ニュースレター No.101 2008年1月13日発行 (発行部数:1350部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1 フロントページ:気候変動枠組み条約COP13と持続可能な森林(2008/1/13)
2 世界と日本の森林認証の現状2006 (2008/1/13)
3 エコマーク事務局「持続可能な森林資源の活用のあり方検討会」報告書(2008/1/13)
4 米国の強力な違法伐採対策立法:レーシー法の概要(2008/1/13)

フロントページ:気候変動枠組み条約COP13と持続可能な森林(2008/1/13)

昨年(2007年)の12月3日(月曜日)から15日(土曜日)の間、インドネシアのバリにおいて、気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)が開催されました。
日本政府代表団の評価

最大の焦点となっていた京都議定書第一約束期間以降(2013年以降)の枠組みについては、枠組条約の下に、新たにアドホック・ワーキング・グループ(AWG)を設置し、2013年以降の枠組みを2009年までに合意を得て採択すること等に合意しました。(決議バリアクションプラン、原文条約事務局サイトpdf仮訳地球産業文化研究所サイトpdf

その合意の中で、本HPでもフォローした来た温暖化対策と森林の新たな関係(2005/11/6))「途上国における森林減少及び森林劣化に由来する排出の削減(reducing emissions from deforestation and forest degradation in developing countries)(関係者の間ではREDD)」に関する政策措置とインセンティブ等について、気候変動の緩和策の一環として検討することになりました。

「途上国における森林減少及び森林劣化に由来する排出の削減(REDD)」は2つの点できわめて重要な課題です。第一に、気候変動枠組み条約にとって重要なのは、現行の京都議定書では先進国しか具体的数値に基づく約束をしていないが、REDD巡って次の段階で途上国が数値目標に基づく約束に加わる可能性について正式に議論することが決まったと言うことです。第二に、92年の地球サミット以来地球規模での持続可能な森林管理に関する法的拘束力のある枠組みを作ろうという努力が、森林条約ではなく気候変動枠組み条約の中で実現する可能性が出てきたことです。

今回のCOP13の中で、別途決議された「途上国における森林減少及び森林劣化に由来する排出の削減:行動を奨励するための手法(Reducing emissions from deforestation in developing countries: approaches to stimulate action)」原文pdf条約事務局サイト が今後の議論のベースになります。日本語の仮訳をこちらのページにおきます。

スケジュールは以下の通りです。
2008 321 締約国からの意見提出期限「未解決の方法論的事項」(どのように排出量の変化を評価していくのか)
5月 第28回科学技術補助機関会合(SBSTA28)
6月 日本政府主催ワークショップ
12月 第28回科学技術補助機関会合(SBSTA28)

その他にCOP13で森林関係で決まったことは、以下の通りです。

採択条件を緩和している「小規模植林CDM」の上限値を、これまでの2倍に当たる年間吸収量16キロ二酸化炭素トンに引き上げることが決定。Implications of possible changes to the limit for small-scale afforestation and reforestation clean development mechanism project activities

先進国の吸収源の取扱いについては、来年春に開催される「京都議定書の下での先進国の更なる削減約束に関する特別作業部会」の次回会合で検討に着手。

資料
林野庁のプレスリリース
日本政府代表団の評価
気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)参加報告書(地球産業文化研究所 会議全体をカバーする日本語の報告書としては最も詳しい)
条約事務局のCOP13正式ページ



kokusai2-21<fccccop13>

世界と日本の森林認証の現状2007(2008/1/13)

毎年小HPでは年初に、その時点で入手できる情報を元に前年の後半の時点で第三者により森林経営を認証された森林面積を調べて公表しています。2007年版は以下の通りです。
 

  地域

全森林

 

 

 

 

 

認証森林

 

1000ha

 

 

1000ha

2006

2007

全面積比

前年比

 

 

@

A

B

100xB/@

B/A

アフリカ

635412

2479

2877

0.45

1.16

アジア

571615

7754

7262

1.27

0.94

 

内日本

24868

613

697

2.80

1.14

欧州

1001394

96266

107322

10.72

1.11

中北米

705849

155792

159354

22.58

1.02

南米

831540

9519

1992

0.24

0.21

オセアニア

206254

7017

9973

4.84

1.42

合計

3952063

278826

288780

7.31

1.04


出所含めたエクセルファイルはこちらから

sinrin1-13<genjo2007e>

エコマーク事務局「持続可能な森林資源の活用のあり方検討会」報告書(2008/1/13)

エコマーク事業は、(財)日本環境協会エコマーク事務局が実施する20年ほどの歴史をもつ、グリーン購入の先駆けとなった制度ですが森林資源を原料とした製品については、紙の分野では古紙パルプを利用した製品、木材製品分野では再利用木材、間伐材などを利用した製品が対象となってきました。

近年森林認証制度の普及などの中で、適切な森林管理の下そこから生産された木材やパルプをエコマーク制度の中でどう位置づけるかが課題になり、2006年8月から12月にかけて事務局内に検討委員会が設けられ検討がなされましたが、最近その結果が公表されました。
こちらからどうぞ

持続可能な森林から生産される木材を消費、購入の時点でどう識別するかという課題は、グリーン購入法の基本方針、緑の建築基準(CASBEE)などあちこちで議論があり、いままで消化不良とことろがあったのですが、今回の委員会もその傾向は否めません。ただし、エコマークのプロセスのよいところは検討過程の透明性です。

具体的に使える基準にするには、第一に、山の管理の評価をするツールとして、いくつかの森林認証制度、森林計画制度など森林法に基づく既存の制度をどのように評価するのか、第二に、山の管理の結果を消費者までに届けるために、森林認証制度が開発してきたCoCの事業者認定制度や最近グリーン購入法の基本方針の中で規定された林野庁ガイドラインの団体認定制度などの評価といった課題があります。

今後の議論の範囲を考える意味では参考になるものだと思います。

また、合法性が証明された木材製品がエコマークの最低基準として位置づけられたことは、この報告書が果たした具体的な成果でした。

kokunai3-34<ecomkrep>

米国の強力な違法伐採対策立法:レーシー法の概要(2008/1/13)

国際的な違法伐採問題への取組での最近の話題は、米国の議会でレーシー法という不法に採取された野生生物の輸入を禁止する法律を違法伐採木材にも適用するために改訂することを目的とした「2007年違法伐採対策法(Combat Illegal Logging Act of 2007)」という法律が成立しそうなことです。
法律の審議状況を示す公式サイト

米国林産物製紙協会(AF&PA)が強力なロビー活動をして実現の運びになったようなのですが、AF&PAが作成したQ&Aの解説用パンフレットを和訳してみました。
英文のオリジナル資料pdf小サイト和訳

レーシー法は、何れかの州の法令に違反して、取得、保持、輸送、販売されたものを、「輸入、輸出、輸送、販売、受領、獲得、購入」することを、不法なものとし、他の州でも所有することを禁止するという、趣旨であり、一部の物品については、「何れかの州の法令」の部分が「何れかの外国の法令」と読めるようになっていて、その対象物品の中に、木材を含めるようにしようというもののようです。

具体的にどのように物品を特定していくのか、そんな法律が日本でも可能なのか、興味は尽きませんが、ご一読下さい。

boueki4-34<LaceyACT>

最後までお読みいただきありがとうございました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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