IPCC第6次評価第3部会報告書と森林(気候変動枠組み条約COP26の議論のバッグラウンド)(2022/11/15) | |||||||||||||||||
気候変動枠組み条約第27回締約国会合がシャルム・エル・シェイク(エジプト)で開催されています(11月15日現在) その議論の背景の重要な役割を果たしている気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第3作業部会(AR6_WG3)報告書(気候変動の緩和)が本年4月に8年ぶりに公表されました。 IPCC評価報告は三つの部会で作業が行われ第1作業部会「自然科学的根拠」、第2作業部会「影響、適応、脆弱性」、第3作業部会「気候変動の緩和策」で、それぞれが、昨年8月に第1部会、今年2月に第2部会の報告書を公表され、森林政策にとって重要な第三部会報告書が、今回公表されたものです。 公式のHPClimate Change 2022: Mitigation of climate changeには、本文と政策作成者向け要約(どちらも英文)が掲載されています。 日本政府の公式サイト気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第3作業部会報告書の公表についてが掲載されています。 AR6 WG3報告書 政策決定者向け要約SPMの概要が経産省のサイトに形成されています。(要約の概要でなく要約の全訳が経産省のサイトにのるという告知がされているんですがまだみたい?) IPCC第〇次評価WG3は、グローバルな気候変動対策の最新情報の中で、森林がどのような位置づけになるか重要なペーパーなので、今までもこのサイトではフォローてきました。 IPCC第5次評価第三部会報告書と森林(2014/4/29) 政策決定者向け要約SPMを読んで、森林(と木材)がどんな位置づけになっているのか、紹介します。(遅れてすみません) (SMPの構成と全体の動向) Aはじめに、 上記が枠組みです。 気候変動の現状を示すBに記載されている事項は、正味のGHG排出量は増加を続けている(1990年比154%(2019年)、内農林土地利用(AFOLU)は(133%))が、最近10年間は少し減り気味。 左の図 太陽光、風力、電気自動車など緩和をすすめる、政策に支えられたイノベーション分野がある(が、途上国では遅れている) 現在実施されている政策で推移すると、排出量は横ばい。(右の図赤) 温暖化を2度に抑制、1.5度を超える(オーバーシュートする)が1.5度に収まる可能性がある道筋が現時点である(右の図青の線)!!が、それにそったNDCを2030年までに提出することが前提。 (温暖化対策の道筋) それでは、C地球温暖化抑制のためのシステム変革の内容を見てみましょう。 セクターごとの政策をしてあるセッションの構成を第5次(2014)と比較したのが、以下の表です
エネルギー部門とAFOLU部門はそのままのこりましたが、エネルギーの利用end-use部門が産業と、建築、輸送の3つの節に分かれ、最終需要部門に都市圏というコンセプトが入ってきて節が増えたみたいですね。いずれにしてもエンドユーズ部門や消費者に目を向けた記述が多くなったので特徴です。 森林に関する期待が少し下がった?のではありません。森林に関してはやることは解っているので、あまりこまごま説明することはない、ということですね。次節にしめすように、当面の30年までの森林に対する期待はものすごく大きいです。それに川下部門で建築部門の重要性が増していますが、その中に、木の利用の話が入ってきました。 (緊急な温暖化対策の選択肢の中の森林(と木材)) 今回の報告書のなかで、現在考えられる施策を評価をしめす、一番重要な情報がCのセッションの最後に掲載されている下の図です 表のタイトルは、図の左に記載されているように、 Overview of mitigation options and their estimated ranges of costs and potentials in 2030 43の排出削減技術が6つのカテゴリーに分かれて、掲載されています。右の横軸は削減量のポテンシャル。そして棒グラフの色は、どの程度のコストがかかるかです。 例えば、一番上の棒グラフは、風力発電ですね。2030年までに、1トン当たり200USドルのコストをかけると、年間4ギガトンのCO2を排出していた火力発電所が発電していた電力と同じ量の発電ができるので、その分のCO2が削減されるようになるだろう(不確定なこともあるが2ギガトンから6ギガトンの範囲)というものです。 ということで、43の技術がすべて評価され、C12のセッションにはそのまとめとして以下のような記述があります。 「(部門別、技術別の積み上げ評価から) 100 $/tCO2eq以下のコストの緩和オプションで、世界全体GHG排出量を2030年までに少なくとも2019年レベルの半分に削減しうるだろう(確信度中位)。 その削減ポテンシャルの半分以上は、20 $/tCO2eq以下」 つまり、2030年時点で開発されると想定される技術のうち、二酸化炭素1トン当たり100ドル以内の技術を総動員すれば、地球上の排出量は半減できる。(つまり、いまの地球上の排出量が21ギガトンCO2/年だから・・・・) その中で、主役となるのが右に向いた棒が長い以下の5つ。 上から@風力発電、A太陽光発電、B農業の適正化、C森林その他生態系の他用途転換の抑制、D植林や再造林の促進、です。 森林が極めて重要な役割を果たします(すくなくとも30年までは) そのほかに、建築の最後の技術の中に、木材利用の拡大の促進という項目が入っています(IPCCで木材利用が緩和策に入って来たのは多分初めてかも)ことも注目点です(固定量が増えることに加えて、代替措置もカウントされているか?SMPでなくて原文をみてみましょう、今度) (SPMの締めの言葉) E.5 追跡調査された資金の流れは、すべての部門と地域にわたって、緩和目標の達成に必要なレベルに達していない。その資金ギャップ解消についての課題は、全体として開発途上国で最も大きい。緩和のための資金フローの拡大は、明確な政策の選択肢と政府および国際社会からのシグナルにより支えられうる。(確信度が高い) E.6 国際協力は、野心的な気候変動緩和目標を達成するための極めて重要な成功要因である。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、京都議定書、及びパリ協定は、ギャップが残っているものの、各国の野心レベル引き上げを支援し、気候政策の策定と実施を奨励している。世界規模未満のレベルや部門レベルで実行され多様な主体が参画するパートナーシップ、協定、制度やイニシアチブが出現してきているが、その有効性の程度は様々である。(確信度が高い) ー−−− 以上が、IPCC第6次評価第3部会報告書WA6_WG3政策決定者向け概要SPMの、概要です。(各国政府筋のチェックは通っているんだそうです) 政策選択肢はたくさんあるけれど、森林分野と木材利用は当面たよれる重要な分野なんですね(グローバルに考えると)。川下の需要者側と連携して取り組んでいきましょう。 そして途上国の森林などが重要といった内容ですね。今後COPなどの議論をふまえて具体化していくでしょうが、フォローしてまいります。 kokusai2-85(ipcc6-3bukai)
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