ニュースレター No.248 2020年4月15日発行 (発行部数:1550部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 

                      一般社団法人 持続可能森林なフォーラム 藤原敬

目次
1 フロントページ:5年たった「森林に関するニューヨーク宣言」の進捗状況は?ー進捗評価レポート(2020/4/15)
2. 新型コロナヴイルスと森林(1)(2020/4/15)
3. 3月21日は国際森林デー(2020/4/15)
4. どうなる?日本の森林-暮らしを守る森」ゆくえ(「生活と自治」誌特集)(2020/4/15)
5. 新型コロナ非常事態宣言、年度替わりで変わったことー勉強部屋ニュース248編集ばなし(2020/4/15)

フロントページ:5年たった「森林に関するニューヨーク宣言」の進捗状況は?進捗評価レポート(2020/4/15)

2014年国連の気候サミットで採択された森林に関するニューヨーク宣言

森林の管理の国際化が必要な中で、1992年地球サミットの国際森林条約が不調になってから、とりあえず現時点で一番権威のある約束事項(日本政府も署名)で、大切なモノです。

このページでもフォローしてきました。国連気候サミットの「森林に関するニューヨーク宣言」など(2014/10/20)(原文のフル日本語訳文はこのページだけ、自慢!)

「目標1 2020年までに少なくとも天然林減少率を半分に抑え、2030年までにゼロにする」、という最初の目標年は本年ですが、それを前にして、5年間の評価レポートなどという報告書が昨年公表されました。

Latest Report: Five-year assessment of progress on protecting and restoring global forests by NYDF assessment partners

この報告書の日本語訳(抄訳)が、報告書作成者NYDF assessment partnersのメンバーとなっているIGES地球環境研究機関によって公表されました。
(右の図こちら→)森林に関するニューヨーク宣言

日本政府を含む200の政府・国際機関・業界団体・市民団体などが署名して、森林減少を逆転する約束をした、その初動がどうなっているのか、内容を紹介します。

(目標1:2020年までに少なくとも天然林減少率を半分に抑え、2030年までにゼロにするー進展していない

上図左は、地球の森林の減少面積の推移、右が熱帯雨林天然林の減少面積の推移。森林に対するニューヨーク宣言がでたけれど、特に熱帯の森林に関して大きな壁がある。というのが一つの重要なメッセージです。

(うまくいかない理由は?)

「真剣に問題に対処することが求められている。今日までに実施された対応策は、体系的な変化を起こすには不適切である」(15ページFigure1)として、つづけて3点の以下の指摘をしています。

農業生産のための森林減少を防止する民間事業者の取り組みはまだ軌道には乗っていない。農業以外の産業は依然として森林にリスクをもたらしている
 
  資金が必要である.農業のためのグレー資金は、森林を守るためのグリーン資金の15倍以上もある。
森林のための気候資金は全セクターの1.5%に過ぎない。
 森林ガバナンスの改善のスピードは森林を効果的に保全するためには遅すぎる。それは土地所有権の付与、透明性、政策の採用、法執行力の強化を含む。


(それでどうしたらいいのか?)

概要の最後に「未来への展望:2030 年への道筋 」として以下の指摘があります


NYDF の目標を達成し地球温暖化を 2 度以下に抑えるためには、天然林、なかでも原生林の保全と再生が不可欠であり、特に熱帯諸国の森林再生と保全努力に着目することが重要である。しかしながら、生物の生息域と生態系サービスの回復には何十年から何世紀もの時間がかかることから、森林再生によって森林減少を相殺(オフセット)することは不可能である。森林再生は、森林減少防止の「代替策」ではなく、追加的な対策として活用することが重要である。

それと同時に、増加する人口を養いながらも土地への過度なプレッシャーを排除するためには、食料、燃料、繊維生産が直接的・間接的に引き起こす森林減少を減らさなければならない。このため、小規模農家と基本的ニーズを求める人々の生産システムの向上、様々なセクターの土地管理と実践の改善、そして富裕層が持続可能な植物性の食生活を取ること、食品廃棄と食品ロスの減少に向けた大幅な転換が求められる。

食料安全保障や公衆衛生、地域開発などその他の優先事項を目的とした政策は、それらのプログラムの優先事項に保全を取り入れるべきである。複数の目標を束ねる公共政策は、一つの目標しか持たない政策に比べより多くの幅広い資金支援を得やすいため、より強固となりえる。例えば、農業生産性に対する持続的な投資、土地の権利、公衆衛生、地域のインフラストラクチャーと制度への投資、市場へのアクセス、生物多様性、生態系サービスなどの目標は並列的に設定できる。さらに、政策がより効果的になるためには、ステークホルダーに対して説明責任を果たしながら実施され、その進捗が測定、モニタリングされなければならない。 

見て頂くとわかるように、森林セクターだけでなく、農業や他産業などの沢山のセクターが連携して本気になって取り組まなければならないという、メッセージ

署名した企業の中に、マクドナルドとかネッスルとか67の企業NEW YORK DECLARATION ON FORESTS Declaration and Action Agenda(list of endorsers updated in July 2017)向けの強いメッセージです。

(日本にとっては?)

宣言がでたときから、この宣言が日本の森林管理に対して、どんなメッセージがあるのかと思っていましたが、循環資源である木材の利用推進というコンセプトがはいっていないなど、気になっていました。ただ、資金不足という点では森林環境譲与税などの取組は、フォローアッププロセスの中で情報発信ができるのでないかと思います。

全体として、熱帯林に焦点が当たってきたということを考えると、世界中の商品を消費している消費者としての日本が注目を浴びてくるのだと思います。
森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウムー森林政策への応援団の広がりは?(2018/3/18)

今後、パームオイルの持続可能性など、すこし関わったこともありまた、報告しますね。

kokusai2-74<NYDforest>  

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新型コロナヴイルスと森林(1)(2020/4/15)

このページでは「新型コロナウイルスと森林」に関するニュースを拾っていきます。

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ウェビナー:新型コロナウイルス、野生肉にとっての意味(4月16日18時(日本時間)から1時間)CIFOR
Webinar:COVID-19 and what it means for wild meat16 April 2020 16.00-17.00 GMT+7

動物から人間への病気の蔓延(人畜共通感染症とも呼ばれる)は、現在のパンデミックに照らして公衆衛生上の懸念事項です。現在世界100か国以上に広がっているCOVID-19も、中国の武漢の市場で販売されているセンザンコウまたはコウモリに由来すると考えられています。

パンデミックを抑制するための取り組みが加速するにつれて、多くの自然保護論者は、野生動物の狩猟と消費を禁止する中国の動きを歓迎しています。それでも、現実はそれほど単純ではありません。先住民または農村のコミュニティは、唯一のタンパク質源として野生の肉を消費することが多いため、禁止により、何百万人もの森林居住者が食料不安のリスクにさらされる可能性があります。

この課題にどのように対処しますか?この複雑な現実の調整点を見つけることができますか?

(こちらから登録

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EUの森林に関する政策:新型コロナウイルスがどの程度影響をあたえるか?(4月8日)
Forest related policy initiatives: How Covid-19 will affect them(fern25 8April)

今年度予定されているEUの森林政策に関する重要な予定リストたくさん準備中とういことががわかります。
EUの消費態様の変化と森林破壊防止に関する二つの調査報告書が準備中
 EU Action to Protect and Restore the World’s Forests
 An EU legal framework to halt and reverse EU-driven global deforestation.
EUの改訂森林政策にむけての報告書作成The European Forest Strategy – The Way Forward改訂
生物多様性戦略の変更を準備中
直接新型コロナ対策でなくてごめんなさい。でも新型コロナが普通の行政全般に与える影響・・・

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森林を保全すると、ウイルスを隔離できるか?(3月19日)
COULD KEEPING FORESTS STANDING HELP KEEP VIRUSES AT BAY?fern25 19 March 2020 Written by: Hannah Mowat )

「世界の森林を保護しようとする人々にとって、膨大なコロナウイルスの報道の中に、パンデミックの中で現れた新しい現実にどう向き合うか検討すべき、多くの信頼できる、刺激的な価値のある情報がある」として、以下を含む数本の論文を紹介。

The Nation, Think Exotic Animals Are to Blame for the Coronavirus? Think Again.By Sonia Shah

Scientists have fingered bats and pangolins as potential sources of the virus, but the real blame lies elsewhere—with human assaults on the environment.
科学者はウイルスの起源をコウモリやセンザンコウだと究明しているが、本当に非難すべきは野生生物ではなく、人類の自然破壊である

アカデミアの皆さんにとっては、この先どんな仕事の?展開になりそうなのか、面白い?です

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アマゾンの孤立先住民族も感染 ブラジル(4月11日)

ブラジルのマンデッタ保健相は8日、近代文明から孤立した生活様式を保っている先住民族ヤノマミ族から、新型コロナウイルス感染者が初めて確認されたと発表した。

部族の中には、熱帯雨林の奥深くで、石器時代に近い生活を行っている非接触部族も存在するが、近年は違法伐採と金の違法採掘業者などにより、その存在が脅かされている

 先住民族の多くは森林などの保護区内で生活し、20世紀中頃までは文明との接触がほとんどなかった。そのため、伝染病に弱く、1970年代には、はしかやマラリアの流行で多くの命が奪われた。新型コロナウイルスは非常に感染力が強く、先住民族の間で流行した場合、壊滅的な打撃を受けると懸念されている。

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junkan9-1<cov&fore>


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国際森林デー今年のテーマは森林と生物多様性(2020/4/15)

3月21日は国際森林デーだったのだそうです。

International Day of Forests(FAO)

上記サイトによると、「国連総会は2012年、3月21日国際森林デー(IDF)であると宣言しました。この日は、あらゆる種類の森林の重要性を祝い、意識を高めます。毎年、国際森林デーでは、各国が森林植林キャンペーンなど、森林や樹木に関連する活動を組織するための地域的、国内的、および国際的な取り組みに着手することが奨励されています。毎年の国際森林デーのテーマは、森林共同パートナーシップ(CPF)にによって決められます。

2020年のテーマは
Forests and BiodiversityーToo precious to Lose
森林と生物多様性。失ってしまうには貴重すぎる

上記サイトに充実したメッセージ動画が掲載してありユーチューブで公開されている(26分)ので、以下に共有します。残念ながら英語ですが、日本語の版が掲載されるようになれば取り替えます。

毎年森林文化協会が主催して、イベントをされていたようですが、今年は(多分)コロナでお休み。
日本語ではFRONTROWというページで、一番しっかりした解説有り。3月21日は国際森林デー、2020年テーマから祝い方まで!
ユーチューブにFAOの動画が日本語版で少し1分間

重要なイベントだったはずだけど、日本語のメッセージがあまりなくて、少しさみしいですね。

それで、キーメッセージを日本語訳して掲載しておきます。

Forests are home to about 80% of the world’s terrestrial biodiversity.
森林は、地球の陸上生物の約80%の生息、生育地である。

Forests and woodlands are made of over 60,000 tree species.
森林と林地は6万の樹木種から成り立っている

More than a billion people depend directly on forests for food, shelter, energy and income.
10億人以上の人々が、食糧、避難地、エネルギー、収入を直接森林に依存している。

Genetic diversity helps forests to cope with climate change and other threats.
気候変動、その他の脅威に対応するために、森林の遺伝的多様性が役立っている。

Biodiversity is under serious threat from deforestation, forest degradation and climate change.
生物多様性が、森林の減少、劣化、気候変動などによって厳しい脅威にさらされている。

Managing forests sustainably, and restoring them when needed, is crucial for people, biodiversity and climate.
森林の持続可能な管理と森林の保全は、人々、生物多様性、気候にとった極めて大切な要素である。

以上
来年は、はもう少し前、2月に紹介しますね。皆で準備して迎えましょう。

chikyu1-38<IFD2020>

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どうなる?日本の森林-「暮らしを守る森」ゆくえ(「生活と自治」誌特集)(2020/4/15)

生活クラブ事業連合生協連合会の月刊誌「生活と自治」誌12月号に「どうなる?日本の森林『くらしを守る森』のゆくえ」という特集が掲載されています。

森林政策は、川上から川下までのサプライチェーンを構成する多様な関係者の利害・関心事項が調整される過程で形成されていきますが、もっとも川下のエンドユーザで圧倒的多数が消費者、「生活者の視点」を自負する、月刊誌の特集の内容。

ものすごく新しいことが書いてあるわけではありませんが、将来の森林林業政策のドライバーとなる、関心を深めてきた最も多数の消費者の問題意識は?

ネット上に情報は掲載されていないので、、編集委員会の同意をいただき、内容を紹介します。以下「生活クラブ連合会発行 2019年12月号「生活と自治」No.608」が出典です。

特集1 相次ぐ林業の法改正、背景には何が?(PDFファイルこちらから
アベノミクスの成長戦略の柱の一っだった農業改革。その改革の手は、農地から森林へと向かった。林業界に求められる「成長」。その物差しは、木を大童に伐採する木材生産量か。それとも環境保全型の新たな担い手の増加なのか
国有林伐採の法律が成立/ここでもコンセッション/淘汰される小規校林業者/担い手育成に税金泊川を

特集2 若者に未来を託す町。「自伐型林業」で地域活性(PDFファイルこちらから
森林を管理する担い手の育成は大きな課題だ。法改正の目指す大規模化の方向とは別の、森林を守る方法はあるのか。町の財産である町有林を生かしながら、地域住民や移住者とともに小規模分散型林業を実践し、森林と集落の暮らしを守る鳥取県智頭町の活動を取材した
若手林業者に山を開放/いかに安心して経らすか/「山番」が森を守る

特集3 聞いてみました!水ジャーナリスト橋本淳司さん(PDFファイルこちらから
遠くにあって眺めたり出かけて行って森林浴。そんな癒やし効果ばかりが注目される森林だが、実はそれだけでなく、私たちの著らしを守るさまざまな役割を果たしている。水ジャーナリストとして多角的に水の問題を調査研究してきた橋本淳司さんは、水という視点からみると、防災や水源供給など、多くの人の暮らしを支えるその重要性が見えてくると言う
都市と森林の密接な関係/流域を知り、森林を守る/都市と森が支え合う

特集の一括したpdfファイルはここちらから

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現在の森林の次世代の森林をどように創っていくのか?やる気のある大規模の事業者が出てきてそれに任せて皆伐・再造林/ESGに依存?した持続可能な森林づくりで大きな林業が成立するには何が必要なのか?自伐林家が間伐を繰り返して長伐期林の森林を目指す小さな林業の道筋は?

戦後行われた1千万ヘクタールの造林地の森林づくりが燃料林の皆伐造林というローカルな活動がドライバーだったとすると、それから50年たった次世代の山づくりは都市の住民の理解と協力に係っています。大切なプラットフォームだと思います。

kokunai9-4<seikatutojichi>

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 新型コロナ非常事態宣言、年度替わりで変わったことー勉強部屋ニュース248編集ばなし(2020/4/15)

人との接触をさけ、テレワーク。頑張っていますか?もう少しの辛抱

入学式、入社式はとりやめになり新しい職場でどんなふうになっていくのか、戸惑っていらっしゃる方のいるでしょうが、おめでとうございます。連絡先が変わった方連絡をくださいね。こちらから

このサイトも皆様に支えられて活動を進めています。一般社団法人持続可能な森林フォーラムへの入会ご案内どうぞよろしく。

今月号、ニューヨーク宣言、国際森林デーと森林関係のグローバルガバナンスに向けた今までの大切な蓄積。このサイトでもしっかりフォローをしてきました。宣言の原文の日本語がこのサイトにしかありません。グローバルガバナンスと日本の森林のガバナンスの関係がもう一歩はっきりしないところがありますが。

次号以降の予告、顔の見える木材での快適空間づくりー事業の進展状況(続き)、、成長産業化地域と令和の山づくり、森林外交論続き、書評:諸外国の森林投資と林業経営-世界の育林経営が問うもの―、グリーンインフラ論と森林、勉強部屋の20年

konosaito<hensyukouki>

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp