ニュースレター No.042 2003年2月11日発行 (発行部数:720部)

このレターは、表記HPの改訂にそっておおむね月に一回作成しています。情報提供して いただいた方、配信の希望を寄せられた方、読んでいただきたいとこちらで勝手に考えて いる方に配信しています。御意見をいただければ幸いです。 
 藤原

目次
1.
 フロントページ:日本型森林認証制度の論点

2.

京都議定書議長国の森林吸収源対策 ー地球温暖化防止森林吸収源10ヶ年対策まとまる

3.

持続可能な開発と林水産物貿易に関する日本提案の提出につてーーWTO非農産物市場アクセス交渉
4. 違法伐採木材の輸入制限についての:ヨーロッパの政策
5.
米国の緑の建築基準ー米国の「近くの山の木」は
6.
勉強部屋ホームページの大幅改訂

1. フロントページ:日本型森林認証制度の論点(2003/02/11)

12月25日に日本林業協会の森林認証制度検討委員会が報告書をまとめ、年明けの16日に「我が国にふさわしい森林認証制度『緑の循環認証会議』の創設に向けて」という発表を行いました。小生も作成過程で議論に参画したこの報告書の概要を紹介し、小生なりの解説を試みます。

報告書は、@日本における森林認証制度の必要性、A日本にふさわしい森林認証制度のねらい、B「緑の循環認証会議(SGEC、Sustainable Green Ecosystem Council)」の提言、の三つの章からなり、関係資料が添付されています。第三章のいわば本文には、@認証基準(案)の骨子、A運営主体と期待されるSGECの運営と組織のデザイン、B製品の流通についての分別表示の考え方、C他の認証制度との連携の基本的考え方、などがのべられています。

報告書の全文は早速立ち上げられたホームページ(工事中の箇所が多く発展途上のサイトですが)から入手できます。

今後この制度の発展を期待していくつかの論点に触れてみます。

(輸入国日本の森林認証制度の意味)

森林認証制度は木材輸出国が輸入国の消費者に自国の材の生産プロセスを説明するために作られら制度です。輸入国の日本でなぜ森林認証なのか?という点は議論があるところです。

小生は2年前にある雑誌に「地域木材認証ラベリング制度の提案」という小論を書き(小サイトでも紹介しています(こちら)、日本に認証制度を作るべきだと主張してきました。小論では、「いくら木材業界が木材が環境に優しいといって利用促進を説いても、消費者は信用していない。身近な木材をきっちりした制度で認証し消費者にアピールすべきである。出口の見えない国産材振興の展望を、消費者の環境指向の動きと連携して切り開くために、地域材認証ラベリング(LTL:Local Timber Labeling) 運動を提唱したい。」としています。

今回の報告書でも、認証制度のねらいとして、「(国産材が)循環型資源であることを保証し・・・市場を維持発展させる」という言い方で同様の趣旨を述べています。

もちろん、基準をクリアする過程で、日本の森林管理に欠けている「環境(だけではなく、「安全」や「効率」も含めたトータルの)マネジメント」が定着し、経営全体の底上げがはかられるということが期待されます。(この辺は森林施業計画認定基準とFSC認証基準の隙間参照)

(先行する世界の制度との関係)

もう一つの問題はFSCやPEFCなどの先行する世界の認証制度との関係です。(世界中で元気な森林認証参照)

問1、何故FSCではいけないのか
先述の小論の中で、小生はその点について「FSCは世界中の消費者にアピールする為のしかのため大がかりで、煩雑、コストがかかる。国産材が日本の消費者に向けて作るなら、手軽に森林の管理の質を保証する制度ができるはず」、という主張をしました。この点について作業の過程でFSCの作業グループの方たちと議論しました。国際的にFSCはPEFCなどの他の制度と衝突をしている場面があるわけですが、違法伐採問題など新たな事態に直面し、違法伐採だけを排除するラベリングの仕組みなど、いろんな形態の仕組みと共存できるという議論になってきているようです。そういう意味では、FSC側でもFSC以外の認証制度とどうつきあってゆくか日本の場合テストケースになると思います。

問2,FSC陣営とPEFC陣営のどちらにつくのか
報告書の中に、「多角的相互認証」という節があり、小生もこの部分の議論にだいぶ参画しました。ハッキリ言って参加者の意見も様々です。世界の状況を一口で言うと先行したFSCに対して、後発のPEFC(ちょっと古いですがいきさつは森林認証概論を参照)が北米のCAS(カナダ)、SFI(米国)等の制度と相互認証し巻き返しをはかり、認証面積ベースでは1年前に追い越し追い抜いているという状況です(世界中で元気な森林認証参照)。当然、PEFCサイドでは唯一残った空白の先進国に「我が陣営の制度ができた」、というように見ていると思います。
この報告書では、「すべてのシステムに対してオープンかつニュートラル」(9ページ) としています。それ以外に書きようがなかったということでもあるのですが、二大潮流として衝突という事態を変える一石を、日本の制度が投じられればすばらしいと思います。

(報告書のオリジナリティ)

同じ、「多角的相互認証」の節の最後(報告書全体の最後でもあるのですが)に、「経済的・社会的にも密接な関係にある近隣アジアの国や地域との連携を模索する」という一節があります。放っておけば見過ごされそうですが、私はこの報告書のオリジナルなすばらしい点だと思います。先述の「世界で元気な・・」で指摘したことろですが、アジア地域は世界的な森林認証の空白地帯になっています。そこに日本が目を向けてリードしてゆこうという意気込みです。極東ロシアの森林管理の質など我が国木材輸入の将来にとっても重要な点です。

(「ひよこ」というより・・・)

大言壮語をしたきましたが、実はこの報告書は大きな事業のほんの出発点です。たくさんの関係者の協力がなければ認証はおろか、基準さえできないという事になります。日本林業協会という林業関係者の団体の提唱ですが、幸い環境団体や各県の方々も関心を持ってくれています。とくに我が国の森林管理の最前線にたっている都道府県や市町村の関係部局のや森林組合などの協力がなければ一歩もすすまない、ということだと思います。「ひよこ」というより卵ですが、殻が割られ「ひよこ」になり立派な鳳となることを期待します。

関連資料

緑の循環認証会議ウェブサイト 基本資料の掲載
本サイト内関連ページ 地域材認証制度の提唱
概要説明のプレゼン資料(ppt) 森林総研内で説明のために藤原が作成

2.京都議定書議長国の森林吸収源対策
ー地球温暖化防止森林吸収源10ヶ年対策まとまる
(2003/2/11)

12月26日農林水産省は、地球温暖化対策大綱において国民的課題とされた森林による吸収量1300万炭素トンの確保を目ざす、地球温暖化防止森林吸収源10ヶ年対策を発表しました。@健全な森林の整備、A保安林等の適切な管理・保全等の推進、B木材、木質バイオマス利用の推進、C国民参加の森林づくり等の推進、D吸収量の報告・検証体制の強化が柱です。

早速03年度の予算にも吸収量報告のための情報の整理と一元管理をするためのシステム整備のための予算など新規の事業が認められました。

関連資料

本サイト内の関連ページ  
林野庁関連ページ 森林吸収源10カ年対策と本文と概要のダウンロード

環境庁関連ページ

新たな地球温暖化対策推進大綱の決定について
EOFのホームページ 環境団体の反応

毎日新聞
アサヒコム

マスコミ報道ぶり

3. 持続可能な開発と林水産物貿易に関する日本提案の提出について
−WTO非農産品市場アクセス交渉new
(2003/2/11)

12月17日に農林水産省は表記を提出すると発表しました。(本文ダウンロード林野庁ホームページより

@有限天然資源の関税引き下げには柔軟な対応が必要、A関税など輸入国の問題だけでなく輸出税・輸出規制など輸出国の問題も一緒に議論、B違法伐採など貿易面から貢献できる、今後の貿易交渉の展開をにらんだ論点を提示しています。

「各国の森林破壊を助長するような貿易自由化であってはならない」、ということが基本なのでしょうが、どんな条件で助長するのかしないのか、違法伐採問題の具体的貢献策など、今後の課題です。


4. 違法伐採木材の輸入制限についてのヨーロッパの政策

ベルギーを根拠とする欧州の環境団体FERNと英国の国際問題の研究所RIIAは、表記の報告書を公表しました。
@二国間協定などにより欧州が違法伐採材の輸入を禁止する法令を作る、A途上国の人づくり援助を行う、B政府調達政策を活用する、C投資の規制をする、D現存する法令を利用する、などを提言しています。

本文pdfファイルダウンロード(917MB)



5. 米国の緑の建築基準ー米国の「近くの山の木」は

米国の建築業界の環境基準に「近くの山の木の評価」する項目があります。

環境とエネルギー問題に取り組む米国の住宅関連企業が集まるLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は緑の建築基準) (Green Building Rating System)を作成し環境やエネルギー問題に貢献する建築の評価を行っています。

立地条件、資材、室内環境など全部で69点になるスコア表があり、26点以上で一般的な認証がされますが、33点以上がシルパー認証、39点以上がゴール認証ド、52点以上がプラチナ認証となります。


その中に「地域の資材」というセクションは下表の通り、500マイル以内で加工された建築資材を20%以上使うと1点、さらにその半分以上を500マイル以内で収穫された資材であればもう1点加点されます。

建築業界の地産地消の推進。明確なメッセージです。

緑の建築基準

推奨事項5 地域の資材


(意図)
地域で産出する原材料の消費を増やし、もって、輸送過程での環境負荷を減らし、地域経済の活性化に資する。

(要求事項)
推奨事項5.1(1ポイント) 500マイル以内で加工製造された建築資材を最低20%使用すること。
推奨事項5.2(1ポイント) 上記のうち最低50%は500マイル以内で産出、収穫、再生産されたものを使用

(技術および戦略)
この目的を達するため、地域の資源および供給者の特定に関する目標策定。建築期間において当該資材が搬入を確認し、全体資材のうちの量を確定。

LEEDホームページ
緑の建築基準pdfファイルダウンロード
その他にFSCの認証木材を木材の半分以上使うと1点というのもあります。


6. 勉強部屋ホームページの大幅な改訂(2003/2/11)

昨年の11月以来イオン環境財団の助成を得て小ホームページの改訂を検討してきました。第一に内容が多岐にわたってきたので内部が単純でわかりやすくする、第二に読者の方からのフィードバックを期待し双方向性をたかめる、の二点を中心に進めてきました。とりあえずのバージョンを2月からアップします。

第一の点については、内容が25メガバイト・二百ページを超えててきたため、内部を検索して使っていただく機会が多くなってきたので、最終的なコンテンツをすべてファイル分けするなどシンプルに検索し易くしています。第二の点はアンケート掲示板などを設けました。読者のみなさんに参加していただく双方向については、どんな可能性があるか今後10月までの期間に検討していきたいと思います。いろいろご意見いただければ幸いです。

もう一つのテーマは英文情報の発信力を強化することです。現在でも小さな英文サイトが付属していますが、近々こちらの方も暫定版をアップします。こちらに対してもいろいろご意見いただけると幸いです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

藤原敬 takashi.fujiwara@nifty.com

 

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