5年たった「森林に関するニューヨーク宣言」の進捗状況は?進捗評価レポート(2020/4/15)

2014年国連の気候サミットで採択された森林に関するニューヨーク宣言

森林の管理の国際化が必要な中で、1992年地球サミットの国際森林条約が不調になってから、とりあえず現時点で一番権威のある約束事項(日本政府も署名)で、大切なモノです。

このページでもフォローしてきました。国連気候サミットの「森林に関するニューヨーク宣言」など(2014/10/20)(原文のフル日本語訳文はこのページだけ

「目標1 2020年までに少なくとも天然林減少率を半分に抑え、2030年までにゼロにする」、という最初の目標年は本年ですが、それを前にして、5年間の評価レポートなどという報告書が昨年公表されました。

Latest Report: Five-year assessment of progress on protecting and restoring global forests by NYDF assessment partners

この報告書の日本語訳(抄訳)が、報告書作成者NYDF assessment partnersのメンバーとなっているIGES地球環境研究機関によって公表されました。

森林に関するニューヨーク宣言

日本政府を含む200の政府・国際機関・業界団体・市民団体などが署名して、森林減少を逆転する約束をした、その初動がどうなっているのか、内容を紹介します。

(目標1:2020年までに少なくとも天然林減少率を半分に抑え、2030年までにゼロにするー進展していない

上図左は、地球の森林の減少面積の推移、右が熱帯雨林天然林の減少面積の推移。森林に対するニューヨーク宣言がでたけれど、特に熱帯の森林に関して大きな壁がある。というのが一つの重要なメッセージです。

(うまくいかない理由は?)

「真剣に問題に対処することが求められている。今日までに実施された対応策は、体系的な変化を起こすには不適切である」(15ページFigure1)として、つづけて3点の以下の指摘をしています。

農業生産のための森林減少を防止する民間事業者の取り組みはまだ軌道には乗っていない。農業以外の産業は依然として森林にリスクをもたらしている
 
  資金が必要である.農業のためのグレー資金は、森林を守るためのグリーン資金の15倍以上もある。
森林のための気候資金は全セクターの1.5%に過ぎない。
 森林ガバナンスの改善のスピードは森林を効果的に保全するためには遅すぎる。それは土地所有権の付与、透明性、政策の採用、法執行力の強化を含む。


(それでどうしたらいいのか?)

概要の最後に「未来への展望:2030 年への道筋 」として以下の指摘があります


NYDF の目標を達成し地球温暖化を 2 度以下に抑えるためには、天然林、なかでも原生林の保全と再生が不可欠であり、特に熱帯諸国の森林再生と保全努力に着目することが重要である。しかしながら、生物の生息域と生態系サービスの回復には何十年から何世紀もの時間がかかることから、森林再生によって森林減少を相殺(オフセット)することは不可能である。森林再生は、森林減少防止の「代替策」ではなく、追加的な対策として活用することが重要である。

それと同時に、増加する人口を養いながらも土地への過度なプレッシャーを排除するためには、食料、燃料、繊維生産が直接的・間接的に引き起こす森林減少を減らさなければならない。このため、小規模農家と基本的ニーズを求める人々の生産システムの向上、様々なセクターの土地管理と実践の改善、そして富裕層が持続可能な植物性の食生活を取ること、食品廃棄と食品ロスの減少に向けた大幅な転換が求められる。

食料安全保障や公衆衛生、地域開発などその他の優先事項を目的とした政策は、それらのプログラムの優先事項に保全を取り入れるべきである。複数の目標を束ねる公共政策は、一つの目標しか持たない政策に比べより多くの幅広い資金支援を得やすいため、より強固となりえる。例えば、農業生産性に対する持続的な投資、土地の権利、公衆衛生、地域のインフラストラクチャーと制度への投資、市場へのアクセス、生物多様性、生態系サービスなどの目標は並列的に設定できる。さらに、政策がより効果的になるためには、ステークホルダーに対して説明責任を果たしながら実施され、その進捗が測定、モニタリングされなければならない。 

見て頂くとわかるように、森林セクターだけでなく、農業や他産業などの沢山のセクターが連携して本気になって取り組まなければならないという、メッセージ

署名した企業の中に、マクドナルドとかネッスルとか67の企業NEW YORK DECLARATION ON FORESTS Declaration and Action Agenda(list of endorsers updated in July 2017)向けの強いメッセージです。

(日本にとっては?)

宣言がでたときから、この宣言が日本の森林管理に対して、どんなメッセージがあるのかと思っていましたが、循環資源である木材の利用推進というコンセプトがはいっていないなど、気になっていました。ただ、資金不足という点では森林環境譲与税などの取組は、フォローアッププロセスの中で情報発信ができるのでないかと思います。

全体として、熱帯林に焦点が当たってきたということを考えると、世界中の商品を消費している消費者としての日本が注目を浴びてくるのだと思います。
森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムー森林政策への応援団の広がりは?(2018/3/18)

今後、パームオイルの持続可能性など、すこし関わったこともありまた、報告しますね。

kokusai2-74<NYDforest>  

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