IPCC第5次評価第三部会報告書と森林(2014/4/29)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和)が7年ぶりに公表されました。

IPCC評価報告は三つの部会で作業が行われ第1作業部会「自然科学的根拠」、第二作業部会「影響、適応、脆弱性」、第三作業部会「気候変動の緩和策」でそれぞれが、昨年9月に第1部会、3月に第2部会の報告書を公表し、森林政策にとって重要な第三部会報告書が、今回公表されたものです。

公式のHPClimate Change 2014: Mitigation of climate changeには、本文政策作成者向け要約(どちらも英文)が掲載されています。

日本政府の公式サイト気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和)の公表について(文部科学省)には政策作成者向け要約のポイントが公表されています。

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温暖化ガス、50年に40〜70%削減必要 IPCC報告書公表

今回の報告書は、過去の温室効果ガスGHG排出要因とトレンド分析するとともに、公表された900の緩和シナリオを分析し、その結果、@温室効果ガスの排出急増のトレンドはつついていいること、AカンクンCOP16で合意された産業革命前に比べて2度以内の上昇におさえるという目標を達成するため2100年には大気中のGHG濃度450ppmとするシナリオ(現在430ppm、何もしないベースラインシナリオでは2100年には750ppm-1000ppmで4度以上上昇)が必要だとされています。

森林政策や木材利用拡大の施策が温暖化対策の関連で主張し議論されることが多くなっていますが、その根拠となるがが過去のIPCC第三部会報告書です。

本文の第11章が農業林業その他の土地利用とう分野に充てられています。(第4次報告書では第9章林業)が、長期的な緩和政策の全体的な分析の中でも森林が重要な役割を持っている部分があります。

第三部会報告書が森林政策にとってどんな意味があるのか、しっかり分析が必要ですが、とりあえず森林がどんな取扱いになっているのかを、メモをしておきます。

 温室効果ガス排出トレンドと森林

1750年からの排出量のうちこの70年に半分以上が排出され、そのスピードは弱まっていないとしているが、その中で、森林その他土地利用を要因とするものは、1750年から2011年でのうち三分の一は森林その他の土地利用、2000-2011年では12%となる。Table 11.1。(今まで第四次報告書の17.3パーセントをもとに約2割といっていた。)

ベースラインシナリオでも唯一排出量が下がる分野が森林分野

緩和シナリオと森林

2100年までにGHG濃度450ppmとる思い切ったシナリオでは、2100年時点で排出量がゼロとなる必要があり、再生可能なエネルギーを2050年までに3-4倍にし、そのために、エネルギー供給分野が二酸化炭素回収貯留(CCS: Carbon dioxide capture and storage)と連携すること、また、大規模な森林造成、持続可能な森林管理が必要(SP15ページ)

シナリオの中でCCSと森林が二つの依拠すべき方策であり、CCSによらないなら森林に多くを依存しなければならない。SP21ページ, FigureSPM7

 

林業や農業はそれ自体が温暖化により影響を受けるもので、緩和と適応の双方の両立が必要で、これにうまく対処したのが、REDD+の取組み。SP28ページ

バイオマスエネルギーは緩和において重要な役割をはたすが、大規模に展開するには生物多様性は環境への影響など不明確な点が多い。

といったところですが、産業革命以前と比べて2度上昇までという具体的な目標に向かって大規模なGHG排出削減の物語を書き始めると、結局空中から二酸化炭素を固定して地下深く貯留するというまだ始まったばかりの技術開発プロジェクト(グローバルCCSインスティテュート)に多くの投資をしてその不確定な行く末に期待するか、そうでなけれ、ある程度コスト効率が計算できる森林の持続可能な管理と造成に、にこれも多額の経費を投じているのか、とうことになっているようですね。多分両方が必要なのでしょう。

途上国も含めた広い面積で実施される森林造成と森林管理を確実に実施、結果を把握するシステムとコストの見える化など、IPCCのメインのテーマとして浮かび上がってくる必要があると思います。

kokusai2-47(ipcc5-3bukai)



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