ニュースレター No.066 2004年2月12日発行 (発行部数:1160部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:豪雪の上越後から(2005/2/12)
2. 国産材・近くの山」を超えたウッドマイルズの意義(2005/2/12)
3. 森林認証の現状2004年末(2005/2/12)
4. 資料:森林・林業分野の国際的取組のあまらし(2005/2/12)
5. 全国木偏のNGO/NPOサミットinひた(2005/2/12)

フロントページ:豪雪の上越後から(2005/2/12)


昨年地震災害に見舞われた新潟地方は、本年になってから記録的な豪雪に見舞われています(80年間雪と森林の関係を研究している森林総研十日町試験地での積雪深は290センチ≪2月4日≫)。

1月中旬、新潟県上越市で地域材の認証や地域森林の利活用をめざす協同組合の活動をされている関原剛さんをたずねて、上越市に伺う機会がありました。

地域材認証の原型としての針葉樹認定協議会

林産物生産履歴に関する情報をつけて消費者に伝える認証制度は、我が国でもFSC、SGEC、県産材認証など様々な展開を見せていますが、上越市で始まった森林NPO植林針葉樹産地認証協議会の一番の特色は、家具づくりを行っている協同組合ウッドワーク、それに製材業者なども含めた異業種のウッドストック協同組合など、川下主導で行われていることろです。

認証材に付加価値つけて市場に販売してゆく強力な仕組みがあれば、森林認証制度は成り立つという、私の「地域材認証」の考え方は関原さんたちのこの取組を念頭に置いています。

森林所有者が森林を認証することからはじまる他のプロセスでは、「認証して何になるのか」という問に答えなければなりませんが、川下主導でのこのの取り組みでは需要者のリクエストに応えるという単純な答えになります。

上越地方では、植林針葉樹の出所は全て間伐材という現状なので、「植林針葉樹」の利用が森林管理の要請に直接応えてゆくことになるのです。

将来の課題としては、SGEC認証森林との連携、施業計画制度とのリンクなど森林の管理と結びつきを強めることが重要だと、話し合いをしました。

若者が取り組む山村の自立の可能性

今回の訪問で印象深かったのは、関原さんに紹介された、新潟県上越市西部の桑取川上流の山村で活動をしているNPOかみえちご山里ファン倶楽部の若者たちでした。

自然の景観文化地域の農林水産業を「守る深める創造する」という基本理念に、大学や大学院を卒業したばかりの若者が集まっています(常勤職員8名!!にビックリ)。

「全国どこにもある普通の山村」での自立の可能性がどんなところにあるのか?興味深いところです。(部外者だから「興味深い」とのんきなことが行っていられるのですが)

一つは政策提言するNPOと自治体との新しい関係です。現在のところ、上越市市民の森地球環境学校という上越市からの二つの受託事業が活動の支えになっているようです。だだし、これも既存の運営に対しする提言が実って実現したものです。

地域住民と自治体との間をつなぐNPOの活動がカギを握っています。

もう一つのキーワードは、環境教育です。「自然との共生のヒントを与えてくれる里山の文化もとに地球環境を考える環境教育」。このスケールの大きな発想で、今あちこちで裾野が広がりつつある環境教育の中で存在感を持った施設に発展されることを期待したいです。

この学校を担当している三浦さんに、みちみち環境教育のバックグランドがわかるHPを紹介してもらいました。本人のコメントとともに掲載させていただきます。

●持続可能な開発のための教育の10年推進会議
←ヨハネスブルグサミットで日本のNGOからの提案を受け生まれたものだそうです。
http://www.esd-j.org/
●社団法人 日本環境教育フォーラム
←環境教育分野では、実質日本で一番規模が大きいネットワークではないでしょうか。
http://www.jeef.or.jp/
●清里ミーティング
←上記フォーラムが毎年開いている全国の情報交換の場です。
http://www.jeef.or.jp/kiyosato/

以上の活動で興味深いのは、プロジェクトに関する報告書が充実していることです。

よく予算をとるためにどこかのコンサルタントがちょっと調べて報告書を書くというのはたくさんあるのですが、手作りの、よく調査されて報告書がプロジェクトを支えています。

報告書は入手次第ご紹介する予定です。

kokunai 8-2 <kamieti1>

「国産材・地域材」を超えたウッドマイルズの意義(2005/2/12)

1月下旬鹿児島県農業・農村振興協議会の研修講師として鹿児島に伺い、またその道すがら宮崎にも立ち寄って両県の関係者と森林認証やウッドマイルズに関して話をする機会がありました。

その際に、「南九州のように我が国のスギの産地で地元の市場というよりは、関東、近畿などの大消費地に自県の材を売り込んだり、はては中国・韓国に対して輸出をしようとしている地域にとって、ウッドマイルズは不利になるのではないか?」という点が話題になりました。

かねてからウッドマイルズが狭い地域材という枠組みだけを推奨するのは問題があるのではないかという、議論がありました。(田中淳夫「地域材より国産材」 農林経済1月24日号 若干のリライトをした版を筆者からいただきましたのでこちらにおきます→pdf

ウッドマイルズは、もちろん「近くの山の木で家をつくる」という運動や地域材の利用促進を支援することになるが、もっと大きな可能性を持ったものと思います。「日本の中の生産県:主要市場を遠隔地に求める地域にとっては、ウッドマイルズは国内産地間競争で不利になるのではないか。」という問に対して、次の二つの点を指摘しました。

第一に、輸送過程の環境負荷は距離だけでなく輸送手段の効率性に依存している‚という点が重要であり、輸送手段を合理的に計画すること(モーダルシフト)で輸送過程のエネルギー負荷の少ない材の提供をアピールできることです。同一のものを同一輸送距離運ぶ時の環境負荷は、陸上をトラックで運ぶ場合、鉄道や船より約1桁多い数値となります。仮に、南九州から東京圏に船で輸送する場合、東北地方からトラックで運ぶ場合の半分のエネルギー消費ですむ計算となります。ウッドマイルズは、輸送の合理化を支援する手法にもなるのです。

第二に、中国市場から見た場合の最も近い木材輸出可能地
域は南九州であり、中国への輸出に対してもウッドマイルズの意味がある、という点です。

中国市場に最も輸出量が多いロシア材の産地は、上海を起点と考えた場合九州の3倍の(直線)距離にあり、輸送手段や経路を考えた場合、九州からの輸入はもっとメリットがあるといえます。

なお、ちょっと違う観点も入りますが、国際緑化推進センター(JIFPRO)の「緑の地球」1月号(No.76)に「エコマテリアル木材の輸送距離」という小論を寄稿しましたが、「ウッドマイルズの国際性」ということを指摘しています。編集者の了解をえて、全文を資料室におきます

energy 2-27 <kyusyuWM>

世界と日本の森林認証の現状アップデート(2004/12/12)


資料:森林・林業分野の国際的取組のあらまし(2005/2/12)

林野庁が作成した、表記資料の提供をいただきました。

昨年の夏に作成したものですが、地球環境問題の概説から、先進国サミットでの森林の取組、我が国の二国間協力の現状まで幅広くカバーされているので参考になります。

目次のpdfファイル
全文を資料室におきます

chikyu 1-7 <aramasi04>

全国木偏のNGO/NPOサミットinひた(2005/2/12)

大分県日田市で活動をしている「NPO日本の杉桧を守る会」、3月5日6日に開催する「全国木偏のNGO/NPOサミットinひた」の参加を呼びかけています守る会のHPからこちらをどうぞ。

ご案内

 私たちを取り巻く環境の悪化は日ごとに強まり、自然の脅威は牙を剥き、国内外で大きな災害が続き、尊い人命が傷つき失われています。今日、森林が健全であることが、環境を守るためにどれほど必要かは、広く認知されているところではありますが、一部の諸国の大面積皆伐や違法伐採、国内では林業・木材産業の疲弊から放置林の増加など、大きな社会問題となっております。
 連日大量にわが国に送られてくる違法伐採材や、豊富にあるにもかかわらず活用されない国産材。
 こうした一連の問題をステージにあげるべく、全国各地で活躍されておられる『木偏のNPO・NGO』が一同に集い、互いの情報と活動を語り合い、更なる大きな変化のエネルギーとなることを願い、今後の連帯や連携の足がかりとしたいと思います。
大会2日目は、300年の歴史を誇る日田林業の昨年の台風災害の爪痕を中心に、森林ツァーを計画しております。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。

木偏のNPO・NGOサミット開催幹事
NPO日本の杉桧を守る会
協力
NGO Foe ジャパン
MORI MORIネットワーク
枝廣淳子(環境ジャーナリスト)
赤堀楠雄(森林ジャーナリスト

E−mallによるお問い合わせ・お申し込みは info@sugi-hinoki.ne.jp まで

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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