森林経営管理制度と森林環境税ー森林木材の持続的循環利用に向けた今後の国内政策の動向は(2024/5/28)

5月20日日本林政ジャーナリストの会の総会終了後、第一回勉強会で林野庁の小坂次長の話を聞く機会がありました。

タイトルは「森林経営管理制度と森林環境税~森林・木材の持続的循環利用に向けて~」50ページにわたる配布資料にもとづく1時間のレクチャ

「森林経営管理制度と森林環境税」というプロジェクトがタイトルにはいっていますが、それはイントロで(大切なプロジェクトなので詳しい報告内容ですが)、「森林行政全体を巡る近年の動向」と、「これからの施策の展開方向」にかかる総括的な報告です。

頂いた資料は公開といわれていたので、データ化してこちらにおいておきます。また、プレゼンデータの48ページにわたる題目のリストを末尾に掲載してあります。

「大部」なので、全部を詳しく紹介することはできませんが、概要を紹介しますね。

(林野庁次長のプレゼンテーション構成)

三つのセッションからなっています、

森林経営観来制度と森林環境税 (21ページ)(今年度から課税開始なので皆さんへの説明大切な重要事案)
(森林行政をめぐる)近年の動向(7ページ)(バックグラウンドデータ、地球環境:気候変動や生物多様性に関するビジネスの動きなどが中心の大切な内容)
(森林行政をめぐる)これからの課題と施策の展開方向(20ページ)(これが本日のメインテーマかな)

順に概要説明します

(森林経営管理制度と森林環境税)

イントロにこのプログラムがはいっているのは、昭和60年代の水源税構想から始まり、林野庁が長年挑戦してきた(次長も担当をしてきた)大切なプログラム(3ページに森林環境税に向けたあゆみ)がります)だからですね。

せっかく設定されたのに、使われていないのでないかという議論もあり・・・

右の図(島根県の運営体制や施業が集約化され事例などがたくさん掲載(6市町村の事例)

そしてそれらの事例がいいところを取ってきただけでないかといわれないに、すべての市町村都道府県統計で、譲与額として供与された額より、活用額の方が多くなっています(令和5年度になって初めて)という数値も紹介されています。(左の図(p12)、

そのほかに使途別の利用推移(p13-14)等も紹介されています。

せっかく設定されたのに、使われていないのでないかという議論への反論です)

まだ、始まったばかりでこの話が日本全体の森林の利用や再造林動きにどの程度インパクトがあるのか、バラ色の成果があがっているの?

ということは、これからですね(質疑の中でも議論がありました)

((森林行政をめぐる)近年の動向)

次のセッションは7ページのバックグラウンドですね。

次のセッションへつなぐイントロかもしれませんが、その中で、7ページのうち5ページ(P24からp28)が地球温暖化対策と生物多様性条約といった、地球環境問題であることがインパクトありました。

林野庁の政策の主要な視点がグローバリティ?

特に右の図のように、「伐って、使って、植えて、育てる」循環のCO2吸収・固定・削減効果」(p25右上)、「 森林の持続的循環利用の地球温暖化対策への位置づけ」(p26右下)、木材の利用を地球環境の視点から説明する図が紹介されていたのがインパクトありました。

(これからの課題と施策の展開方向)

最後のセッションがこれが主たるメッセージなのでしょう

「儲かる林業をつくるには」というタイトルの最初のページ(p30左の図)にあるように5つのサブセッションからなっています。

①やまがまとまる・山側がまとまる、②再造林・生産・流通コストを下げる、③サプライチェーンをつくる、④多様な収入源をつくる、⑤需要をつくる

順に見ていきましょう

<①やまがまとまる・山側がまとまる>p31-34

最初の森林経理管理制度等の趣旨となっている小規模分散所有問題。関係者がたくさんいて意見集約が大変でしょうが・・・

右の図(p34)にあるように、リモートセンシングデータで上から見てみると細かい境界線がわからなくても、何人かの所有者が、およそ、儲かりそうな森林が何割、そうでないところ何割などデータを共有して、共有林にして皆で共有することができるような道筋もあるんだそうです。

リモセンデータをを活用して皆があつまって同意をするなどという道筋が見えてくるんですね

<②再造林・生産・流通コストを下げる>p35-36

コストの削減は、左の図p36。

伐出伐出関係の機械の自動化の動きの例がのっています

左上が伐倒作業の遠隔操作化、左下が、路網集材作業の自動化、右上が架線収材作業の自動化遠隔操作化、右下が下刈り作業の自動化

みんな開発実証中なんだそうです

<③サプライチェーンをつくる>p37-38

キーワードは二つ

①価格交渉力一価格交渉力を持つ(供給ロットの取りまとめ、立木価格情報の透明化)

②持続可能なサプライチェーンー持続性確保に向けた共通認識を有するサプライチェーンをつくる

再造林費を含む価格をねん出する仕組みを二つ紹介(右の図p39)

<④多様な収入源をつくる>p40-45

A)林野庁も制度の見直しに貢献したJクレジットと(p40-41,43):、GXリーグ(p42):GX推進法に基づくGX-ETS (GXリーグにおける自主的な排出量取引制度)の開始が見込まれる中、排出事業者のニーズを的確に捉えることにより森林由来Jークレジットの取引を活性化させ、森林整備の促進につなげていくことが重要。

B)森林の生物多様性を高める林業経営に取り組む企業の紹介(p44)と、最近できたばかりの「森林の生物多様性を高めるための森林経営の指針」の紹介(p45)

<⑤需要をつくる>p46-48

そして、最後の「木材需要をつく」というセッションに記載されているもは、以下の二点

A)脱炭素の観点での取組〔⑤需要をつくる〕(p47)
・木材利用の一層の促進を通じた地球温暖化防止を図るため、林野庁では、建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量を国民や企業にとってわかりやすく表示する方法を示したガイドライソを策定。(林業経済研究所の貢献!!)

B建築物の木材利用に係る評価ガイダンス(p48)
ESG投資等において、建築物に木材を利用する建築事業者、不動産事業者や建築主が、投資家や金融機関に対して建築物への木材利用の効果を訴求し、それが積極的に評価されるよう、国際的なESG関連情報開示の動向も踏まえた評価項目及び評価方法を整理ガイダンスとして公表しました。3月にできたばかり、勉強部屋でも紹介しました(紹介したばかり

プレゼン内容は以上です

とりあえず、次長の個人的な思いもはいった、今後の森林政策の展望です。本当にそうなるかは分からないところがたくさんありますが・・・参考になります

(森林環境税の海外からの評価は?)

質疑の時間があったので、私からも質問してみました。

Q森林環境税ができたいきさつ等もなども含めえて伺いました。かねてから私は、「国民が皆で毎年1000円払い森林のガバナンスの経費にあてる」、という森林環境税のようなシステムは、どこの国の森林管理当局もやりたくて仕方がない、すごいシステムだと思っています。この前、岸田首相がブラジル行ったとき、緑の問題に関しする共同声明に、ブラジル大統領がアマゾンを含む森林保全に関してグローバルな仕組みをいろいろ提案し頑張っているんだと説明し、日本が賞賛したという文脈がのっているのに、日本が先方説明し、先方が賞賛したということはないのかな?森林環境税のことはそういう問題なのでないか?と思っていました。森林環境税に関する海外の評価について、どう思いますか?

A(小坂次長)私もそう思います!!それで、先般国連森林フォーラム19回会合が開催されたので、私は是非森林環境税をPRしたいと、ニューヨークにいってプレゼンんをしてきました!!!

是非内容を紹介させてください!!!とお願いし了解を得ました。
近日中に林野庁のサイトに国連森林フォーラムについて掲載されるようなので、紹介しますねー

以上です

以下に関係資料掲載します

森林経営管理制度と森林環境税~森林・木材の持続的循環利用に向けて~令和6年5月20日by林野庁小坂次長(全編一括ダウンロード

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表紙
目次 1
l 森林経営管理制度と森林環境税(第一篇ダウンロード) 2
1. 森林環境税に向けたあゆみ 3
2. 森林経営管理制度と森林環境税の関係 4
3.森
林経営管理制度の概要
5
4. 森林経営管理制度の取組状況 6
5. 所有者不明森林等に係る特例措置 7
6. 森林経営管理制度に基づく取組事例① (島根県邑南町) 8
6. 森林経営管理制度に基づく取組事例② (群馬県中之条町) 9
7. 意向調査で見えたもの(鹿児島県の事例) 10
8. 森林環境税?森林環境譲与税の概要 11
9. 市区町村・都道府県における森林環境譲与税に活用状況(活用額) 12
10. 森林環境譲与税の使途別活用状況 13
11. 森林環境譲与税の主な取組実績 14
12. 森林環境譲与税を活用して実施可能な取組の例 15
13. 市町村の森林・林業担当職員の現状 16
14. 市町村支援の取り組み 17
15. 森林環境譲与税の譲与基準の見直し 18
16. 森林環境譲与税を活用した取組状況(森林経営管理制度、再造林料籐り 19
16. 森林環境譲与税を活用した取組状況(人材育成、木材利用) 20
17. 森林環境税の国民へのPRに関する資料 21
II近年の動向(第二編ダウンロード) 22
1.利用期を迎える我が国の人工林 23
2. 森林・林業・木材産業によるカーボンニュートラル・地球温暖化対策への貢献 24
3. 「伐って、使って、植えて、育てる」循環のCO2吸収・固定・削減効果 25
4. 森林の持続的循環利用の地球温暖化対策への位置づけ 26
5. 生物多様性保全にかかる取組と動き 27
6. 気候変動、生物多様性に関する世界の趨勢 28
IIIこれからの課題と施策の展開方向(第三篇ダウンロード) 29
1. 儲かる林業をつくるためには 30
①山をまとめる
2. 森林経営の集積・集約化〔①山をまとめる〕 31
3. 森林経営の集積・集約化〔①山をまとめる〕 32
4. リモセンデータを活用した境界明確化〔①山をまとめる〕 33
5.面的・一体経営に向けて〔①山をまとめる) 34
②コス3脳を下げる
6.スマート・デジタル技術等を活用した林業・木材産業の将来像〔②コス3脳を下げる) 35
7. 自動化も夢ではない〔②コストを下げる〕 36
③サプライチェーン
8. 低迷する木材価格~特に山元価格~〔③サプライチェーン〕 37
9. 適正な立木価格の形成~サプライチェーンを通じた収益の確保~〔③サプライチェーン〕 38
10.サプライチェーンの事例〔③サプライチェーン 39
④多様な収入源
11. J?クレジット制度の概要〔④多様な収入源〕 40
12. J?クレジット制度の見直し〔④多様な収入源〕 41
13. GXリーグ〔④多様な収入源〕 42
14. 森林由来Jークレジットの最近の動き〔④多様な収入源〕 43
15. 森林の生物多様性を高める林業経営に取り組む企業の事例〔④多様な収入源) 44
16.林の生物多様性を高めるための林業経営の指針につい〔④多様な収入源) 45
⑤需要をつくる
17. 新しいクリーンウッド法がスタート(令和7年4月1日施行) 46
18. 脱炭素の観点での取組〔⑤需要をつくる〕 47
19. 建築物の木材利用に係る評価ガイダンス〔⑤需要をつくる〕 48

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