラの天然林コンセッションで木材生産が行われ,域内で合板や製材品が生産されていた。2000 年代以降スマトラにおけるパルプ・チップ生産がインドネシアで最も木材を消費する木材製品製造業となり,原料は主にスマトラの人工林コンセッションからの木材が使われているが,他の地域の人工林コンセッションからの木材や,スマトラにおける住民林業によって生産された木材も使用されていると推定された。合板・製材品の生産の中心はジャワに移動し,ジャワの住民林業がその最大の資源供給源となるとともに,カリマンタンの天然林コンセッションの木材も使われている。カリマンタンでは天然林コンセッションの木材を主な原料とする合板生産が維持されているが,一部人工林コンセッションからの木材も使用されていると推定された。
 ポスト天然林時代のフォリピン林業  葉山アツコ
久留米大学
 1950年代から1970年代までフィリピンは,世界の主要丸太生産国,輸出国であったが,近年の国内木材生産量は拡大する木材需要に応えることができずにいる。2011 年の全面的天然林伐採禁止令によって採取的林業に終止符を打ったが,国有林地における育成的林業への展開は不発である。管理主体である国有林管理コミュニティ及び産業造林契約者ともに木材生産者になり得ていない。木材需要に応えているのは国有林地管理主体に比べて相対的に規制の緩い私有地における人工林造成者である。国有林地における育成的林業展開の不発は,戦後の採取的林業が国家アクターによるレント・シーキングと深く結びついたことに関連している。マルコス失脚後に誕生したアキノ政権以降森林・林業行政における「非マルコス化」が進んだ。その一つが周辺化されていた住民, コミュニティを新たな国有林地管理主体に据えたことであり,伐採権と密接に繋がっていた木材産業の放置であった。木材産業の衰退は,国有林地管理主体による人工林造成への投資意欲を阻害している。マルコスによる採取的林業の私物化への反動が,結果として国有林地における育成的林業の展開を不発にさせた。
 人工林材へと原料転換が進むベトナムの森林資源戦略  岩永青史
森林総合研究所
 ベトナムの資源政策は,東南アジア諸国の中では最も包括的に取り組まれていると言える。本稿では,その実施過程を明らかにするとともにそれら資源政策を実現に導いた森林資源戦略の背景を考察した。そのために、ベトナムの資源政策を,森林の動態と保護,木材加工産業における原料消費,木材の合法性と持続性という3つの視点から分析した。その結果,人工林資源を拡大した上で天然林伐採禁止や丸太輸出禁止を行ったという政策実施の妥当性や,国際市場に復帰するタイミングの良さ,そして人工林材に適した製品を国際市場に供給したことといった特徴を明らかにした。これらを可能としたのは,社会主義と市場経済が混合したベトナムの政治経済体制が,公共性と経済性を併せ持つ森林・林業に関連する課題解決に適していたからであると考えられた。
     


二つの質問を事前に提出してありました。

(質問1 人工林の持続可能性の確保に関する政府・公的機関の関与と可能性)

FSC・PEFCの第三者認証の普及が進んでいて、消費国もそれに頼る動きがある(EUのFLEGTとか日本のFITバイオマス燃料調達など)。

ただ、木材の持続可能性を担保するのに、すべてのサプライチェーンを第三者認証することには、経済的な非合理性があることは間違えない(EU域内でもそんなことはしていない)。

本来公的機関が確り機能すれば、それだけで(あるいは第三者認証、業界団体認定などと組み合わせて)木材のグリーンなサプライチェーンは効率的に達成できるのでないか、という立場で考えた場合(市場での競争相手となる化石資源の巨大なサプライチェーンによる効率的な供給システムに対して、市場の中で効率的に対処する意味でも)、3カ国の公的機関の森林の持続可能性を担保する、これまでの対応と今後の可能性は、どのように評価できるか?

公的機関の信頼性と、第三者機関の信頼性の比較、根拠なども含めて伺いたい。

(質問2 人工林造成(特に木材生産林)に関する公的資金(補助金)の投入とその根拠)

それぞれの天然林から人工林化への道に公的機関が様々な形で関与している。

公的資金がどの程度投入されているか?その条件は?

流域管理、自然公園の保全などさまざまな条件で公的資金が投入されているだろうが、木材生産林に対して公的資金がどのように投入されているのだろうか?

産業資本、地域住民など人工林の管理主体の違い、まったく木材生産が行われていない箇所における初期投資と一度販売された後の再造林投資など産業化の過程の違いなどによって公的資金の投入の度合と、根拠がちがってくるだろう。

再造林投資への公的助成については、市場側からの議論であるWTOの補助金協定などとの関係も検討されなければならないだろう。(日本の造林補助金の根拠との関係も視野にはいるかもしれない)

以上を踏まえて、各国の木材生産林の含む人工林造成に関する公的補助金の投入の条件、規模、その根拠などを伺いたい。()

 

学会のオンラインイベントでの質疑というのは難しいですね。対面でのやりとりとは違って、オンラインだとするとどなたが聞いているか解らないので、確り根拠のある回答しかできません。

問2については、政府の投入した資金に関するネット上の情報に関する情報いただきました。

インドネシアに関しては、環境林業省が公表している毎年の決算報告書(LaporanKeuanganKLHK)、年次報告(Statistik)を分析されるとよいかと(ただしインドネシア語)。https://www.menlhk.go.id/site/download
フィリピンについても森林管理局の年次統計を分析されるとその盛衰が分かるのではないかとhttp://forestry.denr.gov.ph/index.php/statistics/philippines-forestry-statistics

ありがとうござおました

住民支援のような枠組みの補助金の推移と、木材生産との関係、それ自体には関心を持ってもらえたのかと思います。



chikyu5-7<postNFSEasia>

■いいねボタン

 オンラインイベントについて(続き)ー勉強部屋ニュース254編集ばなし(2020/9/15)

先月につづいて、今月号も、9月4ポスト天然林時代雄東南アジア林業-林業経済学会2020年春季?大会シンポジウム、9月19日都市から木と森林のことをる考えるー市民大学森と木とくらしゼミ、9月17日大きな林業と小さな林業の関係ー山林会オンラインシンポ「脱・国産材産地」時代の林業・木材産業から、 9月26日行政・市民・企業の役割-シンポジウムグローバル森林新時代

4つのオンラインイベント関係の記事です

自宅にいながら何でもできて、運動不足気味ですが、四つ目のシンポジウムはコメンテータでもあり、緊張気味でインパクト大きかったです。

①拡大するグローバル環境問題の中での森林の位置づけ、②欧州が提起しているグリーンなリカバリーなどの新時代のコンセプト、③農産物などをとりあつかうビッグビネスの関係者の市場を通じた森林ガバナンスへの関心の拡がり、など特に、このサイトの作成に至る基本的なコンセプトに関する情報がいっぱいつまったものなので、確りフォローしていきます。

昔勤務していた全木連の人にあとであったら「聞いていました。よかったです!」、「藤原さんの画面の後ろにはってあったカレンダーが全木連のカレンダーだったですよね。」

他の登壇者のバックがそれぞれ綺麗なイラストなんで、どうしようかなーと、少し考えていたところだったので、そうだったか・・・

世に問題提起をするために挑戦したんでしょうから、うまくやってほしいです。

次号以降の予告、ポストCOVID-19と森林、自然に基づく解決策NbSと森林、文京区議会の森林環境譲与税議論、日本の森林の炭素貯留能力は本当はムチャクチャすごかった!、地域の建築と小さな林業の全国ネットワークー新しいウッドマイルズの可能性、、FITと森林認証システムSGEC/PEFCの場合

konosaito<hensyukouki>

■いいねボタン


最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara.takashi1@gmail.com