ニュースレター No.1132009年1月24日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:気候変動枠組み条約COP14と森林の将来(2009/1/24)
2 第44回国際熱帯木材機関理事会から(2009/1/17)
3 グローバリゼーションの受容による地域林業再生(2009/1/17)
4. オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林吸収クレジットの認証基準(案)と持続可能な森林(2009/1/17)
5. モントリオール・プロセス第19回総会の結果(2009/1/17)

フロントページ:気候変動枠組み条約COP14と森林の将来(2009/1/24)


気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)・京都議定書第4回締約国会合(COP/MOP4)を始めとする一連の国連気候変動関連会議が、2009年12月1日〜12日の日程で、ポーランドのポズナンで開催されたました。

ポスト京都議定書の枠組みを決める来年のコペンハーゲン会合の準備という位置づけの実務的な会合であり、全般的な評価では「難題先送り」などの見出しが目立ちましたが、森林分野の議論については注目が集まったようです。(日本政府代表団 概要と評価

1月20日にJIFPROが開催した報告会に出席するなど情報収集をしてみました。

(途上国における森林減少に由来する排出の削減REDD)

次期枠組みの中で注目されている「途上国における森林減少に由来する排出の削減(REDD))」に関しては、会期中に、REDDの重要性に関する閣僚級共同声明が発表されました。
本文こちら
日本語仮訳こちら

また、「条約下の長期協力の行動に関する特別作業部会AWG-LCA」や「科学技術補助機関会合SBSTA」で「森林減少劣化」だけでなく「炭素の増加・森林保全」まで対象を広げるべきか、モニタリングを森林のみでなく競合するのうち等まで広げるべきかなど、の技術的な内容や作業スケジュールを確認したようです。

AWG-LCAのREDDの議論の結果は議長のとりまとめ文書(Ideas and proposals on paragraph 1of the Bali Action Plan Revised note by the Chair) ぱら52,53j,65m
科学技術補助機関会合SBSTA議長総括文書 Reducing emissions from deforestation in developing countries:approaches to stimulate action Draft conclusions proposed by the Chair

(国内の森林吸収源の取り扱い)

京都議定書の下で我が国は森林吸収量の3.8%の約束をしていますが、ポスト京都議定書で先進国の国内の森林吸収源の枠組みをどうするのか、が「京都議定書の下での特別作業部会AWG-KP」で議論されています。

全体として吸収量の計上を基準年と目標年との間でどのように計測していくか、などの議論がされているようです(小HPアクラ会合の結果)が、今回は今後の作業スケジュールを確認したということだったようです。

会場で「伐採木材の取り扱い」の議論について質問してみましたが、これからの議論なのだそうです。

コペンハーゲン会合の6ヶ月前となる6月には新しい議定書の草案が提示されるだろうとの見通しが示されました。

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第44回国際熱帯木材機関理事会から(2009/1/17)

昨年(2008年)の11月3日から8日にかけて標記会合が横浜で開催されました。
林野庁プレスリリース

最も大きなトピックスが、「熱帯木材生産林における生物多様性ガイドラインの策定」で、1993年に作成された現行のガイドラインを更新し、実に16年ぶりに改定し、採択しました。まだ生物多様性条約もなかったころのガイドラインの改定です。
Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Producing Forests

その他に、テーマ別プログラムの実施手法及びテーマの採択(森林法の執行、統治及び貿易、熱帯林における森林減少・劣化の削減及び環境サービスの促進、住民による森林及び企業経営の支援、貿易及びマーケットの透明化、林産業の開発と効率向上 )(テキストはこちら)、と、ITTO行動計画の採択ITTO Action Plan 2008-2013)と話題の多い、理事会でした。

また、気候変動枠組み条約の関係で以下の2つの文書が配布されています。

Tropical Forests and Climate Change: Summary of the Conclusions and Recommendations of the International Expert Meeting on Addressing Climate Change through Sustainable Management of Tropical Forests
Capturing Funds from Carbon Markets to Promote Sustainable Management of Tropical Forests

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グローバリゼーションの受容による地域林業再生(2009/1/17)

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの季刊「政策・経営研究」の昨年7月号2008vol.3の特集はグローバリゼーションn3.0ですが、そのなかに標記論題の論文が掲載されています。筆者は同社研究員の相川高信さん。

日本とヨーロッパ主要国との森林/林業概要の比較
日本 フィンランド スウェーデン ドイツ オーストリア
森林面積(万ha) 2512 2000 2753 1057 336
蓄積量(億m3) 40 21.8 31.8 33.9 10.9
年間成長量(万m3/年) n.a. 9700 12967 14587 3135
年間伐採量(万m3/年) 1600 5800 9870 6229 1914
Ha当たり 蓄積量(m3) 159 109 115 317 324
年間成長量(m3/年) n.a. 4.9 4.7 13.8 9.3
年間伐採量(m3/年) 0.6 2.9 3.6 5.9 5.7
相川132頁同上から作成

論文の冒頭に掲げられているのが上記の表ですが単位面積当たりの伐採量の比較に現れる、日本と欧州の林業の活性度の違い。この違いの由来は、この30年間のグローバル化の動きに必至で対応してきた欧州と、それができなかった日本の違いだ、というのが趣旨です。

生産性の問題のみならず、ガバナンスの強化のための法制度とそれを担う主体の問題、など幅広い問題提起となっています。

全文はこちらからpdfファイルグローバリゼーションの受容による地域林業再生The Acceptance of Globalization and Regeneration of Japanese Forestry
  1. 論文の背景と目的
  2. 論文のフレームワーク
    1. 比較軸
    2. 時間軸
  3. 本論
    1. 1980年代〜:労働生産性向上の時代
      1. 下降する木材価格、上昇する労働費用
      2. 農家林家の減少、経営サポートの必要
    2. 1990年代〜:環境対応の時代
      1. 「持続可能な森林経営」概念の登場
      2. ウッドショックの発生
      3. ヨーロッパにおける環境対応
    3. 2000年代〜:地政学的変動の時代
      1. バーゲニングパワーの交代、資源ナショナリズムの勃興
      2. さらなる資源利用率の高度化、付加価値向上の挑戦
    4. 日本林業の対応への遅れと、再生への枠組みの提案
      1. 日本のリアリティーのなさ、対応の遅れ
      2. 解決の方向性
      3. 提言:グローバルな共通の枠組みの導入
    5. まとめ:見えてくる未来
      1. 持続可能な中山間地域
      2. 世界レベルでの「持続可能な森林経営」への貢献

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オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林吸収クレジットの認証基準(案)と持続可能な森林(2009/1/17)

森林バイオマスの総合的管理に関連してくるカーボンビジネスサポート事業の一つ、カーボンオフセット事業に関して、投資の対象となる温室効果ガス削減対象事業として「積極的に促進支援すべきプロジェクト種類を予め特定し、ポジティブリスト及び適格性基準として公表することで、個々のプロジェクト事業者による追加性立証を代替する」としていますが、そのリストに載せるものとしてかねて検討中としていた、「森林整備等によるCO2 吸収(森林管理)」の案が公表され、パブリックコメントの対象となっています。(オフセット・クレジット(J-VER)制度における森林吸収クレジットの認証基準(案)に対する意見の募集について(お知らせ)

間伐促進型プロジェクト、持続可能な森林経営促進型プロジェクト、植林活動によるCO2吸収量の増大の三つのプロジェクトがリストアップされています。

それぞれの場合の適格性基準として三つの条件を提示していますが、三つ目に「持続的な森林経営の対象地」である要件として、「森林施業計画に基づく森林管理活動を第三者が検証する方法」を規定しています。

いままで、様々なところで持続可能な森林の話が議論されてきましたが、日本の森林法の施行のツールとして重要な森林施業計画との関係で議論されてきたことはなかったといえます。

森林法理念とその運用の実態を、持続可能な森林経営という国際的な議論の最先端の基準と照らして評価してみることが重要なことは言うまでもありません。などんな判断基準に従って森林施業計画を持続可能な森林の要件としたか。モニタリングの手続きとして何が必要か。施業計画を作成していない保安林は持続可能な森林経営の対象外なのか。などしっかりした議論が展開されることを期待します。

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モントリオール・プロセス第19回総会の結果(2009/1/17)

11月6日から10日までの間、ロシアのモスクワ及びロストフ(モスクワ郊外)において、我が国をはじめ、米国、カナダ、ロシア、中国等の9カ国が参加し、持続可能な森林経営の基準・指標の作成と活用を進める「モントリオール・プロセス」の第19回総会が開催され、3年間に及んだ指標の改訂作業を完了するとともに、来年10月に開催される世界林業会議に向けた概要報告の作成等が決定されました。林野庁プレスリリース

日本の林野庁が運営するモントリオールプロセス事務局のページから基準指標の新旧がダウンロードできます→こちらのページから

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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