ニュースレター No.062 2004年10月11日発行 (発行部数:1070部)

このレターは、「持続可能な森林経営のための勉強部屋」というHPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。

情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちら考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
                                                    藤原

目次
1.
フロントページ:遠隔化する日本人の木材調達距離(2005/10/11)
2. 東三河材環境認証材の新しい展開(2005/10/11)
3. 環境経済政策学会2004年大会コレクション(2005/10/11)

フロントページ:遠距離化する日本人の木材調達距離(2004/10/11)

日本人が木材調達の過程でどの程度のエネルギーを消費しているか、その傾向はどんなものか、また、皆が近くの山で家をつくるようになったら環境負荷がどの程度軽減するものか?という問題意識で、学会発表をおこないました。

9月下旬に広島で開催された環境経済政策学会で、小生を始め、ウッドマイルズ研究会の関係者が報告したものです。

その結果、@この12年で日本人の木材調達距離は平均5千キロから7千キロへと遠距離化していること、A地域材利用が定着化すると、年間で50万トンの二酸化炭素排出量が少なくなること、などが明らかにしました。

報告は、「日本の木材需給に関するウッドマイルズ指標の推移とその評価」という節の中で、1990年と2002年の二時点において、日本において消費される製材用木材について産地と輸送距離別の流通実態を基に、木材の総輸送距離(ウッドマイレージ)と輸送過程の二酸化炭素排出量(ウッドマイレージCO2)を試算しています。その結果が上図のとおりで、日本人が使用する木材の輸送距離はこの間、5085kmから7074kmへと遠距離化し、単位当たりの輸送中の二酸化炭素排出量も105kgから、143kgへと増加しました。

また、「国産材の供給ポテンシャルと地域材利用推進の環境評価」という節の中では、政府の森林・林業基本計画(2002)で示されている、国産材の供給目標25百万m3(丸太換算ベース)が達成し、現在の供給量と目標とされる供給量の差を、近くの山の木を消費して埋めていく方向が定着したと仮定して、ウッドマイレージ関連指標をシミュレーションしてみました。

その結果、今後、我が国の人工林から供給可能な木材が生産され、それが地元に供給されるなら、木材の需要量は2002年の同量としても、木材総輸送距離ウッドマイレージは約3割減り、木材輸送過程のCO2排出量も約2割減ることがわかりました。

表 日本の木材需給の概況とウッドマイレージ指数


地域材利用推進政策と木材の輸送過程のエネルギー ーウッドマイルズ指標を使った政策の評価報告要旨
発表用プレゼンテーション資料

詳しい報告内容に興味のある方は、ご連絡下さい→こちら

東三河材環境認証材の新しい展開(2005/9/12)

このサイトでも興味を持ってフォローしてきた東三河環境認証材が、認証材を使った住宅建築をに取り組むという展開となり、関連して、9月11日に豊橋市で開かれた「地域の森林と生活環境」というシンポジウムに出席しました。

私も森林認証には関心を持ってきましたが、FSC,SGECなどいろいろな制度が展開している中、「消費者に支えられた認証制度という原点に立つと、フレキシブルな様々な認証があり得る」、という考えをもち、地域材認証制度の提案を行ってきたが、その原点となっているのは、「穂の国森づくりの会」というNPOが早くから取り組んできた、豊川流域の認証制度とのつきあいがあったからです。

県産材認証など地域材の様々な認証が立ち上がっている中で、東三河環境認証制度のユニークな点は、
1 認証基準に「皆伐を実施する際には、事後に植林計画が具体化されていること」といった、施業基準を(環境配慮)を明確にしたこと、
2 認証を業界団体でなくNPO団体という第三者が行うこと、
3 モデル事業の段階から住宅工務店を巻き込み、消費者との関係を明確にしていること、
の三点です。

各地の同様な取り組みの参考になると思います。

NPO穂の国森づくりの会が行ったシンポジウム基調報告「東三河環境認証材認証制度モニタリング調査報告」 をご覧下さい。

私も応援団の一人として、「東三河環境認証材の二つの意義と一つ課題」を、@エコマテリアルである木材を消費者に説明するための「様々な森林認証」の「普及版」への期待 A全国に広がる「県産材認証」を「県産品愛用運動」から「環境」の要素を入れた普遍的な運動へ転換するきっかけ B認証が定着するかどうかは消費者がカギを握る、と話をさせていただきました。

今後の取り組みの詳しい報告が、地元のサイトから提供されることを望みます。

参考資料

「地域材認証制度の検討に当たって」NPO穂の国森づくりの会)
「東三河環境認証材認証制度検討報告書」(東三河流域森林・林業活性化センター需要拡大部会、NPO穂の国森づくりの会)小サイト資料室
地域材認証制度の提案(小サイト)

環境経済政策学会2004年大会コレクション(2005/10/11)

9月25-26日広島大学東千田キャンパスで、表記大会が開催されました。小生が学会というものに初めて参加したのが、4年前のこの大会です。この学会の会員層が森林についてどんな関心を示しているか、森林に関するどんな情報発信が可能か、小HP作成にとって重要な会合です。小生自身もはじめて、ウッドマイルズに関する発表をしました。

小サイトと関わりのありそうな報告を、一覧表にしておきます。


演題 発表者 要旨 コメント
循環社会論
循環型社会像の比較分析:その概念形成に向けて 橋本征二(国立環境研究所) x 21世紀のあるべき社会像についての重要な考察
地球温暖化問題とその対策
温室効果ガス濃度の安定化対策が世界経済に与える影響 西本浩美(京都大学)他 安定化達成に許容される今後百年間の国別CO2排出シナリオ
炭素吸収源:その国際交渉及び他の環境問題とのインターリンケージ 石井敦(国立環境研究所) 温暖化対策としての森林政策が及ぼす負の影響とその対策
日本列島のカーボンポートフォーリオ 杉原弘恭(日本政策投資銀行) x 炭素収支を全てカウントする場合(フルカーボンアカウンティング)に向けての考察
2012年以降の気候変動交渉に向けた吸収源アセスメントの改善点について 石井敦(国立環境研究所)、他 x 同上
貿易と環境
開放体制下における再生可能資源保全のための政策論 川上豊幸 x 貿易自由化が森林管理に及ぼす影響
「持続可能な森林管理」に関する一考察ー国際法の視点から 岡松暁子(国立環境研究所) x 林産物貿易を念頭に、環境保護目的の輸入禁止事案のWTO紛争処理過程を分析
輸送過程の環境負荷
地域材利用推進政策と木材の輸送過程のエネルギー ウッドマイルズ指標を使った政策の評価 藤原敬(森林総研)、他 ウッドマイルズを使った日本人の木材消費態様と、地域材利用推進の政策を評価する
フードマイルズにみる生鮮野菜消費の変化と環境負荷 根本志保子(日本大学) 農産品ごとのフードマイルズの動向分析、増大と背景となる政策の評価
世界を対象とした運輸部門からのCO2排出量の長期的推計    明石修 京都大学(院) x 輸送部門の排出量のマクロな推計
グリーン購入
2003年NRI一万人アンケートに見るグリーンコンシューマー像 植村哲士(野村総合研究所) x 森林認証の背景となる消費者の環境指向の計量的な表現
森林と環境
マレーシア熱帯林の公益機能の環境経済的評価手法〜WTPに対する個人属性・社会経済属性の及ぼす影響について 坂上雅治(日本福祉大学) x 途上国の国民を対象とした自国内の熱帯林の価値評価調査
森林の環境価値評価に基づく立木の販売システムと環境林づくり ―「加古川sound wood(s)」の取り組みから見えてきたもの― 横山孝雄(兵庫県立大学) x 住宅建て主に対する直接立木販売の取り組み結果
地方自治体における水源環境および森林保全のための環境税のあり方に関する研究 ?森林の公益的機能の観点から? 村山武彦(早稲田大学) x 森林環境税のj受益に応じた適正税率を、公益機能評価額などに基づき提案

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 fujiwara@t.nifty.jp

 

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