ニュースレター No.183 2014年11月23日発行 (発行部数:1200部) | ||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。 情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。藤原 |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
フロントページ:第五次IPCC報告書温暖化緩和策としての森林管理の効率性(2014/10/19)
|
||||||||||||||||||||||||
気候変動枠組条約の政治的な動きの根拠となる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第五次報告書の統括報告書が、同パネル第40回大会が開催されていたコペンハーゲンで11月2日公表になりました。 Summary for Policymakers これで、三つの作業部会報告書とそれを受けた統合報告書のすべてが公表されたことにとになります。 各報告書の日本語版(政府による「確定訳」)は以下に掲載されています
上記の環境省の解説資料は、図版を中心に分かりやすく解説しているうえ、部会報告書の政策決定者向け要約のどこを引用したかが丹念に記述されているので便利です。 (2度未満シナリオ) 報告書で注目されたのは、気候変動を産業化前に比べて2度未満に抑えるというCOP15、,COP16での合意に関して、可能なシナリオが描けるのかどうかというポイントでした。 気温上昇2度未満に抑える「道筋ある」 IPCC報告書 (朝日) この2度未満を達成するためには、21世紀末には排出量0とするようなドラスティックな取組みが必要とされていますが、そのためには、21世紀後半には炭素分離貯蔵CCSの技術の確立と大規模な植林の二つが両輪となることが指摘されています。 その辺については、小HPのIPCC第5次評価第三部会報告書と森林(2014/4/29)を参照下さい。 (森林による削減の費用効率性論議) これらの議論の中で、森林の管理に注目が高まるのはよいことですが、少し気になるのは、森林による削減の費用効率性に関する議論です。 温暖化対策の国際的運動に大きな影響を与えた、スターン報告書でも、森林の減少対策は、「他の緩和策に比べて比較的安価に行えることを示唆している。」として気になっていたところです。(13ページ) 第5次報告書では全体に削減経路ごとの費用を分析して比較した結果を掲載した部分はありませんが(ないと思います)、土地利用と森林の部分には左図の解説があります。 「供給側の対策の経済的な削減ポテンシャルは、削減費用100ドル/t-CO2以下に相当する対策について2030年において7.2〜11GtCO2(森林・農業の双方を対象とした全ての研究成果を含めると0.49-11GtCO2)と推計され、そのうち、約3分の1は20ドル/t-CO2以下で削減可能」としています。 他の分野の削減も含めた削減費用推計を、排出削減に関するコスト面からの分析((財)地球環境産業技術研究機構(RITE)秋元圭吾)で見てみると、先進国の全体で、10GTまでの削減で600ドル/t-CO2をコスト推定され(上記14ページ)ており、今回の推計が極めて安価なことが読み取れます。 どんな計算がされているのか、今回の報告書ではわかりませんが、植林による二酸化炭素吸収源を管理をするのは、人と金と場合によっては地域の産業構造を変えることも含むきわめて困難な作業であること(ではあるが、不可能ではないやりがいのあるタスクである)など、共有される必要があるように思います。 kokusai2-49 <ipcc5-tou> |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
違法伐採問題、木材のサプライチェーンの特徴と林野庁ガイドライン、林業経済学会での報告(2014/11/23) 11月8−9日に宮崎市内で開催された林業経済学会秋季大会で、久しぶりに報告をしました。 環境経済・政策学会の大会(seeps2014)に引き続いてついて、報告のタイトルは「持続可能な森林経営にとっての合法性証明木材の可能性ーグローバル環境レジームの中での日本の林野庁ガイドライン意味」です。(報告要旨) 森林認証制度のCoC、違法伐採問題に関する日本の林野庁ガイドライン、欧州木材規則、米国のレーシー法などすべてサプライチェーンを通じて消費者・需要者が森林管理に関する関与のチャンネルを拡大し、森林管理お水準を引き上げるという取り組みであり、それぞれの特徴を生かして、使いこなしていくことが必要、との主張です。 (サプライチェーンを通じた原料採取地点の社会問題への対処事例) 同じような天然資源のサプライチェーンを通じた、原料採取地点の社会問題に対処する成功事例がいくつかあります。 紛争鉱物Conflict Minerals (他の天然資源製品と木材のサプライチェーンの違い) ダイヤモンド、金属、化石資源など、地中にある天然資源を採取し加工して消費市場に提供する様々な商品の流れは、高品質な原材料の産出拠点と、高度な加工が可能な加工拠点を結ぶ、太いサプライチェーンを持つものが多いものです。 これれらのサプライチェーンと木材のサプライチェーンの違いを示したのが、左の原材料(ダイヤモンド原石、鉄鉱石、工業用丸太)の生産国トップ10の生産比率と、原材料の生産量と輸出量の比較です。 太く短いグローバルなサプライチェーンを管理するには、@サプライチェーンを担うグローバル企業の社会的責任に頼って管理することが可能(紛争鉱物の上場企業への報告義務が効果を発揮している事例)であり、さらにA大半の商品が国境を越えて取引されるために、貿易管理ですべてを管理することが可能(紛争ダイヤモンド、原石取引に証明書の要求)です。 (環境に優しい木材をサプライチェーンで管理する方法) これに比べて木材のように、細くこまかい、グローバルでありかつローカルなサプライチェーンを管理するには、国境を通過しない可能性のある商品を第三者がチェックせずに管理する困難さがあり、サプライチェーンのすべて(上から下まで)を第三者が組織した伝達網を一部に構築する方法(森林認証のCoC)などが提案され実施されてきました。 また、問題の発生が途上国であるとすると、先進国・消費国の国境で輸入貿易にかかる企業(比較的規模の大きな事業者が多い)に一定の注意義務を要求し、サプライチェーン管理の責任を取らせるという方法(EU木材規則、米国レーシー法)が、提案されています。 これらの取組みと、前述の他分野の天然資源由来の商品把握の方法と比べると、サプライチェーンの中心で全体の管理に責任をとることができるプレーヤーがいないためのコスト負担力、市場における包括性というの二つの課題が見えてきます。 この点で、林野庁がガイドラインが示した業界団体によって認定された事業者による広くて薄いネットワークづくりは、大企業の社会的責任に替わって業界団体の社会的責任に依拠するのが、木材のサプライチェーン管理の手法として、意義のあるものです。 いずれにしてもサプライチェーンを通じて、消費者の力を森林管理に生かしていくことは、持続可能な森林管理にとって大切なことであり、それぞれのツールに磨きがかけられ、使いこなされることが大切だと思います。 boueki4-53<GSCMforgoho> |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
一般社団持続可能な森林フォーラム(勉強部屋のサポート体制)ができました(2014/11/23) 「持続可能な森林経営のための勉強部屋」は1999年以来藤原の個人的な作業で運営管理してきましたが、このたび(2014年11月)「一般社団法人持続可能な森林フォーラム」という団体ができて、このサイトをサポートすることとしました。 「『地球環境の視点から、日本の森林と木材を考える』産官学民の情報交流の広場をめざします」。がトップページ冒頭のキャッチフレーズです。 また、少しお休みしていますが英語のページのトップページは"Global Aspects of Japan's Forests and Views from Japan on Global Forests"(地球から見た日本の森林、日本から見た地球の森林)というキャッチフレーズになっています。
この二つのことをコツコツとやっていこうと思っています。 この勉強部屋は13年間ニフティのアドレスで運営してきましたが、年内には独自のドメインをもって運営を始めます。 団体の内容などのページも含めた小さな追加ページを作成し追ってご案内します。今後ともよろしくお願いします。 aboutme<aboutforum> |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
■いいねボタン
|