ニュースレター No.079 2006年3月12日発行 (発行部数:1300部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:FAO世界森林資源調査2005の全文公開(2006/3/12
2 国連森林フォーラム第六回会合(UNFF6)の結果(2006/3/12)
3. 地方森林環境税の動き(2006/3/12)
4. 違法伐採問題と「グリーン購入法」同時進行レポート(2)ーガイドライン(2006/3/12)
5. 熱帯木材協定改定交渉の結果(2006/3/12)
6. ウッドマイルズ研究会ニュースレター木のみち10号

フロントページ:FAO世界森林資源調査2005の全文公表(2006/3/12)

FAOの2005年時点の世界森林資源調査(Global Forest Assessment 2005、以下GFA2005)については、概要が昨年中にFAOにより公表され、小HPでも掲載しましたが、詳細が結果がUNFF6会合のタイミングで公表されました。(FAOの該当ページ)。概要を紹介します。

(地球の森林面積の動態)

世界の森林資源調査がインパクトを与えてきたのは、地球全体の森林の面積の動態がこの調査でマクロに把握できるからです。この点についてGFA2005では、「地球全体の森林の面積は相変わらず減り続けている(2000-2005年で年率7.3百万ha)が、その傾向は若干緩和した(90年代は8.9百万ha)」と総括しています。
森林の動態に関するオリジナルデータwww.fao.org/forestry/site/32033/en

注意しなければならないのは、この数字に影響を与えているのは中国における大規模な造林の拡大で、この五年間毎年1.5百万haの人工林が造成され、その前の10年間と比べるとその0.9-1.0百万ha増えており、ちょうど、その面積と同じ割合で、森林の減少速度が緩和しているという数値になっていることです。
造林面積に関するオリジナルデータwww.fao.org/forestry/site/32041/en

つまり、25年前のFAOの調査で世界にインパクトを与えた「熱帯林の森林減少」は相変わらず同じように続いているということです。

(持続可能な森林管理)

今回の調査で重要なのは、森林の面積という量的な指標の他に、森林の管理水準といった管理の質に関する指標を工夫して提供していることです。

面積、生物多様性、森林の健全性、生産性、保全機能、社会的機能、の5つのカテゴリに分けた21の指標に基づき、各地域ごとの森林管理の動きを表現しています。

熱帯林と温帯林の管理水準の違いが手に取るように分かります。

FAO世界森林資源調査(GFA2005)のトップページwww.fao.org/forestry/site/fra2005/en
同上の中の世界の資源データのトップページwww.fao.org/forestry/site/32038/en

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2 国連森林フォーラム第6回会合(UNFF6)の結果(2006/3/12)

地球サミットの森林原則声明とアジェンダ21・11章という二つの森林分野の国際合意のフォローアップの作業のもっとも嫡流(?)である国連社会経済理事会の下におかれている国連森林フォーラム(UNFF)第六回会合が2月13日から24日にかけて国連本部において開催されました。

UNFFが当初、プロセスの最後と想定していた第五回会合では、「国際的枠組み(Intenarinal Aragement of Forest)の強化」という地球サミット準備会合以来つづいているもっとも重いテーマについて合意に至らず、第六回会合に持ち越しになっていました。

2週間にわたる会議の結果、今後10年間は法的拘束力のない枠組みで行くことが決まり、その中に四つの目標を掲げること、来年の予定されるUNFF7で文書の確定を行うことなどが決まりました。(合意文書pdfファイル)

京都議定書などで森林に対する規制の枠組みが議論されたり、G8サミット共同声明という、ある意味でもっともハイレベルな国際政治上の合意文書の中で違法伐採問題への協同した取組が記述されたりしていて、地球サミット時点と比べても森林政策のグローバル化の条件が後退しているとはいえないにもかかわらず、包括的な森林条約という方向になぜならないのか?ということは、世界中の森林行政、研究、ビジネスなどにかかわる人々がよく考えてみなければならない点だと思います。

ただし、UNFF6が4つのゴールのわかりやすい指標を提示したことは今後の議論にとって重要なことだと思います。UNFF7に向けての10カ年計画の策定作業と、日本の森林林業基本計画の作成作業がちょうど同じ時期に行われることもが興味深い点です。日本の計画に国際的な議論を反映されるのは当然のことでしょうが、日本の計画が国際的な文書の中にインパクトを加えていく、ということを期待したいと思います。

資料
林野庁のプレスリリース
UNFF第六回会合に関する国連の正式HP (合意文書pdfファイル)
ENBの会議の詳細情報

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3 森林整備に係る地方の独自課税の動き(2006/3/12)

2003(平成15年)年に高知県が導入した森林環境税は17年度の段階で18県、さらに今年と来年に導入を議決した県は9県となっています。
林野庁が本年1月現在で調査した結果は以下の通りです。
区分 都道府県名 税の名称 導入時期 議決時期
導入済
計 8県
高知県 森林環境税 H15.4 H15.2
岡山県 おかやま森づくり県民税 H16.4 H15.11
鳥取県 森林環境保全税 H17.4 H16.3
島根県 島根県水と緑の森づくり税 H17.4 H16.12
愛媛県 森林環境税 H17.4 H16.12
山口県 やまぐち森林づくり県民税 H17.4 H17.3
熊本県 水とみどりの森づくり税 H17.4 H17.3
鹿児島県 森林環境税 H17.4 H16.6
導入予定
(議決済)
平成18年度
導入7県
平成19年度
導入2県計 9県
福島県 森林環境税 H18.4 H17.3
奈良県 森林環境税 H18.4 H17.3
兵庫県 県民緑税 H18.4 H17.3
大分県 森林環境税 H18.4 H17.3
滋賀県 琵琶湖森林づくり県民税 H18.4 H17.6
岩手県 いわての森林づくり県民税 H18.4 H17.12
静岡県 森林(もり)づくり県民税 H18.4 H17.12
神奈川県 (水源環境保全・再生のための個人県民税の超過課税措置) H19.4 H17.10
和歌山県 紀の国森づくり税 H19.4 H17.12

そのほかに24の都府県が導入を検討しているそうです。

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4 違法伐採問題と「グリーン購入法」同時進行レポート(2)ーガイドライン(2006/3/12)

いよいよ半月後に合法性が証明された木材・木製品のグリーン購入法に基づく優先購入が始まるということになり、各地で調達関係者を集めて説明会が開催されているようです。

パブリックコメントにかかっていた特定調達物品の判断基準が2月28日閣議決定され公開されました。
また、意見に対するコメントも公表されています。(環境省HP)

林野庁からは2月15日木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドラインが公表されました。(林野庁HP)

ポイントは、森林認証制度を活用した証明方法の他に、「森林・林業・木材産業関係団体の認定を得て事業者が行う証明方法」が規定されていることです。(関係部分は以下の通り)

(2)森林・林業・木材産業関係団体の認定を得て事業者が行う証明方法( 概要)

森林・林業・木材産業関係団体は、合法性、持続可能性の証明された木材・木材製品を供給するための自主的行動規範を作成する。

自主的行動規範においては、合法性、持続可能性の証明された木材・木材製品の供給に取り組む当該団体の構成員についてその取組が適切である旨の認定等(例えば、分別管理体制、文書管理体制の審査・認定等)を行う仕組み、木材・木材製品を供給するに当たって留意すべき事項等を定め公表する。

具体的には、認定事業者が直近の納入先の関係事業者に対して、その納入する木材・木材製品が合法性、持続可能性を証明されたものであり、かつ、分別管理されていることを証明する書類(証明書)を交付することとし、それぞれの納入ごとに証明書の交付を繰り返して合法性持続可能性の証明の連鎖を形成することにより証明を行う。

例えば、国立大学法人が合法証明木材を使った家具を購入しようとした場合、その家具を製造するメーカーは合法性を証明した部材を原料として調達する必要がありますが、その部材を製造する製材所は原木問屋から合法性が証明された材を買う必要があり、さらに、原木問屋はその原木を、素材を生産する業者から、仮にその原木が保安林であれば、伐採許可書の写しを(保安林でなければ伐採届けの写しなど)提示してもらい、適切な手続きをとられたということを明示してもらう必要があるわけです。

これらの証明の連鎖はいずれにしても本人の申告がベースになるわけですが、森林認証材の場合、信頼の置ける業者かどうか森林認証機関が委嘱したコンサルタントが認定し、その申告の信頼性を保証しています。

今回の業界認定は、認証材ではコンサルタントが行ってる信頼性の保証を、その業者が属している業界団体に行ってもらうというのがみそになっています。全木連も含む業界団体にとっては、業界の構成員にとってだけでなく、市民社会全体に信頼を得ることが出来るかどうか試金石になるわけです。

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5 国際熱帯木材条約の改訂(2006/3/12)

横浜に本部を持つ国際熱帯木材機関(ITTO)の根拠となっている国際熱帯木材協定(ITTA)の次期協定が合意されました。1994年に締結された現行協定が本年末に失効されるため、2004年7月から2年がかりで進められていた交渉が1月26日に合意に達したもの。

新条約の目的に「持続可能に管理され合法的に収穫された熱帯木材国際貿易の拡大を多様化を推進し、熱帯木材生産国の持続可能な管理を促進し」とさらっと記述されていますが、直後のUNFF6で合法性の木材の収穫という文言がなかなか受け入れられなかったのと比べると、熱帯木材協定における生産国と消費国の関係が変に政治的な思惑を払拭して問題点の核心を共有する場としてうまく機能していることがわかります。

また、今回の協定の資金問題で、日本・スイス・米国の三カ国にほとんどの任意拠出を依存している体質を変えるべく、特別勘定の規定を変えたとことポイントだと指摘されています。

林野庁によるプレスリリース
ITTOによるプレスリリース英文
新条約のテキスト(英・仏・中・露・アラビア語のテキストUNCTADのHPより、日本文工事中)
ENBによる詳細な交渉経緯の報道(英文)

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6 ウッドマイルズ研究会ニュースレター木のみち10号

ウッドマイルズ研究会が4半期ごとに配信しているニュースレター「木のみち10号」が2月25日配信になりました。(こちらからどうぞ
目次は以下の通り

1.  巻頭言            NPO法人 緑の列島ネットワーク 理事長 大江 忍

2.  研究会ニュース

 -1 ウッドマイルズ算出技術者講習会報告                坂崎 有祐
 -2 気候変動和組条約の締約国会合の中でウッドマイルズ登場   藤原 敬
 -3 京都府産木材認証制度のその後2                  白石 秀知
 -4 ウッドマイルズ講演レポートIN滋賀                   滝口 泰弘

3.  【連載】ウッドマイルズ研究ノート

  (その8)  住宅のウッドマイレージCO2を評価する物差し     藤原 敬
  (その9)  日本三大木造ドームのウッドマイルズ評価       藤原 敬

4.  【連載】第8回環境問答                         野池 政宏

5.  読者の広場

 第9回 環境コミュニケーション大賞
「環境活動レポート部門」環境大臣賞受賞に寄せて    潟}ルトEA21担当 澤田順子

6. 会員紹介

7. 事務局だより


ウッドマイルズ研究会ニュースレター配信希望はこちらからどうぞ

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最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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